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14 妊娠する方法
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会頭は舌なめずりをして私をジロジロと見た。
「結構よ。それより早く妊娠する方法を考えてちょうだい」
「それならこの薬がいいですよ。これさえご主人に飲ませればたちまちヤリたくなっちまうってやつです」
「性交渉の回数を増やせってことね。嫌だけどしかたないわね」
私はその場でそれを購入した。
「でも飲ませ過ぎは危険ですよ。なんせ無理矢理やりたくなるほど興奮させるんで心臓に悪いんですよ。奥様が妊娠しやすい時期だけにしてくださいね」
『はあ? 妊娠しやすい時期なんて知らないわよ。でもそうう時期ってあるのね。もしかしたら知らず知らずのうちにその時期にはやってなかったのかもしれないわ。
それなら妊娠するまで毎日飲ませるしかないわね』
こうして侯爵家に私がいる間は内緒で薬を飲ませて毎日性交渉したのに私が妊娠することはなかった。主人が胸を押さえて蹲ることが多くなったけど侯爵家おかかえ医者がいるのだから心配はしていない。
私は貸金庫屋へ行く度に薬を購入する。
「随分と頻繁に買いますね。まさか毎日飲ませたりしていませんよね」
「ご夫人仲間に売っているのよ。愛人に負けていられないってご夫人たちに人気があるの」
私に夫人友達がいないなんてことは知らないだろう。
「なるほど。それはいいことを聞きました。私の方でも営業販路を広げてみてもいいかもしれませんね」
「私の邪魔をする気なの?」
オールポッド侯爵領近辺や王都で私の噂を聞かれたら元も子もないわ。
「いやいや。さすがにそんなことはしませんよ。侯爵夫人様の販路とは正反対の地域へまいりますのでご安心を。もちろん王都へも伺いません。王都の騎士団に目をつけられたら商売になりませんからね」
「ならいいわ」
そして二年後、主人は私のお腹の上で心臓を止めた…。
主人の葬儀が済むとお義父様が命令してきた。
「一年後に再婚しろ。エイダ。トリスタンの子を産め。次は男だ」
トリスタン様は死んだ主人の弟だ。
お義父様は怒鳴りはしないが反論は許さない迫力がある。さすがは元侯爵というところか。主人のことをとても大切にしていたのはよくわかっていた。なのに主人は子爵令嬢の私を選んだ挙げ句に早死した。
『ざまあみろっ!』
このジジイことお義父様のことははじめから嫌いだった。嫁と認めてもらえたことなんて一度もない。
嫁と認めてもいない私に向かって次男と結婚しろとは笑ってしまう。見栄も一流なのだろう。嫁と孫を捨てるわけにはいかないようだ。
それにしても普通なら『ダリアナに婿』と考えるのではないのかしら? まさかジジイはダリアナが主人の子供でないことを知っているの?
貸金庫屋の店主の言うように主人は種なしだったのかもしれないわね。今は思えばバリーとの子供をもう一人作ればよかったわ。男の子なら侯爵になれたのに。
でも、弟に嫁ぎ直すなんてよくあることよ。バリーでないなら誰だって同じだわ。早く息子を産んでここを出ていくのよ。
そう思っていたのにダリアナがトリスタン様を嫌がった。それもトリスタン様に襲われるといって泣き出す始末だった。ダリアナは確かに私とバリーに似ていて美しい娘だわ。だからって七歳よ。ありえないわ。
ダリアナを納得させるために一緒に寝ることにした。今までも度々一緒に寝ていたから問題ない。
それにトリスタン様との結婚は一年後だもの。その前にトリスタン様とそういう関係になるつもりはないから丁度良かった。
だけど、そのまさかが起きたのよ。
お馬鹿なトリスタン様のおかげでジジイからたくさんの手切れ金をもらってゲラティル子爵領へ戻ることになったわ。
侯爵家とは何の関係もなくなるとは言われたけどダリアナは侯爵家の娘となっているのよ。いざとなったらねじ込むわ。
実家ではとっくにお父さんからお兄様に爵位が譲り渡されていた。侯爵家からもらった普通より多めの手切れ金の金額をお兄様に渡したらお兄様ったら大喜びでお父様お母様を田舎の別荘地に送ってしまった。私としては父母二人にうるさくされるよりダリアナと二人っきりの方がいいに決まってるのよね。
翌日には隣町の貸金庫屋へ行ってお金になるものを隠した。
「旦那さんは随分とお早くに…」
お悔やみを述べるのなら神妙な顔をするべきなのに店主はにやにやと何かを含ませて笑っている。
私が貸金庫屋の帰りにバリーの店に寄るとバリーの店はその日は閉店して私達は食事に行きその後七年ぶりに交わった。
