【完結】公爵子息である僕の悪夢は現実になってしまうが愛しい婚約者のためにも全力で拒否します【幼少編】

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
54 / 61

54 エイダの離婚

しおりを挟む
 私は頭を掻きむしってイライラを伝えた。

「もう! 話ができる人を呼んでよ」

「フンッ! お前とまともな話ができるやつがいるとは思えないな」

 鼻で笑った護衛さんは立ち上がって扉の外にいた人を呼ぶ。

「連れていけ」

 外にいた人が私の肘を掴んで引っ張ると私の頭に変な部屋に連れていかれることが浮かんだ。
 
「変な部屋に閉じ込めるつもりねっ! 今、この人から浮かんできたんだからっ!」

「そんなことはこの状況を見ればわかるだろうが。
あ、それからな。アレクシス様も王子殿下もすこぶるお元気だ。ボブバージル様がお前に会いにくることは絶対にない」

 私がびっくりして護衛さんの顔を見ると護衛さんは本物の笑顔になっていた。私を馬鹿にしたような本物の笑顔。

「それともう一つ。俺たちは護衛じゃない。王宮近衛騎士団だ。それが読めていれば少しは信じたがな」

 その護衛さんはニヤリと今度は嫌味の笑顔をしている。

「死んでない? 兄も? 王子も? それってどういうことよっ! ねぇ! ちょっとっ!」

 私は暴れてみたけど護衛さんの力には勝てなかった。

 私の質問は無視されたまま引きずられて部屋に閉じ込められた。昨日泊まった宿屋程度の部屋だった。

 夕食はパンと水。朝食もパンと水。昼食もパンと水。

 そうやってその部屋に二日泊まった。そしてある朝外に出された。三日も着替えていない。気持ち悪い。

〰 〰 〰

 やっと離縁の決断をしたらしいマクナイト伯爵様からの使者が来たのは子爵家に戻って一月後だ。のんびりしてて呆れてしまう。

 王都への道すがら騎士たちと泊まった宿は本当に小さくて汚かった。

「マクナイト伯爵様はまだ離縁もしてないのにこんなにケチなの?」

「我々は指示に従っているだけです」

 何を聞いても無表情でこの返事では埒があかない。

 やっと到着した王都ではマクナイト伯爵邸ではなくお城へ連れて来られた。

「ちょっとっ! これはどういうこと?」

 今まで一緒だった騎士ではなく中から出来てきた近衛兵が答えた。

「マクナイト伯爵様は中でお待ちです」

 どう見ても取り調べの部屋というところにマクナイト伯爵様はいて手前の椅子に座ってる。近衛兵に奥にある伯爵様の向かい側の椅子に座らされた。

「こんな……。王城などに頼まなくても離縁でしたらして差し上げますのに」

「そうか。それはありがたいな。その心づもりなら離縁ではなく婚姻無効となるがそれは些末なことだな。では、ここにサインしてくれ」

「無効ですって? まさか別居したときのお金や結納金を返せってことじゃないでしょうね?」

「その話し方が本来の君か。私も視野が狭かったものだ。
今ここで婚姻無効の書類にサインすればそれらの請求はしないでおこう。私の判断ミスであることは確かだからな」

 無表情なマクナイト伯爵様の態度と返金はいらないという言葉に私はすぐサインをした。

「これで君たちと私たちは無関係だ。今後、君たちを支援することはない」

 立ち上がって私を見下す目は私を完全に拒絶していた。この美しい私を……。本当にバカな男だわ。お金はもらってあるから関係ない。

「わかっています」

 マクナイト伯爵様は部屋から出ていった。
 私も立ち上がろうとする。だが、後ろにいた近衛兵に肩を押さえつけられて再び椅子に座らされた。

「なに?」

 眉を上げて睨みつけてやったがたじろぐことない近衛兵の態度にさらに怒りが増す。

「あんたはこっからが本番だよ」

 たじろぎも躊躇もしないくせに口角を片方だけあげた近衛兵が私の前の椅子に座った。 

「何の話なの?」

『のんびりしたご婦人だと思われるのは癪だわ』
 
 こちらもさらに目を細めて睨み返す。
 
「お前たちはなぜアレクシス・ギャレット小公爵様が襲われることを知っていたのだ?」

「ギャレット小公爵? ボブバージルの兄のこと?」

 こちらは気合入れて構えていたのに素っ頓狂な質問に片眉をあげる。

「そうだ」

 どうやら真面目な質問らしい。なら、こちらも慎重に答えなければならない。

「ダリアナが夢で見たって言っていたからよ」

 『触ったらわかる』なんて通用するわけない。

「は? そんな子供の戯言を信じたって言うのか?」

「当たり前でしょ! 我が子なのよ!」

「王子殿下のことも夢の話だってか?」

「そうよっ!」

 この後には全部をダリアナの夢で通したのだが実際そのようなものなのだから丸っきり嘘というわけではない。

「もういい。立て」

 近衛兵の命令に従うが腕を掴まれそうになったのを手で払う。

「ねえ。私たちがどんな罪でこんな扱いを受けているのかは知らないけど一ヶ月前の幼女誘拐事件みたいにお金を積めば無罪になるの?」

 嘲笑うように口をひしゃげて聞いてやると近衛兵はあからさまに動揺した。
 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】リクエストにお答えして、今から『悪役令嬢』です。

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「断罪……? いいえ、ただの事実確認ですよ。」 *** ただ求められるままに生きてきた私は、ある日王子との婚約解消と極刑を突きつけられる。 しかし王子から「お前は『悪』だ」と言われ、周りから冷たい視線に晒されて、私は気づいてしまったのだ。 ――あぁ、今私に求められているのは『悪役』なのだ、と。  今まで溜まっていた鬱憤も、ずっとしてきた我慢も。  それら全てを吐き出して私は今、「彼らが望む『悪役』」へと変貌する。  これは従順だった公爵令嬢が一転、異色の『悪役』として王族達を相手取り、様々な真実を紐解き果たす。  そんな復讐と解放と恋の物語。 ◇ ◆ ◇ ※カクヨムではさっぱり断罪版を、アルファポリスでは恋愛色強めで書いています。  さっぱり断罪が好み、または読み比べたいという方は、カクヨムへお越しください。  カクヨムへのリンクは画面下部に貼ってあります。 ※カクヨム版が『カクヨムWeb小説短編賞2020』中間選考作品に選ばれました。  選考結果如何では、こちらの作品を削除する可能性もありますので悪しからず。 ※表紙絵はフリー素材を拝借しました。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

愛されない王妃は、お飾りでいたい

夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。  クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。  そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。 「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」  クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!? 「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

処理中です...