婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

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第三章 隣国王子の恋愛事情 恋の事情編

4 恋の転 2

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  ガーリウム王国へ出発する朝、早馬を出した。
 レンバーグ公爵殿とヨアンシェル殿には、アリーシャ嬢とのことは家族に喜ばれ、賛成してもらえたこと。
 アリーシャ嬢には、無事仕事を終えて帰路にあること。
 アナファルト王子にはお茶会代理には間に合うこと。
 それぞれに手紙を書いて、早馬に託した。

〰️ 〰️ 〰️

 ガーリウム王国に戻り、次の日にはアリーシャ嬢との例の茶会だった。
 アリーシャ嬢にはお土産として珊瑚の置き物を贈った。喜んでくれたようで、王城の婚約者執務室に飾ると言われたので、是非アリーシャ嬢の公爵邸の部屋に飾ってほしいと伝えた。アナファルト王子に関係している場所に飾ってほしくはないなんて、けっして、重たい男なわけではない。

「ここ2週間ほど、ずっと家におりましたのよ。学園の成績は足りてるからって。確かに学園では、やることはありませんが、行かないとなると物足りなく感じますわ。

王妃教育も終わりだからと、こちらへも来てなくて。
今日、伺ったのは久しぶりですの。」

「そうだったのですか。
あと2週間で卒業式ですね」

「本当に、4年間あっという間でしたわ。
あとは、家で結婚式に向けて準備でもしておきます。」
 その準備は無駄になるかもなぁ…無駄になってほしいなぁ…と思ったが、笑顔で無理はしないでと伝えるに留まった。




 それから、無駄になっても構わないからとレンバーグ公爵殿に、アリーシャ嬢へのドレスを受け入れてもらった。

 そして、ヨアンシェル殿たちと最終打ち合わせをしたりした。
 そこで、アナファルト王子の不貞が明らかになったことを聞いた。怒りで表情が作れなかった。これで、アリーシャ嬢は自由になれるだろう。だが、必ずその前に傷つくことが確定してしまった。この償いをさせたい!と思った。しかしながら、私にできることでもなく、私がするべきことでもなかった。ただただ怒り、その時には傷ついているだろう彼女に寄り添うことしかできないのだ。いや、寄り添って、そんなものはすぐに忘れさせよう!

「エマローズさんの婚約白紙も決まったのだろう?私もこうしてはっきりしたわけだし、今すぐでもいいんじゃないのか?」
と尋ねたら、どうやら、あの4人の親たちに、愚息たちに卒業の証を渡すという温情の気持ちがあるらしい。

 確かに学園卒業の証があれば、市井に落ちても待遇が変わることもある。醜聞の届いていない他国でなら、尚更、待遇がよくなることが容易に想像できる。だとしても、甘いと思わざるを得ない。


 ヨアンシェル殿たちは、卒業パーティーの予行練習を使ってアナファルト王子たちと闘うことにしたようだ。なんでも、その日に、王子たちが、ご令嬢たちに何かしてきそうなのだとか。何でも苛めの冤罪だとか。どこまで愚かしいのだろうか。

 それにしても、予行練習という発想は面白い。軍事パレードなどでは、予行練習というのを聞くが、卒業パーティーの予行練習など聞いたことがない。卒業パーティーは、自分たちだけのものではないから、大事にしたいそうだ。
 しかし、残念ながら、それには、私の出番はないそうなので、成功を祈るのみである。

〰️ 〰️ 〰️

 卒業式そして卒業パーティー予行練習の当日を迎えた。私は王城で、今か今かと結果を待った。お昼を少し過ぎた頃、国王陛下と令息たちの父親のみなさんが戻ってきた。顔は険しい。

 すぐに、会議室に入られたが、私はそこへはさすがに入れない。
 しばらくして宰相執務室へ文官が僕を呼びにきた。


 父上からの親書を持って文官についていけば、そこは謁見室であった。
 許可をもらい中に入ると元老院はじめ重鎮のみなさんが左右におり、緊張この上ない状況であった。
 正面には、背もたれの高い、威厳を感じさせる玉座に、国王陛下が肩肘をつき足を組んで座っている。父王のそういった姿は何度もみたはずだが、自分が大人になり、改めて『王』というものに対面すると、存在の大きさ、威厳、迫力に、怖じけずきそうになる。

 用意されていた宣誓台の前まで歩き、国王陛下に向かい最上の礼をする。

「よい、面をあげよ。」

「はっ。」

「大体のことは知っておるようだの。詳しいことはここでは省くが、アナファルト第1王子とアリーシャ・レンバーグ公爵令嬢との婚約が白紙となった。」

 重鎮たちが、ざわめく。

「まあ、レンバーグ公爵やシャーワント公爵から聞いてはおるのだが……、
ゼファーライト王子、その事について、何かあるか?」

 私に目が集まる。

「はっ。それにつきましては、我が父タニャード王国国王より、ガーリウム王国国王陛下へ親書を預かっております。」

「ふむ、では、それをここへ。」

 隣に来た文官の持つ盆へ、父からの親書を置く。国王陛下が親書を受け取り、目を通した。





「ふむ、第2王子妃、末は、王弟夫人か。レンバーグ公爵、それでよいのか?」

「恐れながら、
娘の気持ちを一番にさせていただきたく、それ次第と考えております。」

「そうだの。今回の件で、アリーシャ嬢を傷つけたのは王家だ。
アリーシャ嬢の希望に沿うように王家としても取り計らおう。」

「とんでもございません。
しかしながら、ありがたきお言葉。娘にも陛下のお心は伝わっておるかと存じます。」

「というわけだ、ゼファーライト王子。ガーリウム王家としては邪魔立てせぬゆえ、まずはアリーシャ嬢の気持ちを確認いたせ。」

「はっ。ご配慮に感謝いたします。」

「まあ、うまくいってもいかなくても、貴殿には、両国の親睦を深める役目をしてもらいたい。
これからも、頼むぞ。」

「タニャード王国といたしましても、ありがたきお言葉。
ガーリウム国王陛下のお心は必ず父王へ伝えます。」

「うむ、では、下がるがよい。」

「はっ。御前、失礼いたします。」




よし!これで準備は整った! 
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