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3 隣国からの留学生
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クラスのメンバーに変化のないまま、3学年になった。2学年終了時、ベルティナは学年1位であったし、セリナージェは3位であった。2位は、ランレーリオ・デラセーガ公爵子息だ。彼の父は、現宰相であり、宰相家の長男である彼も宰相を目指しているという噂だ。
「ベルティナ、どんなふうに勉強してるんだ?なぜ、僕は君を抜けないんだ?」
ランレーリオは、笑顔で、朝1番にベルティナに質問してきた。
「科目によっては、あなたが上でしょう。私もうかうかしていられないわ。あなたのおかげで、勉強がはかどっているわ」
「そうか、なら僕も努力していくだけだな。ハハハ」
気さくなイイヤツだった。
そんなベルティナたちのクラスに、隣国から留学生がやってきた。なんと、ベルティナたちが春休みを一緒に過ごした あの3人だった。ベルティナもセリナージェも開いた口が塞がらない。イルミネがそれを見て笑っている。
3人は、クレメンティ・ガットゥーゾ公爵令息、イルミネ・マーディア伯爵令息、エリオ・パッセラ子爵令息だと名乗った。
3人の席を決めることになった。
「先生、実は、セリナ嬢とベルティナ嬢とは顔見知りでして、知り合いだといろいろと聞きやすいのですが、彼女たちの近くではダメでしょうか?」
クレメンティの発言に、先生はすぐに了承し、ベルティナたちの前の席が空けられた。今までいた男子生徒たちは、1番後ろの席になった。
「ね、会えたでしょっ!」
エリオがイルミネに鼻高々に自慢した。
「エリオの感には負けました」
ベルティナとセリナージェは、まだ口が塞がらない。
休み時間、まだみんなは3人を遠回しに見ている。ベルティナの前の席のクレメンティが振り向く。
「まさか、同じクラスとまでは、予想していなかったよ」
セリナージェの前の席のエリオも後ろを向いている。
「そうだね。会えるだろうなとは思っていたけどね」
クレメンティとエリオの机の間に、イルミネが立った。
「二人とも、すごい顔だったよ」
イルミネは、そう言って、また笑い出した。
「だって、こんなことってある?」
セリナージェは、少し釣り上がっているクリクリな瞳をさらに見開いて詰問した。
「あなたたちが、平民でないことはわかっていたけど、旅行者だって思っていたのよ。本当にびっくりだわ。はぁ」
ベルティナは、小さなため息をついた。
5人は改めて自己紹介した。クレメンティは公爵家長男、イルミネは伯爵家次男、エリオは子爵家三男だそうだ。セリナージェも『セリナ』ではないことを伝えたし、ベルティナも男爵家であることを伝えた。
3人は揃いも揃って、美男子であった。噂が、噂を呼び、休み時間になるたびに、観客が増えていった。そして、3人は、昼休みには、女の子たちに囲まれていた。
ベルティナとセリナージェは、しかたなく、間に入った。
「ごめんね。今日は、学生食堂に案内するように先生から指示されてるの。どいてもらってもいいかしら」
ベルティナは女の子たちに多少睨まれても気にせず、正当に聞こえそうな言い訳をして、3人を連れ出すことにした。
その言葉に、イルミネが反応してくれて、壁になり、盾になりしてくれる。なんとか5人は廊下に出た。歩く道すがらも、注目されている。
「ベルティナ嬢、セリナージェ嬢、助かったよ」
エリオが丁寧に礼を言った。
「ホントに。昼飯抜きかと思っちゃった」
「君たちは大丈夫なのか?」
「先生のせいにしたから、大丈夫でしょう。それより、エリオ、嬢はやめてよ。今更だわ。
それともわたくしに侯爵令嬢言葉にしていただきたいということかしら?」
クレメンティの心配に軽く答えたセリナージェは、どうやら、エリオの口調が気に入らなかったようだ。少し鼻を上げて『侯爵令嬢言葉』を使うのだが、高慢に見せてるにしては、可愛らしい。
「プッハハハ、セリナ、侯爵令嬢言葉、うまいもんじゃないか。でも、確かに、今更だよね」
イルミネの明るいノリに、場も明るくなる。
「セリナがいいと言うなら、それでいいんじゃないか?」
