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第一章 本編 ご令嬢たちの闘い編
7 令息たちの未来
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国王陛下は、後ろに控える重厚な大人たちに頷き、発言を許す。
宰相であるシャーワント公爵が一歩前に出た。
「イリサスよ。この報告書はなんだ?一人の令嬢の言葉を鵜呑みにし、それを連ねただけではないか。証拠も証人も書かれていない。
調べたか?探したか?
あのような魔道具がなくとも、令嬢たちの動きを調べることはできたはずだ。そうすれば、このような報告はできるはずもないのだ。
こんなものは、報告書ではない。これの提出が卒業間近だったにも関わらず、この程度の仕事しかできていないとはな。
それがわかっただけでも僥倖とせねばなるまい。
この内容では、宰相補佐どころか新人文官にもさせられん。」
「え?あ、あ」
イリサスは父親へ手を向けた。
それを気にすることもなく宰相は続ける。
「北の辺境伯が執事見習いをほしいと言うので、お前が行くように手配しておいた。
辺境伯の執事殿は大変優秀だ。何年かかるかわからんが、きちんと執事の仕事を習得してこい。
執事殿に合格をもらえたならば、分家の執事になることを許そう。合格をもらえるまでは、仕事以外で辺境伯領地を出ることは認めぬ。
聞けぬなら、市井に落ちる覚悟をせよ。
また王都には、今後一切入ることは叶わぬ。
明日朝に辺境伯領地へむけ、馬車が出るそうだ。それに間に合わなければ、歩いていくがよい。」
執事は回りを見、バランスをとり、家内どころか領地をもうまく廻す力を必要とする。いかなるときであっても、主の目となり耳となり手となり足とならなければならないのだ。
新人文官にもなれない者が習得するとなれば、数年では済まないだろう。
しかも北の辺境伯領地は厳しい自然との闘いでもある、という。
イリサスは、手をダランとおろし、フラフラと会場を後にする。馬車の時間に遅れることはできないことは、頭の奥でわかっているようだ。
イリサスが歩きだすのと同時に、騎士団団長のバルトルガー侯爵がウズライザーに向かっていった。
襟首を掴み、右拳で虚ろな目のままのウズライザーを殴る。二度、三度。
ウズライザーの膝が崩れ、襟首を掴む侯爵が持ち上げている形になっている。
「弱い者を守る気概もなく、上から威張り、女性へと侮蔑を撒き散らすなど、騎士どころか、男としても許されぬわ!
一人の証言で誰かを罰するなど、お前は何様のつもりなのだ!
騎士は現行犯でない限り罰する資格はないっ!
お前はその虐めなどを実際の目で見たのか?」
「い、い、い、いえ、見てません。」
もう一度殴る。
「このようなだらしのない体躯をしおって!日々の訓練はどうした?
辺境伯様の下での勉強はどうした?」
「そ、そ、それは…」
ガツッ
ウズライザーが言い訳を口にする前に、侯爵の拳がウズライザーに届く。
「そんなに騎士になりたくないのなら、ならなければよいっ!
騎士団下男として、今後10年きっちりと働き、騎士ではなく、男としての根性を叩き直せ!その後はお前の好きにするがいい。
だが騎士団には入ぬし、家の敷居を跨ぐことも、一族の者に話しかけることとも今後一切許さん!」
下男とは、騎士団員の洗濯や食事の準備、掃除などを行うが、騎士団団員と顔を合わすことは許されていない。また、剣を持つことも許されない。
主に軽い刑罰罪人が両足を繋ぐ鎖をされたまま行う仕事である。罰則仕事であるため、給与はないが、寝食は保証さるている。
「連れていけ!」
ウズライザーを騎士団員に向けて投げる。ウズライザーはなんとか立ち上がり、騎士団員に前後を挟まれ、虚ろに歩いていった。
魔法師団団長のサンドエク伯爵は、笑顔でエンゾラールを見つめた。
「よかったな。お前の借金をすべて払ってくれる方が見つかったよ。」
「え?借金?」
「そうだよ。お前が市井で豪遊したり、買い求めたプレゼントやココロールの利用料金などは、請求書をすべて魔法研究所宛にしただろ?それを、買い取ってくださった方がいたのだよ。
うちでは払えない額であったので、本当によかった。
これから、お前はその方に心身ともにご奉仕するのだ。」
「ぼ、ぼくは…」
「さる前子爵未亡人様だよ。すでに息子さん夫婦が領地も爵位も継いでおられ、跡継ぎになるお子さんもいるそうだ。
現在、前子爵未亡人様は、領地の隅にあるお屋敷で過ごしていらっしゃる。少しばかり変わった性癖であるとは聞いているが、お前は女性が好きなようだし、問題ないだろう。」
「け、研究は…」
「借金が消えるまでは、魔力制御の首輪をされる。魔力がないのに、研究はできまい。引き継ぐ者はいるから心配ない。首輪の解除はその方だけができるようにしておいたから。」
カシャン
いつの間にか、エンゾラールの後ろにいた黒い執事服の男がエンゾラールに首輪をした。
「や、やだよ!とってよ!とってよ!」
エンゾラールは泣き叫ぶ。執事服の男はエンゾラールの首に手刀をして気絶させ、エンゾラールを肩に担いだ。
「婦人によろしくお伝えください。」
伯爵が執事服の男に告げると、男はエンゾラールを担いだままキチンと礼をし、会場をあとにした。
宰相であるシャーワント公爵が一歩前に出た。
「イリサスよ。この報告書はなんだ?一人の令嬢の言葉を鵜呑みにし、それを連ねただけではないか。証拠も証人も書かれていない。
調べたか?探したか?
