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71 古きを愛するレディ
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モンゴルマン斎藤とチカオと井上は地図を見ながら感嘆の声をもらした。
「こんなに協力してくれるなんて嬉しいな」
「ああ。予想以上だね」
「作品が足りるか心配なくらいだよ」
満面の笑みで話しているこの三人は『あさげー』事務局のメンバーである。あさげーは旭市を芸術で元気にしていこうというコンセプトでモンゴルマン斎藤が立ち上げたグループだ。
モンゴルマン斎藤については是非36話をお読みいただきたい。
あさげーアーティストの中で数名は小説内で紹介させてもらっている。22話椎名保、26話大西忠、48話平山爆風もよろしく!
と、この小説の宣伝はともかく、あさげーには多くのアーティストが参加しており、様々な企画で旭市を盛り上げているのだ。
2023年の春、市内の広範囲に芸術作品を設置したのは18箇所にものぼり、それを巡るスタンプラリー芸術祭を催し、市民や観光客に好評であった。
そんなあさげーの2024年は『まちぶら芸術祭』を企画している。
お散歩アートツアーは旭駅から市役所までの区間を中心に芸術作品を展示し観光客に楽しんでもらうことはもちろんのこと、市民に歩いてもらうことで駅前を探索してもらうものである。
あさげー事務局メンバーは対象区画の商店を一軒一軒挨拶にまわり協力をお願いした。すると多くの商店が賛同してくれ、三人の前にある駅前地図は多くの印がつけれらている。
その企画でポスターデザインを担当することになったうちの一人が具緒である。
具緒は水彩画を得意とした画家である。古風な町並みを好み、着物姿の人物像を描き、そこここに猫を登場させる。その可愛らしくも凛々しい画風は人気があり、個展をあちらこちらで開催するほどだ。
冬に催されたあさげー『水滸伝』では佐原市にある飲食店をモデルにした絵が飾られた。それを見た来場者の年配の女性たちは目を瞬かせたあと喜びの声をあげた。
「ねえ! これあの店よね?」
「本当だわ。この男は渡辺さんじゃない?」
「似てるううう」
「(お店の)お母さんに教えてあげなくちゃ」
大興奮の女性たちはそこにある細かい描写やなつかしさを感じる画風に話が盛り上がる。そこに居合わせた具緒も顔をほころばせた。具緒は女性たちが盛んに指摘するその店の常連『渡辺さん』を知らないし、似顔絵を得意とせず似顔絵依頼は受けていないので似顔絵でもない。その店に合う人物像を想像し、着物を着せ描いただけだ。具緒のイメージが現実とがっちりと統合され見る人達を魅了している。
「手作り名刺です。どうぞお持ちになってください」
具緒はテーブルにあるプレゼント用の名刺を見せた。絵や言葉の描かれたそれは下地も具緒が塗ったものである。具緒の姿に女性たちは驚いた。
「えー! あんたがこれ描いた人?」
「まだ若いお嬢さんじゃないの!」
「この時代を知っている人だと思ってたよ!」
「「「いい絵を描くねぇ」」」
見る人を幸せにするその絵はモデルの飲食店に購入されていくことになった。
水萌里はマルシェに出店していた具緒の絵を片手に取りじっくり見て思わずにやけている。
『ねこの擬人化。むちゃくちゃかわいい!!!』
着物姿の猫たちは動きも表情も豊かである。
隣にある女の子の絵は単色で描かれていてそれに驚嘆した。
『濃淡でこんな風にできるなんてすごいわあ』
水萌里はふと首を傾げた。
「この子たちが持っているのは何ですか?」
猫たちだけでなく可愛らしい女の子たちも茶色の何かを手にしている絵が何枚もあった。ポーズは違えど同じものを持っている。
「木の葉パンです。木の葉パンは東総エリアのご当地お菓子なんですよ。たまごパンや甘食に似ている焼き菓子です。私、これが大好きなんです。昔からあるパンなんですけど、お店で工夫が違うんですよ。はちみつが練り込まれているものとかもあるんです」
旭市にも作っているところがあると知った水萌里はその帰りに寄ることを決めた。
具緒は夏の『旭まちぶら芸術祭』にもとても積極的である。ポスターもしかり。
しかし、あさげーはその企画を『今年の目玉』にして終わるのではなく『継続した観光スポット旭市』を目指しているのだ。その一つとしてクラファンで一口オーナーを募り、芸術作品を協力店舗に置いていき、十年後には多くの作品であふれる街にしたいと考えていて、今年はそのスタートだ。すぐに結果はでないかもしれない企画にも関わらず多くのお店が協力してくれることになったことに事務局の三人は喜んでいた。
「百鬼夜行でまちぶらするのも楽しそうだ」
赤座GOがアイディアに反対する者などいるはずもなく決定した。あさげーの『旭市を元気にする活動』はこれからも続く。
「スタッフがもっといてくれると助かるよな」
グループの存続と活動の継続に悩みは尽きないが、モンゴルマン斎藤はそれも楽しんでいく。
「どうにかなるさ! はっはっは!」
そして具緒はグッズや画集に向けて活動を始めた。やってみると保管方法などに悩みはつきない。それを一歩づつ進めていき、いつか形になることが楽しみである。
「なあ、百鬼夜行なら、俺が本当の姿で歩いても大丈夫そうじゃないか?」
企画を聞いた洋太は目をキラキラさせた。
具緒が描いた洋太こと『洋旭神』が現れるかもしれない。この夏をお楽しみに。
ボランティアスタッフとしてご協力可能な方は、インスタのあさげーにDM、または千葉銀前にある『地域包括センター』の井上までご連絡ください。
街を一緒に盛り上げる仲間を大募集しています。
7月20日!百鬼夜行やります!
