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2 一日目惚れ
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違う日にまた『お見合い』をしました。挨拶をしてお席に座ります。
僕は四回目なのでとっても上手にご挨拶もできたしご挨拶の後に『にっこり』もできました。お話も僕からすることができるようになりました。
「君はどんなことをすることが好きですか?」
「わたくしはご本が好きです。公爵様のおうちの図書室を見せてくださいますか?」
四人目の女の子はほんわりと笑っていたと思います。僕は慣れたつもりでもきちんとお話ができたことが初めてで緊張してしまったらしくあまり覚えていません。
その女の子と一緒に図書室へ行くと女の子はご自分で本を選んで窓際の席で読み始めました。僕も本は好きだったので一冊選んで女の子と椅子を1つ離して座り本を読みました。
静かな時間が過ぎます。でもイヤではない時間でした。好きな本を読んでいたので緊張もいつのまにかなくなっていました。
ふと隣の隣に座る女の子の横顔を見た僕は驚いてビクリとしてしまいましたが熱心に本を読んでいる女の子は気が付きません。それからの僕は女の子から目が離せなくなりました。
女の子は決してとびきり美人でもとびきり可愛いわけでもありませんが普通に可愛らしい女の子です。
でも本を読みながら肩をビクッとさせると花びらのような桃色のふわふわとした髪もふんわりと揺れます。驚いたのかお口に手をもっていったときには春のクローバーのような若草色のおめめが大きく開きます。本の登場人物が幸せになったのかにっこりと微笑んだときのほっぺはほんのりとピンクで真っ白な肌に浮かんだそれが僕をドキドキさせます。
そうやって真剣に本を読む彼女の仕草がとても可愛らしく思えたのです。
図書室の開いている扉からノックの音がしました。僕は慌てて自分の本へ向き直ります。
「クラリッサ様のお帰りになるお時間でございます」
「え? もう?」
「そんなお時間ですか?」
「あらあら。まあ。
ですが今日で終わりではありませんわ。うふふふ」
僕を赤ちゃんのころから見ているといつも言っているメイドのグリナが本当に嬉しそうに笑います。僕たちはグリナの言葉の意味がわからなくて目を合わせて首を傾げてしまいました。
「あらあら。まあ」
その様子を見てグリナはさらに嬉しそうにしていました。
僕たちがそれぞれ読んでいた本を持ち立ち上がると女の子はふと僕の手元にある本に目を落としました。
「ボブバージル様はそのご本は読み終わりましたの?」
女の子は声もとても可愛らしかったのです。その声に惹かれるように隣を見ると女の子が本を大切な物のようにギュッと抱いています。
僕は右手で脇に持っていた本を自分の胸の下へ持ってきて両手で持ちました。それは見慣れた大好きな表紙で僕は思わずにっこりとしました。
「うんっ! これは好きな本だから何度も読んでいるんだ。だからもう読んであるんだよ」
「まあ! そうでしたの! それでしたらそちらのご本をお借りできますか?」
僕が好きだと言った本に興味を持ってくれたみたいでなんだかくすぐったい気持ちになりました。
「もちろんだよ。でも君はその本を読み終わったの?」
「いえ、まだですけど……」
彼女は本をギュッと抱く力を強めて少しだけ俯いて本を見つめていましたがきっともう少し読みたいのです。僕も本が好きなのでその気持ちはよくわかります。
「じゃあ、そちらも持っていくといいよ」
「よろしいのですか?」
顔をあげた時の大きな緑のおめめがこぼれ落ちそうなくらいでした。とても可愛らしくて喜んでいることがよくわかります。
「うん。そうだ! 返してくれる時に君の好きな本を貸してくれると嬉しいな。
来週にも来てくれる?」
「はい! また来ますっ!」
僕は一目惚れならぬ一日目惚れをしたのです。
そして最後に『はい!また来ますっ!』と言った時の若草色のおめめがキラキラでステキだなって思ったのです。
