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第一章 騎士団部隊長の視察
9 魔法師団の苦悩
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ヴィオリアの卒業パーティーから、早2ヶ月、カザシュタントの元に、突然の面会願いが届いた。
オーリオダム・サンドエク、魔法師団団長の次男だ。あの婚約白紙事件で、被害にあったヴィオリアの友人の1人、エマローズさんの幼なじみの男性だ。確か、卒業パーティーでは、カザシュタントと辺境伯の魔法士について少し話したはずだ。
とにかく、ヴィオリアの関係者なので、カザシュタントは、面会に応じる。
まだ、騎士団の引き継ぎの最中なので、部隊長の執務室は、カザシュタントと後任の者とで、使っている。カザシュタントは、後任の者に許可を得て、オーリオダムを執務室のソファーへ通す。
「悪いな、男所帯だから茶もでない。今、側近のやつらも出払っててな。」
「気にしないでください。突然でしたのに、こうして会ってくれるだけで充分です。」
「オーリオダム君は、あれからどうなったんだ?」
オーリオダムとエマローズは、卒業パーティーの時はまだ『幼なじみ』という関係だったはずである。鈍感なカザシュタントでさえ、あの時の雰囲気は、充分に恋人であったような気がしていた。
「オーリーでいいですよ。年下ですし、敬称も止めてください。」
「わかった。俺のこともカザンでいいからな。」
「はい、ありがとうございます。カザンさんは、あの時すでに婚約してたんですよね。僕は9年振りの再会だったんですけど、先日プロポーズして、了承をもらいました。」
「そうかあ!おめでとう、オーリー!それなら、俺たちの結婚式には、エマローズさんと来てくれよなっ。」
「はい、喜んでっ!」
「で、今日はどうした?プロポーズの報告じゃないだろ?」
「はい。先日、卒業パーティーで少しだけ伺った件で。カザンさんは、マーペリア辺境伯領軍に、魔法士が少ないって言ってましたよね?」
「ああ、俺もガッツリ辺境伯への視察をしたのは初めてだったからな、今まで知らなかったんだが。
当地では、それが当たり前だと、思っていてな。問題が表面化せず、王都には上がってこなかったんだ。」
「なるほど。」
「でも、俺たちみたいな余所者が行くと、なんで魔法士使わないんだ?って単純に考えるだろ。それで、発覚したんだよ。今すぐどうにかできることじゃないけどな。」
「なるほど。もし、魔法士をいくらでもどうぞと言われたら、何人くらい欲しいですか?」
「そうだなぁ、辺境伯様にも確認しないと正確な数字はわからんが、マーペリア辺境伯領の森の防衛壁にある砦だけで、辺境伯城を合わせて5つだ。」
「はい。」
オーリオダムは、メモをとっていく。
「各班20名前後で、10班で交代制で回している。つまり、新人抜きで約200名の軍人だな。この中で魔法士は、たったの5人だ。」
「えっ??思っていたより、ひどいですね。」
この世界には、回復魔法、治癒魔法は、存在していない。魔法は、攻撃系か防衛系か、または生活魔法だ。それにしても、少ない。
「だからな、魔獣相手に魔法士とまともに共闘戦闘したことがないやつらばかりなんだ。だから、正直何人必要なのか、わからんな。今の魔法士たちは、主に先制攻撃担当だと聞いている。とはいえ、1砦に1人だからな、魔獣の動きを止められる数などたかが知れている。」
「なるほど。思っていたほど、簡単じゃないかもしれませんね。」
「俺は、去年の視察では、魔法士との討伐に参加していないんだ。たからあくまでも聞いた話と、俺の経験則からの話だ。」
「かえって、考えに固執がなくていいかもしれません。」
「そういう部分は確かにあるな。オーリーは、どう考えていたんだ。」
「僕は単純に、王都の魔法師団から、魔法士を派遣つまり、辺境伯軍へ貸し出せばいいって、考えたんです。」
「なるほど。それは、嬉しい提案だ。」
「でも、戦闘の連携を考えたら、簡単じゃないのかなって。」
「うん、今のところそうだな。でも、練習でもいいから、一緒にやってみないと、連携なんて無理だからな。とりあえずやってみて試行錯誤していくしかないと思うぞ。」
「そうですね、理論だけではわからないですよね。じゃあ、今受け入れられるなら、何人くらいですか?」
「寄宿舎300人ほどの体制のところに、約150名が寄宿舎を使っている。残りは毎年夏に新人研修をやるんだが、それに使っているんだ。だいたい毎年50から100名くらいかな。だから、40名くらいなら、すぐにでも受け入れられる。」
「40名だと、各班5人ですか。」
「まあ、それは、40人が定着すれば、だな。」
「どういうことですか?」
「新人研修でも魔獣討伐研修をやるんだが、聞いてるのと、やるのでは、大きな差があるのさ。去年新人研修に80名ほど来たが、魔獣と戦えなくて、王都戻りになった者が、大体、半分だな。」
