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 国王陛下は青年たちから会場全体へと目線を移した。

「おいっ! テーミル男爵。そろそろ出て来い」

 国王陛下に名指しされると高価そうとは言えない服装の夫婦が、カタカタと震えながら出てきた。青年たちに庇われていた少女の両親である。

「ふむ。これで揃ったな。ではまず、沙汰を言い渡す」

 自然と姿勢が正される。

「ガキ共の家と小娘の家には、今回の騒ぎの賠償及び罰金として一千万ガルの支払いを命じる」

 罪人とされた家の夫人たちがバタバタと倒れる。座り込んでいた夫人たちだが、失神してしまい座位さえも維持できなくなってしまった。

「陛下。口調がおかしなことになっております。『ガキ』ではなく『子息』、『小娘』ではなく『令嬢』です」

 ずっと国王陛下の脇に立っていた宰相が苦言を呈した。

「貴族としての常識もないようなやつらを丁寧に呼ぶつもりはない」

 国王陛下と宰相は小さな声であり、会場には聞こえない。

 普段は国で一番高位であるにも関わらず温厚で丁寧な口調の国王陛下が言葉をみだしていることで、会場にいる者たちは国王陛下の怒りをしみじみと感じ取った。

 国王陛下と宰相が小声でやり取りしている間にメルド公爵が我に返った。

「一千万ガル!? 到底払えませんっ! 愚息を廃嫡いたしますゆえ、温情をいただけませんでしょうか?!」

 罪人とされた家の代表として青い顔をしたメルド公爵が縋るように声を大きくする。

「「我が家も廃嫡いたしますっ!」」

 侯爵たちも続く。男爵は目が虚ろで気持ちはここにいないようだ。

「それに何の意味があるのだ?」

「「「え!?」」」

 国王陛下の冷たい声に驚愕する。

「そこな者たちをどうするかなど、国には何も関係ない。そなたらがあの者共を廃嫡にしても国には何の利益ももたらさない」

「ですがっ! あれはうちの後継者でして……。それを廃嫡するのですから……」

 メルド公爵は必死に食い下がった。家としてのツラさもわかってほしいと訴える。

 醜態を晒している青年たちが後継者であると聞いた国王陛下は眉を寄せて、肘掛けに置いてある右腕の肘を再び折り、右手に口元を持っていく。口を隠してつぶやいた。

「後継者……な。あれでは無理だろう」

「コホン!」

 国王陛下の小さなつぶやきを宰相が止める。愚痴を溢すことも咎められた国王陛下は、宰相をチロリと睨み小さくため息を吐くとメルド公爵たちに再び目を向けた。

「あのガキ共をどうするのかは自由にいたせ。家でやるがよかろう。
国として罰則は各家に与える。罰則金は一千万ガルだ」

 青年たちの父親三人もとうとう膝から崩れた。心ここにあらずであったテーミル男爵夫妻は泡を吹いて倒れた。宰相の指示で救護係がその場に行くが退場は許されなかった。

「罰則はもちろん王家も受ける。見ての通りガキ共の一人は王家のバカ息子であるからな。
王家は私財より五千万ガルを国に支払うこととする」

「「「「五千万ガル!!」」」」

 会場中が驚きの声を上げた。

 騒ぎの主であり最後まで立っていた青年が蹌踉めいて兵士に支えられ、そのまま床に跪いた。
 最後まで立っていた青年はこの国の第三王子である。つまりは国王陛下もガキ共の親の一人だ。

「ワシだけの私財では賄いきれぬ。王妃の私財。第三王子の私財。足りない分は第一王子の私財も使う。
十数年は慎ましやかに過ごさねばならぬが、これも親の責任だ。甘んじて受けよう」

 国王陛下の真剣な表情にざわついていた会場は静まり返る。国王陛下の隣、宰相とは反対側に立つ青年が一瞬眉を寄せて国王陛下を見たが、小さくため息をついてから諦めたのか正常に戻り前を向き直す。



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沢山のご指摘を受けましたので追記させていただきます。

罰金一千万円は払えないわけがないとのご指摘ですが、罰金以外にこれから謝罪金問題が発生します。

是非、そちらもお楽しみ??wwwに!

また、金銭価値につきましては、周りにいる貴族たちの反応にてご想像いただけますと助かります。
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