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後ろに控えていたアロンドがエトリアに一歩近づき手で口元を隠しながら耳元に寄る。
「私はそこまで狭量ではありませんよ」
アロンドはエトリアだけに聞こえるように呟いた。
「では、後程またお迎えに参ります」
今度は他の者たちにも聞こえるように声を出し、恭しく頭を下げてから退場していく。
エトリアは小さくため息をついてから自分で椅子を引きテーブルについた。
ヘレナたちはお茶を淹れ直し、四人で向き合うと目を合わせて苦笑いを溢した。
〰️ 〰️ 〰️
アロンドはその日にエトリアを学園に迎えに来ることは叶わなかった。五人の処分を決める会議から外れることが不可能だったからだ。
エトリアが夕食を終え部屋でお茶をしているとノックの音がした。メイドが扉に向かい相手を確認する。
「王女殿下。アロンド様でございますが、いかがいたしますか?」
「通してちょうだい。今日はとてもお世話になったの」
「かしこまりました」
メイドに促されて入室したアロンドはエトリアが座るソファの脇まで来ると恭しく頭を垂れる。
「王女殿下におかれましてはご機嫌麗しく」
「わざとらしい挨拶はいらないわ。座って」
アロンドが鬱陶しい前髪をかきあげると美しい黄緑色の瞳と整った顔立ちが現れる。
アロンドはしれっとエトリアの隣に座った。エトリアはペチンとアロンドの膝を叩く。
「あ・ち・ら」
「チェッ。頑張ったのだから今日ぐらいいいじゃないか」
アロンドは口を尖らせるがそれも美しい。アロンドの眉目秀麗さにエトリアは全く反応しない。
「なら、今日は許すけど、今日だけにするわね」
アロンドはバッと立ち上がり走るように向かいの席に座った。
「はいっ! これで今日限りっていうのはなしねっ!」
メイドは笑うのを堪えるようにしてアロンドにお茶を出した。
「会議の結果は?」
「まだ結論は出ていない。ご令嬢方のご両親がとてもお怒りでね。一度譲っているから二度目の裏切りは赦せないみたい」
「それはそうでしょうね」
二人は小さくため息をついてお茶を口にした。
そのタイミングでメイドが一歩近づき頭を下げる。
「殿下。茶菓子を切らしてしまいましたので、二十分ほど席を外します」
「……そう。いつもありがとう」
メイドはエトリアの視線が少しばかり恨めしそうに見えたが、笑顔で躱して部屋を出た。部屋の扉を開けたままにすることは忘れない。
アロンドはエトリアを熱く見つめた。
「君を迎えるチャンスが来たよ」
エトリアは呆れた顔を隠さない。
「貴方と婚約するかわからないじゃないの」
「絶対にするっ!」
エトリアは盛大にため息をついた。
「ねぇ? わたくしがセイバーナさんと婚姻していたらヨネタス公爵家に着いていくって本気だったの?」
「もちろんさっ! だからこうして執事兼秘書兼付き人の練習をしてきたんだろう」
「わたくしが他の男性とそうなることは平気なの?」
「…………それはわからない。確かに、その時になったら逃げ出すかもね。
でも、君を支えたい、君を守りたい、君のそばにいたいという今の気持ちは嘘じゃない」
「貴方が望めば何でも叶うでしょうに」
「僕は君を望んだんだ。これまでは叶わなかったじゃないか」
「王子のくせに変わった人ね」
「第五王子は権利は少ないけど義務も少ない。気楽なものなのさ」
アロンドは東側の隣国チェスタヤ王国の第五王子だ。
「私はそこまで狭量ではありませんよ」
アロンドはエトリアだけに聞こえるように呟いた。
「では、後程またお迎えに参ります」
今度は他の者たちにも聞こえるように声を出し、恭しく頭を下げてから退場していく。
エトリアは小さくため息をついてから自分で椅子を引きテーブルについた。
ヘレナたちはお茶を淹れ直し、四人で向き合うと目を合わせて苦笑いを溢した。
〰️ 〰️ 〰️
アロンドはその日にエトリアを学園に迎えに来ることは叶わなかった。五人の処分を決める会議から外れることが不可能だったからだ。
エトリアが夕食を終え部屋でお茶をしているとノックの音がした。メイドが扉に向かい相手を確認する。
「王女殿下。アロンド様でございますが、いかがいたしますか?」
「通してちょうだい。今日はとてもお世話になったの」
「かしこまりました」
メイドに促されて入室したアロンドはエトリアが座るソファの脇まで来ると恭しく頭を垂れる。
「王女殿下におかれましてはご機嫌麗しく」
「わざとらしい挨拶はいらないわ。座って」
アロンドが鬱陶しい前髪をかきあげると美しい黄緑色の瞳と整った顔立ちが現れる。
アロンドはしれっとエトリアの隣に座った。エトリアはペチンとアロンドの膝を叩く。
「あ・ち・ら」
「チェッ。頑張ったのだから今日ぐらいいいじゃないか」
アロンドは口を尖らせるがそれも美しい。アロンドの眉目秀麗さにエトリアは全く反応しない。
「なら、今日は許すけど、今日だけにするわね」
アロンドはバッと立ち上がり走るように向かいの席に座った。
「はいっ! これで今日限りっていうのはなしねっ!」
メイドは笑うのを堪えるようにしてアロンドにお茶を出した。
「会議の結果は?」
「まだ結論は出ていない。ご令嬢方のご両親がとてもお怒りでね。一度譲っているから二度目の裏切りは赦せないみたい」
「それはそうでしょうね」
二人は小さくため息をついてお茶を口にした。
そのタイミングでメイドが一歩近づき頭を下げる。
「殿下。茶菓子を切らしてしまいましたので、二十分ほど席を外します」
「……そう。いつもありがとう」
メイドはエトリアの視線が少しばかり恨めしそうに見えたが、笑顔で躱して部屋を出た。部屋の扉を開けたままにすることは忘れない。
アロンドはエトリアを熱く見つめた。
「君を迎えるチャンスが来たよ」
エトリアは呆れた顔を隠さない。
「貴方と婚約するかわからないじゃないの」
「絶対にするっ!」
エトリアは盛大にため息をついた。
「ねぇ? わたくしがセイバーナさんと婚姻していたらヨネタス公爵家に着いていくって本気だったの?」
「もちろんさっ! だからこうして執事兼秘書兼付き人の練習をしてきたんだろう」
「わたくしが他の男性とそうなることは平気なの?」
「…………それはわからない。確かに、その時になったら逃げ出すかもね。
でも、君を支えたい、君を守りたい、君のそばにいたいという今の気持ちは嘘じゃない」
「貴方が望めば何でも叶うでしょうに」
「僕は君を望んだんだ。これまでは叶わなかったじゃないか」
「王子のくせに変わった人ね」
「第五王子は権利は少ないけど義務も少ない。気楽なものなのさ」
アロンドは東側の隣国チェスタヤ王国の第五王子だ。
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