【完結】公爵子息である僕の悪夢は現実になってしまうが愛しい婚約者のためにも全力で拒否します【幼少編】

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
51 / 61

51 側近の実情

しおりを挟む
 兄上が僕の方に膝を向け僕の肩に手を置き一生懸命に誤解なく言おうする。

「ただ、ただな。お前が護衛を増やせと言ったということを誰かが聞いたら歪曲してとる者もいるかもしれないって話だよ」

「兄上。それがどういうことかわからないと言っているのです」

 僕も兄上の必死さは伝わってくるので先程のようには声を荒げたりはしなかったが悲しさが混じり声が震えてしまった。

 困惑した兄上が自分の額を覆う。

「すまん。本当に疑っているわけではいのはわかってくれ。バージルのために外での言動に注意が必要だと言いたいだけなんだ」

 まだ意味はわからないがコクリと頷く。

「さっきも言ったけど第二王子派が第一王子の命を狙っているという噂がある。そして、お前は第二王子と同い年だから第二王子が王太子となればお前は側近となるだろう」

 兄上は諭すように話すが第二王子の側近という聞いたことも考えたこともない話で更に理解できない内容になり目をパチパチさせた。

「そんなっ! 考えたこともありませんよっ? それに側近になったら何なのですか?」

「そうだよな。バージルがそんな考えでないことは家族の私達にはわかる。でもな……側近は外から見たら魅力的な地位だ……」

 兄上は膝の上にひじを置き手を組んで項垂れた。

「魅力的?」

「そうだ。外から見れば、な。王族に関われておいしい思いができるとでも思っているやつは貴族にもまだいる。
バージル。お前は父上が楽をしておいしい仕事をしていると思うか?」

 僕は父上の顔をじっと見た後ブンブンと顔を横に振った。

「父上はいっつも疲れているし急に呼び出されて慌てていることも多いし目の下のクマは消えていたことがないし。それって家族との時間も少ないってことだし。
僕はもっとクララと一緒がいいなって」

 僕の考えていた父上の姿を言ったら父上も膝の上にひじを置き手を組んで項垂れてしまった。

「そ、そうか。私はそんなに働いているのか……。早く陛下には引退していただこう……。もっと家族と一緒にいたいし、な」

 兄上がガバリと顔を上げて父上に縋る。

「父上! 勘弁してください! ブランドンはまだ王太子にもなってないのですよ!
ブランドンのやる気を抑えることがどれだけ大変か! 私たちはまだ学園に入ったばかりだというのに!」

「ほぉ! そうかブランドン殿下はやる気ありなのかっ! うんうん、それなら是非できることからやらせてみよう!」

「とにかくっ! 今はバージルの話ですよっ! 父上!」

 嬉々とする父上とがっくりする兄上を交互に観察する。

『なんだよっ。兄上だって側近は大変だって思っているんじゃないかっ』

「僕はやっぱり側近なんてなりたくないっ! 父上のお仕事をやりたくない僕なんだから尚更護衛を増やせとは言わないでしょう」

「それはな、戦力に自信があり自分に疑いを持たれたないためだと考えるひねくれ者がいるんだよ。たまたまこちらの戦力が上だったけど殺すつもりだったんだろう、とか、な」

 呆れたようにため息をつき説明してくれた兄上にはそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのかもしれない。
 そして、父上を見ると苦笑いをしているので父上にもそのひねくれ者の顔が浮かんでいるのだろう。

「ところで、なぜ、私が帰ってくることがお前のためになるのだ?」

「僕はこの公爵家を継ぎたくないのです。クララと伯爵家を継ぎたいのです。先日もクララとそのように話をしてきました。僕が公爵家のそしてクララが伯爵家のそれぞれ跡継ぎになるのは嫌なんです」

 父上と兄上が目をまんまるにして僕を凝視した。それから吹き出した。

「プッ! ハーハッハ! すごいな、バージルは!」

「ハーハッハ! そうか、クラリッサ嬢のためか。ハハハっ! バージル、大切なものがあるのはよいことだ」

「父上! 兄上! 笑い事ではないです! もちろん、兄上のことも大切ですよ。だから兄上が公爵になってくれて僕が伯爵家に行くことが一番幸せなんです!」

「ハハ。そうか、わかった。でも学園に入れば第二王子と接点ができる。へんな噂には気をつけるのだよ」

 父上が僕の目をまっすぐに見て言った。 

「はい。わかりました」

「で、どうして私に増員を指摘できたんだ?」

 僕は父上と兄上にはきちんと話すことにした。

「信じなくてもいいので、笑わないでくださいね」

 僕は見た悪夢についてとダリアナ嬢に言われたことについてを二人に説明した。ダリアナ嬢については護衛もそれを見聞きしていることも。

「そうか、他に悪夢は見ているのか?」

「いえ、兄上が帰って来なかったときの夢なので続かないと思います」

「私たちはお前を信じるよ。でも周りの言葉に惑わされるな」

 兄上が僕の肩に手を乗せて真剣な眼差しをぶつけてきたから素直に首肯する。

「話はわかった。バージル。もし、またダリアナ嬢の夢を見たら教えてくれ」

「はい。そうします」

「バージルはもうさがっていいよ。アレク、父上の報告を頼む」

 父上と兄上はお祖父様のご様態のお話をするらしく僕は一人で執務室を出た。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

処理中です...