11 / 26
11
しおりを挟む
家族に迷惑をかけることも慮れない三人の男たちに対してエトリアはため息を隠さない。
「ご令嬢方の家は貴方達の愚行をわかった上で婚約解消という温情のある判断をした。
それは、ひとえにコニャール王国のためです。
高位貴族令息が一度に三人も愚者であると知られれば貴族の威厳にも関わりますし、王国の恥辱にもなります。涙を呑んで妥協してくださったのですよ。
それもわからず愚行を追加した貴方達に温情を取り下げるのは当然ですわね」
アロンドがコップをエトリアに差し出す。エトリアは小さく一口飲んでアロンドに返した。
「ふぅ。令嬢方の家が国の恥辱にならないための温情を取り下げたら、貴方達の家が恥辱にならないための行動を起こさねばなりませんね。
どうなさるのかしら?」
「その点につきましては、ヨネタス公爵家を含めました五家が王城に緊急召集されているはずでございます」
廃籍か幽閉か。とにかく彼らにいい結果にはならないことは容易に想像できた。
「うわぁ!!」
アロンドがエトリアの質問に答えるとサジルスが逃げ出そうと動くが立ち上がることもできずに騎士に押さえられた。
「ツワトナ卿。貴方はまだ公爵家嫡男ではありませんか。恥ずかしくない行動をなされたほうがよろしいわ」
「終わりだぁ!!」
サジルスが泣き叫ぶが誰も声をかけない。
『妹の人生を狂わせておいて何をほざくのだ』
ひとつ下の学年の生徒たちの中からも憎しみの視線が刺される。
「ヨネタス卿。書類の用意があったことでおわかりかと思いますが、わたくしと貴方との婚約は、貴方が言い出さずとも本日をもって解消されることになっていました。破棄となってしまうのはわたくしとしても心苦しいことではありますが」
「いえ。ご迷惑をおかけしました」
セイバーナはエトリアに改めて頭を下げた。
エトリアはセイバーナの謝罪を受け入れるように二度首肯した。
「貴方の家がわたくしの王家の血を求めていたのですが、わたくしとしては貴方の子種ならそのお子を育ててもよいと思っておりましたのよ。
しかし、貴方の子種ではないかもしれないとなると話は変わります」
「えっ!?」
セイバーナのあまりの驚き様にエトリアが驚いた。
「あら? ホヤタル卿、オキソン卿、ツワトナ卿がご存知だから、ヨネタス卿もご存知だとばかり」
エトリアは知っていて当然だと思っていた。なにせ三人とリリアーヌの関係はすでに一年ほどになる。
一年生の後半からリリアーヌと肉体関係を持った三人は二年生になる頃には、テリワドは成績を落とし、レボールはリリアーヌに褒められたくて不正をして勝ちを拾い、サジルスはリリアーヌによく見られたくて公爵家の威を使った。
セイバーナの驚きは、三人がリリアーヌと肉体関係であったことだけでなく、エトリアがセイバーナとリリアーヌが肉体関係を持ってしまったこと、リリアーヌが妊娠しているかもしれないことを知っていることも含まれている。
苦笑いしたアロンドがエトリアの話を引き継いだ。
「ヨネタス殿。テンソー男爵令嬢はそちらのお三方だけでなく他の男性とも肉体関係を持っておられます。この学園だけでも他に十人ほど」
「そんなの嘘よっ!」
リリアーヌは顎を上げて目を剥き声を荒らげた。
「先程王女殿下が申されました。『貴方方は危険分子として厳しい監視下に置かれていたのです』と。その中に貴女ももちろん含まれていますよ。テンソー男爵令嬢」
「嘘よ嘘よ嘘よ! そんなことされたら気がつくに決まっているわっ!」
リリアーヌは暴れながら喚く。騎士たちも女性をどこまで押さえつけてよいかわからず戸惑っている。
「ご令嬢方の家は貴方達の愚行をわかった上で婚約解消という温情のある判断をした。
それは、ひとえにコニャール王国のためです。
高位貴族令息が一度に三人も愚者であると知られれば貴族の威厳にも関わりますし、王国の恥辱にもなります。涙を呑んで妥協してくださったのですよ。
それもわからず愚行を追加した貴方達に温情を取り下げるのは当然ですわね」
アロンドがコップをエトリアに差し出す。エトリアは小さく一口飲んでアロンドに返した。
「ふぅ。令嬢方の家が国の恥辱にならないための温情を取り下げたら、貴方達の家が恥辱にならないための行動を起こさねばなりませんね。
どうなさるのかしら?」
「その点につきましては、ヨネタス公爵家を含めました五家が王城に緊急召集されているはずでございます」
廃籍か幽閉か。とにかく彼らにいい結果にはならないことは容易に想像できた。
「うわぁ!!」
