婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

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第一章 本編 ご令嬢たちの闘い編

8 王子の未来

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「さて、残るはお前だな。」
 国王陛下は、唖然としているアナファルトに向けて話しだした。

「アリーシャ嬢に対する不貞での裏切りは、婚約白紙をもって、お前にとっては精算にしてやろう。
王家としては、後程、きちんと場を設けて謝罪いたすがな。」

 アナファルトは小さく頷いた。

「宰相のいうように、学園卒業間近な者が書いた報告書とは思えぬようなものをお前は堂々と提出した。

どんな勉強をしてきたのだ?学園長からもアリーシャ嬢からも何度も言われたのであろう。王族として、あの成績でよしと思っておったのか?

成績だけでなく、出席率も悪いなど、模範となるべく者として不合格者としか言いようがない。」

 グッと王子は半歩退く。

「それにな、学園では、どんなに平等を謳えども、お前は王族として、自分の力に関わらず、一番強い立場になってしまうことを自覚しておらねばならん。
 それなのに、騎士団団長が言っていたように、お前も弱い立場の者たちを押さえつけ、一人だけを優遇しようとした。」

「メノール嬢は、弱い立場の者です!」

「そうだな。しかし、アリーシャ嬢たちもお前から見たら弱い立場の者なのだ。両者を公平に見たか?その上で判断をしたのか?」

「そ、それは…」
王子は俯く。

「公平に見れぬ者が誰かの罪を確定させるようなことをしてよいわけがなかろう。」


「ふぅ、それと、お前はあの令嬢にずいぶんと贈り物などをしていたようだが、その金はどこから出ているのだ?」

「婚約者への贈り物は、私の王子としての経費として許されているはずです!」

 ここぞとばかりにアナファルトが強気に発言する。

「うむ、だが、婚約者はあの令嬢ではない。アリーシャ嬢だ。つまり、お前は公費を横領したのだな。」

「そんな…メルを婚約者にするつもりでいて、」

「婚約者がかわったという報告は受けておらんし、許可はしておらん。


では、此度の4人で、市井で豪遊した請求書が財務局に回っているようたが、あれは何か?」

王子の顔が白くなる。

「これも、税金の無駄遣い。許される範囲を大幅に越えておる。これも横領になるな。」

「なっ…」

アナファルトは目を見開き、父である国王陛下を見た。

「魔法師団団長は、子息本人に借金返済を求めたようだな。お前もお前自身で返すがよい。」

「どうせよと…」
不安なのか声がとても小さい。

「このような愚行で王が務まるわけがあるまい。王位継承権は剥奪だな。王族籍には残してやるが、将来争いの種にならんとも言えんから、子をなさぬ処置をする。

その後西塔にて、王族として、政務の一部を担え。
安心しろ、お前の力を越えるような政務は廻さん。お前の力はあの報告書でわかっておるゆえな。

その上でお前の作った横領金額を払うだけの働きは……何年かかるかのぉ。」

 西塔とは、外に出せない王族を軟禁するための建物で、部屋自体は家具も揃っているし、いわゆる王族の部屋である。が、窓と階段へのドアには鉄格子が嵌められている。
 そのドアの外部屋に監視役が一人、更にその部屋のドアの外である外階段のところにも監視役が二人つく。
 階段の監視役は騎士が、交代で行うが、外部屋の監視役は昼間は文官が担い、王子の政務補助ともなる。外部屋は執務机もあり、さながら秘書室である。夜間は騎士が担う。
 王子に付けられるメイドは年寄りの女性が一人だ。

 常時3人の監視役、1人のメイド。その者たちの給与は、王子の担う政務のよる対価で払われるのだが、元々簡単な政務しか廻されないので、対価は低い。そこから人件費を出すとなると…。

「早速、医療局へ行ってまいれ。」

 両脇を強靭な騎士たちに持たれ、宙に浮くように運ばれていく王子は、最後まで何か訴えていた。




 アナファルトが消えると、国王陛下はアリーシャたちに向き直った。

「アリーシャ嬢、アナファルトがすまなかったな。先程も言ったように後程改めて謝罪の場を設けるゆえ、今は許せ。」

「とんでもございません。陛下にはお心をくだいていただき感謝しております。」

「そなたは、本当にいい娘だの。実の娘にできなかったことは残念でならんわ。きっと王妃も残念がるてあろうな。」

 国王陛下はため息を漏らした。



 そして、アリーシャ以外の令嬢たちに向かって話しかける。

「その方たちも各々の家とすでに話し合いや謝罪の話をすすめておるな?」

 令嬢たちだけでなく、宰相、騎士団団長、魔法師団団長も頷く。

 すでに話し合いが始まっていることにアリーシャは驚く。


「ふむ、では、ワシらは城へもどろうかの。
皆のもの、今日はお疲れであったな。
《明日の本番》は本当に楽しむがよい。

ヨアンシェル、そして、イメルダリア嬢よ。後は頼んだぞ。」

「「はいっ。」」

会場の者が一斉に頭を垂れる。

 そして、重厚な大人たちは、城へと戻っていった。
 大扉が閉まると、教師たちも各々学園内へと戻った。
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