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18【最終話】
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エディオたちの心配を他所に、事態は好転していった。
ロンゼ公爵が好機到来と積極的に動いたのだ。
一週間後にはエディオは再びロンゼ公爵邸へ呼ばれる。今回はダミーの友人なし。
庭園の四阿に用意されたお茶会の席でフィリナージェは早々に本題に入った。
「エディオ様はルーチェ様とのご婚約でご苦労なさいましたのね」
「え!?」
「父がレグレント侯爵家の執事長様からお聞きしたそうですわ」
「あ……そうでしたか……お恥ずかしいです。
僕の容姿が普通なのもセンスがないのも本当のことですから」
「センスなど、周りの話に耳を傾ければ済むことですわ。このケーキもとても可愛らしくて素敵なプレゼントです」
ケーキはエディオが土産に持ってきたものだ。
「メイドに聞いたのです。三日前に予約をして今日こちらへ伺う前に菓子店に寄ってきたんです。
そこは中で飲食もできるそうですよ」
「まあ! 素敵!」
「………………」
エディオは思考を巡らせた後、真っ赤になって俯く。
「ももももももし、よろかったら、その、あの、ここここ今度一緒に、その」
「まあ! 嬉しいですわ」
エディオが勢いよく顔を上げるとフィリナージェは笑顔を向けてくれていた。
「わたくしは、センスの良し悪しより他者の話を聞けることの方が大切だと思いますわ」
「っ」
エディオはフィリナージェの優しい眼差しに絶句する。
「フィリナージェ嬢は第三王子殿下をお好きだったのですか?」
フィリナージェの笑顔に甘えついつい気になっていたことを口にしてしまった。慌てて否定する。
「す、すみません! 何でもないです! 忘れてくださいっ!」
「ふふふ。エディオ様がロンゼ公爵家ではなく、わたくしにご興味を向けてくださって嬉しいですわ」
「僕は…」
以前からフィリナージェに好意を持っていたとは言えなかった。
「わたくしはなかなかに傲慢な女ですのよ」
なぜか嬉しそうに笑うフィリナージェに戸惑うエディオ。
「はい?」
「手紙を書けば『こんなものは面倒だ。直に話せ』と言われ、お声をかければ『鬱陶しい』と睨まれ、プレゼントはこちらからの一方通行。そんな方に好意を持つなどできませんわ」
「そ、それは、フィリナージェ嬢も婚約者殿にご苦労なさったのですね」
「うふふふ。ですから、エディオ様。お互いに苦労しないようにいたしましょうね」
「そうしたいですね」
「では、お話は進めてよろしいですわね?」
「は?」
「え?」
「あの、何のお話ですか?」
「ですから、わたくしたちの婚約のお話ですわ」
「えーーー!!!!」
エディオは立ち上がって叫んだ。
「な、な、なんで??」
「あら? お互いに苦労しないように婚約者らしく過ごしましょうと申しましたら、エディオ様は頷いてくださったではありませんの?」
エディオは力が抜けたように座る。
「それは、その、新しい婚約者はいい人が見つかるといいですねというお話かと思い……」
「わたくしは、エディオ様にとっていい人にはなりえませんか?」
「まさかっ! 最高ですっ!」
「フフ。まだ何も始まってはおりませんのに」
和やかなお茶会はゆったりと時間が流れた。
二人が一週間後に婚約しそれからたった三ヶ月後に婚姻した時には、結婚披露宴に慎ましやかな生活をする王家から二人の門出に相応しく王家領特産のワインが荷馬車いっぱいに届いた。
そして、とある子爵家からは特産の新鮮なフルーツが幌馬車いっぱいに届けられた。
『爵位の後継は弟に任せ、私は彼女と小さな領地の管理人をしております。
私と彼女が作ったフルーツです。是非召し上がってください』
手紙を読んだエディオとフィリナージェは目を合わせて微笑みあった。
「エディ。わたくし、貴方の優しい笑顔が大好きですわ」
エディオは容姿など気にしなくなっている。
「フィル。僕は君の甘えた笑顔が大好きだよ」
エディオが耳元で囁くとフィリナージェの扇で隠した顔は真っ赤になっていた。
~ fin ~
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
これにて完結です。
ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします。
ロンゼ公爵が好機到来と積極的に動いたのだ。
一週間後にはエディオは再びロンゼ公爵邸へ呼ばれる。今回はダミーの友人なし。
庭園の四阿に用意されたお茶会の席でフィリナージェは早々に本題に入った。
「エディオ様はルーチェ様とのご婚約でご苦労なさいましたのね」
「え!?」
「父がレグレント侯爵家の執事長様からお聞きしたそうですわ」
「あ……そうでしたか……お恥ずかしいです。
僕の容姿が普通なのもセンスがないのも本当のことですから」
「センスなど、周りの話に耳を傾ければ済むことですわ。このケーキもとても可愛らしくて素敵なプレゼントです」
ケーキはエディオが土産に持ってきたものだ。
「メイドに聞いたのです。三日前に予約をして今日こちらへ伺う前に菓子店に寄ってきたんです。
そこは中で飲食もできるそうですよ」
「まあ! 素敵!」
「………………」
エディオは思考を巡らせた後、真っ赤になって俯く。
「ももももももし、よろかったら、その、あの、ここここ今度一緒に、その」
「まあ! 嬉しいですわ」
エディオが勢いよく顔を上げるとフィリナージェは笑顔を向けてくれていた。
「わたくしは、センスの良し悪しより他者の話を聞けることの方が大切だと思いますわ」
「っ」
エディオはフィリナージェの優しい眼差しに絶句する。
「フィリナージェ嬢は第三王子殿下をお好きだったのですか?」
フィリナージェの笑顔に甘えついつい気になっていたことを口にしてしまった。慌てて否定する。
「す、すみません! 何でもないです! 忘れてくださいっ!」
「ふふふ。エディオ様がロンゼ公爵家ではなく、わたくしにご興味を向けてくださって嬉しいですわ」
「僕は…」
以前からフィリナージェに好意を持っていたとは言えなかった。
「わたくしはなかなかに傲慢な女ですのよ」
なぜか嬉しそうに笑うフィリナージェに戸惑うエディオ。
「はい?」
「手紙を書けば『こんなものは面倒だ。直に話せ』と言われ、お声をかければ『鬱陶しい』と睨まれ、プレゼントはこちらからの一方通行。そんな方に好意を持つなどできませんわ」
「そ、それは、フィリナージェ嬢も婚約者殿にご苦労なさったのですね」
「うふふふ。ですから、エディオ様。お互いに苦労しないようにいたしましょうね」
「そうしたいですね」
「では、お話は進めてよろしいですわね?」
「は?」
「え?」
「あの、何のお話ですか?」
「ですから、わたくしたちの婚約のお話ですわ」
「えーーー!!!!」
エディオは立ち上がって叫んだ。
「な、な、なんで??」
「あら? お互いに苦労しないように婚約者らしく過ごしましょうと申しましたら、エディオ様は頷いてくださったではありませんの?」
エディオは力が抜けたように座る。
「それは、その、新しい婚約者はいい人が見つかるといいですねというお話かと思い……」
「わたくしは、エディオ様にとっていい人にはなりえませんか?」
「まさかっ! 最高ですっ!」
「フフ。まだ何も始まってはおりませんのに」
和やかなお茶会はゆったりと時間が流れた。
二人が一週間後に婚約しそれからたった三ヶ月後に婚姻した時には、結婚披露宴に慎ましやかな生活をする王家から二人の門出に相応しく王家領特産のワインが荷馬車いっぱいに届いた。
そして、とある子爵家からは特産の新鮮なフルーツが幌馬車いっぱいに届けられた。
『爵位の後継は弟に任せ、私は彼女と小さな領地の管理人をしております。
私と彼女が作ったフルーツです。是非召し上がってください』
手紙を読んだエディオとフィリナージェは目を合わせて微笑みあった。
「エディ。わたくし、貴方の優しい笑顔が大好きですわ」
エディオは容姿など気にしなくなっている。
「フィル。僕は君の甘えた笑顔が大好きだよ」
エディオが耳元で囁くとフィリナージェの扇で隠した顔は真っ赤になっていた。
~ fin ~
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
これにて完結です。
ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします。
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