「そんなにっ??」
「ああ。オーリーの話では、その魔法士さんたちは実践はほぼなしだろ?やってみたら、実践無理ってやつも出てくる。こればっかりは、本人のせいじゃない。仕方ないんだよ。」
「そういうものなんですね。」
「ああ。とにかく、方法にせよ、個人問題にせよ、やってみなきゃ、わからんってことだ。」
「わかりました。それについても、父と相談してみます。」
「ああ、そうしてくれ。俺の方でも辺境伯様に聞いておくよ。ちょうど、遠距離攻撃について話していたところだったんだ。」
「どういった話ですか?」
「魔法士の代わりほどにはならないが、弓での攻撃が役にたたないかなと検討していたんだ。」
「なるほど、攻撃の面では似ているところはありますね。」
「だが、やはり魔法士の広範囲攻撃は、魅力的だよな。」
「実は僕は魔法研究の方が得意で、戦闘は訓練もしたことがないんですよ。」
「そうか。誰にでも得意不得意はあるさ。オーリーの提案だが、俺としては、例え失敗したとしても、試してみる価値のある話だと思う。楽しみにしているよ。」
「はい。ありがとうございます。期待に沿えるように調整してみます。」
〰️ 〰️ 〰️
ジャンバディ・サンドエク伯爵は、オーリオダムの父親で、魔法師団長である。
オーリオダムの兄ベルトソールは、すでに魔法師団に入団しており、実力は、父ジャンバディを超すと言われている。
ベルトソールは、結婚もし、子供もいる。将来は、もちろん、伯爵位を継ぐ。
ここ数十年戦争もなく、スタンビート〈魔獣暴走〉もここ十数年ない現在、魔法師団の存在意義について、ジャンバディ・サンドエク伯爵は、悩んでいた。魔法師団解散も考えた。それでも、魔法家サンドエク家として、長男は入団させた。
しかし、魔法師団に未来が見えない。そこで、オーリオダムに相談してみたのだ。
オーリオダムは、伯爵邸のジャンバディの執務室へ、提案書を持ってやってきた。
それを、読んだジャンバディは大変驚いた。魔法士を辺境伯軍に派遣するという案であった。これが、可能なら、魔法師団解散どころか、もっと多くの魔法士を採用できる。一族の者ももっと雇える。
「ですが、父上、これはあくまでも机上の話です。カザンさんの話では、実践してみて脱落するものもいるそうです。」
「そうかもしれん。特に、今の魔法師団は、戦闘未経験者ばかりだ。ベルトソードも含めてな。」
「それでも、カザンさんは、やってみなきゃ、わからんって言っていました。」
「そうだな。動かなければ始まらないな。」
オーリオダム・サンドエク、魔法師団団長の次男だ。あの婚約白紙事件で、被害にあったヴィオリアの友人の1人、エマローズさんの幼なじみの男性だ。確か、卒業パーティーでは、カザシュタントと辺境伯の魔法士について少し話したはずだ。
とにかく、ヴィオリアの関係者なので、カザシュタントは、面会に応じる。
まだ、騎士団の引き継ぎの最中なので、部隊長の執務室は、カザシュタントと後任の者とで、使っている。カザシュタントは、後任の者に許可を得て、オーリオダムを執務室のソファーへ通す。
「悪いな、男所帯だから茶もでない。今、側近のやつらも出払っててな。」
「気にしないでください。突然でしたのに、こうして会ってくれるだけで充分です。」
「オーリオダム君は、あれからどうなったんだ?」
オーリオダムとエマローズは、卒業パーティーの時はまだ『幼なじみ』という関係だったはずである。鈍感なカザシュタントでさえ、あの時の雰囲気は、充分に恋人であったような気がしていた。
「オーリーでいいですよ。年下ですし、敬称も止めてください。」
「わかった。俺のこともカザンでいいからな。」
「はい、ありがとうございます。カザンさんは、あの時すでに婚約してたんですよね。僕は9年振りの再会だったんですけど、先日プロポーズして、了承をもらいました。」
「そうかあ!おめでとう、オーリー!それなら、俺たちの結婚式には、エマローズさんと来てくれよなっ。」
「はい、喜んでっ!」
「で、今日はどうした?プロポーズの報告じゃないだろ?」
「はい。先日、卒業パーティーで少しだけ伺った件で。カザンさんは、マーペリア辺境伯領軍に、魔法士が少ないって言ってましたよね?」
「ああ、俺もガッツリ辺境伯への視察をしたのは初めてだったからな、今まで知らなかったんだが。
当地では、それが当たり前だと、思っていてな。問題が表面化せず、王都には上がってこなかったんだ。」
「なるほど。」
「でも、俺たちみたいな余所者が行くと、なんで魔法士使わないんだ?って単純に考えるだろ。それで、発覚したんだよ。今すぐどうにかできることじゃないけどな。」
「なるほど。もし、魔法士をいくらでもどうぞと言われたら、何人くらい欲しいですか?」
「そうだなぁ、辺境伯様にも確認しないと正確な数字はわからんが、マーペリア辺境伯領の森の防衛壁にある砦だけで、辺境伯城を合わせて5つだ。」
