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元婚約者の家には契約不履行による賠償金を払わねばならない。さらに高位貴族四家には冤罪をかけた謝罪金が発生する。支払わなければならない金はいくらになるか想像もつかない。
「皆が揃うところでの騒ぎでよかったのぉ。でなければ名誉毀損の賠償金になっていた。
謝罪金ならば多少は減額されよう」
確かに国王陛下のお言葉のおかげでご令嬢方に実質的な被害を与えずに済んだ。
とはいえ、罰金など微々たるものだと思うことにはなりそうだ。
「わかっていると思うが、罰金や謝罪金に領民の金は充てるでないぞ」
この国では、管理者としての貯蓄と爵位としての貯蓄は別々に申告することになっている。領民の金とは管理者としての貯蓄であり、それは災害や発展に充てるべき金だ。
税金も管理者税と各家としての収入税は別々に払っている。
だが、パーティー一つとっても『領地のため』と言えば管理貯蓄から予算を組めるのだから大きな領地ほど余裕があることは間違いない。
「それとな、爵位によりまわりへの影響の大きさが変わることはしっかりと理解せよ」
「ど! どういうことでございますかっ?」
メルド公爵が声を荒げた。
「男爵令嬢に言われた罵詈雑言と、公爵令息に言われた傲慢な嘘。どちらが強い影響力を持つかわからぬわけではあるまいな?」
会場中が息を呑む。
学園やらパーティー会場やらで、男爵令嬢が令嬢たちを『性格が悪いから婚約者に嫌われている』と吹聴していることも、令息たちが『あんな性根の腐った者でも爵位のために娶ってやる』と曰っていたことも有名である。
「言葉の価値が賠償や謝罪の金額に作用するのは当然だとは思わぬか?」
「そ……そんな……」
「おいおい、メルド公爵よ。これまで公爵として影響を享受してきたのではないのか? それを踏まえた発言や行動もしたであろう?
それが悪いことだとは申さぬ。そのように牽引し纏めてあげることは当然の力であり権利である。
だからこそ、悪影響だけは男爵家と同等などということはありえん。
権利には義務だけでなく、責任も伴うのだ」
メルド公爵がご令嬢たちの親を見れば、どの視線もメルド公爵に向けられていた。倒れている男爵夫妻には見向きもしない。
「その辺りもしっかりと各家と話し合うがよい」
ロンゼ公爵が仰々しく頷く。
メルド公爵夫人は座ったまま前のめりに倒れてピクリとも動かなくなっていた。その脇にメルド公爵も座り込む。
「陛下。そろそろ本題に参りましょう」
宰相が国王陛下の耳元でつぶやく。
「そうだな」
国王陛下も頷いた。
「後継者制度を変更いたすゆえ今日は参集させたのだが、余計な騒ぎで話が逸れた。
大切な話であるのでしかと聞くように」
『後継者制度の変更』と言われて会場が静まり返る。
「本日から後継者選びは試験制とする」
皆がどよめいた。
「詳しくはわたくしからご説明いたします」
国王陛下の宣言を宰相が引き継いだ。
「爵位の継承はこれまで書類の提出で行われておりましたが、今後はその書類が提出されてから二ヶ月以内に当主試験を受けていただきます。試験は筆記試験と面接試験があります。
筆記試験の内容は主に領地の管理と発展を滞りなく行えるか否かを確認するものです。
筆記試験に合格しましたら、面接試験へと進み、そちらも合格すれば晴れて後継者となることといたします。
不正を防ぐため引き継ぎ申請には、現当主と次期当主候補とご一緒にいらしていただき、指印をしていただきます。そして試験の際にも指印確認をいたします。
筆記試験は継承期間前でも受け付けます。何度もトライすることを考えますと、事前試験がよろしいかもしれませんね」
暫らくの間、宰相からの新制度の細かい説明が続いた。
「皆が揃うところでの騒ぎでよかったのぉ。でなければ名誉毀損の賠償金になっていた。
謝罪金ならば多少は減額されよう」
確かに国王陛下のお言葉のおかげでご令嬢方に実質的な被害を与えずに済んだ。
とはいえ、罰金など微々たるものだと思うことにはなりそうだ。
「わかっていると思うが、罰金や謝罪金に領民の金は充てるでないぞ」
この国では、管理者としての貯蓄と爵位としての貯蓄は別々に申告することになっている。領民の金とは管理者としての貯蓄であり、それは災害や発展に充てるべき金だ。
税金も管理者税と各家としての収入税は別々に払っている。
だが、パーティー一つとっても『領地のため』と言えば管理貯蓄から予算を組めるのだから大きな領地ほど余裕があることは間違いない。
「それとな、爵位によりまわりへの影響の大きさが変わることはしっかりと理解せよ」
「ど! どういうことでございますかっ?」
メルド公爵が声を荒げた。
「男爵令嬢に言われた罵詈雑言と、公爵令息に言われた傲慢な嘘。どちらが強い影響力を持つかわからぬわけではあるまいな?」
会場中が息を呑む。
学園やらパーティー会場やらで、男爵令嬢が令嬢たちを『性格が悪いから婚約者に嫌われている』と吹聴していることも、令息たちが『あんな性根の腐った者でも爵位のために娶ってやる』と曰っていたことも有名である。
「言葉の価値が賠償や謝罪の金額に作用するのは当然だとは思わぬか?」
「そ……そんな……」
「おいおい、メルド公爵よ。これまで公爵として影響を享受してきたのではないのか? それを踏まえた発言や行動もしたであろう?
それが悪いことだとは申さぬ。そのように牽引し纏めてあげることは当然の力であり権利である。
だからこそ、悪影響だけは男爵家と同等などということはありえん。
権利には義務だけでなく、責任も伴うのだ」
メルド公爵がご令嬢たちの親を見れば、どの視線もメルド公爵に向けられていた。倒れている男爵夫妻には見向きもしない。
「その辺りもしっかりと各家と話し合うがよい」
ロンゼ公爵が仰々しく頷く。
メルド公爵夫人は座ったまま前のめりに倒れてピクリとも動かなくなっていた。その脇にメルド公爵も座り込む。
「陛下。そろそろ本題に参りましょう」
宰相が国王陛下の耳元でつぶやく。
「そうだな」
国王陛下も頷いた。
「後継者制度を変更いたすゆえ今日は参集させたのだが、余計な騒ぎで話が逸れた。
大切な話であるのでしかと聞くように」
『後継者制度の変更』と言われて会場が静まり返る。
「本日から後継者選びは試験制とする」
皆がどよめいた。
「詳しくはわたくしからご説明いたします」
国王陛下の宣言を宰相が引き継いだ。
「爵位の継承はこれまで書類の提出で行われておりましたが、今後はその書類が提出されてから二ヶ月以内に当主試験を受けていただきます。試験は筆記試験と面接試験があります。
筆記試験の内容は主に領地の管理と発展を滞りなく行えるか否かを確認するものです。
筆記試験に合格しましたら、面接試験へと進み、そちらも合格すれば晴れて後継者となることといたします。
不正を防ぐため引き継ぎ申請には、現当主と次期当主候補とご一緒にいらしていただき、指印をしていただきます。そして試験の際にも指印確認をいたします。
筆記試験は継承期間前でも受け付けます。何度もトライすることを考えますと、事前試験がよろしいかもしれませんね」
暫らくの間、宰相からの新制度の細かい説明が続いた。
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