婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
40 / 71
第五章 公爵令息の作戦 遂行編

作戦16 努力の結果を知る

しおりを挟む
 次の日、政務局へ行く時間に、ディークは玄関前に来た。

「ディーク、昨日、無理しすぎたんでしょ?休んだら?」

「いや、一晩寝たから大丈夫だよ。」

二人で馬車に乗り込む。
「本当に大丈夫?」

「ああ、自分の甘さを実感してるよ。今までは、うまく立ち回ればどうにかなるかと思っていたんだけど、甘かったな。
執事長に『外交に丸腰でいくのか?』と聞かれた。」

「武器が持っていけるとは、限らないでしょう?」

「僕もそう答えたよ。執事長は、『きちんと武術を習得すれば、棒切れも武器になる』って。『どこの国でも受け入れられると思うな』って、さっ。
今まで、そんなこと考えてなかった。」

「気がついたときに頑張れればいいんじゃないかな。」

「だよな。だから、今、頑張りたいんだ。
ヨアンは、どうだったんだ?」

「僕はよくわからない。宰相様が来いって言うから行くだけだし。
 でも、書類をみて、それについて、考えるのは、面白かったよ。却下されたものとかあってさ、僕ならここをアピールするのにな、とか思った。」

「そうか、君が面白いと思うようにしていけば、大丈夫だよ。」

「そうかな。うん!そうしてみるよ。ありがとうディーク!」

「礼を言いたいのは僕だよ。」

ディークは、鍛練場前で降りて、いった。

〰️ 〰️ 〰️

 なんと、今日は、一人だった。

「政務局の体験ってこんな感じなんですよね。すぐに来なくなってしまうんです。体験内容が悪いのかな?でも、私も体験に来ましたけど、楽しかったんですよねぇ。」

「僕も面白いと思いましたよ。」

「ああ、君は昨日の報告書に、そう書いてありましたね。」

「昨日の報告書には、感想を書いていいって言われたので、そうしました。」

「問題ありませんでしたよ。ところで、今日の体験も明日の体験も同じ内容なのですが、大丈夫ですか?」

「え?昨日と同じ書類ですか?」

「いえ、書類事態は変わりますが、やることは同じという意味ですね。」

「それなら、大丈夫です。」

「では、お一人なので、この箱から出して、この箱に入れてください。」
そう言って、昨日いた人が使っていた机においた。

「はい、報告用紙。昼休みも適当に。帰りは君の机に報告書を置いてくれればいい。終わり時間も同じね。何かあったら、あそこにいる誰かに聞いてね。」

「わかりました。」
 僕は、書類読みに集中した。

 こうして、政務局の体験は、2週間同じことをした。

 3、4週目、この頃になると、許可・承認されるものとされないものがわかってくる。そして体験が、僕が気になった書類に意見書を付けて提出するというものになった。
 箸にも棒にもかからないものも多い(僕に見せても大丈夫な書類なのでそういう内容なのだろうと思う)が、そんな書類の中で、僕としては『却下されているが、おっしい!』と思うものに、意見書を付けることが楽しかった。
 それに、いろいろな書類を読んでいくことで、僕の発想が広がっていってる気がする。
 
 他の体験者は、2週間持たない人ばかりだった。

 そうそう、時々、帰りに姉上のところに寄るのだが、

「わたくしは、大丈夫よ。」
と、おっしゃるので、何もできなかった。

〰️ 〰️ 〰️

 ディークは、鍛練場では『型』のクラスだそうだ。ゆっくりやっているのに、数手で負けてしまうときもあり、悔しいと言っていた。

 最近、ディークとは、馬車の中で新聞の内容について話すようになった。この前はディークと僕の意見が違っていて、なかなか面白かった。

 週半ばの語学の授業は、会話としてできるから、一人で本を読むより楽しい。経済学は、ディークの方が上って感じがした。

 週末には、ロンの家へよく遊びに行った。でも、ロンがいないことも多く、そうすると、イメルダリアさんが相手をしてくれる。時には、イメルダリアさんの手作りお菓子も食べることもある。すごく美味しい。学園でもクッキーなどはいただいていたけど、ケーキも作れるなんて、すごいな。
 ここへは、ちゃんと前触れしてから来る。なのに、ロンがいないのは、僕に気を使ってくれているのか?イメルダリアさんもいないときには、ちゃんと断りの連絡がくるし。うん、うれしいから問題なしで。
 最近は、イメルダリアさんと小説本の交換をよくしている。僕は冒険や他国での話の本をよく持っていく。イメルダリアさんは、推理と恋愛の小説とか、成功話と恋愛の小説とかが多いかな。自分では選ばないものなので、面白かった。

 ディークは、付いてこない。僕がいないと、ボロボロであったり、ヘトヘトであったりしている。執事長は、ディークに厳しいようだ。でも、ディークに聞いても、「ありがたいと思っている。」というから、大丈夫なはず。

〰️ 〰️ 〰️

 政務局体験最後の日、お昼の後、宰相執務室に呼ばれた。

「やってみて、どうだった?」

「僕にはない発想も、あって面白かったです。」

「そうか。    これを読んでみろ。」

一つの書類が渡される。承認されているものだった。
「以前は却下したのだが、君の意見を書いたものを一緒にして、送りかえしてやったものだ。」

「なるほど、ここをこうしたのかっ!すごいですねっ!」

「君の意見を参考にしたんだろう。君の発想も充分役にたったようだ。」

「うれしいです!」

「出されたものを精査して、ダメだというのは、簡単だ。だが、我々が発想を追加してやることで、役に立つ物になることもある。広い視野と発想力があることは大切だし、勉強することで、広げられる。

また、来年も来なさい。」

「はいっ!ありがとうございました!」

 僕は、以前より、書類や文書に自信があると、はっきり言える!そして、もっといろんなことを知りたくなった。充実した仕事体験ができた。


〰️ 〰️ 〰️

 夏休み明け、早速、いつもの6人で生徒会室に集まっている。

「あら?ディーク君、なんか雰囲気かわりませんか?」
エマローズさんが聞いた。

「あー!これ、私、よく知ってるわ!若い兵士たちを久しぶりに見たときの感想よっ!ディーク君、随分鍛練したんでしょう?すごいわぁ!」
ヴィオリアさんは、そちら方面は目敏い。

「ええ、夏休み中に、鍛練場へ通ったり、ヨアンの家の執事殿に体術を習いました。僕、そんなに変わったかな?」

「ディーク!体術までやったの?」
僕にまで言わないで、すごいことやっていたんだな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。 今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。 ヤバいです。肝心な事を忘れて、  「林檎一切れゲットー」 なんて喜んでたなんて。 本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。 「わしはメイドじゃねえですが」 「そうね、メイドには見えないわね」  ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。 ーーーーーー タイトル改変しました。 ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って… その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を その数日後王家から正式な手紙がくる ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと 「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ ※ざまぁ要素はあると思います ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...