アロンドがエトリアの質問に答えるとサジルスが逃げ出そうと動くが立ち上がることもできずに騎士に押さえられた。
「ツワトナ卿。貴方はまだ公爵家嫡男ではありませんか。恥ずかしくない行動をなされたほうがよろしいわ」
「終わりだぁ!!」
サジルスが泣き叫ぶが誰も声をかけない。
『妹の人生を狂わせておいて何をほざくのだ』
ひとつ下の学年の生徒たちの中からも憎しみの視線が刺される。
「ヨネタス卿。書類の用意があったことでおわかりかと思いますが、わたくしと貴方との婚約は、貴方が言い出さずとも本日をもって解消されることになっていました。破棄となってしまうのはわたくしとしても心苦しいことではありますが」
「いえ。ご迷惑をおかけしました」
セイバーナはエトリアに改めて頭を下げた。
エトリアはセイバーナの謝罪を受け入れるように二度首肯した。
「貴方の家がわたくしの王家の血を求めていたのですが、わたくしとしては貴方の子種ならそのお子を育ててもよいと思っておりましたのよ。
しかし、貴方の子種ではないかもしれないとなると話は変わります」
「えっ!?」
セイバーナのあまりの驚き様にエトリアが驚いた。
「あら? ホヤタル卿、オキソン卿、ツワトナ卿がご存知だから、ヨネタス卿もご存知だとばかり」
エトリアは知っていて当然だと思っていた。なにせ三人とリリアーヌの関係はすでに一年ほどになる。
一年生の後半からリリアーヌと肉体関係を持った三人は二年生になる頃には、テリワドは成績を落とし、レボールはリリアーヌに褒められたくて不正をして勝ちを拾い、サジルスはリリアーヌによく見られたくて公爵家の威を使った。
セイバーナの驚きは、三人がリリアーヌと肉体関係であったことだけでなく、エトリアがセイバーナとリリアーヌが肉体関係を持ってしまったこと、リリアーヌが妊娠しているかもしれないことを知っていることも含まれている。
苦笑いしたアロンドがエトリアの話を引き継いだ。
「ヨネタス殿。テンソー男爵令嬢はそちらのお三方だけでなく他の男性とも肉体関係を持っておられます。この学園だけでも他に十人ほど」
「そんなの嘘よっ!」
リリアーヌは顎を上げて目を剥き声を荒らげた。
「先程王女殿下が申されました。『貴方方は危険分子として厳しい監視下に置かれていたのです』と。その中に貴女ももちろん含まれていますよ。テンソー男爵令嬢」
「嘘よ嘘よ嘘よ! そんなことされたら気がつくに決まっているわっ!」
リリアーヌは暴れながら喚く。騎士たちも女性をどこまで押さえつけてよいかわからず戸惑っている。
47
お気に入りに追加
323
あなたにおすすめの小説
愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。
未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!
娘の婚約解消が向こうの有責で婚約破棄になった。
うめまつ
恋愛
私には二人の娘がいる。賢く才能のある長女と社交が得意な可愛い次女。二人の間で長女の婚約者が婚約解消を望みは次女と婚約し直したいと望んできた。二人に話を聞くが、どうしたものか。
※お気に入り、栞ありがとうございます。
【完結済】婚約破棄された元公爵令嬢は教会で歌う
curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】
婚約破棄された元公爵令嬢は、静かな教会で好き勝手に歌う。
それを見ていた神は...
※書きたい部分だけ書いた4話だけの短編。
他の作品より人物も名前も設定も全て適当に書いてる為、誤字脱字ありましたらご報告ください。
悪役令嬢は勝利する!
リオール
恋愛
「公爵令嬢エルシェイラ、私はそなたとの婚約破棄を今ここに宣言する!!!」
「やりましたわあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!!!」
婚約破棄するかしないか
悪役令嬢は勝利するのかしないのか
はたして勝者は!?
……ちょっと支離滅裂です
婚約は破棄なんですよね?
もるだ
恋愛
義理の妹ティナはナターシャの婚約者にいじめられていたと嘘をつき、信じた婚約者に婚約破棄を言い渡される。昔からナターシャをいじめて物を奪っていたのはティナなのに、得意の演技でナターシャを悪者に仕立て上げてきた。我慢の限界を迎えたナターシャは、ティナにされたように濡れ衣を着せかえす!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる