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第四章 公爵令息の作戦 準備編
作戦4 情報を共有する
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二人と例の話をしてから、僕は一生懸命考えた。
彼女たちに何を言うべきか。彼女たちをどうしてあげるべきか。
たくさん考えたけど、わからなかった。
だから、また、二人に相談した。
「俺から姉さんに相談しようか?」
「お前、この前まで 公爵さまの顔も知らなかったんだろ?そんなやつが急に心配なんかしたら、余計に心配かけんだろ?」
ロンはしょんぼりするが、ディークは冷静だ。ロンの気持ちはよくわかる。
「でも、僕はこのままにはしたくないんだよ。」
僕もディークに願うように言った。
「女性の気持ちをさ、僕らがわかるわけないし。女性もそれぞれなんだから、もっとわかるわけないんだよ。
ヨアンが悩むだけ無駄。」
「じゃ、じゃあ、どうすんだよ?姉さんの不幸を見てるだけか?」
ロンがディークに迫る。
「そうは言ってないだろ。
わからないんだから、聞くしかないんだよ。」
「「え??」」
「だから、ご令嬢たちに聞くんだよ。」
「そうか。そうだよな。彼女たちに聞いてみるよ。二人とも、今日の放課後付き合ってほしい。」
〰️ 〰️ 〰️
放課後、いつもの4人で生徒会室にいる。
僕は緊張しながら、彼女たちに話かけた。
「あのっ!みなさんに話があるんです。」
「ヨアン君、顔が青いわよ。大丈夫?」
イメルダリア嬢が気を使ってくれる。
それが、うれしい。
「大丈夫です!それより、僕がお茶を入れるので、少し話をさせてください。」
三人は、顔を見合わせて頷き、すんなりとソファーに移ってくれた。
それぞれの前にお茶が並ぶ。
「それで?どうなさいましたの?」
こういうときに、きちんと仕切ってくれるのは、イメルダリア嬢だ。
「みなさんの婚約者殿の話です。こうして、みなさんが生徒会役員をやってくれるのはうれしいです。
でも、その根本はダメなままですよね?」
「「「っ」」」
「あと、数ヶ月で生徒会は、世代交代します。
それで終わりでいいのでしょうか?
みなさんは、このままで本当にいいのですか?」
「そ、それは…」
イメルダリア嬢は言い淀む。
「私は嫌よ。先日なんて、お父様と鍛練場へ視察に行ったら……。」
「うわっ!ヴィオリア嬢ちょっと待ってください。」
ヴィオリア嬢の怒りの勢いがすごかったが、僕だけ話を聞いてしまうわけにはいかない。
「なに!!??」
「実は、僕のこの話には協力者がいて、もし、良かったら、彼らにも聞いてほしいのです。」
この申し出には、さすがにびっくりしていたが、三人は目で頷きあい、
「ヨアン君を信じますわ。その方たちともお話しましょう。」
「よかった!今日、連れてきてるんですっ!」
僕はドアまで駆けていって、二人を招き入れた。
「っっ、シェン!!」
シェノーロンドは、家族には『シェン』と呼ばれているようだ。
「僕から紹介しますね。こっちは、シェノーロンド・ユラベル、イメルダリア嬢の弟です。」
僕から手前のロンを紹介する。小さく頭を下げる。
「で、そっちは、ディビィルーク・トラリオン、子爵家の次男です。」
ディークが胸に手を当て頭さげた。さすがに、女性になれている。
「二人とも僕のクラスメートで、僕の相談にのってくれています。その関係もあり、二人は、みなさんのことを知っています。」
「わ、わかりましたわ。こちらへどうぞ。」
ロンが来るなんて思わなかったんだろう。イメルダリア嬢が少し戸惑っている。
「じゃあ、お茶入れるわね。」
ヴィオリア嬢とエマローズ嬢が立ってお茶の用意を始める。
ロンとディークが空いている二人掛けに並んで座る。ロンが口をきる。
「姉さん、俺、姉さんが心配で。」
「ありがとう、シェン。心配かけたくなくて、イリサス様のことは、あまり家で話さないように、していたから。」
「俺も自分の好きなことばっかりやってて、姉さんの婚約者のこととか、よく知らなくて…。」
「いいのよ、そんなこと。あなたはゆくゆくは、ユラベル家のことを考えてくれれば、それでいいの。まだ学生だもの。自由になさい。」
そう話している間にお茶が配られ、ヴィオリア嬢とエマローズ嬢も座った。
「改めて、さっきの話なのですが、まずは、事実を話して、その後、みなさんの気持ちとかを聞きたいと思ってます。」
「そうですわね。感情的になって話さないようにしましょう。」
「ヴィオリア嬢が、鍛練場で見たことからですね。」
………
そこからは、出てくる出てくる、令嬢方の口からお花畑さんたちの愚行。僕たちも見たことを虚飾なく伝えた。
「かなり、すごい人たちですね。よく堪えて、さらに、こんな生徒会なんて、尻拭いじゃないですかっ。」
僕は声を少し荒げてしまった。
「でも、わたくしたちが婚約者様をどうにかできていれば起こらなかったことですもの。
学園のみなさんには、迷惑はかけられませんわ。」
イメルダリア嬢の言葉に令嬢二人も頷く。
「生徒会については、僕が前生徒会長に、無理を言ったことが発端なので、すごく感謝しています。
だからこそ、みなさんをこのままにしておけない。」
「だけど、僕らに何ができるのか、それが、問題だろ。」
ディークの意見は正しい。
何ができるんだろう。
「わたくしは、わたくしたちではどうしようもないのだと、思いますわ。」
