29 / 71
第四章 公爵令息の作戦 準備編
作戦5 家族に相談する
しおりを挟む
「ですから、今日聞いたことをきちんとまとめて、両親に、相談すべきだと思うのです。」
エマローズ嬢の意見で、決まった。
「そうですわね。わたくしは、少々家族に秘密にし過ぎました。きっとびっくりなさるわね。」
「姉さん、その時は俺も一緒だからっ!」
「ありがとう。フフフ、あなたがこんなに頼れるなんて。」
ロンの顔が赤くなる。
「わたしは、どうにかなると思う。この前のお父様の顔、怖かったもの。
ちょうどその視察のために王都にきているの。夏休みになるときに領地へ一緒に帰る予定なのよ。」
この前とは、騎士団団長と辺境伯殿の鍛練場視察のことだろう。
「うちなんかに婿に来てくれる人なんて、希少だからさぁ。そう思って我慢してたんだけど、もう無理だよねぇ。
お二人はなぜ、我慢してたの?」
「わたくしは、家族に心配かけたくなくて。宰相を目指している方だもの、ちゃんと気がつけば立ち直ってくださるって信じていたの。でも、Cクラスになってしまうなんて、宰相を目指していらっしゃらないのかしら?」
「わたくしは、お父様から彼が研究熱心だと聞いていたので。結婚したら、わたくしは、領地運営をする予定でしたの。その勉強が楽しくて、エンゾラール様を気にしてなかったのですわ。
でも、結婚って、子供を作るのですよね。わたくし、エンゾラール様とそうできる気がしませんわ。」
令嬢の口から、子作りの話が出て、僕たちは、どう返事をしていいかわからない。
「ですよねぇ!私も今、ウズライザー様に触られたくないですもの。」
「まあ、まあ、男性方が困ってらっしゃいますわよ。
ところで、ヨアン君、アリーシャ様は大丈夫なのかしら?」
イメルダリア嬢は、姉上の心配までしてくれる。本当に優しい女性だ。
「この前確認したら、贈り物や茶会はできているようでした。
状況が変わっているかもしれないので、また聞いておきます。」
「お願いしますわ。アリーシャ様は、いつも王妃教育で忙しいそうで、なかなかお話ができませんの。休み時間も、難しい本を読んでいらっしゃることが多くて。」
「そうでしたか、気を配ってくださって、ありがとうございます。」
「王宮のことは、僕も探ってみるよ。」
ディークが、軽く言う。
「なんで王宮のことを、お前が探れるんだよっ!」
ロンの言い分は、最もだ。
「メイドさんと、文通してるからさぁ。」
本当に軽いノリだ。最近のディーク、怖い。
「とにかく、一月後、またお話しましょう。その時は、シェンも、トラリオン様もこちらにおいでください。お願いいたしますわ。」
「ディークでいいですよ。年下ですし。」
「え、そうですか。では、ディーク様。」
「年下です。」
ニコッとするディーク。
「……、ディーク君、で。」
「ありがとうございます!」
イメルダリア嬢が負けた気がする。こうやって女性を引き込むのか、ディークの一端を見た気がした。
でも、イメルダリア嬢は、譲らないぞ。
〰️ 〰️ 〰️
その週末、僕は姉上のことを父上に相談した。学園でのことは、父上も知っていたが
「一過性のことなら、放っておこうということになっておってな。」
と、口苦そうに言った。
ということは、陛下もご存知なのだろう。僕は、知る限りのことを父上に話した。
……
「そうか、それら話は各家には伝わっているのか?」
「ご令嬢方と、話をしたのは、週の半ばでしたので、早い方は、この週末にお話なされていると思います。」
「なるほど。殿下については?」
「学園での奔放な行動は、みんなが見ているところですが、他の話は今のところありません。」
「アリーシャはなんと?」
「姉上は、贈り物はいただいているし、王宮で茶会もしていると言ってました。」
「もう、一年以上、殿下はこちらには見えておりませんわ。贈り物だけしっかり届きますの。でも、本当に嬉しそうに受け取りますのよ。」
母上が、家での様子を伝える。
「なるほど、二人ともまた確認してみてくれ。
他の家のことも含め、調査してみよう。
アリーシャは、責任感が強い。ワシに泣き言は言わないだろう。頼んだぞ。」
「わかりましたわ。」
「はい、父上。」
「うちは、王家との婚姻を望んでいるわけではない。だから、アリーシャが望まないなら、無理強いはしない。
だからといって、王家への忠誠はかわらん。
二人も心に止めておくように。」
「そうですわね。アリーシャの気持ちが先ですわね。」
「うむ、よろしくな。」
「はい。」
うん!親に相談するって、心強い!