男の子3人の中で1番高位だというクレメンティが許可したことで、春休みのまま愛称や敬称なしで呼びあうことになった。
ベルティナは、なぜかあまり話さなかった。実はこの3人にまだ違和感を感じていたのだ。それを、ずっと考えていた。
「ベルティナもそれでいい?」
エリオが心ここにあらずのベルティナに確認する。
「え?あ、何?」
「ベルティナ、今からレムをクレメンティ様って呼べる?」
セリナージェが、お茶目っぽくベルティナに聞いた。
「それは、まあ、できるけど」
「ハハハ、真面目なベルティナらしいね。でも、俺たちはそれを望んでないからさっ。ね、エリオ」
ベルティナの真面目さも、イルミネにかかれば笑いの種だ。
「そうだな。そうしてくれると嬉しいな」
ベルティナは、びっくりしてセリナージェを見たが、セリナージェが頷いているので、ベルティナは反対することはしなかった。女の子2人の中では、セリナージェが高位なのだから。まあ、2人はそんなことは気にしていないが。
〰️ 〰️ 〰️
ベルティナとセリナージェは、いつものように寮の夕食の後、セリナージェの部屋にいた。
「ねぇ、なんかあの3人、違和感ない?」
ベルティナは、朝からずっと考えていることをセリナージェに相談してみた。
「えー?別に何も感じないけど。王都散策のときから、あんなだったでしょう」
「そうね。それはかわらないと私も思うわ」
ベルティナも春休みを思い返してみた。確かに3人の雰囲気は同じままなのだ。
「それより、これからどうする?昼休み」
「しばらくは付き合ってあげないと可哀想よ」
「そうね。じゃあ、そうしましょう」
だが、次の日には、二人は開放されることになる。
〰️ 〰️ 〰️
翌日も、廊下には男女問わず、見物人が溢れていた。イルミネが手を振る。廊下で黄色い悲鳴が響いた。
「イルやめろって。お前だけの話じゃないんだぞ」
クレメンティが、イルミネの手を叩いた。
「そうだ。セリナやベルティナに迷惑になるかもしれないから、やめておけ」
エリオもイルミネに釘を刺す。
「私たちは特に問題はないわよ」
マイペースのセリナージェは、全く気にしていない。
「そうね。今のところは」
ベルティナは、セリナージェに何もなければいいと思っている。
そう話しているところへ、ロゼリンダ、フィオレラ、ジョミーナが来た。
「クレメンティ様、本日からお昼は、わたくしどもがご案内さしあげることになりましたの。よろしくお願いいたしますわ」
ロゼリンダがクレメンティに話しかけているだけなのに、フィオレラとジョミーナは、ベルティナを見てニヤニヤしている。決してセリナージェを見ることはしない。
「いや、もう場所はわかっていますし、問題はありませんよ。みなさんは、みなさんでゆっくりなさってください」
クレメンティがやんわりと断るも、ロゼリンダは引かない。
「学園長に頼まれましたので、そういうわけには参りませんの。テーブルも予約してありますので、ゆっくりは、できますわ」
「え?予約なんてできましたっけ?」
「セリナージェ様、お言葉」
セリナージェがいつもの調子でロゼリンダにツッコミを入れたので、ベルティナは慌ててセリナージェを注意する。
「まー!ベルティナ様、侯爵令嬢であるセリナージェ様に、同等な言葉遣いですの?常識を疑われますよ」
フィオリアは、ベルティナがセリナージェに『様』を付けたくらいでは、許してくれないらしい。
「申し訳ありません」
「ちょっと、私、わたくしのお友達に文句は言わないでちょうだい。言わないでくださるかしら!」
謝るベルティナをセリナージェは一生懸命に庇おうとした。
「その辺で、おやめなさい」
ロゼリンダの顔は、フィオレラとジョミーナに向かっていたが、本音はどちらに言ったのかはわからない。
「クレメンティ様とにかく、そういうことでございますので、後ほどお迎えに上がりますわ」
ロゼリンダがそう言うと、クレメンティに返事を聞かずに、3人は席へと戻った。
「ねぇ、レムだけ行けばいいんでしょう?」
イルミネが小さい声で意見した。クレメンティは、思いっきり渋面をした。
「イル、意地悪はよせ。今日のところはしかたあるまい。放課後にでも、教師に相談することにしよう」
「はーい」
