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012 解散のスリーピースバンド(6)
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『マキちゃんと接触できたよ!』
「……は?」
『だから! マキちゃんとお話できたんだって! スマホで!』
「……ええと、先輩から聞いたっていう例の番号にかけてみたってこと?」
『そう!』
「どこで番号知ったの、とか聞かれなかった?」
『聞かれた! ちゃんと正直に答えたよ。ロスジェネの先輩から聞きました、って』
「それでよく怪しまれなかったな」
『ふっふっふ。そこは昌真のやり方を応用したのですよ』
「俺のやり方?」
『そう、昌真が教えてくれた真っ黒けっけなやり方!』
聞けばあやかはその会話の中で『ずっとマキちゃんに憧れていた。迷惑かと思ったけど先輩から無理にスマホの番号を聞き出してかけてしまった。できればお友達になって下さい』と誠心誠意伝えたのだと言う。
それに対する佐倉の反応はやや引き気味ではあったものの、『メールのやり取りするくらいならいいよ。毎回レス返せるかわからないけど』という好意的なものだったのだという。
で、それのどこが昌真のやり方なのかと言うと、女優になりきって相手を騙すところが昌真流なのだそうだ。
……それがあたかも自分の得意なやり口であるように言われることには釈然としないものがあったが、あやかの行動自体は責められたものではなく、むしろ復讐の計画線上においては最大限の賛辞を送らなければならないものと言えた。
なにしろこれで佐倉に『友達であるあやか』からの情報として高岡に関するニセ情報を発信できるようになったのだ。その効果は匿名で送られてくるあやしげなメールの比ではない。
……勢いだけの相棒と思っていたあやかだが、予想外に頼りになる。相変わらず空気を読まない勇み足の結果ではあるが、昨日の今日でこの仕事を見せつけられては、その溢れんばかりのやる気については認めざるを得ない。
嬉々として今後の展望を口にするあやかに『やっぱ俺、復讐とかやめるわ』とはさすがに言い出しづらいものがあり、ずるずると話し続けた結果、自分の方でも具体的な実行計画を考えてみると約束して昌真は電話を切るハメになった。
「……まあ、上手くいくわけないしなあ」
スマホをベッドに投げ出した後、ずっしりとくる後悔と自己嫌悪に苛まれながら、昌真はそう独りごちた。
……そう、所詮は成功の目がないお花畑のプランなのだ。共犯者がどれほどアグレッシブに頑張ってくれたところで、佐倉マキを落とすなどという芸当が自分にできるわけがない。
せいぜい上手くいきそうなプランを練ってチャレンジしてみればいい。で、二回かそこら失敗したところで『やっぱり上手くいかなかったね、チャンチャン』で終わらせればいいのだ。
ノリで告白したら相手がやけに本気で引っ込みがつかなくなった男というのはこんな心境なのだろうか――などとくだらないことを考えながら昌真は時計に目をやり、とりあえず夕飯の支度をするために自分の部屋を出た。
「……は?」
『だから! マキちゃんとお話できたんだって! スマホで!』
「……ええと、先輩から聞いたっていう例の番号にかけてみたってこと?」
『そう!』
「どこで番号知ったの、とか聞かれなかった?」
『聞かれた! ちゃんと正直に答えたよ。ロスジェネの先輩から聞きました、って』
「それでよく怪しまれなかったな」
『ふっふっふ。そこは昌真のやり方を応用したのですよ』
「俺のやり方?」
『そう、昌真が教えてくれた真っ黒けっけなやり方!』
聞けばあやかはその会話の中で『ずっとマキちゃんに憧れていた。迷惑かと思ったけど先輩から無理にスマホの番号を聞き出してかけてしまった。できればお友達になって下さい』と誠心誠意伝えたのだと言う。
それに対する佐倉の反応はやや引き気味ではあったものの、『メールのやり取りするくらいならいいよ。毎回レス返せるかわからないけど』という好意的なものだったのだという。
で、それのどこが昌真のやり方なのかと言うと、女優になりきって相手を騙すところが昌真流なのだそうだ。
……それがあたかも自分の得意なやり口であるように言われることには釈然としないものがあったが、あやかの行動自体は責められたものではなく、むしろ復讐の計画線上においては最大限の賛辞を送らなければならないものと言えた。
なにしろこれで佐倉に『友達であるあやか』からの情報として高岡に関するニセ情報を発信できるようになったのだ。その効果は匿名で送られてくるあやしげなメールの比ではない。
……勢いだけの相棒と思っていたあやかだが、予想外に頼りになる。相変わらず空気を読まない勇み足の結果ではあるが、昨日の今日でこの仕事を見せつけられては、その溢れんばかりのやる気については認めざるを得ない。
嬉々として今後の展望を口にするあやかに『やっぱ俺、復讐とかやめるわ』とはさすがに言い出しづらいものがあり、ずるずると話し続けた結果、自分の方でも具体的な実行計画を考えてみると約束して昌真は電話を切るハメになった。
「……まあ、上手くいくわけないしなあ」
スマホをベッドに投げ出した後、ずっしりとくる後悔と自己嫌悪に苛まれながら、昌真はそう独りごちた。
……そう、所詮は成功の目がないお花畑のプランなのだ。共犯者がどれほどアグレッシブに頑張ってくれたところで、佐倉マキを落とすなどという芸当が自分にできるわけがない。
せいぜい上手くいきそうなプランを練ってチャレンジしてみればいい。で、二回かそこら失敗したところで『やっぱり上手くいかなかったね、チャンチャン』で終わらせればいいのだ。
ノリで告白したら相手がやけに本気で引っ込みがつかなくなった男というのはこんな心境なのだろうか――などとくだらないことを考えながら昌真は時計に目をやり、とりあえず夕飯の支度をするために自分の部屋を出た。
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