あのような魔道具がなくとも、令嬢たちの動きを調べることはできたはずだ。そうすれば、このような報告はできるはずもないのだ。
こんなものは、報告書ではない。これの提出が卒業間近だったにも関わらず、この程度の仕事しかできていないとはな。
それがわかっただけでも僥倖とせねばなるまい。
この内容では、宰相補佐どころか新人文官にもさせられん。」
「え?あ、あ」
イリサスは父親へ手を向けた。
それを気にすることもなく宰相は続ける。
「北の辺境伯が執事見習いをほしいと言うので、お前が行くように手配しておいた。
辺境伯の執事殿は大変優秀だ。何年かかるかわからんが、きちんと執事の仕事を習得してこい。
執事殿に合格をもらえたならば、分家の執事になることを許そう。合格をもらえるまでは、仕事以外で辺境伯領地を出ることは認めぬ。
聞けぬなら、市井に落ちる覚悟をせよ。
また王都には、今後一切入ることは叶わぬ。
明日朝に辺境伯領地へむけ、馬車が出るそうだ。それに間に合わなければ、歩いていくがよい。」
執事は回りを見、バランスをとり、家内どころか領地をもうまく廻す力を必要とする。いかなるときであっても、主の目となり耳となり手となり足とならなければならないのだ。
新人文官にもなれない者が習得するとなれば、数年では済まないだろう。
しかも北の辺境伯領地は厳しい自然との闘いでもある、という。
イリサスは、手をダランとおろし、フラフラと会場を後にする。馬車の時間に遅れることはできないことは、頭の奥でわかっているようだ。
イリサスが歩きだすのと同時に、騎士団団長のバルトルガー侯爵がウズライザーに向かっていった。
襟首を掴み、右拳で虚ろな目のままのウズライザーを殴る。二度、三度。
ウズライザーの膝が崩れ、襟首を掴む侯爵が持ち上げている形になっている。
「弱い者を守る気概もなく、上から威張り、女性へと侮蔑を撒き散らすなど、騎士どころか、男としても許されぬわ!
一人の証言で誰かを罰するなど、お前は何様のつもりなのだ!
騎士は現行犯でない限り罰する資格はないっ!
お前はその虐めなどを実際の目で見たのか?」
「い、い、い、いえ、見てません。」
もう一度殴る。
「このようなだらしのない体躯をしおって!日々の訓練はどうした?
辺境伯様の下での勉強はどうした?」
「そ、そ、それは…」
ガツッ
ウズライザーが言い訳を口にする前に、侯爵の拳がウズライザーに届く。
「そんなに騎士になりたくないのなら、ならなければよいっ!
騎士団下男として、今後10年きっちりと働き、騎士ではなく、男としての根性を叩き直せ!その後はお前の好きにするがいい。
だが騎士団には入ぬし、家の敷居を跨ぐことも、一族の者に話しかけることとも今後一切許さん!」
下男とは、騎士団員の洗濯や食事の準備、掃除などを行うが、騎士団団員と顔を合わすことは許されていない。また、剣を持つことも許されない。
主に軽い刑罰罪人が両足を繋ぐ鎖をされたまま行う仕事である。罰則仕事であるため、給与はないが、寝食は保証さるている。
「連れていけ!」
ウズライザーを騎士団員に向けて投げる。ウズライザーはなんとか立ち上がり、騎士団員に前後を挟まれ、虚ろに歩いていった。
魔法師団団長のサンドエク伯爵は、笑顔でエンゾラールを見つめた。
「よかったな。お前の借金をすべて払ってくれる方が見つかったよ。」
「え?借金?」
「そうだよ。お前が市井で豪遊したり、買い求めたプレゼントやココロールの利用料金などは、請求書をすべて魔法研究所宛にしただろ?それを、買い取ってくださった方がいたのだよ。
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これから、お前はその方に心身ともにご奉仕するのだ。」
「ぼ、ぼくは…」
「さる前子爵未亡人様だよ。すでに息子さん夫婦が領地も爵位も継いでおられ、跡継ぎになるお子さんもいるそうだ。
現在、前子爵未亡人様は、領地の隅にあるお屋敷で過ごしていらっしゃる。少しばかり変わった性癖であるとは聞いているが、お前は女性が好きなようだし、問題ないだろう。」
「け、研究は…」
「借金が消えるまでは、魔力制御の首輪をされる。魔力がないのに、研究はできまい。引き継ぐ者はいるから心配ない。首輪の解除はその方だけができるようにしておいたから。」
カシャン
いつの間にか、エンゾラールの後ろにいた黒い執事服の男がエンゾラールに首輪をした。
「や、やだよ!とってよ!とってよ!」
エンゾラールは泣き叫ぶ。執事服の男はエンゾラールの首に手刀をして気絶させ、エンゾラールを肩に担いだ。
「婦人によろしくお伝えください。」
伯爵が執事服の男に告げると、男はエンゾラールを担いだままキチンと礼をし、会場をあとにした。
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