イルミネも意地悪には自覚があるようで、素直に返事をした。
「申し訳ありません。それしかないようですね」
3人のやり取りに、ベルティナは、またしても違和感を感じた。答えがわからなくて、ムズムズするベルティナだった。
「ベルティナ、どんなふうに勉強してるんだ?なぜ、僕は君を抜けないんだ?」
ランレーリオは、笑顔で、朝1番にベルティナに質問してきた。
「科目によっては、あなたが上でしょう。私もうかうかしていられないわ。あなたのおかげで、勉強がはかどっているわ」
「そうか、なら僕も努力していくだけだな。ハハハ」
気さくなイイヤツだった。
そんなベルティナたちのクラスに、隣国から留学生がやってきた。なんと、ベルティナたちが春休みを一緒に過ごした あの3人だった。ベルティナもセリナージェも開いた口が塞がらない。イルミネがそれを見て笑っている。
3人は、クレメンティ・ガットゥーゾ公爵令息、イルミネ・マーディア伯爵令息、エリオ・パッセラ子爵令息だと名乗った。
3人の席を決めることになった。
「先生、実は、セリナ嬢とベルティナ嬢とは顔見知りでして、知り合いだといろいろと聞きやすいのですが、彼女たちの近くではダメでしょうか?」
クレメンティの発言に、先生はすぐに了承し、ベルティナたちの前の席が空けられた。今までいた男子生徒たちは、1番後ろの席になった。
「ね、会えたでしょっ!」
エリオがイルミネに鼻高々に自慢した。
「エリオの感には負けました」
ベルティナとセリナージェは、まだ口が塞がらない。
休み時間、まだみんなは3人を遠回しに見ている。ベルティナの前の席のクレメンティが振り向く。
「まさか、同じクラスとまでは、予想していなかったよ」
セリナージェの前の席のエリオも後ろを向いている。
「そうだね。会えるだろうなとは思っていたけどね」
クレメンティとエリオの机の間に、イルミネが立った。
「二人とも、すごい顔だったよ」
イルミネは、そう言って、また笑い出した。
「だって、こんなことってある?」
セリナージェは、少し釣り上がっているクリクリな瞳をさらに見開いて詰問した。
「あなたたちが、平民でないことはわかっていたけど、旅行者だって思っていたのよ。本当にびっくりだわ。はぁ」
ベルティナは、小さなため息をついた。
5人は改めて自己紹介した。クレメンティは公爵家長男、イルミネは伯爵家次男、エリオは子爵家三男だそうだ。セリナージェも『セリナ』ではないことを伝えたし、ベルティナも男爵家であることを伝えた。
3人は揃いも揃って、美男子であった。噂が、噂を呼び、休み時間になるたびに、観客が増えていった。そして、3人は、昼休みには、女の子たちに囲まれていた。
ベルティナとセリナージェは、しかたなく、間に入った。
「ごめんね。今日は、学生食堂に案内するように先生から指示されてるの。どいてもらってもいいかしら」
ベルティナは女の子たちに多少睨まれても気にせず、正当に聞こえそうな言い訳をして、3人を連れ出すことにした。
その言葉に、イルミネが反応してくれて、壁になり、盾になりしてくれる。なんとか5人は廊下に出た。歩く道すがらも、注目されている。
「ベルティナ嬢、セリナージェ嬢、助かったよ」
エリオが丁寧に礼を言った。
「ホントに。昼飯抜きかと思っちゃった」
「君たちは大丈夫なのか?」
「先生のせいにしたから、大丈夫でしょう。それより、エリオ、嬢はやめてよ。今更だわ。
それともわたくしに侯爵令嬢言葉にしていただきたいということかしら?」
クレメンティの心配に軽く答えたセリナージェは、どうやら、エリオの口調が気に入らなかったようだ。少し鼻を上げて『侯爵令嬢言葉』を使うのだが、高慢に見せてるにしては、可愛らしい。
「プッハハハ、セリナ、侯爵令嬢言葉、うまいもんじゃないか。でも、確かに、今更だよね」
イルミネの明るいノリに、場も明るくなる。
「セリナがいいと言うなら、それでいいんじゃないか?」
男の子3人の中で1番高位だというクレメンティが許可したことで、春休みのまま愛称や敬称なしで呼びあうことになった。
ベルティナは、なぜかあまり話さなかった。実はこの3人にまだ違和感を感じていたのだ。それを、ずっと考えていた。
「ベルティナもそれでいい?」
エリオが心ここにあらずのベルティナに確認する。
