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24 こだわりのダイニングテーブル
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真守はお昼をだいぶ過ぎた時間に最近のお気に入りの店に出かけた。
入口で揺れるオリーブの木が涼しさを演出する。その木の間を抜けてドアを開くとふんだんに木が使われた店内に大きな窓からキラキラと明るい光が差し込んでいた。
平日にも関わらず混雑している昼時を避けて、喧騒が消えかけた時間に行くようにしている真守はお気に入りの窓際カウンター席に座る。そこからは車の往来がよく見えるのだが、忙しなく動く車たちに自分が優雅な時間を過ごしているのだと感じられた。
ここは『カフェロハス』。国道を銚子方面に向かい飯岡バイパスに入って一つ目の信号交差点の左側にある木に囲まれた外観の店。手前と奥に駐車場がある。
スパゲティのランチを注文して、飲み物はお決まりのロハスソーダのライチ味だ。この店ではカレーが人気メニューであるのは知っているが、真守はアルデンテの具合が絶妙で塩味で食べさせてくれるソルトスパゲティを好んでいた。付け添えのサラダに乗ったコーンとオニオンフライの甘みがまたぴったりでとても満足させてくれる。季節によって変わるメニューで、その日真守が注文したのはスモークチキンとレタスのスパゲッティだ。
真守がここを知ったのは偶然だった。
旭市移住サポートセンターの説明を受けた後に仮契約をした不動産を本契約すると家のリフォームを頼むところを探さなくてはならない。真守は旭市の工務店を調べていき、名前だけで決めた。
『ハヤシ工務店 ロハス・イン』
ロハスとは地球環境保護と健康を重視する生活の仕方を心がけることを意味する。
「神が住む家を手掛けるにはもってこいのコンセプトじゃないか」
連絡をすると数日で来てくれることになり、それに合わせて真守も旭市にやってきた。待ち合わせは購入したばかりの家。そこで話をできるわけもなく、やってきたロハス社員は真守に断りを入れてから何枚も写真をとったり、長さを図りメモをとったりする。立ち話をしながら真守の要望をメモしていた。
それをもって話ができるところへ移動することになったのだが、それが『カフェロハス』だった。カフェロハスはハヤシ工務店の社長が経営をしているという。
真守は最初に入店したときから落ち着く雰囲気を感じて気に入ってしまった。奥まった個室のような仕切られた空間に案内されるとそこもまた木に囲まれていて心がゆったりとする。
「我々もミーティングによく使うんです。社長の人柄もありますけど、この雰囲気で活発な意見のやり取りも弾みます」
そう言って椅子を進めたロハス社員は真守の話に真剣に耳を傾けてくれ、とりあえず今日のところは真守の要望だけを聞き、数日後にまた会う約束をした。
約束の日に『カフェロハス』で真守の希望に沿ったいくつかの提案がされ、真守はその中の一つの提案をとても好ましく思い、任せられると判断したのでその他は予算を提案しただけにする。
何度も足を運び、大工とも話をし、着々と出来ていく我が家にとても満足していた。
その家に水萌里を初めて連れて行った時にはさすがの真守も緊張した。だが、水萌里の一言でこれまでの努力が昇華したのだった。
「うわあ! このダイニングルーム、すっごくいいわね!」
真守が一番こだわった場所を水萌里が喜んでくれたのだ。
掃き出し窓があるダイニングルームには大きめのダイニングテーブル、窓と反対側の壁には深めのスタディテーブル。スタディテーブルには真守の仕事道具である三画面のパソコンがすでにセットされていた。
「でも、椅子が三脚しかないわ。真守さんがお仕事する椅子はどうするの? もう購入したの?」
「こうするんだ」
真守はパソコンから一番近い椅子をクルリと向きを変えてパソコンの前にセッティングするとそこに腰掛けた。
「この部屋が俺の仕事場であり、リラックスルームでもあるんだ。椅子がいくつもあったって無駄だろう? どちらにでも使えるように高さを調節してもらって、座面もいいものにしているんだよ」
水萌里にかっこよく見られたい真守はそれがロハス社員からの提案だったとは言わない。
「そんなことが可能なの?」
「大工の腕に自信のある工務店なんだろうね。水萌里が使うキッチンカウンターも同じ高さにしたよ」
水萌里はキッチンの脇に付けれた跳ね上げ式カウンターを開いて椅子を運んだ。
「本当ね。これなら長時間作業するものも楽だわ。椅子が少ないから掃除も楽そうね」
にこにこしながらあっちに座りこっちに座りとしている水萌里に真守も笑顔を零した。
こうしてカフェロハスを知った真守は仕事に根をつめてしまった時などにふらりと立ち寄るのだった。
いつものように外を見ていたり、ノートパソコンを眺めたりして小一時間過ごし立ち上がる。車に乗りこもうとした時、後ろから声がかかった。
「いた!」