〰️ 〰️ 〰️
結果的に、姉上の本当の気持ちは、よくわからない。『殿下の今の様子は気になるが、今だけだろうと思っているの。それより、貴族としての義務を果たすことが大切だわ』と言う。
母上曰く、『義務を果たしたい』が気持ちなのだと言う。
王子への気持ちはなくていいのだろうか?
あれ?これって子供の頃考えたことあるな。その時、僕はどう考えたんだろう?
17歳の僕が考えてわからないことを、12歳の僕はどうしたんだろう?
あ!そうだ。自分の宿題にしたんだ。『貴族の義務を果たす』ことと『幸せ』になること。
どちらも、大事なことなのに、どちらかしか選べないのかな。
僕の宿題は、まだ終わらないみたいだ。
エマローズ嬢の意見で、決まった。
「そうですわね。わたくしは、少々家族に秘密にし過ぎました。きっとびっくりなさるわね。」
「姉さん、その時は俺も一緒だからっ!」
「ありがとう。フフフ、あなたがこんなに頼れるなんて。」
ロンの顔が赤くなる。
「わたしは、どうにかなると思う。この前のお父様の顔、怖かったもの。
ちょうどその視察のために王都にきているの。夏休みになるときに領地へ一緒に帰る予定なのよ。」
この前とは、騎士団団長と辺境伯殿の鍛練場視察のことだろう。
「うちなんかに婿に来てくれる人なんて、希少だからさぁ。そう思って我慢してたんだけど、もう無理だよねぇ。
お二人はなぜ、我慢してたの?」
「わたくしは、家族に心配かけたくなくて。宰相を目指している方だもの、ちゃんと気がつけば立ち直ってくださるって信じていたの。でも、Cクラスになってしまうなんて、宰相を目指していらっしゃらないのかしら?」
「わたくしは、お父様から彼が研究熱心だと聞いていたので。結婚したら、わたくしは、領地運営をする予定でしたの。その勉強が楽しくて、エンゾラール様を気にしてなかったのですわ。
でも、結婚って、子供を作るのですよね。わたくし、エンゾラール様とそうできる気がしませんわ。」
令嬢の口から、子作りの話が出て、僕たちは、どう返事をしていいかわからない。
「ですよねぇ!私も今、ウズライザー様に触られたくないですもの。」
「まあ、まあ、男性方が困ってらっしゃいますわよ。
ところで、ヨアン君、アリーシャ様は大丈夫なのかしら?」
イメルダリア嬢は、姉上の心配までしてくれる。本当に優しい女性だ。
「この前確認したら、贈り物や茶会はできているようでした。
状況が変わっているかもしれないので、また聞いておきます。」
「お願いしますわ。アリーシャ様は、いつも王妃教育で忙しいそうで、なかなかお話ができませんの。休み時間も、難しい本を読んでいらっしゃることが多くて。」
「そうでしたか、気を配ってくださって、ありがとうございます。」
「王宮のことは、僕も探ってみるよ。」
ディークが、軽く言う。
「なんで王宮のことを、お前が探れるんだよっ!」
ロンの言い分は、最もだ。
「メイドさんと、文通してるからさぁ。」
本当に軽いノリだ。最近のディーク、怖い。
「とにかく、一月後、またお話しましょう。その時は、シェンも、トラリオン様もこちらにおいでください。お願いいたしますわ。」
「ディークでいいですよ。年下ですし。」
「え、そうですか。では、ディーク様。」
「年下です。」
ニコッとするディーク。
「……、ディーク君、で。」
「ありがとうございます!」
イメルダリア嬢が負けた気がする。こうやって女性を引き込むのか、ディークの一端を見た気がした。
でも、イメルダリア嬢は、譲らないぞ。
〰️ 〰️ 〰️
その週末、僕は姉上のことを父上に相談した。学園でのことは、父上も知っていたが
「一過性のことなら、放っておこうということになっておってな。」
と、口苦そうに言った。
ということは、陛下もご存知なのだろう。僕は、知る限りのことを父上に話した。
……
「そうか、それら話は各家には伝わっているのか?」
「ご令嬢方と、話をしたのは、週の半ばでしたので、早い方は、この週末にお話なされていると思います。」
「なるほど。殿下については?」
「学園での奔放な行動は、みんなが見ているところですが、他の話は今のところありません。」
「アリーシャはなんと?」
「姉上は、贈り物はいただいているし、王宮で茶会もしていると言ってました。」