「え?あ、何?」
「ベルティナ、今からレムをクレメンティ様って呼べる?」
セリナージェが、お茶目っぽくベルティナに聞いた。
「それは、まあ、できるけど」
「ハハハ、真面目なベルティナらしいね。でも、俺たちはそれを望んでないからさっ。ね、エリオ」
ベルティナの真面目さも、イルミネにかかれば笑いの種だ。
「そうだな。そうしてくれると嬉しいな」
ベルティナは、びっくりしてセリナージェを見たが、セリナージェが頷いているので、ベルティナは反対することはしなかった。女の子2人の中では、セリナージェが高位なのだから。まあ、2人はそんなことは気にしていないが。
〰️ 〰️ 〰️
ベルティナとセリナージェは、いつものように寮の夕食の後、セリナージェの部屋にいた。
「ねぇ、なんかあの3人、違和感ない?」
ベルティナは、朝からずっと考えていることをセリナージェに相談してみた。
「えー?別に何も感じないけど。王都散策のときから、あんなだったでしょう」
「そうね。それはかわらないと私も思うわ」
ベルティナも春休みを思い返してみた。確かに3人の雰囲気は同じままなのだ。
「それより、これからどうする?昼休み」
「しばらくは付き合ってあげないと可哀想よ」
「そうね。じゃあ、そうしましょう」
だが、次の日には、二人は開放されることになる。
〰️ 〰️ 〰️
翌日も、廊下には男女問わず、見物人が溢れていた。イルミネが手を振る。廊下で黄色い悲鳴が響いた。
「イルやめろって。お前だけの話じゃないんだぞ」
クレメンティが、イルミネの手を叩いた。
「そうだ。セリナやベルティナに迷惑になるかもしれないから、やめておけ」
エリオもイルミネに釘を刺す。
「私たちは特に問題はないわよ」
マイペースのセリナージェは、全く気にしていない。
「そうね。今のところは」
ベルティナは、セリナージェに何もなければいいと思っている。
そう話しているところへ、ロゼリンダ、フィオレラ、ジョミーナが来た。
「クレメンティ様、本日からお昼は、わたくしどもがご案内さしあげることになりましたの。よろしくお願いいたしますわ」
ロゼリンダがクレメンティに話しかけているだけなのに、フィオレラとジョミーナは、ベルティナを見てニヤニヤしている。決してセリナージェを見ることはしない。
「いや、もう場所はわかっていますし、問題はありませんよ。みなさんは、みなさんでゆっくりなさってください」
クレメンティがやんわりと断るも、ロゼリンダは引かない。
「学園長に頼まれましたので、そういうわけには参りませんの。テーブルも予約してありますので、ゆっくりは、できますわ」
「え?予約なんてできましたっけ?」
「セリナージェ様、お言葉」
セリナージェがいつもの調子でロゼリンダにツッコミを入れたので、ベルティナは慌ててセリナージェを注意する。
「まー!ベルティナ様、侯爵令嬢であるセリナージェ様に、同等な言葉遣いですの?常識を疑われますよ」
フィオリアは、ベルティナがセリナージェに『様』を付けたくらいでは、許してくれないらしい。
「申し訳ありません」
「ちょっと、私、わたくしのお友達に文句は言わないでちょうだい。言わないでくださるかしら!」
謝るベルティナをセリナージェは一生懸命に庇おうとした。
「その辺で、おやめなさい」
ロゼリンダの顔は、フィオレラとジョミーナに向かっていたが、本音はどちらに言ったのかはわからない。
「クレメンティ様とにかく、そういうことでございますので、後ほどお迎えに上がりますわ」
ロゼリンダがそう言うと、クレメンティに返事を聞かずに、3人は席へと戻った。
「ねぇ、レムだけ行けばいいんでしょう?」
イルミネが小さい声で意見した。クレメンティは、思いっきり渋面をした。
「イル、意地悪はよせ。今日のところはしかたあるまい。放課後にでも、教師に相談することにしよう」
「はーい」
イルミネも意地悪には自覚があるようで、素直に返事をした。
「申し訳ありません。それしかないようですね」
3人のやり取りに、ベルティナは、またしても違和感を感じた。答えがわからなくて、ムズムズするベルティナだった。
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