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23 ふるさと納税返礼品
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ある夜、自慢のダイニングテーブルで、真守は軽く炙ったマーガレットポーク焼豚をツマミに、いつもの『石井ファーム』のミニトマトジュースを使ったブラッディーマリーを飲みながら、テレビを見ていた。画面にはコンビ芸人アンタッチャブルが司会の番組が流れてる。
マーガレットポークはチバザポークになっていて市内の品評会で一位をとったこともある銘柄豚である。旭市は全国で二位という豚肉生産高を誇っており、豚肉産業は大変に盛んだ。
真守が見ているテレビ番組『がむしゃらグルメ団』は二組のタレントや芸人が派遣され十以上を食べてそれぞれの一位を決め、それを会場の百人で実食投票し一位を決めようというものだった。
餃子対決が始まり、宮崎市と宇都宮市の戦いの火ぶたが切って落とされた。地元民五百人の投票で決まった十数件というだけあってどれも美味しそうだ。
真守は一位に選ばれた手羽餃子を見てゴクリとつばを飲み込む。
「うわぁ、美味そう! え? 取り寄せ半年待ち? さすがだぁ」
そして次はふるさと納税返礼品対決だった。アパート一室のようなセットの二部屋が用意され、芸人二組が東西に分かれてそれぞれの一位を決めていく趣旨である。ふるさと納税返礼品は食べ物だけではないが、この番組はグルメ対決だ。
ふるさと納税返礼品は令和五年十月からルールが厳格化されることになった。返礼品は納税額の五割以下という決まりはこれまで様々な抜け道がありそれを越えてしまうものが多発していたが、それでは地方自治体にふるさと納税してもらう意味がないということで、五割以下の厳格化。また、その地方にふるさと納税する意味合いを強めるため熟成肉と精米は同都道府県のものに限られることになった。
そのような改正を受けてかどうかは定かではないが、より確実に美味いものをふるさと納税返礼品に求める視聴者に向けての番組だ。
東西各二十四品の試食がスタートする。玄関チャイムがなり外へ行くと足元に置き宅配がされている。
「そこはこだわらなくても、あははは」
テレビに一人でツッコむ真守。一つ一つ届いては芸人がそれを食べ、星ランク付けしていくシステムで、西はモグラライダー、東はタイムマシーン三号がジャッジする。
霜降りの牛肉や大きなうなぎ、高級果物やご当地スイーツ。各都道府県を代表してさまざまなものが届くと、一品一品、星五か星四かを決めながら食べ進める。
「肉やハンバーグが多いな。確かにご当地牛肉なんてなかなか食べられない。自分へのご褒美感覚なんだな。
とはいえ、返礼品って全国で七十万品もあるんだから、これって都道府県代表になるだけでも美味いってことだよな」
真守はメモ帳を取り出して食べたいと思ったものを書いていった。そして、画面を見て驚き大きな声を出した。
「え? え? おーーい! 二人共ちょっと来てくれぇ!」
水萌里は何事かとスリッパの音をパタパタとさせて出てきて、洋太は大きな欠伸しながらダイニングテーブルに座った。
「なんだよ、オヤジ。一人酒がさみしいのか?」
「それはそうなんだけどさ……って! 今は違うっ!」
真守はその番組の趣旨を手短に説明する。
「でな、千葉県代表が旭市でさっ! 『九十九里産の大粒活はまぐり』なんだよっ!」
「へぇ!」
「それはすごいわね」
二人も感心してテレビを見始めた。
芸人オカリナがホットプレートで酒蒸しにしたはまぐりをそのままかぶりつくと、タイムマシーン三号の関もかぶりついた。「旨味すげえ! 旨味に関してはNo.1かも」と感激している。
「美味しそうね!」
「食べたいな」
「どこで食えるんだ?」
