11 / 18
11
しおりを挟む
~とある公爵令嬢の回想~
わたくしの婚約者はこの国ナハガル王国の第三王子殿下でございます。
わたくしたちが十三歳の年に、第三王子殿下が我が家に婿入りする約束で婚約いたしました。
わたくしの両親がわたくしの弟でありこの家の後継者となる男子を授かることを半ばあきらめた頃にございます。
すでに十五代も続く王家には分割させる領地もさほどなく、かといって第三王子殿下には国王陛下の補佐をさせるほどの能力もなく、騎士団を任せるほどの統率力もカリスマ性もなく、『持て余していたというのが本音だろう』とお父様が愚痴を溢しておられたことは聞かなかったことにいたしました。
来年には王太子となられる予定の第一王子殿下は大変に優秀な方で国王陛下となられるに相応しく、第二王子殿下は武勇に長けておりすでに騎士団の一部隊長様であられ将来は防衛局長様となられるご予定だとか。防衛局長様は騎士団と地方防衛団をお繋ぎになり時には騎士団を連れ地方の応援などに赴かれたりなさる国全体の防衛を管理されるお仕事でございます。
自惚れているわけではございませんが、わたくしには領地を統べる能力も判断力も知識もございますので、婚姻のお相手がどなたであろうと問題はございません。
わたくしのそのような考えを感じ取られていらっしゃったのかもしれませんわ。
第三王子殿下とは終ぞ歩み寄ることはなく学園への入学となり、第三王子殿下はまたたく間にお一人の男爵令嬢様とお親しい仲になりました。
そしてしばらくしてわたくしがその男爵令嬢様を虐めているという噂が広がりました。
しかしながら、女公爵となるわたくしにとってそれは些末なこと。第三王子殿下が何度か苦情を入れに参られましたが、わたくしには一切関係のないものと説明いたしました。第三王子殿下はご納得をしていらっしゃらないようでございました。
〰️
まさか彼らが、国王陛下が参集なされた集会の席で愚行に及ぶとは……。それも、断罪だけでなく婚約解消宣言まで……。
想像の遥か上の行動をなさいましたわ。
『学園での行動に問題あり』と国王陛下がご判断をなさり、集会の前日にわたくしと第三王子殿下との婚約を白紙にできたことは幸いでございました。
他の皆様のご婚約は各家のご判断というお話でしたが、皆様のご様子ですとすでにお心はお決まりになっているようでした。
「もしも、やつらが集会の席で愚行を始めても、ワシが収めるゆえ我慢してくれ」
「「「かしこまりました」」」
「何もやらかさぬことが一番なのだがな……」
彼らは国王陛下の願いを打ち砕きました。
〰️ 〰️ 〰️
「全くっ! 冤罪まで用意しておったとはっ! 本当に腹立たしい!」
集会の後、お父様は馬車に乗り込むなりお怒りになります。
「お父様。第三王子殿下はその自作自演にお関わりになっておられぬそうですし、男爵令嬢様への行為が捏造されましても、わたくしには何も支障はございませんわ」
「『元』第三王子だ。お前の醜聞にはならぬが、我が公爵家を貶めようとしたこと自体を赦すわけにはいかぬ」
「確かにそうですわね。それは相応の対処をいたしませんと他家に嘲笑されてしまいますわ」
「公爵家として軽んじられてはならない。その点メルド公爵家は落ち目とならざるを得ぬであろう」
わたくしは首肯いたします。そして、次期女公爵として考えが甘かったことを反省いたしました。
「男爵家はもう保つまい。だが、メルド公爵家と侯爵家の二家にはしっかりと賠償してもらわねばならぬ」
「国王陛下が仰っておりました爵位による影響力は、良い面だけを見ておりましたわ」
「うむ。そうだな。あれはワシも身が引き締まる思いだったよ」
お父様は心痛なお顔をされました。
「お父様。わたくし、これからもお勉強させていただきますわ」
わたくしは気持ち新たにお父様からご教授を受けることを決めました。
わたくしの婚約者はこの国ナハガル王国の第三王子殿下でございます。
わたくしたちが十三歳の年に、第三王子殿下が我が家に婿入りする約束で婚約いたしました。
わたくしの両親がわたくしの弟でありこの家の後継者となる男子を授かることを半ばあきらめた頃にございます。
すでに十五代も続く王家には分割させる領地もさほどなく、かといって第三王子殿下には国王陛下の補佐をさせるほどの能力もなく、騎士団を任せるほどの統率力もカリスマ性もなく、『持て余していたというのが本音だろう』とお父様が愚痴を溢しておられたことは聞かなかったことにいたしました。
来年には王太子となられる予定の第一王子殿下は大変に優秀な方で国王陛下となられるに相応しく、第二王子殿下は武勇に長けておりすでに騎士団の一部隊長様であられ将来は防衛局長様となられるご予定だとか。防衛局長様は騎士団と地方防衛団をお繋ぎになり時には騎士団を連れ地方の応援などに赴かれたりなさる国全体の防衛を管理されるお仕事でございます。
自惚れているわけではございませんが、わたくしには領地を統べる能力も判断力も知識もございますので、婚姻のお相手がどなたであろうと問題はございません。
わたくしのそのような考えを感じ取られていらっしゃったのかもしれませんわ。
第三王子殿下とは終ぞ歩み寄ることはなく学園への入学となり、第三王子殿下はまたたく間にお一人の男爵令嬢様とお親しい仲になりました。
そしてしばらくしてわたくしがその男爵令嬢様を虐めているという噂が広がりました。