「もう、一年以上、殿下はこちらには見えておりませんわ。贈り物だけしっかり届きますの。でも、本当に嬉しそうに受け取りますのよ。」
母上が、家での様子を伝える。
「なるほど、二人ともまた確認してみてくれ。
他の家のことも含め、調査してみよう。
アリーシャは、責任感が強い。ワシに泣き言は言わないだろう。頼んだぞ。」
「わかりましたわ。」
「はい、父上。」
「うちは、王家との婚姻を望んでいるわけではない。だから、アリーシャが望まないなら、無理強いはしない。
だからといって、王家への忠誠はかわらん。
二人も心に止めておくように。」
「そうですわね。アリーシャの気持ちが先ですわね。」
「うむ、よろしくな。」
「はい。」
うん!親に相談するって、心強い!
〰️ 〰️ 〰️
結果的に、姉上の本当の気持ちは、よくわからない。『殿下の今の様子は気になるが、今だけだろうと思っているの。それより、貴族としての義務を果たすことが大切だわ』と言う。
母上曰く、『義務を果たしたい』が気持ちなのだと言う。
王子への気持ちはなくていいのだろうか?
あれ?これって子供の頃考えたことあるな。その時、僕はどう考えたんだろう?
17歳の僕が考えてわからないことを、12歳の僕はどうしたんだろう?
あ!そうだ。自分の宿題にしたんだ。『貴族の義務を果たす』ことと『幸せ』になること。
どちらも、大事なことなのに、どちらかしか選べないのかな。
僕の宿題は、まだ終わらないみたいだ。
1
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説

【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)
との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。
今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。
ヤバいです。肝心な事を忘れて、
「林檎一切れゲットー」
なんて喜んでたなんて。
本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん
ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ーーーーーー
タイトル改変しました。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜
白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます!
➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を
その数日後王家から正式な手紙がくる
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと
「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ
※ざまぁ要素はあると思います
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

裏切られた公爵令嬢は、冒険者として自由に生きる
小倉みち
ファンタジー
公爵令嬢のヴァイオレットは、自身の断罪の場で、この世界が乙女ゲームの世界であることを思い出す。
自分の前世と、自分が悪役令嬢に転生してしまったという事実に気づいてしまったものの、もう遅い。
ヴァイオレットはヒロインである庶民のデイジーと婚約者である第一王子に嵌められ、断罪されてしまった直後だったのだ。
彼女は弁明をする間もなく、学園を退学になり、家族からも見放されてしまう。
信じていた人々の裏切りにより、ヴァイオレットは絶望の淵に立ったーーわけではなかった。
「貴族じゃなくなったのなら、冒険者になればいいじゃない」
持ち前の能力を武器に、ヴァイオレットは冒険者として世界中を旅することにした。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる