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第一章:事件
011. 連休前で皆、浮かれているよ
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朝から珍しく葵に捕まった。
いつもだったら真太郎と悠生が教室にいる時間だった。
真太郎は即決でサッカー部に入部して今日は朝練がある日だったようだ。
悠生もサッカー部に入部したみたいだ。
二人がいない隙に葵が俺の席に寄ってきた。
「トワー、もうすぐ連休じゃん。だから二人で買い物に行きたいのー。ねぇ~、いいでしょ?」
「何故?」
「だってー、高校生になったらやっぱり中学まで使っていた物を新しい物にしたいのー。だから、いいでしょ?」
「無理」
「えっ?なんで?何で無理なの?それじゃ、別の休みでもいいからお願い!」
「そう言われても連休は前から予定入っていて出掛けることになっているし変更できないから無理」
「そ、それじゃぁ、連休最後の日にちょっとだけでも…約束したからね!」
これ以上俺から拒否の言葉を聞きたくないと逃げるように話していった。
そもそもの話、俺は中学二年生の時に葵が告白してきた時何度も断った。
それでも告白してきたのは葵の方だ。
そして俺は断った時に、葵が思っているような楽しい恋人同士で付き合うことはできないと話した。
けれどそんなことは忘れてしまったようだ。
もう三年近くになるから忘れてしまうか…。
それでも俺は葵には話したことだから何度も同じことを言って陰湿だとかウザいとか思われたくなかった。
そう思っていても気持ちを言葉にしたら陸哉とともに反論して有耶無耶にされた。
だから俺は葵から距離を置きたかったんだと思う。
きっかけがなくてただズルズルと関係を続けていかないとならないのはすごく苦痛だった。
どこかで何かあれば…と俺はずっと考えていた。
それでもいくら考えても打開策は浮かばずに連休に近づいてしまった。
連休が始まる前日に、学校へ登校する時姉ちゃんと一緒に荷物を会社に預けた。
いつもと違って俺が始業時間ギリギリに教室に入った。
「おぅ、なんだよぉ~叶羽。珍しく遅刻ギリギリか~?」
「あ、あぁ真太郎か。おはよう…まぁちょっと今日は用事があったから」
「ふーん、用事ってなんだ?」
「うん?用事って用事、です」
「いやいやいや、その用事の内容だよ」
「まぁ…、用事だよ」
俺の席が教室の入口近くだったので他にも教室に入ってきた生徒たちで少し渋滞を起こしていた。
「席につけ―。出欠の確認するぞー」
遅れて教室に入ってきたクラスメイトが担任の声がすぐ後ろから聞こえて先生を二度見していた。
「なぁ、連休に皆と一緒に遊ぼうぜ。叶羽、お前だって部活してないんだから暇だろ?」
「どういう理屈だよ…俺は暇じゃない。だから皆と遊ぶ計画には参加できない」
俺は担任の話の合間をぬって真太郎に冷たい視線を向けながら話した。
「はぁ~、なんだよ~。こっちは連休中の部活はなくなったから四人で遊ぼうと思ったのに」
「そこ!関係ない話は休み時間にしろよ」
「は~い」
俺と約束ができなかったことと担任に注意されたことに真太郎は少し不貞腐れた顔して返事をしていた。
そんな俺と真太郎のやり取りを葵が睨みつける表情で見ていた。
更にその葵を寂しそうに陸哉が見つめていた。
その様子に真太郎と話していた俺は気づかなかった。
「あれ?いつものあの美味そうな弁当はどうしたんだよ」
連休中に部活動がない真太郎と悠生、悠生と一緒にいることの多い洸太の四人で昼食にすることになった。
「ああ、今日は弁当持ってきていないから購買に行って買ってくる」
「それじゃ、今日は学食に行って食おうぜ」
「たまにはそれもいいな、そうしよう」
「わかった」
俺は鞄から財布だけ出して三人と教室を出た。
「それにしても叶羽が弁当持ってこないなんて初めてじゃね?」
「そうか?」
