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33 スコーンの味
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ボブバージル様がクラリッサお義姉様を招いた日、お義姉様が引き籠もっていたのでわたくしがギャレット公爵邸へ行った。そしてボブバージル様の手を握った時にまたしても鮮明にいろいろと浮かんできたの。
『これって! これって! すごいわっ!』
残念ながらボブバージル様の具合が悪いらしく私は玄関先で帰らされることになったのだけど、私としてもさっき浮かんだことがわかりきれなくて戸惑っていたので丁度よかった。わたくしを突き飛ばした執事の顔は忘れないようにしなくちゃね。
家に帰るとすぐにエイダお母様の部屋へと駆け込む。お母様はメイドも下げさせた。
「こんなに早く帰ってきてしまって。一体、どうしたの?」
お母様はいつも協力してくれるのでわたくしが失敗してしまったと思ったのか少し怒っていた。
「ボブバージル様の具合が悪いらしくて倒れてしまわれたの」
わたくしが悪いわけじゃないのに怒られているような気持ちになったわたくしは口を尖らせた。
「そう。それなら仕方ないわね」
「それより、お母様っ! 大変なの。わたくし、すごいこと知っちゃったわ」
私は興奮してお母様のドレスの袖を引っ張った。
「どうしたの?」
お母様は渋顔で袖を引っ張っる私の手をパチリと叩いた。着崩れとかはすごく気にする人なの。だからいつもキレイなんだろうけど。
「もうすぐボブバージル様のお兄様とこの国の王子様が死んでしまうのよ。そうするとボブバージル様が公爵になって私と結婚するのよ。お義姉様には伯爵家が残るからそれでいいわね」
「どうしてそこまでわかるの?」
お母様は前のめりになってやっと私の話に耳を傾けてくれた。
「えー? ボブバージル様の手を引っ張ろうとして握ったらはっきり浮かんできたのよ。
ボブバージル様そっくりのちょっと年上の人と殿下って呼ばれてた人が殺されてお葬式してぇ。
絵が何枚も頭に出てきちゃったからうまく説明できないわ。
でもこれってすごいでしょ!」
こんなことできるのは私だけに決まっているから私の自慢なの。
「なるほど。今までは服の上からだったものね。直に触ると浮かぶ内容も詳しくなるのかもしれないわね」
お母様は口の端を片方だけあげて意地悪な魔女みたいな顔だった。お母様がお金のことを考えているときによくする顔だ。でもお母様が何を言っているのかちっともわからない。
「あまり難しく言わないで」
「そうね。ごめんなさいね。とにかくあなたはボブバージル様と仲良くおなりなさい。協力してあげるから。わかった?」
お母様は私の頭をなでてくれた。
「ふふふん! もちろんそのつもりよっ!」
私は胸を張ったわ。
「でもね。このことは誰にも言っちゃダメ! いいわね?」
「私! これまでも誰にも言ってないわよっ」
「見えたってことは言ってないけれど『やらしいことするでしょ』とか『私をイジメるつもりでしょ』とかは言っていたじゃないの」
「だってほんとにやりそうなヤツらばっかりだったじゃん!
