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8 ドレスはどう作った?
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「あたしって、女友だちいないのよねぇ」
マーデルは自分のしていること―王子殿下と馴れ馴れしく話すなど―を棚に上げて、女子からの扱いをよく愚痴っている。
「殿下と懇意であることで嫉妬した者が仲間外れにしているのかもしれませんね」
デミスはポーリィナの存在をライルにわかるようにちらつかせた。
「この前、お茶会? ってやつに呼ばれたんだけどぉ、マナーができてから来いって言われちゃったんだよぉ。誘われたから行ってやったのに」
「公爵令嬢として教えるのを嫌がるなど、間接的なイジメですね」
デミスは、誰のお茶会で誰が言ったかも確認せずに、ポーリィナであるとライルに思わせるように誘導する。
時にはライルとマーデルが離れている時、ライルがマーデルを見ているというタイミングで、デミスはマーデルの肩を抱き美男子笑顔を全開にした。
デミスはライルがポーリィナを嫌うようにそしてマーデルに夢中になるように仕向けていった。
ライルは元々優秀なポーリィナを疎ましく思っていたので、デミスの思惑通りに簡単にことを運べた。
デミスにとって心配なのは、王家がポーリィナを手放さないことだった。学園での遊びなど一笑に付されて終わってしまうに違いない。そうなれば、デミスとポーリィナが結ばれることはなくなってしまう。
卒業式まで四ヶ月となった頃、ライルとマーデルは仕立て屋へ出向いた。三人も付き添っている。ライルはマーデルに卒業パーティーのドレスを贈ると言う。
その頃には、デミスは『マーデルが好きだけどライル王子殿下になら任せられます。自分は手を引きます』という体をとっていた。
「ここはポーリィナが好きな仕立て屋なんだ。あいつはなんやかんやと言っても公爵令嬢だからな。こういういい店を知っているんだ」
デミスは偶然にもポーリィナの御用達の仕立て屋を知ることになった。
翌日、デミスはその仕立て屋にポーリィナの婚姻ドレスを注文に行った。
「ライル王子殿下との婚姻のご衣装は、うちより重厚なお店で作ると聞いておりますわ」
オーナーは首を傾げた。
「それは王家の結婚式での話ですよ。学園の仲間たちとのパーティーで着るドレスの発注を殿下に頼まれたのです。ポーリィナ嬢にはナイショでお願いしますね」
「まあ! ライル王子殿下のサプライズですの!? それはそれは張り切って作らせていただきますわっ!
それにしても、昨日の女性は?」
「彼女はサプライズの協力者ですよ。協力のお礼にプレゼントするようですね」
仕立て屋のオーナーはにこやかに受け入れた。実際に前日ライルとともに来ていたデミスからの発注なのだ。疑えということに無理がある。
〰️
ライルとマーデルが懇意になると昼休みは食堂室の一部で五人でいることが多くなった。図書室でポーリィナと会えないことが残念なデミスであったが、これも二人の未来のためと我慢した。
ここで、普段会えなくなってしまったからとポーリィナをデートにでも誘えば、誤解は解けたかもしれない。だが、女性から追いかけられることしか知らないデミスは、デミスから誘うという発想は思いつかなかった。
それでも、時々こちらをチラチラと見るポーリィナの様子にデミスは両思いだと自信を持っていた。まさか、ポーリィナがライルとの婚約解消を望んでいて、それのために観察しているなどとは思いもよらない。
そして、マーデルからライルに決定的な言葉が出た。
「ライルって公爵令嬢様と婚約しているんでしょう? 私って捨てられるの?」
「そんなことはしないっ!」
ライルはそういうが、この国は王族とはいえ妾制度はない。浮気はあくまでも浮気だ。
「だが、このままでは父上にはわかってもらえないかもしれない」
「えっー! あたし、あの人たちにいじめられてるのにぃ」
デミスがライルを誘導するために発した言葉はいつの間にかマーデルの脳みそにも侵食していた。デミスは思わず口元を隠してニヤける。
「そうだ。あいつが性格が悪く王妃に向かないと皆の前で宣言してしまえばいい。
卒業パーティーではっきりさせよう!
