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4 噂される人
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ダリアーナは思い出したと嬉しそうに目を光らせる。
「そうだわっ! みなさまはパーティー会場にはすぐにいらっしゃらなくなっていませんでしたかぁ?」
「つ、疲れたから、ここで休んでいたんだよぉ」
ラルトンは小首をフルフルと小さく左右に振りながらダリアーナに一生懸命言い訳した。
「会場は落ち着かなくてな……」
「あそこは暑すぎだったから……」
他の二人も言い訳する。
「うふふ! ここで四人で秘密のことをしたのよ」
ニーナは嬉しそうに両手を口元に当てて破顔した。
「「「ニーナ! 黙っていてくれって言っただろっ(でしょう)!」」」
四人はコンジュがタウンハウスからくすねてきたお酒を学生寮の食堂でこっそりと飲んだのだが、聞きようによってはもっと良からぬことを想像させる。
ちなみにこの国の成人は十八歳で、飲酒も十八歳で解禁となるのだが、貴族社会で乱れぬくらいの飲酒はどの家も慣れさせるために十四歳くらいから少しの食前酒くらいは許していることが多い。
だが、学園であるので無許可の飲酒は注意される。
四人とも成人はしているのでその点は問題ない。だから、学園にバレても学園の秩序のために二、三日の謹慎で済むだろう。
とはいえ、背徳感で高揚した状態で飲酒したことは事実であり、褒められたことではない。
再び黙れと言われたことに、ニーナはプイッと顔を背け頬を膨らませて近くの椅子に座った。そして、何を思い立ったのか、ツカツカと離れていった。
「と、とにかく、ニーナとはもう踊ることはないだろうから、思い出に踊ってあげただけなんだよ」
マイゼルはニーナが離れたことを見て、我先にと婚約者フラールに言い訳する。
「そうですか。わたくしにとっても学生生活最後の卒業祝賀パーティーでしたわ。
わたくしではなく、ニーナ様の思い出を大切にして差し上げたのですね。
マイゼル様もニーナ様との思い出を胸に刻めてよろしかったですわね。その思い出とともにニーナ様と仲良くお暮らしくださいませ」
マイゼルは失言に気がついたようで口を噤んで、俯く。
フラールが同意を求めるようにメリナとダリアーナに微笑めば、二人とも頷いて素晴らしい笑顔になった。
三人は後から会場へ戻るつもりであったのだが、思いの外お酒が強い物であったため、飲酒していることがすぐにバレてしまう状態になってしまった。婚約者と踊らなかったことに罪悪感は抱いていたが、これまでいろいろと目溢ししてもらっているので、それについても大丈夫だろうと高を括っていたのだった。
コンジュとラルトンも慌てる。
「メリナはわかってくてれいるのだろう?」
コンジュは今までも姉さん気質のメリナにことあるごとに甘えている。威張った態度もその表れなのだ。
「全くもって理解できませんわっ。何度もご忠告申し上げたはずですわよっ。お三方の非常識さを知らない生徒はおりませんわっ」
メリナにここまで冷徹な態度を取られたことがなかったコンジュは、目をギュッと瞑り苦々しい顔をした。
「ダリアーナぁ……」
「ラルトン様。泣いても無駄ですわ。恥ずかしいことに、社交界でも噂になっておりますのぉ。」
「「「どうしてっ!?」」」
「みなさまは、わたくしたちに社交を任せてパーティーにご出席されませんものね。噂もお耳に入らないのかしら?」
フラールは馬鹿にしたように美男子三人を睨む。
「だが、ニーナは卒業したら嫁ぎ先は決まっていると言っていたぞ」
「そのような時期もおありになったようですわね」
メリナの言葉はニーナを馬鹿にするようなものではなく、ニーナの置かれた立場を心配しているような声音だ。
美男子たちは不思議そうな顔をする。それを見てダリアーナが小さなため息をついてからヒントを出す。
「嫁ぎ先がお決まりになっておりますのに、婚約者がいらっしゃらないという意味がおわかりになっていらっしゃいますかぁ?」
ニーナの嫁ぎ先といっても、婚約者となりえぬような妾婚である。貧乏貴族にはよくあることではあるので、それを馬鹿にしたり軽蔑することはない。妾婚と言われているが、妾契約であり、給金が発生する。
しかし、行き遅れと言われる年になれば、妾婚もありえるかもしれないが、学園に入学したばかりの頃からそのような話になっていることは珍しい。ニーナの家は余程の事情があるのだろうと誰もが予想できた。
