婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
30 / 71
第四章 公爵令息の作戦 準備編

作戦6 情報を確認する

しおりを挟む
 次の週末、僕たちは、平民の格好をして、昼頃、市井にいった。
 僕は、中央広場の噴水前で、ウィンナーサンドを食べている。

 これは、以前、ロンの師匠の所に付き合わせてもらったときに教わった。細長くて、パリッとしたパンにソーセージが挟んであり、トマトソースがかかってる。市井のご飯をばかにしてはならない。
閑話休題

 今頃、ディークは、裏道に入るのをみつけられる所で待機してるはずだ。ロンは、山で鍛えた体力があると、僕たちの間を往復してくれている。

 ロンが来た。ウィンナーサンドを渡す。
「ディークのやつ、お茶屋に入ってメイドさんに声かけてんだぜ。」

「喫茶店な。店員さんな。   ディークらしいじゃん。」

「でもさぁ…。あっ!」
 ロンの視線を追うと、あの女とローブを着た男が絡み合って歩いている。
 
「ディークに教えてくる。」

「いや、このまま少し追おうよ。困った状況になったら、ディークを呼びに行って。」

 二人を尾行する。しばらく買い物した後、ディークのいる喫茶店の方へ行った。
 窓際にいたディークがこちらに気がつく。ディークのいた喫茶店を通りすぎて裏路地へ、入っていく。

 すぐにディークが追い付いてきた。
「やっぱり、ここ通ると思ったんだよね。」

「「なんで?」」

「それは、また後で。」

 二人の尾行を続けると、宿屋のような作りの建物に入っていった。
「はぁ、こんなに予想通りに動くかなぁ。」
ディークは呆れているが、僕たちはわからない。

「看板も何もないけど。」

「とにかく、こんなところに僕らはいない方がいい。広場へ行こう。」

「え、尾行しなくていいのか?」

「もう、必要ないよ。行こう。」
ディークは、有無を言わさず引き返した。

〰️ 〰️ 〰️

 広場から辻馬車を使い、公爵邸に戻ってきた。

 僕の部屋のソファーセットにお茶と茶菓子にしてはとてもたくさんの軽食を用意してくれたメイドは、気を利かせて席をはずしてくれた。

 どうやら腹ペコだった僕たちは、しばらく無言で食べた。

「で、あそこは何なんだよ。看板もなかったんだぞ。」
ロンが指を舐めながら聞いた。

「ココロールって聞いたことない?」

「「え!!??」」
 噂には聞いたことがある。男女が、その……、そういうことをする所らしい。

「まあ、そういうことだよね。

普通は夜、回りに顔を見られないように入る所なんだけど、昼間からだもんなぁ。男はいいけどさぁ、令嬢は顔みられたら、終わりでしょう。」

「ディークは、行ったことあるの?」
 僕は、なんとなく聞いてみた。

「まっさかあ、僕は女性をそういう風には扱わないよ。あくまでも、お茶友達。」
 どこまで本気かわからないが、とりあえず信じることにする。

「イリサスさんとあんなんだから、エンゾラールさんともそうかなぁとは、お前らも考えただろ?」

「「うん。」」

「なら、ココロールだろうなぁ、って思って。」

「「だから、あの(喫茶)店を選んだんだっ!」」


「そういうこと。まさか、最初の週末で見つけられるなんて、ついてたね。

ま、これで確認できちゃったようなもんだねえ。」
 
うーーん、報告しないわけには、いかないよね?


〰️ 〰️ 〰️


 ある子爵邸に、お願いをするために来ている、僕とディーク。

 子爵殿とディークは知り合いのようで、気さくに挨拶している。
「彼は僕の友人で、ヨアンシェル・レンバーグです。」

「公爵様でしたか、以後お見知りおきを。」
頭を下げてくれる。僕は子爵殿より子供ほど年下なのだから気にしなくていいのにと、思わなくはないが、これが貴族だ、仕方がない。

「それでね、子爵殿。今日はヨアンからお願いがあってきたんですよ。」

「ええ、私にできることなら。」

「子爵殿にしか頼めないことなんです。
いつとはわからないのですが、週末の夜、一晩だけ、3階東から2つ目の部屋のバルコニーをお借りしたいんです。」

「え!!そ、そこは娘の部屋で……。」

「そうでしたか、でも、そこをどうにか。」

「理由を、聞いても?」

「話してもいいですが、話を聞いたら共犯ですよ。聞かなければ、『公爵に脅された』と言えばいい。」
 ここで『公爵』って出すのかぁ。脅しじゃないか。とディークの交渉に呆れと感心をした。

「ん、ん、ん。     わかりました。
ですが、その時には、娘は違う部屋に移しますし、部屋にはメイドを置きますよ。」

「もちろん!僕らも不埒なことをするわけじゃない。願ってもない処置ですよ。」

「では、借りる日にまた伺いますね。」

 こうして、交渉が、成立した。

 あれから、1週目、2週目と、あの女の家に変化はなかった。

 そして、3週目まだ、深夜になる随分前、あのバルコニーに縄ばしごが掛かった。
僕とディークは、子爵邸に急ぐ。

「こんな夜遅くとは聞いてませんぞ。」

「週末の夜と伝えましたよ。」

「くっ、娘を移しますので、しばらくここでお待ちください。」
 待たされたのは、玄関ホールのままだ。僕たちは子供だから気にしないけど。子爵殿に余裕がないのがわかる。

 しばらくして、通してもらった部屋は、なるほど、若い女性の部屋だった。
 メイドが後ろに付いてるし、ご令嬢の部屋をキョロキョロもできないので、僕たちは急いで、バルコニーに出た。
 そこには、2人掛けのソファーがあった。子爵殿の心遣いがうれしかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)

との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。 今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。 ヤバいです。肝心な事を忘れて、  「林檎一切れゲットー」 なんて喜んでたなんて。 本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。 「わしはメイドじゃねえですが」 「そうね、メイドには見えないわね」  ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。 ーーーーーー タイトル改変しました。 ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 32話、完結迄予約投稿済みです。 R15は念の為・・

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って… その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を その数日後王家から正式な手紙がくる ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと 「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ ※ざまぁ要素はあると思います ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...