「そうだよ。それよりも朝言った連休に皆で遊ぼうって話、行けないってどういうことだよ。理由を述べよ」
「別に、前から予定が入っていて連休は遊べないんだよ」
「なんだよ~、叶羽。彼女でもいるのか?デートの約束か?」
「全然違う。姉ちゃんのスケジュールで一緒に出掛けることになってんの。だから今日は家に帰らないで姉ちゃんの会社に行って合流することになってんの」
「何それ、お前ってシスコンかよ」
「いや、俺のこと赤ちゃんの時から育ててくれたのは姉ちゃんだし。俺は姉ちゃんしか家族いない」
「あっ、ごごめん。悪いこと言った」
「別にいいよ。俺も家族のことなんて皆に話したことなかったし…」
少し調子に乗った真太郎がワリが悪いといった顔をしていた。
洸太と悠生も少しまずいことを聞いてしまったという感じで顔を見合わせていた。
「そんな顔すんなよ、俺が居心地悪くなるだろ」
「あ、あぁ…」
「ごめん」
「この話はもうしない。だからこれ以上は謝るな」
真太郎、洸太、悠生の三人は黙って頷いた。
俺もそのまま黙って残りの昼食を食べた。
「なぁ、叶羽~。本当にダメなのか?」
「あぁ、姉ちゃんの…というか社長のスケジュールも関係してるからね」
「お前の姉ちゃんって仕事、何やってるんだ?」
「…社長秘書」
「ふーん、姉ちゃん美人なのか?」
「今聞くことそれ?」
「まぁまぁ、いいじゃないか。で、美人なのか?」
「なんだよ、お前ら。だけど姉ちゃんは売約済みだ、と思う。たぶん」
「たぶんってなんだよ。叶羽の姉ちゃんだろ?姉さんに彼氏がいるかいないかぐらいわかるだろ?」
「う~ん、姉ちゃんは家に彼氏って連れて来たことって一度もないんだよね。おまけに姉ちゃんって仕事終われば残業もしないで定時で帰って来るから」
「うわ、何それ。マジかよ。それじゃぁいつ彼氏とデートとか会ったりしてるんだよ?」
「それは俺にも解らない。姉ちゃんから結婚の“け”の字も話を聞いたことない」
俺は溜息を吐きながら答えた。
「なぁなぁ~、叶羽~。姉さんの写真ねぇ?スマホに一枚くらい保存してねぇの?」
「姉ちゃんの写真かー、…ない、な」
「即答かよっ!」
「それにしても話、逸れてない?」
「そうだよ、連休に皆で遊ぼうって話だっただろう」
「うん、だから俺は無理だから」
俺は伏し目がちに心苦しい気持ちになりながら真太郎を見た。
「仕方ねぇか…。俺たちだけで遊ぶか」
「叶羽がいないんじゃつまらないだろー?」
「俺のことは気にしないで。真太郎と悠生はサッカー部だから夏休みは部活で忙しくなるんだろ?」
「たぶんなー。でも高校サッカーは夏より冬だから夏休みは練習三昧だと思う」
「まぁそんな感じだろうな。洸太、お前は?」
「うちは夏も冬もコミケあるしな。同人誌作りだな」
昼食を食べ終わり部活の話をしたりしていた。
そろそろ昼休みも終わる頃かなと思って、ポケットからスマホを出し時間を確認した。
それぞれ食器を返却口に片付け、教室に戻った。
教室に戻ると五限目の現代国語の準備をした。
この時もうすぐ授業が始まる時間だったから葵が俺の方を見て何か言いたそうに立っていた。
だが俺は気づいていない振りをして教科書を見ていた。
教科担当の横山美伶先生が教室に入ってきたのを見た葵は慌てて自分の席に戻った。
授業の準備はまだしていなかったみたいで葵はさらに慌てていた。
授業が終わって今日はさっさと帰りたかったが一応、担任の連絡が何かあるかもしれないから仕方なく席に座っていた。
担任が教室に入ってくると全員が席に座っているか全体を見渡し始めた。
「明日から連休だが浮かれて羽目を外したり、家族で旅行に行くこともあるだろうから事故に遭わないように気を付けて出掛けてくれ。以上、解散な」
俺は担任の言葉が終わると同時に席を立った。
「真太郎、悠生、洸太、お疲れさん。また来週な」
「おう、またな」
「じゃあね~」
「気を付けて行けよ~」
「あぁ」
教室を出ていくのと同時に右手を振りながら下駄箱に向かって急ぎ足で歩いた。
