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第六章 騎士団部隊長の視察
騎士団部隊長の視察
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騎士団長の命令でマーペリア辺境伯領地へ視察に行くことになったのは、部隊長カザシュタントである。
カザシュタント・ノーザンバードは、王都騎士団所属、5人いる部隊長の一人だ。ノーザンバード子爵家の三男。学園時代から鍛錬場へ通いつめ、何のコネもなく、見習いから実力だけで部隊長になった26歳の青年だ。団長1人、副団長2人に次ぐ役職で、数名の隊長を統べる。隊長の中には学園時代の仲間もいる。
隊も持たず、二人の側近だけを連れて、マーペリア辺境伯と新人兵士80名とともにマーペリア辺境伯領へと向かった。
彼の側近一人目はダニエル・ゼルブラームは一つ下の25歳。男爵家の跡取りだったが、領地経営より兵士の方が性に合うと、弟に爵位を譲り、学園卒業後すぐ騎士団へ入団した。
もう一人、フレデリック・バレーは伯爵家の4男だ。『四男には、期待も責任も何もありませんよ』と、自己判断し、20歳すぎてから入団してきた。フレデリックも25歳だ。
ダニエルとフレデリックは、カザシュタントの側近となり2年以上だ。三人だけのときは、砕けた口調になるほどの付き合いだ。
マーペリア辺境伯の城では、三人は、寄宿舎ではなく、城内に部屋を用意される。
到着して3日目、辺境伯軍の鍛錬場へと赴いた。
この日から3ヶ月、新人と在軍人を交えた訓練が行われる。その手伝いを三人はすることになった。
「普段は軍隊長たちがそれらをやるのだが、この人数では、やりきれんかった。三人には、世話になるが、よろしく頼む。」
軍隊長たちが軽く頭を下げる。三人にしてみれば、ブラブラと視察するより、余程居心地がいいので、気にされなくても問題ない。
一週間もすると新人たちの体つきもかなり変わり、鍛錬に槍も含まれるようになった。
二週間目が終わる頃、朝から若い兵士たちが浮わついていた。
「夕べ早馬が来て、今日中に『戦乙女』が到着するそうですよ。」
無情にも鍛錬の内容を厳しくされた新人兵士たちは、付き合わされることになった軍人たちに小突かれながら、走っていった。
『戦乙女』とは、ヴィオリアが王都の見習い鍛錬場で噂になっている呼び名である。強さよりも、その真剣な眼差しと真摯な取り組み、なによりその美しさでその名が付けられているのだ。
その日、三人は、辺境伯から夕食の誘いを受けた。そこで、ヴィオリアを紹介される。
「堅苦しいのは、苦手でな。
今日、娘が、夏休みで、学園から戻ってきたんだ。これから、鍛錬などでも世話になるだろうから、顔見せしておこうと思ってな。
ヴィオリア、ご挨拶だ。」
「マーペリア辺境伯が娘ヴィオリアです。よろしくお願いしますわ。」
座ったままなので、頭を下げるというより、少し小首を傾げた形だ。その仕草が可愛いらしく、三人は、少し戸惑う。
「ノーザンバード子爵家が三男カザシュタントです。こちらでは、カザンと呼ばれておりますので、ヴィオリア嬢もそうお呼びください。」
二人も挨拶をし、それぞれ、愛称も伝える。
「では、私のことも、ヴィオとお呼びください。私、敬語が苦手なので、みなさんが気さくな感じでよかったわ。」
ヴィオリアは、話すと見かけよりずっと明るく元気な印象だった。
〰️ 〰️ 〰️
食事後、なんとなく、三人はカザシュタントの部屋に集まった。メイドが気を利かして、お酒とツマミを用意をしてくれ、席をはずす。
三人は、ヴィオリアが騎士団員には、すでに人気であること。特に隊長クラスでさえ、ヴィオリアを狙っていること。それには、ヴィオリアとウズライザーがうまくいってないとの噂が関係していることを話した。
本当は、すでにヴィオリアの婚約は白紙にされているのだが、秘匿事項なので、三人はまだ知らない。
〰️ 〰️ 〰️
ヴィオリアは、帰ってきて、2日目には、鍛錬に参加していた。真面目に鍛錬するヴィオリアに対して、三人はかなり好印象になっていた。
三人とも、「ヴィオ」と呼ぶし、ヴィオは、それぞれを「さん」付けで呼ぶようになっていた。
新人研修1月目には、魔獣討伐という実習訓練がある。この訓練終了後、1回目の自己判断、王都へ帰還するかマーペリア辺境伯領に残るかを判断する日となる。毎年、大体半分ほどが王都へ帰還することになるのだが、今年も類をもれず、40名ほどが帰還した。
