【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
57 / 62

57 元師団長『王太后陛下とお茶とか……。胃が痛てぇ』

しおりを挟む
 ヴィエナは悩まし気に眉を下げる。

「んー……。女の勘。というより、王妃陛下としての経験じゃないかなぁ。それも予想ね。本当の理由なんてわからないよ。
とにかく、私を見てハッとした後に、納得って微笑んだの」

「いやぁ……。それがわかるヴィーもすごいけど」

「うぅぅ。私に直接話を振られたらどうしよう……」

「母上を見送ったら親父殿が戻ってくるよ。親父殿に相談しなければ何も進まない」
 
 ラオルドは便宜上ムーガを親父殿と呼ぶようになっている。

「そうよね。ここで待つしかないわね」

「子供たちに会わせてくれてありがとうっていうのは本音だと思うよ」

「それは私がやったわけではないでしょう。ラオとお父さんが頑張ったからここへお呼びできたんだよ」

「アハハ。君は自己評価がキツイね。子供たちを元気に産んでくれてありがとうってことだろう」

「あ……。そっかぁ」

 ヴィエナはやっと心からホッとした。

 その頃、ラフィネを別館の玄関まで送るとムーガたちは本館へ帰ろうとした。

「ヴィエナさんのお父様。親同士、お茶でもしていきませんか?」

 ムーガはバッキッと音がしそうなくらい姿勢を正した。

「はひぃ。ご一緒させていただきますぅ」

「おじぃちゃま。へーん」

 リベルトとティモが大笑いした。

「美しい女性からお誘いしていただいたから緊張しちゃったんだ。お父さんお母さんには内緒だぞ。かっこ悪いから」

「ぷふふ。フィーネおばあちゃま、キレイだもんね。僕の友達のおばあちゃまにはこんなにキレイなおばあちゃまはいないよ」

 ムーガはリベルトとティモの頭を撫でる。

「二人を頼む」

「「かしこまりました」」

 二人のお世話係のメイドが二人を抱っこして本館へ向かった。二人は後ろを向いたまま本館の玄関に入るまで手を振っていた。ラフィネももちろん振り返した。

 二人が玄関へ消えるとラフィネが嬉しそうに小さく息を吐く。そして、チラリとムーガを見た。

「話は中で」

「…………はい…………」

 ムーガは緊張のあまり廊下が嫌に長く感じた。

「うちのメイドたちはもうお茶くらいならできるようになっていると思うの」

「そりゃ、優秀さはこの辺のメイドにしておくにはもったいないほどですから」

「ええ。ですから少人数よ。男爵の母親に相応しいくらいにしたわ」

「なるほど。お気遣いいたみいります」

「それにわたくしもいくつかできるように手習いをしてきたの」

「……は?」

「ユニアにいろいろと教えてもらったのよ。わたくしは早くに王太子妃になることが決定していたから淑女教育に手習いが含まれていなかったの。その時間がなかったのよね。
レース編みや刺繍ってやってみると楽しいわ。お茶はまだ上手くいかないの。渋かったり薄かったり。茶葉の少しの量で美味しさが変わってしまうから難しいわ」

 まるで若い乙女のように嬉しそうに報告してくる姿にムーガはあ然として聞いている。

「伯爵夫人らしいことができないと孫たちに呆れられてしまうかもしれないでしょう。
ヴィエナさんは何でもできそうだもの。孫たちは女性はそういうものだと思っていると思うの。それに応えたいのよ」

「な、なるほど」

『ヴィエナは元護衛騎士で平民出身で家事を小さい頃からやっているから……とは言えないな』

 領民にはムーガがヴィエナの父親だと言っているが、書類上はリタの男爵家の四女である。
 男爵領から出たことがないお嬢様と都落ちしたラオルドは、ラオルドが王都からこの男爵領までの旅で知り合い一目で恋に落ちたという貴族のご令嬢方が喜びそうな設定で案の定王家によってラオルドの好感度アップに使われている。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

余命3ヶ月を言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のセイラは、ずっと孤独の中生きてきた。自分に興味のない父や婚約者で王太子のロイド。 特に王宮での居場所はなく、教育係には嫌味を言われ、王宮使用人たちからは、心無い噂を流される始末。さらに婚約者のロイドの傍には、美しくて人当たりの良い侯爵令嬢のミーアがいた。 ロイドを愛していたセイラは、辛くて苦しくて、胸が張り裂けそうになるのを必死に耐えていたのだ。 毎日息苦しい生活を強いられているせいか、最近ずっと調子が悪い。でもそれはきっと、気のせいだろう、そう思っていたセイラだが、ある日吐血してしまう。 診察の結果、母と同じ不治の病に掛かっており、余命3ヶ月と宣言されてしまったのだ。 もう残りわずかしか生きられないのなら、愛するロイドを解放してあげよう。そして自分は、屋敷でひっそりと最期を迎えよう。そう考えていたセイラ。 一方セイラが余命宣告を受けた事を知ったロイドは… ※両想いなのにすれ違っていた2人が、幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いいたします。 他サイトでも同時投稿中です。

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?

碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。 まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。 様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。 第二王子?いりませんわ。 第一王子?もっといりませんわ。 第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は? 彼女の存在意義とは? 別サイト様にも掲載しております

処理中です...