婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
41 / 71
第五章 公爵令息の作戦 遂行編

作戦17 新しい仲間を作る

しおりを挟む
 夏休みが明けると、生徒会の世代交代だ。
「本来はイリサス様たちが指名するのですが、この期に及んでやらせたいわけが、ございませんわよね。」
ヴィオリアさんとエマローズさんが笑いながら頷く。

「上級学年からの指名は、ここにいる3人にいたします。中級学年からの指名は、あなたたちがなさいませ。」

「僕たちが決めていいなら、決まっています。ドナテル・シャーワントです。」

「やはりそうですわよね。わたくしも何度かお話してますが、聡明な方ですわ。」
イリサスさんの弟だ。イメルダリアさんはもちろん面識がある。

「じゃあ、みんなの意見は一緒ということで、いいかな。」

 新しい仲間が決まった。


〰️ 〰️ 〰️


 父上から、『次の週末に、ご令嬢たちと友達と、我が邸で茶会の約束をしてきなさい』という手紙がきた。

 週末、5人と約束をして、ディークと一緒に邸へ戻った。

「ヨアン、それとディークも、執務室に来なさい。」
父上に呼ばれ、二人で向かった。

「お呼びでしょうか。」

「明日の茶会は、問題ないか?」

「こちらは、問題ありませんが、父上のお考えがわかりません。」

「うむ、明日の茶会に、客人が見える。お前たちが、陛下の報告書に書いたことを教えてあげなさい。
私は明日も登城せねばならないから、客人のお相手はできない。」

「客人とは、どなたですか?」

「政務局の宰相補佐官であるゼファー殿だ。ゼファー殿は、アリーシャを娶りたいと考えていらっしゃる。」

「は?はぁ…?父上はお認めになったのですか?」

「アリーシャ次第だ。だが、殿下との婚約をなくす鍵にはなりそうだ。話を聞いてやれ。アリーシャの元までは行かせてやっていい。あとは、アリーシャに任せる。

だが、アリーシャに圧力をかけるつもりも、説得するつもりもない。だからこそ、ゼファー殿の好きにさせてやれ。

それと、その席にアリーシャ専属のメイドをつかせ、話を聞かせろ。」

「わかりました。」
どんな人がくるのだろう。


〰️ 〰️ 〰️


 客人は、僕たちより、頭1つほど背の高い美丈夫だった。僕たちは、まだ背は伸びるけどねっ!!

 それぞれ、挨拶と自己紹介を済ますと、それまでの王子たちの状況と彼女たちがどうするつもりなのかを話した。

 王子たちの状況はひどいものと思ったらしく、
「嘘だろう??」
と小さな声で呟いていた。たぶん、となりの僕にしか聞こえてない。

 ゼファー殿は、姉上とアナファルト王子の逢瀬の茶会について話した。なんと、茶会は、ゼファー殿が代理をしていた。さらに、公爵邸での逢瀬の断りの贈り物も代理。大切な日の贈り物もゼファー殿が代理だった。ご令嬢たちは、小さな悲鳴をあげていた。


 さらに、驚いたことに、ゼファー殿は、ゼファーライト・タニャード殿下、タニャード王国第2王子であった。さすがのディークも口を開けていた。

 そして、ゼファー殿は、姉上を妃として求める気持ちであると言った。ご令嬢たちは、先ほどとは違う小さな悲鳴をあげていた。なんと器用なことか。

 僕たちのゼファー殿への感情はは概ね好感を持ったと思う。僕は信じようと思えた。

 しかし、ゼファー殿は、まだ姉上を口説けないそうだ。王族であるがゆえに、手回りしが必要だと。ゼファー殿の準備ができるまで、婚約解消の話は待つこととなった。

「恋人としてなら、すぐにでも口説けるけど、私はアリーシャ嬢を生涯の伴侶に望んでいるんだ。」
ご令嬢たちから、黄色い悲鳴が上がった。ちょっと悔しかった。僕だって、結婚をしたくて口説いているのになぁ。

 父上には、僕から話をすることにした。王子と姉上の話がまわりに知らされていないのに、ゼファー殿が父上に何度も会いにいくのはおかしいだろう。

 王子にも姉上にも秘密で、今後この4組の婚約についての話を進めているので、逢瀬の茶会代理と贈り物代理は続けてもらうことになった。

 ゼファー殿は、政務が忙しいらしく、残念そうな顔で、王城へ帰っていった。


〰️ 〰️ 〰️

 ゼファー殿が帰るのを待っていたかのようにディークが話を始めた。
「客人のことをどこまで信じられるか不明だったから、話さなかったんだけど、残念な話があるんだ。」

「…そっか……。聞くよ。」

「王子はあの女と王宮で不貞をしている。」

「「「「「なっ!」」」」」

「そんなこと、可能なのかよっ!」

「だよね。お前でも、そう思うよね。なのに、なぜかできたんだ。」

「父上には?」

「話したよ。たぶん王宮では、犯人探ししてると思う。いくら王子が味方でも、あの女一人でできることじゃない。」

「じゃあ、姉上と王子は婚約解消できるね。」

「いつかは、ね。王子だけの問題じゃない。王宮の問題になってしまった。時間はかかるだろう。」
 王子の不貞よりも、警備の問題で、時間がかかりそうなことが残念だった。ゼファーライト殿下と待つ約束はしたが、イメルダリアさんたちのように、確定して、発表するのを待つ方が、家族としては、心休まる。


〰️ 〰️ 〰️


 僕たちは、これ以上何もできないままでいた。それでも、時間は過ぎていき、新しい仲間ドナテル・シャーワントを迎え入れ、生徒会の世代交代、引き継ぎを済ませ、イメルダリアさんたちは生徒会室へ来なくなった。
 そして、新しい生徒会としての初仕事、文化講演会を、無事に成功させた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。 今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。 ヤバいです。肝心な事を忘れて、  「林檎一切れゲットー」 なんて喜んでたなんて。 本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。 「わしはメイドじゃねえですが」 「そうね、メイドには見えないわね」  ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。 ーーーーーー タイトル改変しました。 ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って… その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を その数日後王家から正式な手紙がくる ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと 「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ ※ざまぁ要素はあると思います ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる

小倉みち
ファンタジー
 公爵令嬢のヴァイオレットは、自身の断罪の場で、この世界が乙女ゲームの世界であることを思い出す。  自分の前世と、自分が悪役令嬢に転生してしまったという事実に気づいてしまったものの、もう遅い。  ヴァイオレットはヒロインである庶民のデイジーと婚約者である第一王子に嵌められ、断罪されてしまった直後だったのだ。  彼女は弁明をする間もなく、学園を退学になり、家族からも見放されてしまう。  信じていた人々の裏切りにより、ヴァイオレットは絶望の淵に立ったーーわけではなかった。 「貴族じゃなくなったのなら、冒険者になればいいじゃない」  持ち前の能力を武器に、ヴァイオレットは冒険者として世界中を旅することにした。

処理中です...