ヴィオリアは、魔獣討伐で一番槍をするほどである。
それからもヴィオリアは、時々鍛錬場に来ては、新人たちと同じ訓練をしていった。三人は、とても眩しい気持ちでそれを見ていた。
屋敷での4人は、朝食の後お茶をしたり、夕食の後カードゲームをしたりと、マーペリア辺境伯領視察の夏が過ぎていった。
〰️ 〰️ 〰️
ヴィオリアが王都の学園に戻る一週間前、マーペリア辺境伯は、カザシュタントにすべてを話す。ヴィオリアとウズライザーが婚約破棄していること。ただし、それは秘匿であること。今回の視察がカザシュタントとヴィオリアの見合いであったこと。
マーペリア辺境伯は、カザシュタントの答えを保留でいいとして、ヴィオリアの王都帰還時の護衛をカザシュタントたちに頼んだ。
側近たちのおかげで、自分がヴィオリアを気に入っていることに気がついたカザシュタントは、その日から、ヴィオリアとまともに話せなくなってしまう。しかし、護衛としての王都への道のりの中で、ヴィオリアとカザシュタントは改めて仲良くなった。
〰️ 〰️ 〰️
王都の騎士団で、カザシュタントを待っていたのは、部下である隊長、副隊長たちからの、『ヴィオリアはどうだったか』の質問攻めであった。ヴィオリアの人気を再確認したカザシュタントは、早々に決断、行動し、ヴィオリアと婚約するに至る。
〰️ 〰️ 〰️
ヴィオリアの卒業パーティーで、エスコートするカザシュタント。それを見守るダニエルとフレデリック。カザシュタントのダンスが見れたものではなかったことは、フレデリックに後を任せる。
3ヶ月後には、カザシュタントとヴィオリアの王都の結婚式が行われ、三人は改めて、マーペリア辺境伯領の住人になるのだった。
〰️ 〰️ 〰️
マーペリア辺境伯軍奮闘記にて、詳細を語ることにします。
こちら、書いていて面白くなってしまい、加筆の上、別まとめにしようと考えております。後日投稿しますので、そちらも楽しんでいただけますとうれしいです。
重なりで、よろしければこちらにも載せようかと思います。感想にて、ご意見あれば、よろしくお願いします。
カザシュタント・ノーザンバードは、王都騎士団所属、5人いる部隊長の一人だ。ノーザンバード子爵家の三男。学園時代から鍛錬場へ通いつめ、何のコネもなく、見習いから実力だけで部隊長になった26歳の青年だ。団長1人、副団長2人に次ぐ役職で、数名の隊長を統べる。隊長の中には学園時代の仲間もいる。
隊も持たず、二人の側近だけを連れて、マーペリア辺境伯と新人兵士80名とともにマーペリア辺境伯領へと向かった。
彼の側近一人目はダニエル・ゼルブラームは一つ下の25歳。男爵家の跡取りだったが、領地経営より兵士の方が性に合うと、弟に爵位を譲り、学園卒業後すぐ騎士団へ入団した。
もう一人、フレデリック・バレーは伯爵家の4男だ。『四男には、期待も責任も何もありませんよ』と、自己判断し、20歳すぎてから入団してきた。フレデリックも25歳だ。
ダニエルとフレデリックは、カザシュタントの側近となり2年以上だ。三人だけのときは、砕けた口調になるほどの付き合いだ。
マーペリア辺境伯の城では、三人は、寄宿舎ではなく、城内に部屋を用意される。
到着して3日目、辺境伯軍の鍛錬場へと赴いた。
この日から3ヶ月、新人と在軍人を交えた訓練が行われる。その手伝いを三人はすることになった。
「普段は軍隊長たちがそれらをやるのだが、この人数では、やりきれんかった。三人には、世話になるが、よろしく頼む。」
軍隊長たちが軽く頭を下げる。三人にしてみれば、ブラブラと視察するより、余程居心地がいいので、気にされなくても問題ない。
一週間もすると新人たちの体つきもかなり変わり、鍛錬に槍も含まれるようになった。
二週間目が終わる頃、朝から若い兵士たちが浮わついていた。
「夕べ早馬が来て、今日中に『戦乙女』が到着するそうですよ。」
無情にも鍛錬の内容を厳しくされた新人兵士たちは、付き合わされることになった軍人たちに小突かれながら、走っていった。
『戦乙女』とは、ヴィオリアが王都の見習い鍛錬場で噂になっている呼び名である。強さよりも、その真剣な眼差しと真摯な取り組み、なによりその美しさでその名が付けられているのだ。
その日、三人は、辺境伯から夕食の誘いを受けた。そこで、ヴィオリアを紹介される。
「堅苦しいのは、苦手でな。
今日、娘が、夏休みで、学園から戻ってきたんだ。これから、鍛錬などでも世話になるだろうから、顔見せしておこうと思ってな。
ヴィオリア、ご挨拶だ。」
「マーペリア辺境伯が娘ヴィオリアです。よろしくお願いしますわ。」
座ったままなので、頭を下げるというより、少し小首を傾げた形だ。その仕草が可愛いらしく、三人は、少し戸惑う。
「ノーザンバード子爵家が三男カザシュタントです。こちらでは、カザンと呼ばれておりますので、ヴィオリア嬢もそうお呼びください。」
二人も挨拶をし、それぞれ、愛称も伝える。
「では、私のことも、ヴィオとお呼びください。私、敬語が苦手なので、みなさんが気さくな感じでよかったわ。」
ヴィオリアは、話すと見かけよりずっと明るく元気な印象だった。
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食事後、なんとなく、三人はカザシュタントの部屋に集まった。メイドが気を利かして、お酒とツマミを用意をしてくれ、席をはずす。
三人は、ヴィオリアが騎士団員には、すでに人気であること。特に隊長クラスでさえ、ヴィオリアを狙っていること。それには、ヴィオリアとウズライザーがうまくいってないとの噂が関係していることを話した。
本当は、すでにヴィオリアの婚約は白紙にされているのだが、秘匿事項なので、三人はまだ知らない。
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ヴィオリアは、帰ってきて、2日目には、鍛錬に参加していた。真面目に鍛錬するヴィオリアに対して、三人はかなり好印象になっていた。
三人とも、「ヴィオ」と呼ぶし、ヴィオは、それぞれを「さん」付けで呼ぶようになっていた。
新人研修1月目には、魔獣討伐という実習訓練がある。この訓練終了後、1回目の自己判断、王都へ帰還するかマーペリア辺境伯領に残るかを判断する日となる。毎年、大体半分ほどが王都へ帰還することになるのだが、今年も類をもれず、40名ほどが帰還した。
ヴィオリアは、魔獣討伐で一番槍をするほどである。
それからもヴィオリアは、時々鍛錬場に来ては、新人たちと同じ訓練をしていった。三人は、とても眩しい気持ちでそれを見ていた。
屋敷での4人は、朝食の後お茶をしたり、夕食の後カードゲームをしたりと、マーペリア辺境伯領視察の夏が過ぎていった。
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ヴィオリアが王都の学園に戻る一週間前、マーペリア辺境伯は、カザシュタントにすべてを話す。ヴィオリアとウズライザーが婚約破棄していること。ただし、それは秘匿であること。今回の視察がカザシュタントとヴィオリアの見合いであったこと。
マーペリア辺境伯は、カザシュタントの答えを保留でいいとして、ヴィオリアの王都帰還時の護衛をカザシュタントたちに頼んだ。
側近たちのおかげで、自分がヴィオリアを気に入っていることに気がついたカザシュタントは、その日から、ヴィオリアとまともに話せなくなってしまう。しかし、護衛としての王都への道のりの中で、ヴィオリアとカザシュタントは改めて仲良くなった。
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王都の騎士団で、カザシュタントを待っていたのは、部下である隊長、副隊長たちからの、『ヴィオリアはどうだったか』の質問攻めであった。ヴィオリアの人気を再確認したカザシュタントは、早々に決断、行動し、ヴィオリアと婚約するに至る。
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ヴィオリアの卒業パーティーで、エスコートするカザシュタント。それを見守るダニエルとフレデリック。カザシュタントのダンスが見れたものではなかったことは、フレデリックに後を任せる。
3ヶ月後には、カザシュタントとヴィオリアの王都の結婚式が行われ、三人は改めて、マーペリア辺境伯領の住人になるのだった。
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マーペリア辺境伯軍奮闘記にて、詳細を語ることにします。
こちら、書いていて面白くなってしまい、加筆の上、別まとめにしようと考えております。後日投稿しますので、そちらも楽しんでいただけますとうれしいです。
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