主人が死んで侯爵家を出されたおかげでバリーと自由に会えるようになった私は十七歳に戻った気持ちで楽しめたわ。
「結構よ。それより早く妊娠する方法を考えてちょうだい」
「それならこの薬がいいですよ。これさえご主人に飲ませればたちまちヤリたくなっちまうってやつです」
「性交渉の回数を増やせってことね。嫌だけどしかたないわね」
私はその場でそれを購入した。
「でも飲ませ過ぎは危険ですよ。なんせ無理矢理やりたくなるほど興奮させるんで心臓に悪いんですよ。奥様が妊娠しやすい時期だけにしてくださいね」
『はあ? 妊娠しやすい時期なんて知らないわよ。でもそうう時期ってあるのね。もしかしたら知らず知らずのうちにその時期にはやってなかったのかもしれないわ。
それなら妊娠するまで毎日飲ませるしかないわね』
こうして侯爵家に私がいる間は内緒で薬を飲ませて毎日性交渉したのに私が妊娠することはなかった。主人が胸を押さえて蹲ることが多くなったけど侯爵家おかかえ医者がいるのだから心配はしていない。
私は貸金庫屋へ行く度に薬を購入する。
「随分と頻繁に買いますね。まさか毎日飲ませたりしていませんよね」
「ご夫人仲間に売っているのよ。愛人に負けていられないってご夫人たちに人気があるの」
私に夫人友達がいないなんてことは知らないだろう。
「なるほど。それはいいことを聞きました。私の方でも営業販路を広げてみてもいいかもしれませんね」
「私の邪魔をする気なの?」
オールポッド侯爵領近辺や王都で私の噂を聞かれたら元も子もないわ。
「いやいや。さすがにそんなことはしませんよ。侯爵夫人様の販路とは正反対の地域へまいりますのでご安心を。もちろん王都へも伺いません。王都の騎士団に目をつけられたら商売になりませんからね」
「ならいいわ」
そして二年後、主人は私のお腹の上で心臓を止めた…。
主人の葬儀が済むとお義父様が命令してきた。
「一年後に再婚しろ。エイダ。トリスタンの子を産め。次は男だ」
トリスタン様は死んだ主人の弟だ。
お義父様は怒鳴りはしないが反論は許さない迫力がある。さすがは元侯爵というところか。主人のことをとても大切にしていたのはよくわかっていた。なのに主人は子爵令嬢の私を選んだ挙げ句に早死した。
『ざまあみろっ!』
このジジイことお義父様のことははじめから嫌いだった。嫁と認めてもらえたことなんて一度もない。
嫁と認めてもいない私に向かって次男と結婚しろとは笑ってしまう。見栄も一流なのだろう。嫁と孫を捨てるわけにはいかないようだ。
それにしても普通なら『ダリアナに婿』と考えるのではないのかしら? まさかジジイはダリアナが主人の子供でないことを知っているの?
貸金庫屋の店主の言うように主人は種なしだったのかもしれないわね。今は思えばバリーとの子供をもう一人作ればよかったわ。男の子なら侯爵になれたのに。
でも、弟に嫁ぎ直すなんてよくあることよ。バリーでないなら誰だって同じだわ。早く息子を産んでここを出ていくのよ。
そう思っていたのにダリアナがトリスタン様を嫌がった。それもトリスタン様に襲われるといって泣き出す始末だった。ダリアナは確かに私とバリーに似ていて美しい娘だわ。だからって七歳よ。ありえないわ。
ダリアナを納得させるために一緒に寝ることにした。今までも度々一緒に寝ていたから問題ない。
それにトリスタン様との結婚は一年後だもの。その前にトリスタン様とそういう関係になるつもりはないから丁度良かった。
だけど、そのまさかが起きたのよ。
お馬鹿なトリスタン様のおかげでジジイからたくさんの手切れ金をもらってゲラティル子爵領へ戻ることになったわ。
侯爵家とは何の関係もなくなるとは言われたけどダリアナは侯爵家の娘となっているのよ。いざとなったらねじ込むわ。
実家ではとっくにお父さんからお兄様に爵位が譲り渡されていた。侯爵家からもらった普通より多めの手切れ金の金額をお兄様に渡したらお兄様ったら大喜びでお父様お母様を田舎の別荘地に送ってしまった。私としては父母二人にうるさくされるよりダリアナと二人っきりの方がいいに決まってるのよね。
翌日には隣町の貸金庫屋へ行ってお金になるものを隠した。
「旦那さんは随分とお早くに…」
お悔やみを述べるのなら神妙な顔をするべきなのに店主はにやにやと何かを含ませて笑っている。
私が貸金庫屋の帰りにバリーの店に寄るとバリーの店はその日は閉店して私達は食事に行きその後七年ぶりに交わった。
主人が死んで侯爵家を出されたおかげでバリーと自由に会えるようになった私は十七歳に戻った気持ちで楽しめたわ。
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