私がそう言ったら青くなってたんだよ!」
「そいつらには後ろめたくなるような気持ちを持っていたようだからいいけど」
「うしろなんとかって何? 難しい事言わないでって言ってるでしょう!」
「ダリアナ。落ち着いて。小公爵が死ぬとか王子が死ぬとかっていうのは絶対に口しちゃいけないことなの。わかってちょうだい」
「……わかったわよ…」
『しょう』なんとかていうのはわからなかったけど王子が死ぬっていうのは言ったらいけないのはなんとなくわかったからしかたなく頷いて不貞腐れて部屋へ戻った。
それからちょっと時間はかかったけどお母様がお義父様に頼んだらしくボブバージル様が我が家に来ることになった。お義姉様は具合がずっと悪いらしくて部屋から出てこない。
わたくしはボブバージル様のためにスコーンを作ることにした。厨房は忙しそうだったけどお嬢様であるわたくしを優先するのは当然だと思ったから近くにいた料理人に手伝うことを命令した。
「俺たちはその暇はありませんよ。料理長が解雇されて困りながらもなんとかやっているので時間がぎりぎりなんすよ。お嬢様の手伝いに時間も人も使えません。
でも火傷されると面倒なんで焼成はやりますよ」
料理人は手伝わないとは言ったけど材料の準備だけはさせた。
『クッキーと変わらないでしょう。材料も似ているもの。お砂糖を入れるか入れないかだけね』
私はなんとか作り上げてメイドに盛り付けを命令して部屋へ着替えに戻った。一番お気に入りの真っ赤なドレスを着たわたくしは本当に美しかった。
「美しいうえに料理もできるなんてわたくしって完璧ね」
ボブバージル様は執事に連れられて応接室へ来た。
ちょうどいいからボブバージル様がお義姉様を嫌いになることを悪いって思わないようにお手伝いしてあげたのにボブバージル様はなぜかすぐに怒り出して出ていってしまった。
意味がわからなくてイライラしたままスコーンを食べる。
「パサパサで美味しくないわ。ボブバージル様はこれの何がいいのかしら?」
わたくしは果実水で飲み込んだ。二つ目を食べる気にはなれない。
そうしていたらメイドが駆け込んできた。
「ギャレット公爵子息様がクラリッサ様のお部屋を開けようとしています!!」
「ダリアナ。貴女はここにいなさいっ」
お母様がとても怖い顔をしていたから私は素直に頷いた。
応接室で待っているとお母様が戻ってきた。
「今のところ、ボブバージルはクラリッサのところに行っているわ。ボブバージルの兄が死なないとダリアナが必要だってことがわからないのかもしれないわね。
ダリアナ。ボブバージルが帰るまで部屋に戻っていなさい」
「はぁい」
お母様は私が拗ねてることもわからないくらい怒っているみたいでボブバージル様のことも呼び捨てだった。今までこんなことのはなかった。でも、わがままを言い過ぎるのはよくないことはわかっているから部屋に戻る。
『これって! これって! すごいわっ!』
残念ながらボブバージル様の具合が悪いらしく私は玄関先で帰らされることになったのだけど、私としてもさっき浮かんだことがわかりきれなくて戸惑っていたので丁度よかった。わたくしを突き飛ばした執事の顔は忘れないようにしなくちゃね。
家に帰るとすぐにエイダお母様の部屋へと駆け込む。お母様はメイドも下げさせた。
「こんなに早く帰ってきてしまって。一体、どうしたの?」
お母様はいつも協力してくれるのでわたくしが失敗してしまったと思ったのか少し怒っていた。
「ボブバージル様の具合が悪いらしくて倒れてしまわれたの」
わたくしが悪いわけじゃないのに怒られているような気持ちになったわたくしは口を尖らせた。
「そう。それなら仕方ないわね」
「それより、お母様っ! 大変なの。わたくし、すごいこと知っちゃったわ」
私は興奮してお母様のドレスの袖を引っ張った。
「どうしたの?」
お母様は渋顔で袖を引っ張っる私の手をパチリと叩いた。着崩れとかはすごく気にする人なの。だからいつもキレイなんだろうけど。
「もうすぐボブバージル様のお兄様とこの国の王子様が死んでしまうのよ。そうするとボブバージル様が公爵になって私と結婚するのよ。お義姉様には伯爵家が残るからそれでいいわね」
「どうしてそこまでわかるの?」
お母様は前のめりになってやっと私の話に耳を傾けてくれた。
「えー? ボブバージル様の手を引っ張ろうとして握ったらはっきり浮かんできたのよ。
ボブバージル様そっくりのちょっと年上の人と殿下って呼ばれてた人が殺されてお葬式してぇ。
絵が何枚も頭に出てきちゃったからうまく説明できないわ。
でもこれってすごいでしょ!」
こんなことできるのは私だけに決まっているから私の自慢なの。
「なるほど。今までは服の上からだったものね。直に触ると浮かぶ内容も詳しくなるのかもしれないわね」
お母様は口の端を片方だけあげて意地悪な魔女みたいな顔だった。お母様がお金のことを考えているときによくする顔だ。でもお母様が何を言っているのかちっともわからない。
「あまり難しく言わないで」
「そうね。ごめんなさいね。とにかくあなたはボブバージル様と仲良くおなりなさい。協力してあげるから。わかった?」
お母様は私の頭をなでてくれた。
「ふふふん! もちろんそのつもりよっ!」
私は胸を張ったわ。
「でもね。このことは誰にも言っちゃダメ! いいわね?」
「私! これまでも誰にも言ってないわよっ」
「見えたってことは言ってないけれど『やらしいことするでしょ』とか『私をイジメるつもりでしょ』とかは言っていたじゃないの」
「だってほんとにやりそうなヤツらばっかりだったじゃん!
私がそう言ったら青くなってたんだよ!」
「そいつらには後ろめたくなるような気持ちを持っていたようだからいいけど」
「うしろなんとかって何? 難しい事言わないでって言ってるでしょう!」
「ダリアナ。落ち着いて。小公爵が死ぬとか王子が死ぬとかっていうのは絶対に口しちゃいけないことなの。わかってちょうだい」
「……わかったわよ…」
『しょう』なんとかていうのはわからなかったけど王子が死ぬっていうのは言ったらいけないのはなんとなくわかったからしかたなく頷いて不貞腐れて部屋へ戻った。
それからちょっと時間はかかったけどお母様がお義父様に頼んだらしくボブバージル様が我が家に来ることになった。お義姉様は具合がずっと悪いらしくて部屋から出てこない。
わたくしはボブバージル様のためにスコーンを作ることにした。厨房は忙しそうだったけどお嬢様であるわたくしを優先するのは当然だと思ったから近くにいた料理人に手伝うことを命令した。
「俺たちはその暇はありませんよ。料理長が解雇されて困りながらもなんとかやっているので時間がぎりぎりなんすよ。お嬢様の手伝いに時間も人も使えません。
でも火傷されると面倒なんで焼成はやりますよ」
料理人は手伝わないとは言ったけど材料の準備だけはさせた。
『クッキーと変わらないでしょう。材料も似ているもの。お砂糖を入れるか入れないかだけね』
私はなんとか作り上げてメイドに盛り付けを命令して部屋へ着替えに戻った。一番お気に入りの真っ赤なドレスを着たわたくしは本当に美しかった。
「美しいうえに料理もできるなんてわたくしって完璧ね」
ボブバージル様は執事に連れられて応接室へ来た。
ちょうどいいからボブバージル様がお義姉様を嫌いになることを悪いって思わないようにお手伝いしてあげたのにボブバージル様はなぜかすぐに怒り出して出ていってしまった。
意味がわからなくてイライラしたままスコーンを食べる。
「パサパサで美味しくないわ。ボブバージル様はこれの何がいいのかしら?」
わたくしは果実水で飲み込んだ。二つ目を食べる気にはなれない。
そうしていたらメイドが駆け込んできた。
「ギャレット公爵子息様がクラリッサ様のお部屋を開けようとしています!!」
「ダリアナ。貴女はここにいなさいっ」
お母様がとても怖い顔をしていたから私は素直に頷いた。
応接室で待っているとお母様が戻ってきた。
「今のところ、ボブバージルはクラリッサのところに行っているわ。ボブバージルの兄が死なないとダリアナが必要だってことがわからないのかもしれないわね。
ダリアナ。ボブバージルが帰るまで部屋に戻っていなさい」
「はぁい」
お母様は私が拗ねてることもわからないくらい怒っているみたいでボブバージル様のことも呼び捨てだった。今までこんなことのはなかった。でも、わがままを言い過ぎるのはよくないことはわかっているから部屋に戻る。
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