しかしながら、女公爵となるわたくしにとってそれは些末なこと。第三王子殿下が何度か苦情を入れに参られましたが、わたくしには一切関係のないものと説明いたしました。第三王子殿下はご納得をしていらっしゃらないようでございました。
〰️
まさか彼らが、国王陛下が参集なされた集会の席で愚行に及ぶとは……。それも、断罪だけでなく婚約解消宣言まで……。
想像の遥か上の行動をなさいましたわ。
『学園での行動に問題あり』と国王陛下がご判断をなさり、集会の前日にわたくしと第三王子殿下との婚約を白紙にできたことは幸いでございました。
他の皆様のご婚約は各家のご判断というお話でしたが、皆様のご様子ですとすでにお心はお決まりになっているようでした。
「もしも、やつらが集会の席で愚行を始めても、ワシが収めるゆえ我慢してくれ」
「「「かしこまりました」」」
「何もやらかさぬことが一番なのだがな……」
彼らは国王陛下の願いを打ち砕きました。
〰️ 〰️ 〰️
「全くっ! 冤罪まで用意しておったとはっ! 本当に腹立たしい!」
集会の後、お父様は馬車に乗り込むなりお怒りになります。
「お父様。第三王子殿下はその自作自演にお関わりになっておられぬそうですし、男爵令嬢様への行為が捏造されましても、わたくしには何も支障はございませんわ」
「『元』第三王子だ。お前の醜聞にはならぬが、我が公爵家を貶めようとしたこと自体を赦すわけにはいかぬ」
「確かにそうですわね。それは相応の対処をいたしませんと他家に嘲笑されてしまいますわ」
「公爵家として軽んじられてはならない。その点メルド公爵家は落ち目とならざるを得ぬであろう」
わたくしは首肯いたします。そして、次期女公爵として考えが甘かったことを反省いたしました。
「男爵家はもう保つまい。だが、メルド公爵家と侯爵家の二家にはしっかりと賠償してもらわねばならぬ」
「国王陛下が仰っておりました爵位による影響力は、良い面だけを見ておりましたわ」
「うむ。そうだな。あれはワシも身が引き締まる思いだったよ」
お父様は心痛なお顔をされました。
「お父様。わたくし、これからもお勉強させていただきますわ」
わたくしは気持ち新たにお父様からご教授を受けることを決めました。
102
お気に入りに追加
405
あなたにおすすめの小説
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
婚約破棄していただきます
章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。
『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。
その国が滅びたのは
志位斗 茂家波
ファンタジー
3年前、ある事件が起こるその時まで、その国は栄えていた。
だがしかし、その事件以降あっという間に落ちぶれたが、一体どういうことなのだろうか?
それは、考え無しの婚約破棄によるものであったそうだ。
息抜き用婚約破棄物。全6話+オマケの予定。
作者の「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹が登場。というか、これをそっちの乗せたほうが良いんじゃないかと思い中。
誤字脱字があるかもしれません。ないように頑張ってますが、御指摘や改良点があれば受け付けます。
そして、彼はいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたとの婚約を破棄するっ!」
王都、社交シーズン終わりの王宮主催の舞踏会。
その会場に王太子のよく通る声が響きわたった。
王太子は婚約者がいかに不出来かを滔々と述べ立てて、だから自分には、将来の王妃には相応しくないと彼女を断罪する。そして心当たりがあり過ぎる彼女は特に反論もしない。
だが自分の代わりに婚約すると王太子が告げた人物を見て唖然とする。
なぜならば、その令嬢は⸺!?
◆例によって思いつきの即興作品です。
そしてちょこっとだけ闇が見えます(爆)。
恋愛要素が薄いのでファンタジージャンルで。本当はファンタジー要素も薄いけど。
◆婚約破棄する王子があり得ないほどおバカに描かれることが多いので、ちょっと理由をひねってみました。
約6500字、3話構成で投稿します。
◆つい過去作品と類似したタイトル付けてしまいましたが、直接の関係はありません。
◆この作品は小説家になろうでも公開しています。
私は婚約破棄を回避するため王家直属「マルサ」を作って王国財政を握ることにしました
中七七三
ファンタジー
王立貴族学校卒業の年の夏――
私は自分が転生者であることに気づいた、というか思い出した。
王子と婚約している公爵令嬢であり、ご他聞に漏れず「悪役令嬢」というやつだった
このまま行くと卒業パーティで婚約破棄され破滅する。
私はそれを回避するため、王国の財政を握ることにした。
婚約破棄は誰が為の
瀬織董李
ファンタジー
学園の卒業パーティーで起こった婚約破棄。
宣言した王太子は気付いていなかった。
この婚約破棄を誰よりも望んでいたのが、目の前の令嬢であることを……
10話程度の予定。1話約千文字です
10/9日HOTランキング5位
10/10HOTランキング1位になりました!
ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる