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 騎士団長はメルド公爵たちをチロリと見た。

「それから、国家略奪の策略であった場合、彼らだけの考えであったとは考えにくく、当主様方にもお話をお聞きしたいのですが」

「なっ!! 我々はっ! 我々はそのようなことは考えておりませんっ!」

 八人はびっくり眼でブンブンと首を横に振った。

「息子は廃嫡し廃籍いたしますっ! 我々にお慈悲を……」

「それは家でやれっ! 『廃嫡に何の意味があるのだ』と申したばかりであろう! 今は治安の話をしておるのだっ!」

 国王陛下は言い募るメルド公爵を睨みつけた。壇上の上で立っている国王陛下は尚更に威厳がある。

「そ、それにっ! 第三王子殿下については責任を追求しないのでは……」

 メルド公爵は何かに縋ろうと足掻く。

「それは、国王陛下の王家としてのご判断です。第三王子殿下の親御様として賠償を求めないというお話でありましょう。
国防としては追求せねばなりません」

 騎士団長の強い目力に公爵たちは何も言い返せなくなった。

「陛下。王城の客室をお借りしとうございます」

「うむ。八室でよいか?」

「はい」

 国王陛下は脇に控える宰相に顎で合図をすると宰相はさらに後ろに控えていた文官に指示し、文官は急いで退出していった。

 騎士団長が後ろを向く。

「そやつら四人はそれぞれ別の貴族牢に。話合わせをできぬように牢屋を離せ。
ご当主たちは客室へお連れしろ。こちらはお一人に一部屋だ」

「「「「はっ!」」」」

 騎士団長はいつの間にやら集まっていた近衛兵たちにキビキビと指示を出した。
 青年と少女は泣き喚き、その両親たちは項垂れてそれぞれ連れていかれた。
 それらの退室を見届けた騎士団長は、国王陛下に頭を下げる。

「では、取り調べがありますゆえ、お先に下がらせていただきます」

「うむ。よろしく頼む」

「はっ!」

 騎士団長は深々と頭を下げた後、颯爽と退室していった。

 騒ぎの中でみな許可もなく頭を上げている。国王陛下はそれを咎めるほど狭量ではない。

「陛下と第一王子殿下がご退室なさいます」

 宰相とは反対側に立っていたのは、私財を削られると言われた第一王子である。
 会場にいる者たちが慌てて頭を下げる。しばらくしてパタンと扉が優しく閉じる音がした。

「みなさま、お顔をお上げください。
本日はご足労いただきご苦労様でございました。後継者制度の変更はご子息ご息女方にもご理解いただいた方がよいと考えたため、このような形になりました」

 パーティーでもないのに子息子女たちも呼ばれ、大ホールに集うことは稀である。

「後継者について不安のある家もございましょう。いくつかの救済処置もありますので、遠慮せず王城の総務へご相談ください。
お帰りの際に紙面をお配りいたしますのでそちらを読んでいただき、しっかりとご家庭でお話し合いください」

 胸を撫で下ろした者も見える。

「壁際に軽食や飲み物も用意してありますので、ごゆるりと親交を持たれるのもよろしいかと思います。
では、本日は解散といたします。後はご自由にご退席ください」

 宰相は口上を一気に述べると回れ右をして王族専用扉に一番近い扉から出ていった。

 長男が後継者となるとは限らないとなると、各家の婚約関係も変化してくる。長男に問題はないのか確認が必要であろう。

 また、優秀な淑女である四人のご令嬢の婚約がなくなったのだ。彼女たちをどうにかゲットしようと目をギラギラさせた者たちが足早に群がる。特に長男に自信のない家は彼女たちに嫁いでもらうことが最良の解決策だと考えている。

 彼女たちには婚約破棄など醜聞にはならなかった。
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