と、エマローズ嬢。
「ですから、今日聞いたことをきちんとまとめて、両親に、相談すべきだと思うのです。」
『まとめて』というあたりが、エマローズ嬢らしい。
彼女たちに何を言うべきか。彼女たちをどうしてあげるべきか。
たくさん考えたけど、わからなかった。
だから、また、二人に相談した。
「俺から姉さんに相談しようか?」
「お前、この前まで 公爵さまの顔も知らなかったんだろ?そんなやつが急に心配なんかしたら、余計に心配かけんだろ?」
ロンはしょんぼりするが、ディークは冷静だ。ロンの気持ちはよくわかる。
「でも、僕はこのままにはしたくないんだよ。」
僕もディークに願うように言った。
「女性の気持ちをさ、僕らがわかるわけないし。女性もそれぞれなんだから、もっとわかるわけないんだよ。
ヨアンが悩むだけ無駄。」
「じゃ、じゃあ、どうすんだよ?姉さんの不幸を見てるだけか?」
ロンがディークに迫る。
「そうは言ってないだろ。
わからないんだから、聞くしかないんだよ。」
「「え??」」
「だから、ご令嬢たちに聞くんだよ。」
「そうか。そうだよな。彼女たちに聞いてみるよ。二人とも、今日の放課後付き合ってほしい。」
〰️ 〰️ 〰️
放課後、いつもの4人で生徒会室にいる。
僕は緊張しながら、彼女たちに話かけた。
「あのっ!みなさんに話があるんです。」
「ヨアン君、顔が青いわよ。大丈夫?」
イメルダリア嬢が気を使ってくれる。
それが、うれしい。
「大丈夫です!それより、僕がお茶を入れるので、少し話をさせてください。」
三人は、顔を見合わせて頷き、すんなりとソファーに移ってくれた。
それぞれの前にお茶が並ぶ。
「それで?どうなさいましたの?」
こういうときに、きちんと仕切ってくれるのは、イメルダリア嬢だ。
「みなさんの婚約者殿の話です。こうして、みなさんが生徒会役員をやってくれるのはうれしいです。
でも、その根本はダメなままですよね?」
「「「っ」」」
「あと、数ヶ月で生徒会は、世代交代します。
それで終わりでいいのでしょうか?
みなさんは、このままで本当にいいのですか?」
「そ、それは…」
イメルダリア嬢は言い淀む。
「私は嫌よ。先日なんて、お父様と鍛練場へ視察に行ったら……。」
「うわっ!ヴィオリア嬢ちょっと待ってください。」
ヴィオリア嬢の怒りの勢いがすごかったが、僕だけ話を聞いてしまうわけにはいかない。
「なに!!??」
「実は、僕のこの話には協力者がいて、もし、良かったら、彼らにも聞いてほしいのです。」
この申し出には、さすがにびっくりしていたが、三人は目で頷きあい、
「ヨアン君を信じますわ。その方たちともお話しましょう。」
「よかった!今日、連れてきてるんですっ!」
僕はドアまで駆けていって、二人を招き入れた。
「っっ、シェン!!」
シェノーロンドは、家族には『シェン』と呼ばれているようだ。
「僕から紹介しますね。こっちは、シェノーロンド・ユラベル、イメルダリア嬢の弟です。」
僕から手前のロンを紹介する。小さく頭を下げる。
「で、そっちは、ディビィルーク・トラリオン、子爵家の次男です。」
ディークが胸に手を当て頭さげた。さすがに、女性になれている。
「二人とも僕のクラスメートで、僕の相談にのってくれています。その関係もあり、二人は、みなさんのことを知っています。」
「わ、わかりましたわ。こちらへどうぞ。」
ロンが来るなんて思わなかったんだろう。イメルダリア嬢が少し戸惑っている。
「じゃあ、お茶入れるわね。」
ヴィオリア嬢とエマローズ嬢が立ってお茶の用意を始める。
ロンとディークが空いている二人掛けに並んで座る。ロンが口をきる。
「姉さん、俺、姉さんが心配で。」
「ありがとう、シェン。心配かけたくなくて、イリサス様のことは、あまり家で話さないように、していたから。」
「俺も自分の好きなことばっかりやってて、姉さんの婚約者のこととか、よく知らなくて…。」
「いいのよ、そんなこと。あなたはゆくゆくは、ユラベル家のことを考えてくれれば、それでいいの。まだ学生だもの。自由になさい。」
そう話している間にお茶が配られ、ヴィオリア嬢とエマローズ嬢も座った。
「改めて、さっきの話なのですが、まずは、事実を話して、その後、みなさんの気持ちとかを聞きたいと思ってます。」
「そうですわね。感情的になって話さないようにしましょう。」
「ヴィオリア嬢が、鍛練場で見たことからですね。」
………
そこからは、出てくる出てくる、令嬢方の口からお花畑さんたちの愚行。僕たちも見たことを虚飾なく伝えた。
「かなり、すごい人たちですね。よく堪えて、さらに、こんな生徒会なんて、尻拭いじゃないですかっ。」
僕は声を少し荒げてしまった。
「でも、わたくしたちが婚約者様をどうにかできていれば起こらなかったことですもの。
学園のみなさんには、迷惑はかけられませんわ。」
イメルダリア嬢の言葉に令嬢二人も頷く。
「生徒会については、僕が前生徒会長に、無理を言ったことが発端なので、すごく感謝しています。
だからこそ、みなさんをこのままにしておけない。」
「だけど、僕らに何ができるのか、それが、問題だろ。」
ディークの意見は正しい。
何ができるんだろう。
「わたくしは、わたくしたちではどうしようもないのだと、思いますわ。」
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