神様の料理番

柊 ハルト

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ミルクの優しさ

02.5 ー スイスかフランスか

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 誠との戯れは、今晩の相棒であるオスカーのノックによって中断された。
 アレクセイは今日ほど騎士団であることを、後悔したことはなかった。

「班長…顔、いつもより怖いっす」
「…そうか」
「アンタ公私混同するタイプじゃなかったじゃないですか」
「…そうだな」
「そんなに狼のツガイって、特別なモンなんですか?」
「…分からん。だが、俺の両親や親戚を見ていると、そうなのかもしれんな」

 アレクセイとオスカーは、夜の村周りを歩いていた。ところどころに弱いライトの魔法の球を浮かべ、光源を確保する。
 オスカーは、アレクセイの一年下の後輩だ。学生時代の後輩でもあるので、自分や狼獣人、そしてヴォルク家のことも何となく理解してくれている。それもあってか、オスカーは必要以上に自分を恐れない。
 アレクセイにとっては、やりやすい相手のうちの一人だった。

「ま、俺ら鷹獣人も基本的にはツガイは一人なんで、気持ちは分かるんですけどね。でも、ヴォルク家の血って厄介に見えるなぁ」

 腕を頭の後ろで組み、オスカーは軽い足取りで歩く。
 そう言えば、オスカーは番う相手は居るのだろうか。アレクセイは時折小さく動くオスカーの羽根を見ながら、そんなことを考えていた。
 仕事の話や相手の相談、軽口にも乗るが、アレクセイは自分から深い話をしたことがない。心を動かされる相手が見つからなかったので、ツガイに関しての話はもっとだ。
 そんな自分は、誠に愛想を尽かされないだろうか。
 アレクセイはここにきて、少し怖くなった。

「オスカー…」
「何です?」

 少し前を行くオスカーを呼ぶ。
 アレクセイは意を決して、オスカーに聞いた。

「俺は…マコトに相応しいのだろうか」
「…班長!?」

 驚いたオスカーは、足を止めてしまった。
 業務中に何の話をしているのだろうか。今までのアレクセイには、無かったことだ。それでも、アレクセイは聞いてみたかったのだ。

「あの…何か悪いもんでも食いました?」
「食べてないし、夕飯はお前達と同じ物を食べたはずだが」
「あー…ええ、そうですね。はー…恋はヒトを変えるのかー」

 オスカーが何やらモゴモゴ言っているが、アレクセイは答えを待っていた。

「あのですね…俺は何人か付き合ったことがあるけど、班長は初めてでしょ?」
「そうだな」
「それで、初めての恋で、浮かれている…と」
「そうだな」
「えーと…多分、誰でも悩むと思いますよ。自分が相手と釣り合うのか、とか。一緒に居て楽しんでくれてるのかとか、好きでいてくれてるのかな、とか」
「そうなのか」
「はい、そういうものかと。俺もいつも悩みますもん。でも、悩んでも仕方無いんですよね。だって、それって、お互いの相性じゃないですか」
「そうなのか」
「多分。相性と、あとは…お互いの努力だと思います。大切にしたいとか、喜ばせたいとか、そんなの。…俺の言うことが正解って訳でもないんですけど…偉そうに言って、すみません」
「いや、助かった。ありがとう」

 真摯に答えてくれたオスカーにアレクセイが礼を言うと、オスカーは固まってしまった。
 どうしたのかと目を細めると、オスカーは笑った。

「何か班長とこういう話するの初めてで、ちょっと新鮮っすね」
「確かにな。そして俺は、今日ほど自分がこうも面白みがない奴だと思ったことはない」
「そうっすか?真面目なだけだと思いますけど。でも、こんな班長が見れて、俺は楽しいです」
「そうか」
「はい」

 山の夜は街と比べ物にならないほど、暗い。
 夜空には溢れ落ちそうな数の星が瞬いていた。
 アレクセイはこの輝く星を、誠にも見せてやりたいと思った。
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