「はい。」
オーリオダムは、メモをとっていく。
「各班20名前後で、10班で交代制で回している。つまり、新人抜きで約200名の軍人だな。この中で魔法士は、たったの5人だ。」
「えっ??思っていたより、ひどいですね。」
この世界には、回復魔法、治癒魔法は、存在していない。魔法は、攻撃系か防衛系か、または生活魔法だ。それにしても、少ない。
「だからな、魔獣相手に魔法士とまともに共闘戦闘したことがないやつらばかりなんだ。だから、正直何人必要なのか、わからんな。今の魔法士たちは、主に先制攻撃担当だと聞いている。とはいえ、1砦に1人だからな、魔獣の動きを止められる数などたかが知れている。」
「なるほど。思っていたほど、簡単じゃないかもしれませんね。」
「俺は、去年の視察では、魔法士との討伐に参加していないんだ。たからあくまでも聞いた話と、俺の経験則からの話だ。」
「かえって、考えに固執がなくていいかもしれません。」
「そういう部分は確かにあるな。オーリーは、どう考えていたんだ。」
「僕は単純に、王都の魔法師団から、魔法士を派遣つまり、辺境伯軍へ貸し出せばいいって、考えたんです。」
「なるほど。それは、嬉しい提案だ。」
「でも、戦闘の連携を考えたら、簡単じゃないのかなって。」
「うん、今のところそうだな。でも、練習でもいいから、一緒にやってみないと、連携なんて無理だからな。とりあえずやってみて試行錯誤していくしかないと思うぞ。」
「そうですね、理論だけではわからないですよね。じゃあ、今受け入れられるなら、何人くらいですか?」
「寄宿舎300人ほどの体制のところに、約150名が寄宿舎を使っている。残りは毎年夏に新人研修をやるんだが、それに使っているんだ。だいたい毎年50から100名くらいかな。だから、40名くらいなら、すぐにでも受け入れられる。」
「40名だと、各班5人ですか。」
「まあ、それは、40人が定着すれば、だな。」
「どういうことですか?」
「新人研修でも魔獣討伐研修をやるんだが、聞いてるのと、やるのでは、大きな差があるのさ。去年新人研修に80名ほど来たが、魔獣と戦えなくて、王都戻りになった者が、大体、半分だな。」
「そんなにっ??」
「ああ。オーリーの話では、その魔法士さんたちは実践はほぼなしだろ?やってみたら、実践無理ってやつも出てくる。こればっかりは、本人のせいじゃない。仕方ないんだよ。」
「そういうものなんですね。」
「ああ。とにかく、方法にせよ、個人問題にせよ、やってみなきゃ、わからんってことだ。」
「わかりました。それについても、父と相談してみます。」
「ああ、そうしてくれ。俺の方でも辺境伯様に聞いておくよ。ちょうど、遠距離攻撃について話していたところだったんだ。」
「どういった話ですか?」
「魔法士の代わりほどにはならないが、弓での攻撃が役にたたないかなと検討していたんだ。」
「なるほど、攻撃の面では似ているところはありますね。」
「だが、やはり魔法士の広範囲攻撃は、魅力的だよな。」
「実は僕は魔法研究の方が得意で、戦闘は訓練もしたことがないんですよ。」
「そうか。誰にでも得意不得意はあるさ。オーリーの提案だが、俺としては、例え失敗したとしても、試してみる価値のある話だと思う。楽しみにしているよ。」
「はい。ありがとうございます。期待に沿えるように調整してみます。」
〰️ 〰️ 〰️
ジャンバディ・サンドエク伯爵は、オーリオダムの父親で、魔法師団長である。
オーリオダムの兄ベルトソールは、すでに魔法師団に入団しており、実力は、父ジャンバディを超すと言われている。
ベルトソールは、結婚もし、子供もいる。将来は、もちろん、伯爵位を継ぐ。
ここ数十年戦争もなく、スタンビート〈魔獣暴走〉もここ十数年ない現在、魔法師団の存在意義について、ジャンバディ・サンドエク伯爵は、悩んでいた。魔法師団解散も考えた。それでも、魔法家サンドエク家として、長男は入団させた。
しかし、魔法師団に未来が見えない。そこで、オーリオダムに相談してみたのだ。
オーリオダムは、伯爵邸のジャンバディの執務室へ、提案書を持ってやってきた。
それを、読んだジャンバディは大変驚いた。魔法士を辺境伯軍に派遣するという案であった。これが、可能なら、魔法師団解散どころか、もっと多くの魔法士を採用できる。一族の者ももっと雇える。
「ですが、父上、これはあくまでも机上の話です。カザンさんの話では、実践してみて脱落するものもいるそうです。」
「そうかもしれん。特に、今の魔法師団は、戦闘未経験者ばかりだ。ベルトソードも含めてな。」
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
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