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第七章 魔法家の悩み事
4 魔力はあるのだけれどね?
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「魔法師団に存在の意味はあるのか?」
ジャンバディ・サンドエク伯爵は、長い間、このことに悩んでいた。この世界には、回復魔法、治癒魔法は、存在していない。魔法は、攻撃系か防衛系か、または生活魔法だ。
かつて、サンドエク家は、大きな魔力を元に、戦争や魔獣討伐において活躍をし、騎士爵を賜った。ジャンバディの祖父が魔法師団団長となった時、子爵位を賜った。長い間子爵位であったが、去年、国王陛下の一存で、伯爵位となり、今の広大な敷地と屋敷を賜ったのだ。ジャンバディは、親類たちが喜んでいる中で、仕事に見合わぬ爵位に、少し怯んでいた。
魔法師団団長、確かに肩書きは素晴らしい。だが、ジャンバディ本人が活躍したのは、15年前のスタンビート〈魔獣暴走〉だ。その時の団長は父親であった。
『大陸全土が平和でここ数十年、戦争は起きていない。スタンビートもない。
日照りで水不足でも、国中に毎日水のために足を運べるわけじゃない。
水害は、塞き止める前に村は流されてしまう。
騎士団のように、護衛もないし警邏もない。
魔法師団は、ただ毎日、いつあるかわからぬ何かのために、鍛練を積んでいる。』
ジャンバディは、そう思っている。
ジャンバディは、厚い防御壁を作れる。だが、それをどこに作るのだ?ジャンバディは、大きく太い火の柱を出せる。だが、それを何に向かって出すのだ?
ジャンバディの憂鬱は、日々増えていく。
それでも、サンドエク家として、長男は、魔法師団に入団させた。どうやら魔法の扱いなら、ジャンバディ以上だ。魔法鍛練場でも年上の者たちをも凌駕している。
サンドエク家の分家たちも、実力があれば、迷わず、魔法師団へ入団している。
それでも、『魔法師団を解散させて、困るのは魔法士だけだ。国費の削減には大きく貢献できるだろう。このまま国庫の負担であるだけの存在は、意味がない。』ジャンバディの苦悩は続く。
ジャンバディが魔法師団の存在価値について悩んでいたことを、気がついた国王陛下は、『存在価値はあるのだ』と示すために、サンドエク家に伯爵位を与えたのだ。だが、かえってそれが、ジャンバディの悩みを大きくしてしまうことになった。
国王陛下は、大陸全土の平和は、まだ薄氷の状態、特に東国は、おとなしいふりではないかと考えている。なので、抑止力として、ガーリウム王国の誇る魔法師団は、『そこにある』というだけで、その存在価値があるのだ。
各国の要人たちは、ガーリウム王国を訪れると、必ず、騎士団と魔法師団の視察をしていく。だが、内密視察であることも多い。その時は、前もって、ジャンバディに大きな魔術を数日間鍛練するように指示していた。なので、概ね、他国には『ガーリウム王国の誇る魔法師団』と評判だ。
しかし、ジャンバディは、サンドエク家の未来が見えぬと思っているので、敢えて、下の双子には、攻撃魔法などの指導を遅らせていた。あくまでも、魔力操作をしっかり学ばせ、魔力暴走だけはしないようにさせた。二人とも魔力の出し入れは得意だが、火や水など形にするのは、まだ得意ではない。
『幸い、双子の上の子は、勉強が得意で、ナハナージュ魔法研究所所長にも懐いている。下の子は、人見知りだから、上の子と一緒に研究者にしてもらうのがいいだろう。』ジャンバディは、そう考えていた。
だから、ジャンバディは、オーリオダムが魔道具を売りにきたナタロフ帝国の侯爵殿のところに勉強に行きたいと言ったことに、反対の気持ちは全くなかった。
〰️ 〰️ 〰️
「オーリー!!見ろよっ!すごいぞ!」
馬車の窓から見た景色は、湖の畔に広がるシロツメクサの草原であった。
ここは、ガーリウム王国の王都からはまだ、3刻ほどしか来ていない。子供たちが喜んでいるので、イロフスキー侯爵は、ここで昼食をとることにした。王宮の料理人が、たくさんのサンドイッチを持たせてくれたのだ。
馬車を降り立った瞬間、オーリオダムは、既視感に襲われ、少しだけクラクラした。だが、グレボウナの誘いにそれもすぐに忘れた。
オーリオダムは、無事に留学が許され、今日、グレボウナたちと一緒にナタロフ帝国へ向かって出発した。ここから、馬車と船とまた馬車で、まっすぐ向かっても、一月もかかるそうだ。
エマローズには、三日前に会った。
「いってくるね。」
「けがはしないでね。」
エマローズには、遠くに行くことも、何年も会えないかもしれないことも言えなかった。それでも、数日前、エマローズが待っていてくれると約束してくれたことがオーリオダムの支えになっていた。