三人はテレビにさらに食い入る。「全員一致で星五だ」とナレーションされると三人はパチパチと手を叩いた。
「マーガレットポーク焼豚もふるさと納税返礼品だけど、肉とか多かったからさぁ。インパクトを考えると千葉県担当した人は優秀だよ」
「飯岡メロンもいいけど、シーズンがあるから」
「『石井ファーム』のミニトマトジュースは返礼品に選ばれたばかりだから番組の候補には間に合わなかったかもね」
そして、東は他県からみなみマグロも出てきて星五が七つほどになり、タイムマシーン三号がそこから一つを選んだ。
画面はアンタッチャブルに戻りゲストの前に選ばれた東西のグルメ一つが銀の丸い蓋クローシュに隠されて運ばれる。
「では、まず東から! せーの、オープン」
アンタッチャブル柴田の掛け声で開かれたクローシュの中に黒い丼が見えてCM入り。
「ああ、残念。マグロ丼ね」
「牛焼き肉ライスかもしれないよ」
「でも、千葉県内一位ってスゴイことだぞ」
三人が満足したように頷いているとCMがあける。柴田の掛け声から始まる。
アップ画面になって思わず三人は立ち上がった。
「はまぐりぃ!」
柴田の声に真守がブルリと震えた。
「鳥肌立った……」
「すげぇ……」
「とにかく、落ち着きましょう……」
そういう水萌里の声も震えている。
対する西は『京都の西京味噌焼きホルモン』だ。百人による実食の順番はくじ引きで決められていて、ホルモンからだった。
「先にそっちだと負けたな」
「そうだな。味のパンチで負けちまうな」
と言いながらもウキウキドキドキする三人は前のめりだ。
柴田の司会進行で番組が進み、最終発表になるとドラムロールが流れる。
「結果はこちら!」
画面がパッとかわり百人アンケートの結果が出た。
「35対65! ということで最も美味しいふるさと納税グルメ決定でーす!」
三人はスタンディングオベーション状態となりテレビに向かい拍手を送っていた。
ということで、旭市のはまぐりが七十万品の一位になりました。素晴らしい!
旭市在住の作者はふるさと納税返礼品としてはまぐりゲットはできないので、飯岡の魚屋さんに買いに行ってきます!
☆☆☆
ご協力
がむしゃらグルメ団様
(掲載許可は受けておりませんが、テレビだから大丈夫かな?)
マーガレットポークはチバザポークになっていて市内の品評会で一位をとったこともある銘柄豚である。旭市は全国で二位という豚肉生産高を誇っており、豚肉産業は大変に盛んだ。
真守が見ているテレビ番組『がむしゃらグルメ団』は二組のタレントや芸人が派遣され十以上を食べてそれぞれの一位を決め、それを会場の百人で実食投票し一位を決めようというものだった。
餃子対決が始まり、宮崎市と宇都宮市の戦いの火ぶたが切って落とされた。地元民五百人の投票で決まった十数件というだけあってどれも美味しそうだ。
真守は一位に選ばれた手羽餃子を見てゴクリとつばを飲み込む。
「うわぁ、美味そう! え? 取り寄せ半年待ち? さすがだぁ」
そして次はふるさと納税返礼品対決だった。アパート一室のようなセットの二部屋が用意され、芸人二組が東西に分かれてそれぞれの一位を決めていく趣旨である。ふるさと納税返礼品は食べ物だけではないが、この番組はグルメ対決だ。
ふるさと納税返礼品は令和五年十月からルールが厳格化されることになった。返礼品は納税額の五割以下という決まりはこれまで様々な抜け道がありそれを越えてしまうものが多発していたが、それでは地方自治体にふるさと納税してもらう意味がないということで、五割以下の厳格化。また、その地方にふるさと納税する意味合いを強めるため熟成肉と精米は同都道府県のものに限られることになった。
そのような改正を受けてかどうかは定かではないが、より確実に美味いものをふるさと納税返礼品に求める視聴者に向けての番組だ。
東西各二十四品の試食がスタートする。玄関チャイムがなり外へ行くと足元に置き宅配がされている。
