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第二章 本編 ご令嬢たちの幸せ編
1 夕刻のお茶会
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今は、夕方より少し前の時間である。
パーティーの予行練習を終えた後、すっかり生徒会室となった部屋のソファーでお茶会をしていた。
真ん中の一人掛けにアリーシャ、その左手の二人掛けにはヴィオリアとエマローズ、アリーシャの右手の二人掛けにはイメルダリアが座っている。
ヨアンシェルは、この部屋の主として、お茶の用意をしている。できる紳士は、お茶もスマートにいれ、淑女をもてなすことが、最近のスタイルだ。
『紳士は堂々と座って待つ』などという父親世代にはわからないスマートさだろう。だが、こと父親世代の淑女のみなさんには喜んで受け入れられているのだから、もてなされることは気持ちのいいものなのだ。
とはいえ、ヨアンシェルはまだまだ紳士見習いだ。合格はもらえるのだろうか。
ヨアンシェルが4人の淑女に紅茶をもてなし、イメルダリアの隣に座った。
まず、アリーシャが口をつける。
「ヨアン、随分上手になりましたわね。これならどなたにでもお出しできるわ。」
「淑女のみなさんにご指導いただきましたからね。」
ヨアンシェルがにっこりと答えた。
3人の淑女がクスクスと笑い、和やかなお茶会となった。
「それで、みなさまは今日のことは、どこまで知っていらしたの?」
落ち着いたところで、アリーシャが静かな声で問いかけた。
「すべてですわ、アリーシャ様。」
代表してイメルダリアが答える。
「今日のことは、わたくしたちで進めてまいりましたの。ヨアン君のお友達も手伝ってくれましたわ。それに………国王陛下も。」
他の3人も頷く。
「国王陛下もすべてご存知だったのですか!!?………そうですか。始めからアナファルト殿下は……。」
アリーシャが考えたように、断罪劇が始まった時点でアナファルト王子たちの運命は決まっていた。………いや、その前から決まっていたのかもしれない。
「1年以上前からですが、この4人で、代理とはいえ生徒会役員をやっておりました。その頃には、あの方々は、あの状態だったのです。
9ヶ月程前でしょうか、ある日、ヨアン君が『このままでよいのですか?』とわたくしどもにお聞きになりました。その時、わたくしたち3人堰を切ったように話ましたわ。3人がそれぞれの状況を話してみると、本当に同じように被害を受け、同じように傷ついておりましたの。
内容は、それぞれがあの会場で話した通りですわ。」
「僕は姉上も同じ気持ちなのではないかと思ったんだ。だから、イメルダリアさんたちに現状を聞きたかった。」
「わたくしたちは、それぞれの両親にきちんと相談しようと決めたのです。」
「もちろん僕も父上に相談したよ。」
レンバーグ公爵は、現在財務大臣である。
「わたくしの両親は早速動いてくれ、両家の親の話し合いがもたれましたわ。
しかし、イリサス様はご長男で家からの期待も大きく、宰相様の奥様から3カ月は様子を見てほしいと。その間は、イリサス様を立ち直らせようとあちらのご両親は頑張っておられたようですわ。
でも、結果はこの通りですもの。
ですので、本当は半年前に婚約は白紙になっておりますの。
ですが、イリサス様のご両親がこれ以上イリサス様に壊れてほしくないと、婚約白紙のことはイリサス様には内緒にしておりましたの。
婚約白紙後であっても、イリサス様が立ち直れば宰相補佐官として王城に仕えさせ、新しい婚約者を探すつもりだったようですわ。
それが、彼らが出した報告書で、宰相様のお気持ちは決定的になったのではないかと思いますわ。」
イメルダリアは、一気に話すと、ひとつ息を吐き、ゆっくりとお茶に手を伸ばした。
「うちは、かなりすぐ、婚姻白紙になったんですよ。」
ヴィオリアの口調にアリーシャは少しだけ目を開いた。
「あ、私、辺境暮らしだし、兵士は男が多いので、あまり敬語は得意じゃなくて。」
と照れたヴィオリアに、アリーシャは思わずクスリと笑った。
「ここでは、それでよろしいのではなくて?みなさんは、もうご存知なのでしょ?」
とアリーシャが他の3人に促すと3人とも頷いた。
「ありがとうございます。
で、うちですけど、ウズライザー様にも伝えたように、練習場でのメノール嬢との逢瀬は、私の父も騎士団長様も見ていたので、すぐに納得してくれました。
でも、私たちが婚約白紙にしたって言うとまだみんなに迷惑かけるかもしれないってことで、発表するタイミングはみんなに合わせることにしたんです。
団長様はすぐにでも殴りに行きたそうでしたけど、どうにか待ってもらいました。」
みんな、団長であるバルトルガー侯爵の様子が想像できて、少しだけクスリと笑う。
「わたくしどもは逆に婚約白紙にできたのは、つい1カ月前ですの。
婚約白紙にすることは、当家にとっては決定事項だったのてすが、時期は未定のままでしたの。
あの方の研究がうまくいくかもしれない、もしうまくいったらその後ですればいいと。研究は、国の宝ですから。それに、それがお金になるとわかれば、エンゾラール様の借金が少なくなりますでしょ。
メノール様に随分とお使いになっていたらしくて、研究所に請求書が届いておりますの。それは、エンゾラール様の借金になってますのよ。
婚約白紙になった場合、研究がうまくいかなかったら、サンドエク家で払うしない。サンドエク家にはとても払える額ではないので、サンドエク伯爵様がお金を用立ててくれる方をさがしていたのですわ。その方が見つかったのが1ヶ月前でしたの。」