「トワー!」
後ろから葵の声が追いかけてきた。
俺は聞こえていないふりをして急いだ。
いつもだったら真太郎と悠生が教室にいる時間だった。
真太郎は即決でサッカー部に入部して今日は朝練がある日だったようだ。
悠生もサッカー部に入部したみたいだ。
二人がいない隙に葵が俺の席に寄ってきた。
「トワー、もうすぐ連休じゃん。だから二人で買い物に行きたいのー。ねぇ~、いいでしょ?」
「何故?」
「だってー、高校生になったらやっぱり中学まで使っていた物を新しい物にしたいのー。だから、いいでしょ?」
「無理」
「えっ?なんで?何で無理なの?それじゃ、別の休みでもいいからお願い!」
「そう言われても連休は前から予定入っていて出掛けることになっているし変更できないから無理」
「そ、それじゃぁ、連休最後の日にちょっとだけでも…約束したからね!」
これ以上俺から拒否の言葉を聞きたくないと逃げるように話していった。
そもそもの話、俺は中学二年生の時に葵が告白してきた時何度も断った。
それでも告白してきたのは葵の方だ。
そして俺は断った時に、葵が思っているような楽しい恋人同士で付き合うことはできないと話した。
けれどそんなことは忘れてしまったようだ。
もう三年近くになるから忘れてしまうか…。
それでも俺は葵には話したことだから何度も同じことを言って陰湿だとかウザいとか思われたくなかった。
そう思っていても気持ちを言葉にしたら陸哉とともに反論して有耶無耶にされた。
だから俺は葵から距離を置きたかったんだと思う。
きっかけがなくてただズルズルと関係を続けていかないとならないのはすごく苦痛だった。
どこかで何かあれば…と俺はずっと考えていた。
それでもいくら考えても打開策は浮かばずに連休に近づいてしまった。
連休が始まる前日に、学校へ登校する時姉ちゃんと一緒に荷物を会社に預けた。
いつもと違って俺が始業時間ギリギリに教室に入った。
「おぅ、なんだよぉ~叶羽。珍しく遅刻ギリギリか~?」
「あ、あぁ真太郎か。おはよう…まぁちょっと今日は用事があったから」
「ふーん、用事ってなんだ?」
「うん?用事って用事、です」
「いやいやいや、その用事の内容だよ」
「まぁ…、用事だよ」
俺の席が教室の入口近くだったので他にも教室に入ってきた生徒たちで少し渋滞を起こしていた。
「席につけ―。出欠の確認するぞー」
遅れて教室に入ってきたクラスメイトが担任の声がすぐ後ろから聞こえて先生を二度見していた。
「なぁ、連休に皆と一緒に遊ぼうぜ。叶羽、お前だって部活してないんだから暇だろ?」
「どういう理屈だよ…俺は暇じゃない。だから皆と遊ぶ計画には参加できない」
俺は担任の話の合間をぬって真太郎に冷たい視線を向けながら話した。
「はぁ~、なんだよ~。こっちは連休中の部活はなくなったから四人で遊ぼうと思ったのに」
「そこ!関係ない話は休み時間にしろよ」
「は~い」
俺と約束ができなかったことと担任に注意されたことに真太郎は少し不貞腐れた顔して返事をしていた。
そんな俺と真太郎のやり取りを葵が睨みつける表情で見ていた。
更にその葵を寂しそうに陸哉が見つめていた。
その様子に真太郎と話していた俺は気づかなかった。
「あれ?いつものあの美味そうな弁当はどうしたんだよ」
連休中に部活動がない真太郎と悠生、悠生と一緒にいることの多い洸太の四人で昼食にすることになった。
「ああ、今日は弁当持ってきていないから購買に行って買ってくる」
「それじゃ、今日は学食に行って食おうぜ」
「たまにはそれもいいな、そうしよう」
「わかった」
俺は鞄から財布だけ出して三人と教室を出た。
「それにしても叶羽が弁当持ってこないなんて初めてじゃね?」
「そうか?」
「そうだよ。それよりも朝言った連休に皆で遊ぼうって話、行けないってどういうことだよ。理由を述べよ」
「別に、前から予定が入っていて連休は遊べないんだよ」
「なんだよ~、叶羽。彼女でもいるのか?デートの約束か?」