「そこはこだわらなくても、あははは」
テレビに一人でツッコむ真守。一つ一つ届いては芸人がそれを食べ、星ランク付けしていくシステムで、西はモグラライダー、東はタイムマシーン三号がジャッジする。
霜降りの牛肉や大きなうなぎ、高級果物やご当地スイーツ。各都道府県を代表してさまざまなものが届くと、一品一品、星五か星四かを決めながら食べ進める。
「肉やハンバーグが多いな。確かにご当地牛肉なんてなかなか食べられない。自分へのご褒美感覚なんだな。
とはいえ、返礼品って全国で七十万品もあるんだから、これって都道府県代表になるだけでも美味いってことだよな」
真守はメモ帳を取り出して食べたいと思ったものを書いていった。そして、画面を見て驚き大きな声を出した。
「え? え? おーーい! 二人共ちょっと来てくれぇ!」
水萌里は何事かとスリッパの音をパタパタとさせて出てきて、洋太は大きな欠伸しながらダイニングテーブルに座った。
「なんだよ、オヤジ。一人酒がさみしいのか?」
「それはそうなんだけどさ……って! 今は違うっ!」
真守はその番組の趣旨を手短に説明する。
「でな、千葉県代表が旭市でさっ! 『九十九里産の大粒活はまぐり』なんだよっ!」
「へぇ!」
「それはすごいわね」
二人も感心してテレビを見始めた。
芸人オカリナがホットプレートで酒蒸しにしたはまぐりをそのままかぶりつくと、タイムマシーン三号の関もかぶりついた。「旨味すげえ! 旨味に関してはNo.1かも」と感激している。
「美味しそうね!」
「食べたいな」
「どこで食えるんだ?」
三人はテレビにさらに食い入る。「全員一致で星五だ」とナレーションされると三人はパチパチと手を叩いた。
「マーガレットポーク焼豚もふるさと納税返礼品だけど、肉とか多かったからさぁ。インパクトを考えると千葉県担当した人は優秀だよ」
「飯岡メロンもいいけど、シーズンがあるから」
「『石井ファーム』のミニトマトジュースは返礼品に選ばれたばかりだから番組の候補には間に合わなかったかもね」
そして、東は他県からみなみマグロも出てきて星五が七つほどになり、タイムマシーン三号がそこから一つを選んだ。
画面はアンタッチャブルに戻りゲストの前に選ばれた東西のグルメ一つが銀の丸い蓋クローシュに隠されて運ばれる。
「では、まず東から! せーの、オープン」
アンタッチャブル柴田の掛け声で開かれたクローシュの中に黒い丼が見えてCM入り。
「ああ、残念。マグロ丼ね」
「牛焼き肉ライスかもしれないよ」
「でも、千葉県内一位ってスゴイことだぞ」
三人が満足したように頷いているとCMがあける。柴田の掛け声から始まる。
アップ画面になって思わず三人は立ち上がった。
「はまぐりぃ!」
柴田の声に真守がブルリと震えた。
「鳥肌立った……」
「すげぇ……」
「とにかく、落ち着きましょう……」
そういう水萌里の声も震えている。
対する西は『京都の西京味噌焼きホルモン』だ。百人による実食の順番はくじ引きで決められていて、ホルモンからだった。
「先にそっちだと負けたな」
「そうだな。味のパンチで負けちまうな」
と言いながらもウキウキドキドキする三人は前のめりだ。
柴田の司会進行で番組が進み、最終発表になるとドラムロールが流れる。
「結果はこちら!」
画面がパッとかわり百人アンケートの結果が出た。
「35対65! ということで最も美味しいふるさと納税グルメ決定でーす!」
三人はスタンディングオベーション状態となりテレビに向かい拍手を送っていた。
ということで、旭市のはまぐりが七十万品の一位になりました。素晴らしい!
旭市在住の作者はふるさと納税返礼品としてはまぐりゲットはできないので、飯岡の魚屋さんに買いに行ってきます!
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