上 下
21 / 691

第13話 運命の子

しおりを挟む
第11話 運命の子

俺はアルベルトの記憶と能力を引き継いで15歳のクリスとして生きている。

このまま、俺が村にいて、アリシアと一緒に生活して、そのうちに結婚してもらえると思うけど、それでいいのか?

本当の俺は、村で一生を終えることを考えていない。

そりゃ、アリシアが好きだから、アリシアと一緒になれることは、嬉しいけど、アルベルトの記憶と能力、そしてクリスとしての魔法力に最近は気がついた。

混乱しやすいから、分けて考えてみると、アルベルトにもすごい魔法力があるんだけど、クリスにも魔法の力があることに練習していたら気がついたんだ。

俺(アルベルトとクリス)には、一人でも、すごい魔法力があるのに、二人の魔法量を合わせて使うことをすると、一段と魔法の力が上がるんだ。

まだ、研究と練習段階だけど。

一般的な魔法師がどれくらいなのか、全然、わからない、だけど、アルベルトの覚えていることから推測すると、常識から外れているような気がする。



相変わらず一緒の家で暮らしてるアリシアは手厳しい。

朝から「クリス、今日は畑仕事で体を鍛えるわよ」と言って叩き起こされる。

「ふあ~、まだ、眠いよ」

「ほら、ほら、ダラダラしないで、早く着替えてよ」

「うん、わかった」と言って寝ぼけた頭で上着を抜いて、下も脱ごうと手をかけたて、前を向いたら、アリシアが見ていた。

「あの~、アリシア、向こう行ってて欲しいんだけど」と言うとアリシアは顔を赤くして

「もう、早くしてよ」と言いながら部屋から出て行った。

「バタンッ」と勢いよく閉められた扉。

俺はパジャマを脱いで、服を着替える。

部屋を出ていく時に、アリシアのベットが目に入ったけど、アリシアはパジャマをきれいに畳んで上に置いている。

俺のパジャマは、脱いだ状態で置いてある。

もう一度、ベットに戻って、パジャマを畳み出す。

きれいに畳んで、「よし」と言って部屋から出た。

テーブルが置いてある部屋には、もう誰もいないから、溜め水で顔を洗い、タオルで水に濡れた顔を拭いて、外の扉を開けた。

外に出てきたら、すごいいい天気で青空が広がっている。

俺は両手を伸ばして背伸びした、「さぁ、今日も働こう」と言って歩き出した。

もちろん畑へ。

畑まで行くと、アリシアの家が持っていた畑も横にあるので、一緒に耕している。

今日は、そのアリシアの家の畑を耕すことになっている。

今までと比べて2倍になってしまったから、範囲が広い。

俺は畑を耕す鍬を持ってきたけど、まずは雑草を抜くことからしないと、少し放置していたら、草がはえてしまった。

アリシアも畑にいて、俺と同じように雑草を抜いている。

「クリス、ここの草、抜いてくれない?」とアリシアが固そうな地面に生えている草を指差す。

「うん、わかった」と言って俺が草のところに行き、草に手をかけると、あれっ、簡単に抜けた。

「おっ、すごいね、力、強くなった?」

「うん、少しね」と答えておいたけど、あの事件以来、俺の力が強くなったと思う。

今までできなかったことが、できるようになったし。

走るのも早くなった。

魔法力が上がると、体にも多くの変化が現れている。

本当は魔法で畑を耕すこともできると思う。

「畑をしていると腰がきついね」

「うん、そうだね、後で、揉んでやろうか?」と俺が冗談まじりに手を動かすと

「‥‥‥うん、やめておくわ、手が いやらしいから」と言われた。

「あっ、クリス、ちょっと水を汲んできてくれない?」

「うん、わかった」と言って桶を持って共同の井戸に汲みに行く。

井戸にはいかずに角を曲がって、そこで俺は井戸を使うことなく魔法で水を出した。

桶には水が8割型入っている。少し時間をおいて、桶を持って畑に戻ってきた。

「はい、水、汲んできた」

「随分、早かったわね」とアリシアが言ってきたから、あれでも早かったか、と思った。

「ここに巻いてくれる?」とアリシアが指差すところに水を巻いて、アリシアが耕していく。

俺も鍬を持って、畑を耕す。

アリシアが背を伸ばしたり、腰を痛そうにしているから、俺が後ろから近づいて、アリシアの腰をくすぐる。

「ちょっと、クリス、やめてよ」と言いながら笑い出す。

俺が手を離すと「もう、くすぐるのやめてよ」と言うアリシア

「早く畑耕すよ」と言って鍬を持って耕し始める。

「あれっ、腰が痛くない‥‥‥」と言って体を起こしている。

「さっき、俺がくすぐったから痛みが取れたんじゃない?」と言っておいた。

「そ、そうなんだ」


このまま、アリシアと村にいて、畑を耕すこともいいと思うけど、俺は事件のことが気になっている。

俺が死ぬ寸前に声を聞いたのは、間違いない。

あの声の主は誰かもわからないけど、あの声は俺のことを『運命の子』って言った。

運命の子って、どう言う意味なんだろう?

何の運命の子なんだろう?

俺に運命の子があるから、あの声の主は俺の意識とアルベルトの意識を統合させる必要があったと思う。


このまま、アリシアと一緒に村にいて、親のあとをついで、畑を耕す生活をしても良いと思うけど、どうしても冒険者だったケインと同じようになりたいと思う。

冒険者になることで、先の道があると思えるんだ、根拠はないけど。

もちろん親には心配かけるのは、わかっている。

でも、このまま、村にいるんじゃなく、違ったことがしたいんだ。

何をしたいのかは、自分でもわからない。

でも、なにかをしたいと思いは、募るばかり。



畑仕事が終わって夕方になって家に帰ると、家族が全員揃った時に話があると言って全員をテーブルに座ってもらう。

お母さんが全員にお水が入ったコップを置いていく。

俺は父さんの顔を見て、母さんの顔を見て、最後にアリシアの顔を見る。

なんだか久しぶりに、すごく緊張するんだが、自分の思いを話し始めることにする。

「村を出ようと思う」言葉を言ったあとに全員が何も言わない沈黙が流れる。

目を伏せていると、誰かが、ハァーとため息をついた。

母親が思い余って吐いた息だ。

「最近クリスは少し変だったものね」

「そうだな」と父親が言った。

「何を思い悩んでいるんだろうと、傍らから見ていても気がついていたんだけど」と母親

「うん、最近クリスは元気がなかったものね」とアリシアが言った。

「村を出ると言っても、どうするの、簡単なことじゃないのよ」と母さんが言った。

「どうやってお金を稼ぐんだ」と父さんが言った。

「うん、冒険者になろうと思うんだ」

「冒険者と言えばクリスは、ケインと仲良かったわよね。」

「ケインは最後は帰ってこなかったわよね‥‥‥」と母さんが心配するような顔つきで言った。

何とか、ここで説得しなければ、運命の子の意味がわからなくなる。

「私もクリスと一緒に、ここで暮らしたい」とアリシアが言った。

本当ならこんな嬉しい事は無い。

「わかったよ」と答えて、今晩は話は終わった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。

飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。 ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。 そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。 しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。 自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。 アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

処理中です...