ジャンバディ・サンドエク伯爵は、長い間、このことに悩んでいた。この世界には、回復魔法、治癒魔法は、存在していない。魔法は、攻撃系か防衛系か、または生活魔法だ。
かつて、サンドエク家は、大きな魔力を元に、戦争や魔獣討伐において活躍をし、騎士爵を賜った。ジャンバディの祖父が魔法師団団長となった時、子爵位を賜った。長い間子爵位であったが、去年、国王陛下の一存で、伯爵位となり、今の広大な敷地と屋敷を賜ったのだ。ジャンバディは、親類たちが喜んでいる中で、仕事に見合わぬ爵位に、少し怯んでいた。
魔法師団団長、確かに肩書きは素晴らしい。だが、ジャンバディ本人が活躍したのは、15年前のスタンビート〈魔獣暴走〉だ。その時の団長は父親であった。
『大陸全土が平和でここ数十年、戦争は起きていない。スタンビートもない。
日照りで水不足でも、国中に毎日水のために足を運べるわけじゃない。
水害は、塞き止める前に村は流されてしまう。
騎士団のように、護衛もないし警邏もない。
魔法師団は、ただ毎日、いつあるかわからぬ何かのために、鍛練を積んでいる。』
ジャンバディは、そう思っている。
ジャンバディは、厚い防御壁を作れる。だが、それをどこに作るのだ?ジャンバディは、大きく太い火の柱を出せる。だが、それを何に向かって出すのだ?
ジャンバディの憂鬱は、日々増えていく。
それでも、サンドエク家として、長男は、魔法師団に入団させた。どうやら魔法の扱いなら、ジャンバディ以上だ。魔法鍛練場でも年上の者たちをも凌駕している。
サンドエク家の分家たちも、実力があれば、迷わず、魔法師団へ入団している。
それでも、『魔法師団を解散させて、困るのは魔法士だけだ。国費の削減には大きく貢献できるだろう。このまま国庫の負担であるだけの存在は、意味がない。』ジャンバディの苦悩は続く。
ジャンバディが魔法師団の存在価値について悩んでいたことを、気がついた国王陛下は、『存在価値はあるのだ』と示すために、サンドエク家に伯爵位を与えたのだ。だが、かえってそれが、ジャンバディの悩みを大きくしてしまうことになった。
国王陛下は、大陸全土の平和は、まだ薄氷の状態、特に東国は、おとなしいふりではないかと考えている。なので、抑止力として、ガーリウム王国の誇る魔法師団は、『そこにある』というだけで、その存在価値があるのだ。
各国の要人たちは、ガーリウム王国を訪れると、必ず、騎士団と魔法師団の視察をしていく。だが、内密視察であることも多い。その時は、前もって、ジャンバディに大きな魔術を数日間鍛練するように指示していた。なので、概ね、他国には『ガーリウム王国の誇る魔法師団』と評判だ。
しかし、ジャンバディは、サンドエク家の未来が見えぬと思っているので、敢えて、下の双子には、攻撃魔法などの指導を遅らせていた。あくまでも、魔力操作をしっかり学ばせ、魔力暴走だけはしないようにさせた。二人とも魔力の出し入れは得意だが、火や水など形にするのは、まだ得意ではない。
『幸い、双子の上の子は、勉強が得意で、ナハナージュ魔法研究所所長にも懐いている。下の子は、人見知りだから、上の子と一緒に研究者にしてもらうのがいいだろう。』ジャンバディは、そう考えていた。
だから、ジャンバディは、オーリオダムが魔道具を売りにきたナタロフ帝国の侯爵殿のところに勉強に行きたいと言ったことに、反対の気持ちは全くなかった。
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「オーリー!!見ろよっ!すごいぞ!」
馬車の窓から見た景色は、湖の畔に広がるシロツメクサの草原であった。
ここは、ガーリウム王国の王都からはまだ、3刻ほどしか来ていない。子供たちが喜んでいるので、イロフスキー侯爵は、ここで昼食をとることにした。王宮の料理人が、たくさんのサンドイッチを持たせてくれたのだ。
馬車を降り立った瞬間、オーリオダムは、既視感に襲われ、少しだけクラクラした。だが、グレボウナの誘いにそれもすぐに忘れた。
オーリオダムは、無事に留学が許され、今日、グレボウナたちと一緒にナタロフ帝国へ向かって出発した。ここから、馬車と船とまた馬車で、まっすぐ向かっても、一月もかかるそうだ。
エマローズには、三日前に会った。
「いってくるね。」
「けがはしないでね。」
エマローズには、遠くに行くことも、何年も会えないかもしれないことも言えなかった。それでも、数日前、エマローズが待っていてくれると約束してくれたことがオーリオダムの支えになっていた。
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