彼女はクラリッサ・マクナイト伯爵令嬢で同い年だと女の子が帰った後にメイドが嬉しそうに教えてくれました。
僕は四回目なのでとっても上手にご挨拶もできたしご挨拶の後に『にっこり』もできました。お話も僕からすることができるようになりました。
「君はどんなことをすることが好きですか?」
「わたくしはご本が好きです。公爵様のおうちの図書室を見せてくださいますか?」
四人目の女の子はほんわりと笑っていたと思います。僕は慣れたつもりでもきちんとお話ができたことが初めてで緊張してしまったらしくあまり覚えていません。
その女の子と一緒に図書室へ行くと女の子はご自分で本を選んで窓際の席で読み始めました。僕も本は好きだったので一冊選んで女の子と椅子を1つ離して座り本を読みました。
静かな時間が過ぎます。でもイヤではない時間でした。好きな本を読んでいたので緊張もいつのまにかなくなっていました。
ふと隣の隣に座る女の子の横顔を見た僕は驚いてビクリとしてしまいましたが熱心に本を読んでいる女の子は気が付きません。それからの僕は女の子から目が離せなくなりました。
女の子は決してとびきり美人でもとびきり可愛いわけでもありませんが普通に可愛らしい女の子です。
でも本を読みながら肩をビクッとさせると花びらのような桃色のふわふわとした髪もふんわりと揺れます。驚いたのかお口に手をもっていったときには春のクローバーのような若草色のおめめが大きく開きます。本の登場人物が幸せになったのかにっこりと微笑んだときのほっぺはほんのりとピンクで真っ白な肌に浮かんだそれが僕をドキドキさせます。
そうやって真剣に本を読む彼女の仕草がとても可愛らしく思えたのです。
図書室の開いている扉からノックの音がしました。僕は慌てて自分の本へ向き直ります。
「クラリッサ様のお帰りになるお時間でございます」
「え? もう?」
「そんなお時間ですか?」
「あらあら。まあ。
ですが今日で終わりではありませんわ。うふふふ」
僕を赤ちゃんのころから見ているといつも言っているメイドのグリナが本当に嬉しそうに笑います。僕たちはグリナの言葉の意味がわからなくて目を合わせて首を傾げてしまいました。
「あらあら。まあ」
その様子を見てグリナはさらに嬉しそうにしていました。
僕たちがそれぞれ読んでいた本を持ち立ち上がると女の子はふと僕の手元にある本に目を落としました。
「ボブバージル様はそのご本は読み終わりましたの?」
女の子は声もとても可愛らしかったのです。その声に惹かれるように隣を見ると女の子が本を大切な物のようにギュッと抱いています。
僕は右手で脇に持っていた本を自分の胸の下へ持ってきて両手で持ちました。それは見慣れた大好きな表紙で僕は思わずにっこりとしました。
「うんっ! これは好きな本だから何度も読んでいるんだ。だからもう読んであるんだよ」
「まあ! そうでしたの! それでしたらそちらのご本をお借りできますか?」
僕が好きだと言った本に興味を持ってくれたみたいでなんだかくすぐったい気持ちになりました。
「もちろんだよ。でも君はその本を読み終わったの?」
「いえ、まだですけど……」
彼女は本をギュッと抱く力を強めて少しだけ俯いて本を見つめていましたがきっともう少し読みたいのです。僕も本が好きなのでその気持ちはよくわかります。
「じゃあ、そちらも持っていくといいよ」
「よろしいのですか?」
顔をあげた時の大きな緑のおめめがこぼれ落ちそうなくらいでした。とても可愛らしくて喜んでいることがよくわかります。
「うん。そうだ! 返してくれる時に君の好きな本を貸してくれると嬉しいな。
来週にも来てくれる?」
「はい! また来ますっ!」
僕は一目惚れならぬ一日目惚れをしたのです。
そして最後に『はい!また来ますっ!』と言った時の若草色のおめめがキラキラでステキだなって思ったのです。
彼女はクラリッサ・マクナイト伯爵令嬢で同い年だと女の子が帰った後にメイドが嬉しそうに教えてくれました。
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