「全然違う。姉ちゃんのスケジュールで一緒に出掛けることになってんの。だから今日は家に帰らないで姉ちゃんの会社に行って合流することになってんの」
「何それ、お前ってシスコンかよ」
「いや、俺のこと赤ちゃんの時から育ててくれたのは姉ちゃんだし。俺は姉ちゃんしか家族いない」
「あっ、ごごめん。悪いこと言った」
「別にいいよ。俺も家族のことなんて皆に話したことなかったし…」
少し調子に乗った真太郎がワリが悪いといった顔をしていた。
洸太と悠生も少しまずいことを聞いてしまったという感じで顔を見合わせていた。
「そんな顔すんなよ、俺が居心地悪くなるだろ」
「あ、あぁ…」
「ごめん」
「この話はもうしない。だからこれ以上は謝るな」
真太郎、洸太、悠生の三人は黙って頷いた。
俺もそのまま黙って残りの昼食を食べた。
「なぁ、叶羽~。本当にダメなのか?」
「あぁ、姉ちゃんの…というか社長のスケジュールも関係してるからね」
「お前の姉ちゃんって仕事、何やってるんだ?」
「…社長秘書」
「ふーん、姉ちゃん美人なのか?」
「今聞くことそれ?」
「まぁまぁ、いいじゃないか。で、美人なのか?」
「なんだよ、お前ら。だけど姉ちゃんは売約済みだ、と思う。たぶん」
「たぶんってなんだよ。叶羽の姉ちゃんだろ?姉さんに彼氏がいるかいないかぐらいわかるだろ?」
「う~ん、姉ちゃんは家に彼氏って連れて来たことって一度もないんだよね。おまけに姉ちゃんって仕事終われば残業もしないで定時で帰って来るから」
「うわ、何それ。マジかよ。それじゃぁいつ彼氏とデートとか会ったりしてるんだよ?」
「それは俺にも解らない。姉ちゃんから結婚の“け”の字も話を聞いたことない」
俺は溜息を吐きながら答えた。
「なぁなぁ~、叶羽~。姉さんの写真ねぇ?スマホに一枚くらい保存してねぇの?」
「姉ちゃんの写真かー、…ない、な」
「即答かよっ!」
「それにしても話、逸れてない?」
「そうだよ、連休に皆で遊ぼうって話だっただろう」
「うん、だから俺は無理だから」
俺は伏し目がちに心苦しい気持ちになりながら真太郎を見た。
「仕方ねぇか…。俺たちだけで遊ぶか」
「叶羽がいないんじゃつまらないだろー?」
「俺のことは気にしないで。真太郎と悠生はサッカー部だから夏休みは部活で忙しくなるんだろ?」
「たぶんなー。でも高校サッカーは夏より冬だから夏休みは練習三昧だと思う」
「まぁそんな感じだろうな。洸太、お前は?」
「うちは夏も冬もコミケあるしな。同人誌作りだな」
昼食を食べ終わり部活の話をしたりしていた。
そろそろ昼休みも終わる頃かなと思って、ポケットからスマホを出し時間を確認した。
それぞれ食器を返却口に片付け、教室に戻った。
教室に戻ると五限目の現代国語の準備をした。
この時もうすぐ授業が始まる時間だったから葵が俺の方を見て何か言いたそうに立っていた。
だが俺は気づいていない振りをして教科書を見ていた。
教科担当の横山美伶先生が教室に入ってきたのを見た葵は慌てて自分の席に戻った。
授業の準備はまだしていなかったみたいで葵はさらに慌てていた。
授業が終わって今日はさっさと帰りたかったが一応、担任の連絡が何かあるかもしれないから仕方なく席に座っていた。
担任が教室に入ってくると全員が席に座っているか全体を見渡し始めた。
「明日から連休だが浮かれて羽目を外したり、家族で旅行に行くこともあるだろうから事故に遭わないように気を付けて出掛けてくれ。以上、解散な」
俺は担任の言葉が終わると同時に席を立った。
「真太郎、悠生、洸太、お疲れさん。また来週な」
「おう、またな」
「じゃあね~」
「気を付けて行けよ~」
「あぁ」
教室を出ていくのと同時に右手を振りながら下駄箱に向かって急ぎ足で歩いた。
「トワー!」
後ろから葵の声が追いかけてきた。
俺は聞こえていないふりをして急いだ。
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