「そうだわっ! みなさまはパーティー会場にはすぐにいらっしゃらなくなっていませんでしたかぁ?」
「つ、疲れたから、ここで休んでいたんだよぉ」
ラルトンは小首をフルフルと小さく左右に振りながらダリアーナに一生懸命言い訳した。
「会場は落ち着かなくてな……」
「あそこは暑すぎだったから……」
他の二人も言い訳する。
「うふふ! ここで四人で秘密のことをしたのよ」
ニーナは嬉しそうに両手を口元に当てて破顔した。
「「「ニーナ! 黙っていてくれって言っただろっ(でしょう)!」」」
四人はコンジュがタウンハウスからくすねてきたお酒を学生寮の食堂でこっそりと飲んだのだが、聞きようによってはもっと良からぬことを想像させる。
ちなみにこの国の成人は十八歳で、飲酒も十八歳で解禁となるのだが、貴族社会で乱れぬくらいの飲酒はどの家も慣れさせるために十四歳くらいから少しの食前酒くらいは許していることが多い。
だが、学園であるので無許可の飲酒は注意される。
四人とも成人はしているのでその点は問題ない。だから、学園にバレても学園の秩序のために二、三日の謹慎で済むだろう。
とはいえ、背徳感で高揚した状態で飲酒したことは事実であり、褒められたことではない。
再び黙れと言われたことに、ニーナはプイッと顔を背け頬を膨らませて近くの椅子に座った。そして、何を思い立ったのか、ツカツカと離れていった。
「と、とにかく、ニーナとはもう踊ることはないだろうから、思い出に踊ってあげただけなんだよ」
マイゼルはニーナが離れたことを見て、我先にと婚約者フラールに言い訳する。
「そうですか。わたくしにとっても学生生活最後の卒業祝賀パーティーでしたわ。
わたくしではなく、ニーナ様の思い出を大切にして差し上げたのですね。
マイゼル様もニーナ様との思い出を胸に刻めてよろしかったですわね。その思い出とともにニーナ様と仲良くお暮らしくださいませ」
マイゼルは失言に気がついたようで口を噤んで、俯く。
フラールが同意を求めるようにメリナとダリアーナに微笑めば、二人とも頷いて素晴らしい笑顔になった。
三人は後から会場へ戻るつもりであったのだが、思いの外お酒が強い物であったため、飲酒していることがすぐにバレてしまう状態になってしまった。婚約者と踊らなかったことに罪悪感は抱いていたが、これまでいろいろと目溢ししてもらっているので、それについても大丈夫だろうと高を括っていたのだった。
コンジュとラルトンも慌てる。
「メリナはわかってくてれいるのだろう?」
コンジュは今までも姉さん気質のメリナにことあるごとに甘えている。威張った態度もその表れなのだ。
「全くもって理解できませんわっ。何度もご忠告申し上げたはずですわよっ。お三方の非常識さを知らない生徒はおりませんわっ」
メリナにここまで冷徹な態度を取られたことがなかったコンジュは、目をギュッと瞑り苦々しい顔をした。
「ダリアーナぁ……」
「ラルトン様。泣いても無駄ですわ。恥ずかしいことに、社交界でも噂になっておりますのぉ。」
「「「どうしてっ!?」」」
「みなさまは、わたくしたちに社交を任せてパーティーにご出席されませんものね。噂もお耳に入らないのかしら?」
フラールは馬鹿にしたように美男子三人を睨む。
「だが、ニーナは卒業したら嫁ぎ先は決まっていると言っていたぞ」
「そのような時期もおありになったようですわね」
メリナの言葉はニーナを馬鹿にするようなものではなく、ニーナの置かれた立場を心配しているような声音だ。
美男子たちは不思議そうな顔をする。それを見てダリアーナが小さなため息をついてからヒントを出す。
「嫁ぎ先がお決まりになっておりますのに、婚約者がいらっしゃらないという意味がおわかりになっていらっしゃいますかぁ?」
ニーナの嫁ぎ先といっても、婚約者となりえぬような妾婚である。貧乏貴族にはよくあることではあるので、それを馬鹿にしたり軽蔑することはない。妾婚と言われているが、妾契約であり、給金が発生する。
しかし、行き遅れと言われる年になれば、妾婚もありえるかもしれないが、学園に入学したばかりの頃からそのような話になっていることは珍しい。ニーナの家は余程の事情があるのだろうと誰もが予想できた。
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