真守が振り返るとそこには自転車にまたがった洋太がいた。
☆☆☆
ご協力
カフェロハス様
ハヤシ工務店様
十三話と十五話の真守の動きに違和感があった人は読み込み派!!www
入口で揺れるオリーブの木が涼しさを演出する。その木の間を抜けてドアを開くとふんだんに木が使われた店内に大きな窓からキラキラと明るい光が差し込んでいた。
平日にも関わらず混雑している昼時を避けて、喧騒が消えかけた時間に行くようにしている真守はお気に入りの窓際カウンター席に座る。そこからは車の往来がよく見えるのだが、忙しなく動く車たちに自分が優雅な時間を過ごしているのだと感じられた。
ここは『カフェロハス』。国道を銚子方面に向かい飯岡バイパスに入って一つ目の信号交差点の左側にある木に囲まれた外観の店。手前と奥に駐車場がある。
スパゲティのランチを注文して、飲み物はお決まりのロハスソーダのライチ味だ。この店ではカレーが人気メニューであるのは知っているが、真守はアルデンテの具合が絶妙で塩味で食べさせてくれるソルトスパゲティを好んでいた。付け添えのサラダに乗ったコーンとオニオンフライの甘みがまたぴったりでとても満足させてくれる。季節によって変わるメニューで、その日真守が注文したのはスモークチキンとレタスのスパゲッティだ。
真守がここを知ったのは偶然だった。
旭市移住サポートセンターの説明を受けた後に仮契約をした不動産を本契約すると家のリフォームを頼むところを探さなくてはならない。真守は旭市の工務店を調べていき、名前だけで決めた。
『ハヤシ工務店 ロハス・イン』
ロハスとは地球環境保護と健康を重視する生活の仕方を心がけることを意味する。
「神が住む家を手掛けるにはもってこいのコンセプトじゃないか」
連絡をすると数日で来てくれることになり、それに合わせて真守も旭市にやってきた。待ち合わせは購入したばかりの家。そこで話をできるわけもなく、やってきたロハス社員は真守に断りを入れてから何枚も写真をとったり、長さを図りメモをとったりする。立ち話をしながら真守の要望をメモしていた。
それをもって話ができるところへ移動することになったのだが、それが『カフェロハス』だった。カフェロハスはハヤシ工務店の社長が経営をしているという。
真守は最初に入店したときから落ち着く雰囲気を感じて気に入ってしまった。奥まった個室のような仕切られた空間に案内されるとそこもまた木に囲まれていて心がゆったりとする。
「我々もミーティングによく使うんです。社長の人柄もありますけど、この雰囲気で活発な意見のやり取りも弾みます」
そう言って椅子を進めたロハス社員は真守の話に真剣に耳を傾けてくれ、とりあえず今日のところは真守の要望だけを聞き、数日後にまた会う約束をした。
約束の日に『カフェロハス』で真守の希望に沿ったいくつかの提案がされ、真守はその中の一つの提案をとても好ましく思い、任せられると判断したのでその他は予算を提案しただけにする。
何度も足を運び、大工とも話をし、着々と出来ていく我が家にとても満足していた。
その家に水萌里を初めて連れて行った時にはさすがの真守も緊張した。だが、水萌里の一言でこれまでの努力が昇華したのだった。
「うわあ! このダイニングルーム、すっごくいいわね!」
真守が一番こだわった場所を水萌里が喜んでくれたのだ。
掃き出し窓があるダイニングルームには大きめのダイニングテーブル、窓と反対側の壁には深めのスタディテーブル。スタディテーブルには真守の仕事道具である三画面のパソコンがすでにセットされていた。
「でも、椅子が三脚しかないわ。真守さんがお仕事する椅子はどうするの? もう購入したの?」
「こうするんだ」
真守はパソコンから一番近い椅子をクルリと向きを変えてパソコンの前にセッティングするとそこに腰掛けた。
「この部屋が俺の仕事場であり、リラックスルームでもあるんだ。椅子がいくつもあったって無駄だろう? どちらにでも使えるように高さを調節してもらって、座面もいいものにしているんだよ」
水萌里にかっこよく見られたい真守はそれがロハス社員からの提案だったとは言わない。
「そんなことが可能なの?」
「大工の腕に自信のある工務店なんだろうね。水萌里が使うキッチンカウンターも同じ高さにしたよ」
水萌里はキッチンの脇に付けれた跳ね上げ式カウンターを開いて椅子を運んだ。
「本当ね。これなら長時間作業するものも楽だわ。椅子が少ないから掃除も楽そうね」
にこにこしながらあっちに座りこっちに座りとしている水萌里に真守も笑顔を零した。
こうしてカフェロハスを知った真守は仕事に根をつめてしまった時などにふらりと立ち寄るのだった。
いつものように外を見ていたり、ノートパソコンを眺めたりして小一時間過ごし立ち上がる。車に乗りこもうとした時、後ろから声がかかった。
「いた!」
真守が振り返るとそこには自転車にまたがった洋太がいた。
☆☆☆
ご協力
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