俺たちの仲も公表するんだ」
「ほんと?! 嬉しい!」
食堂室という公の場にもかかわらずマーデルはライルに抱きついた。
その近くにポーリィナの友人がおり、話をすべて聞いている。ポーリィナはその日から、いついかなる時にでも婚約解消の書類が出せるようにしておくことをミーデに指示していた。
〰️ 〰️
こうして、デミスの予定通り、ライルは卒業パーティーの席にて、ポーリィナに婚約破棄を宣言した。デミスとユシャフはそれを後押しするようなことを言ったし、ビーレルはポーリィナを押さえつけようとした。ビーレルの行動はミーデに阻止されたが。
ポーリィナが準備よく婚約解消のための書類を用意してあったことも、デミスを勘違いさせた。
『ああ! 私のためにここまでしてくれるとはっ! 明日にも婚約しよう。一ヶ月後の教会を押さえておいてよかった』
デミスはニヤニヤが止められないが、傍から見たらポーリィナをイジメていることを楽しんでいるようにしか見えない。それをデミスが気がつくことはなかった。
〰️ 〰️ 〰️
次回最終話です。
最後までよろしくお願いします。
マーデルは自分のしていること―王子殿下と馴れ馴れしく話すなど―を棚に上げて、女子からの扱いをよく愚痴っている。
「殿下と懇意であることで嫉妬した者が仲間外れにしているのかもしれませんね」
デミスはポーリィナの存在をライルにわかるようにちらつかせた。
「この前、お茶会? ってやつに呼ばれたんだけどぉ、マナーができてから来いって言われちゃったんだよぉ。誘われたから行ってやったのに」
「公爵令嬢として教えるのを嫌がるなど、間接的なイジメですね」
デミスは、誰のお茶会で誰が言ったかも確認せずに、ポーリィナであるとライルに思わせるように誘導する。
時にはライルとマーデルが離れている時、ライルがマーデルを見ているというタイミングで、デミスはマーデルの肩を抱き美男子笑顔を全開にした。
デミスはライルがポーリィナを嫌うようにそしてマーデルに夢中になるように仕向けていった。
ライルは元々優秀なポーリィナを疎ましく思っていたので、デミスの思惑通りに簡単にことを運べた。
デミスにとって心配なのは、王家がポーリィナを手放さないことだった。学園での遊びなど一笑に付されて終わってしまうに違いない。そうなれば、デミスとポーリィナが結ばれることはなくなってしまう。
卒業式まで四ヶ月となった頃、ライルとマーデルは仕立て屋へ出向いた。三人も付き添っている。ライルはマーデルに卒業パーティーのドレスを贈ると言う。
その頃には、デミスは『マーデルが好きだけどライル王子殿下になら任せられます。自分は手を引きます』という体をとっていた。
「ここはポーリィナが好きな仕立て屋なんだ。あいつはなんやかんやと言っても公爵令嬢だからな。こういういい店を知っているんだ」
デミスは偶然にもポーリィナの御用達の仕立て屋を知ることになった。
翌日、デミスはその仕立て屋にポーリィナの婚姻ドレスを注文に行った。
「ライル王子殿下との婚姻のご衣装は、うちより重厚なお店で作ると聞いておりますわ」
オーナーは首を傾げた。
「それは王家の結婚式での話ですよ。学園の仲間たちとのパーティーで着るドレスの発注を殿下に頼まれたのです。ポーリィナ嬢にはナイショでお願いしますね」
「まあ! ライル王子殿下のサプライズですの!? それはそれは張り切って作らせていただきますわっ!
それにしても、昨日の女性は?」
「彼女はサプライズの協力者ですよ。協力のお礼にプレゼントするようですね」
仕立て屋のオーナーはにこやかに受け入れた。実際に前日ライルとともに来ていたデミスからの発注なのだ。疑えということに無理がある。
〰️
ライルとマーデルが懇意になると昼休みは食堂室の一部で五人でいることが多くなった。図書室でポーリィナと会えないことが残念なデミスであったが、これも二人の未来のためと我慢した。
ここで、普段会えなくなってしまったからとポーリィナをデートにでも誘えば、誤解は解けたかもしれない。だが、女性から追いかけられることしか知らないデミスは、デミスから誘うという発想は思いつかなかった。
それでも、時々こちらをチラチラと見るポーリィナの様子にデミスは両思いだと自信を持っていた。まさか、ポーリィナがライルとの婚約解消を望んでいて、それのために観察しているなどとは思いもよらない。
そして、マーデルからライルに決定的な言葉が出た。
「ライルって公爵令嬢様と婚約しているんでしょう? 私って捨てられるの?」
「そんなことはしないっ!」
ライルはそういうが、この国は王族とはいえ妾制度はない。浮気はあくまでも浮気だ。
「だが、このままでは父上にはわかってもらえないかもしれない」
「えっー! あたし、あの人たちにいじめられてるのにぃ」
デミスがライルを誘導するために発した言葉はいつの間にかマーデルの脳みそにも侵食していた。デミスは思わず口元を隠してニヤける。
「そうだ。あいつが性格が悪く王妃に向かないと皆の前で宣言してしまえばいい。
卒業パーティーではっきりさせよう!
俺たちの仲も公表するんだ」
「ほんと?! 嬉しい!」
食堂室という公の場にもかかわらずマーデルはライルに抱きついた。
その近くにポーリィナの友人がおり、話をすべて聞いている。ポーリィナはその日から、いついかなる時にでも婚約解消の書類が出せるようにしておくことをミーデに指示していた。
〰️ 〰️
こうして、デミスの予定通り、ライルは卒業パーティーの席にて、ポーリィナに婚約破棄を宣言した。デミスとユシャフはそれを後押しするようなことを言ったし、ビーレルはポーリィナを押さえつけようとした。ビーレルの行動はミーデに阻止されたが。
ポーリィナが準備よく婚約解消のための書類を用意してあったことも、デミスを勘違いさせた。
『ああ! 私のためにここまでしてくれるとはっ! 明日にも婚約しよう。一ヶ月後の教会を押さえておいてよかった』
デミスはニヤニヤが止められないが、傍から見たらポーリィナをイジメていることを楽しんでいるようにしか見えない。それをデミスが気がつくことはなかった。
〰️ 〰️ 〰️
次回最終話です。
最後までよろしくお願いします。
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