エマローズは少し俯く。
パーティーの予行練習を終えた後、すっかり生徒会室となった部屋のソファーでお茶会をしていた。
真ん中の一人掛けにアリーシャ、その左手の二人掛けにはヴィオリアとエマローズ、アリーシャの右手の二人掛けにはイメルダリアが座っている。
ヨアンシェルは、この部屋の主として、お茶の用意をしている。できる紳士は、お茶もスマートにいれ、淑女をもてなすことが、最近のスタイルだ。
『紳士は堂々と座って待つ』などという父親世代にはわからないスマートさだろう。だが、こと父親世代の淑女のみなさんには喜んで受け入れられているのだから、もてなされることは気持ちのいいものなのだ。
とはいえ、ヨアンシェルはまだまだ紳士見習いだ。合格はもらえるのだろうか。
ヨアンシェルが4人の淑女に紅茶をもてなし、イメルダリアの隣に座った。
まず、アリーシャが口をつける。
「ヨアン、随分上手になりましたわね。これならどなたにでもお出しできるわ。」
「淑女のみなさんにご指導いただきましたからね。」
ヨアンシェルがにっこりと答えた。
3人の淑女がクスクスと笑い、和やかなお茶会となった。
「それで、みなさまは今日のことは、どこまで知っていらしたの?」
落ち着いたところで、アリーシャが静かな声で問いかけた。
「すべてですわ、アリーシャ様。」
代表してイメルダリアが答える。
「今日のことは、わたくしたちで進めてまいりましたの。ヨアン君のお友達も手伝ってくれましたわ。それに………国王陛下も。」
他の3人も頷く。
「国王陛下もすべてご存知だったのですか!!?………そうですか。始めからアナファルト殿下は……。」
アリーシャが考えたように、断罪劇が始まった時点でアナファルト王子たちの運命は決まっていた。………いや、その前から決まっていたのかもしれない。
「1年以上前からですが、この4人で、代理とはいえ生徒会役員をやっておりました。その頃には、あの方々は、あの状態だったのです。
9ヶ月程前でしょうか、ある日、ヨアン君が『このままでよいのですか?』とわたくしどもにお聞きになりました。その時、わたくしたち3人堰を切ったように話ましたわ。3人がそれぞれの状況を話してみると、本当に同じように被害を受け、同じように傷ついておりましたの。
内容は、それぞれがあの会場で話した通りですわ。」
「僕は姉上も同じ気持ちなのではないかと思ったんだ。だから、イメルダリアさんたちに現状を聞きたかった。」
「わたくしたちは、それぞれの両親にきちんと相談しようと決めたのです。」
「もちろん僕も父上に相談したよ。」
レンバーグ公爵は、現在財務大臣である。
「わたくしの両親は早速動いてくれ、両家の親の話し合いがもたれましたわ。
しかし、イリサス様はご長男で家からの期待も大きく、宰相様の奥様から3カ月は様子を見てほしいと。その間は、イリサス様を立ち直らせようとあちらのご両親は頑張っておられたようですわ。
でも、結果はこの通りですもの。
ですので、本当は半年前に婚約は白紙になっておりますの。
ですが、イリサス様のご両親がこれ以上イリサス様に壊れてほしくないと、婚約白紙のことはイリサス様には内緒にしておりましたの。
婚約白紙後であっても、イリサス様が立ち直れば宰相補佐官として王城に仕えさせ、新しい婚約者を探すつもりだったようですわ。
それが、彼らが出した報告書で、宰相様のお気持ちは決定的になったのではないかと思いますわ。」
イメルダリアは、一気に話すと、ひとつ息を吐き、ゆっくりとお茶に手を伸ばした。
「うちは、かなりすぐ、婚姻白紙になったんですよ。」
ヴィオリアの口調にアリーシャは少しだけ目を開いた。
「あ、私、辺境暮らしだし、兵士は男が多いので、あまり敬語は得意じゃなくて。」
と照れたヴィオリアに、アリーシャは思わずクスリと笑った。
「ここでは、それでよろしいのではなくて?みなさんは、もうご存知なのでしょ?」
とアリーシャが他の3人に促すと3人とも頷いた。
「ありがとうございます。
で、うちですけど、ウズライザー様にも伝えたように、練習場でのメノール嬢との逢瀬は、私の父も騎士団長様も見ていたので、すぐに納得してくれました。
でも、私たちが婚約白紙にしたって言うとまだみんなに迷惑かけるかもしれないってことで、発表するタイミングはみんなに合わせることにしたんです。
団長様はすぐにでも殴りに行きたそうでしたけど、どうにか待ってもらいました。」
みんな、団長であるバルトルガー侯爵の様子が想像できて、少しだけクスリと笑う。
「わたくしどもは逆に婚約白紙にできたのは、つい1カ月前ですの。
婚約白紙にすることは、当家にとっては決定事項だったのてすが、時期は未定のままでしたの。
あの方の研究がうまくいくかもしれない、もしうまくいったらその後ですればいいと。研究は、国の宝ですから。それに、それがお金になるとわかれば、エンゾラール様の借金が少なくなりますでしょ。
メノール様に随分とお使いになっていたらしくて、研究所に請求書が届いておりますの。それは、エンゾラール様の借金になってますのよ。
婚約白紙になった場合、研究がうまくいかなかったら、サンドエク家で払うしない。サンドエク家にはとても払える額ではないので、サンドエク伯爵様がお金を用立ててくれる方をさがしていたのですわ。その方が見つかったのが1ヶ月前でしたの。」
エマローズは少し俯く。
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