子供たち!集まれぇ♪
☆☆☆
ご協力
あさげー様
具緒様
「こんなに協力してくれるなんて嬉しいな」
「ああ。予想以上だね」
「作品が足りるか心配なくらいだよ」
満面の笑みで話しているこの三人は『あさげー』事務局のメンバーである。あさげーは旭市を芸術で元気にしていこうというコンセプトでモンゴルマン斎藤が立ち上げたグループだ。
モンゴルマン斎藤については是非36話をお読みいただきたい。
あさげーアーティストの中で数名は小説内で紹介させてもらっている。22話椎名保、26話大西忠、48話平山爆風もよろしく!
と、この小説の宣伝はともかく、あさげーには多くのアーティストが参加しており、様々な企画で旭市を盛り上げているのだ。
2023年の春、市内の広範囲に芸術作品を設置したのは18箇所にものぼり、それを巡るスタンプラリー芸術祭を催し、市民や観光客に好評であった。
そんなあさげーの2024年は『まちぶら芸術祭』を企画している。
お散歩アートツアーは旭駅から市役所までの区間を中心に芸術作品を展示し観光客に楽しんでもらうことはもちろんのこと、市民に歩いてもらうことで駅前を探索してもらうものである。
あさげー事務局メンバーは対象区画の商店を一軒一軒挨拶にまわり協力をお願いした。すると多くの商店が賛同してくれ、三人の前にある駅前地図は多くの印がつけれらている。
その企画でポスターデザインを担当することになったうちの一人が具緒である。
具緒は水彩画を得意とした画家である。古風な町並みを好み、着物姿の人物像を描き、そこここに猫を登場させる。その可愛らしくも凛々しい画風は人気があり、個展をあちらこちらで開催するほどだ。
冬に催されたあさげー『水滸伝』では佐原市にある飲食店をモデルにした絵が飾られた。それを見た来場者の年配の女性たちは目を瞬かせたあと喜びの声をあげた。
「ねえ! これあの店よね?」
「本当だわ。この男は渡辺さんじゃない?」
「似てるううう」
「(お店の)お母さんに教えてあげなくちゃ」
大興奮の女性たちはそこにある細かい描写やなつかしさを感じる画風に話が盛り上がる。そこに居合わせた具緒も顔をほころばせた。具緒は女性たちが盛んに指摘するその店の常連『渡辺さん』を知らないし、似顔絵を得意とせず似顔絵依頼は受けていないので似顔絵でもない。その店に合う人物像を想像し、着物を着せ描いただけだ。具緒のイメージが現実とがっちりと統合され見る人達を魅了している。
「手作り名刺です。どうぞお持ちになってください」
具緒はテーブルにあるプレゼント用の名刺を見せた。絵や言葉の描かれたそれは下地も具緒が塗ったものである。具緒の姿に女性たちは驚いた。
「えー! あんたがこれ描いた人?」
「まだ若いお嬢さんじゃないの!」
「この時代を知っている人だと思ってたよ!」
「「「いい絵を描くねぇ」」」
見る人を幸せにするその絵はモデルの飲食店に購入されていくことになった。
水萌里はマルシェに出店していた具緒の絵を片手に取りじっくり見て思わずにやけている。
『ねこの擬人化。むちゃくちゃかわいい!!!』
着物姿の猫たちは動きも表情も豊かである。
隣にある女の子の絵は単色で描かれていてそれに驚嘆した。
『濃淡でこんな風にできるなんてすごいわあ』
水萌里はふと首を傾げた。
「この子たちが持っているのは何ですか?」
猫たちだけでなく可愛らしい女の子たちも茶色の何かを手にしている絵が何枚もあった。ポーズは違えど同じものを持っている。
「木の葉パンです。木の葉パンは東総エリアのご当地お菓子なんですよ。たまごパンや甘食に似ている焼き菓子です。私、これが大好きなんです。昔からあるパンなんですけど、お店で工夫が違うんですよ。はちみつが練り込まれているものとかもあるんです」
旭市にも作っているところがあると知った水萌里はその帰りに寄ることを決めた。
具緒は夏の『旭まちぶら芸術祭』にもとても積極的である。ポスターもしかり。
しかし、あさげーはその企画を『今年の目玉』にして終わるのではなく『継続した観光スポット旭市』を目指しているのだ。その一つとしてクラファンで一口オーナーを募り、芸術作品を協力店舗に置いていき、十年後には多くの作品であふれる街にしたいと考えていて、今年はそのスタートだ。すぐに結果はでないかもしれない企画にも関わらず多くのお店が協力してくれることになったことに事務局の三人は喜んでいた。
「百鬼夜行でまちぶらするのも楽しそうだ」
赤座GOがアイディアに反対する者などいるはずもなく決定した。あさげーの『旭市を元気にする活動』はこれからも続く。
「スタッフがもっといてくれると助かるよな」
グループの存続と活動の継続に悩みは尽きないが、モンゴルマン斎藤はそれも楽しんでいく。
「どうにかなるさ! はっはっは!」
そして具緒はグッズや画集に向けて活動を始めた。やってみると保管方法などに悩みはつきない。それを一歩づつ進めていき、いつか形になることが楽しみである。
「なあ、百鬼夜行なら、俺が本当の姿で歩いても大丈夫そうじゃないか?」
企画を聞いた洋太は目をキラキラさせた。
具緒が描いた洋太こと『洋旭神』が現れるかもしれない。この夏をお楽しみに。
ボランティアスタッフとしてご協力可能な方は、インスタのあさげーにDM、または千葉銀前にある『地域包括センター』の井上までご連絡ください。
街を一緒に盛り上げる仲間を大募集しています。
7月20日!百鬼夜行やります!
子供たち!集まれぇ♪
☆☆☆
ご協力
あさげー様
具緒様
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