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55 領民「男爵様宅に超美人の女性が来たぞ!」
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ラオルドが男爵になって二年後、キリアとエーティルは婚姻した。そして、三年の引き継ぎ期間を設け王位継承をする。
両陛下は先王陛下、王太后陛下となり二人を支える。側妃ユニアはエーティルが仕切る後宮に残り女官長になった。
「ユニアが女官長ならキリアの子もメルキトの子もモカレの子も世話ができるもの。エーティルの差配は流石よね」
「エーティル王妃陛下のお支度は娘を着飾るようで楽しゅうございますわ」
ラフィネもユニアも所々にエーティルを褒める。
第三王子メルキトは予定通り辺境伯令嬢を娶る。辺境伯令嬢が優秀であったため第四王子モカレが成人して婚姻するまで王弟離宮で生活しエーティルの補佐をすることになった。
メルキトはそれまで騎士団所属で更に腕を磨く。
ユニアも寝泊まりは王弟離宮でしており、子供が生まれれば昼間は王宮の女官長であり祖母となるユニアに預ける手筈になっている。。
第四王子モカレはキリアが王位継承時には十五歳。現在キリアの補佐をしており婚約者はすでに王弟妃教育が始まっている。
モカレが十八歳になったら婚姻して王弟離宮へ移り、メルキトが辺境伯領へ行く手筈になっている。
〰️ 〰️ 〰️
更に時は過ぎ……
「くっそっ! また負けたっ! お祖母様、強すぎです。俺、これでも同年代では負けなしなんですよ」
十三歳になったリベルトはチェス盤を挟んだ向こうで優雅に扇を動かす女性に唇を尖らせた。
「ええ。随分と強くなっているわ。わたくしに一矢報いるのももうすぐよ」
「もうすぐもうすぐって言って、勝たせてくれないくせに」
「あら? 勝たせてもらいたいの?」
「実力で勝ちますっ!」
孫息子と祖母が微笑ましく戯れている。リベルトは普段は隣の公爵領にある貴族用の中等学園で寮生活をしている。そこで同年代の貴族たちとチェスを楽しんでいた。
「母上、そろそろ出発してください。ティモは初長旅ですので、何があるかわかりませんから」
「はぁ。王城パーティーに出なければダメかしら? ここでリベルトやティモやタールと遊んでいたいわ」
タールはこの家の次男だ。
「諦めてください」
ラオルドが苦笑いする。ラオルドに『母上』と呼ばれた彼女は『元王妃陛下』である。
〰️ 〰️ 〰️
ラオルドが男爵になって八年経った頃、男爵邸の隣に同じくらいの建物が建てられた。その建立を待ちわびていたかのようにそこへ多くの荷物が運び込まれる。多少高価なのはわかるが華美ではなく伯爵家なら持ちえそうな程度の家具だ。
「本当にこんなんでいいんですかね?」
ムーガの顔色は冴えない。この家に迎える人物にそれがそぐわぬ建物だと思っているのだ。
「これ以上にしたら何者かと勘ぐられるだろう。建前上、俺は伯爵家の長男で、武功を上げて男爵領を賜ったから次男に領地を任せてこちらへ来たことにしてあるんだから。
ムーガのおかげで武功は信じられているしな」
この八年で、ラオルドとムーガは柵の向こうの森に住む野盗たちを倒し、森を切り拓き男爵領を広げた。ラオルドはそこに樵村を作り人材集めと木材の売買とを行い益々領地が広がった。
その手腕を見た領民たちはラオルドが伯爵家の長男であることを信じている。
伯爵家の長男がわざわざ男爵になるなどおかしな話だが、貴族社会に詳しくない領民たちは何も疑問を持っていない。信じていなくともラオルドたちの働きに満足しているので詳細を知る必要性はないと感じている。
数日後、伯爵家並の馬車がラオルドの家に到着する。一人の女性が馭者にエスコートされて降りてきた。馭者のエスコートはあまりに完璧で知る者が見れば伯爵家並ではないのだが、領民にはそれはわからない。
降りてきた女性の美しさを見た野次馬に来た領民たちはため息を漏らした。女性が笑顔で手を振ると歓声があがる。
「こちらは領主様のご母堂様だ。街へ降りることもあるかもしれないので、皆、覚えておいてくれ」
ムーガが野次馬に声をかけると歓声はさらに大きくなった。
「あんなにキレイな人がうちに来るのかっ」
「バカっ! お前んちに行くわけじゃないよ。買い物に来られるかもしれんってことさ」
あちらこちらでワイワイと興奮した声がする。存在だけで周りを興奮させるオーラは流石である。
「領主様も男前だもの! 領主様のお母様! ステキだわぁ」
娘たちも興奮気味だ。
馭者からエスコートを代わったラオルドがその女性と並び手を振って歓声に応えてから邸内へと姿を消した。
ムーガの指示で野次馬たちは解散となった。
『伯爵夫人でこの騒ぎだ。本当は王太后陛下だと知ったらどうなるんだ』
ムーガは頭を振って悪い妄想を打ち消した。
その女性は王太后陛下ラフィネである。
両陛下は先王陛下、王太后陛下となり二人を支える。側妃ユニアはエーティルが仕切る後宮に残り女官長になった。
「ユニアが女官長ならキリアの子もメルキトの子もモカレの子も世話ができるもの。エーティルの差配は流石よね」
「エーティル王妃陛下のお支度は娘を着飾るようで楽しゅうございますわ」
ラフィネもユニアも所々にエーティルを褒める。
第三王子メルキトは予定通り辺境伯令嬢を娶る。辺境伯令嬢が優秀であったため第四王子モカレが成人して婚姻するまで王弟離宮で生活しエーティルの補佐をすることになった。
メルキトはそれまで騎士団所属で更に腕を磨く。
ユニアも寝泊まりは王弟離宮でしており、子供が生まれれば昼間は王宮の女官長であり祖母となるユニアに預ける手筈になっている。。
第四王子モカレはキリアが王位継承時には十五歳。現在キリアの補佐をしており婚約者はすでに王弟妃教育が始まっている。
モカレが十八歳になったら婚姻して王弟離宮へ移り、メルキトが辺境伯領へ行く手筈になっている。
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更に時は過ぎ……
「くっそっ! また負けたっ! お祖母様、強すぎです。俺、これでも同年代では負けなしなんですよ」
十三歳になったリベルトはチェス盤を挟んだ向こうで優雅に扇を動かす女性に唇を尖らせた。
「ええ。随分と強くなっているわ。わたくしに一矢報いるのももうすぐよ」
「もうすぐもうすぐって言って、勝たせてくれないくせに」
「あら? 勝たせてもらいたいの?」
「実力で勝ちますっ!」
孫息子と祖母が微笑ましく戯れている。リベルトは普段は隣の公爵領にある貴族用の中等学園で寮生活をしている。そこで同年代の貴族たちとチェスを楽しんでいた。
「母上、そろそろ出発してください。ティモは初長旅ですので、何があるかわかりませんから」
「はぁ。王城パーティーに出なければダメかしら? ここでリベルトやティモやタールと遊んでいたいわ」
タールはこの家の次男だ。
「諦めてください」
ラオルドが苦笑いする。ラオルドに『母上』と呼ばれた彼女は『元王妃陛下』である。
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ラオルドが男爵になって八年経った頃、男爵邸の隣に同じくらいの建物が建てられた。その建立を待ちわびていたかのようにそこへ多くの荷物が運び込まれる。多少高価なのはわかるが華美ではなく伯爵家なら持ちえそうな程度の家具だ。
「本当にこんなんでいいんですかね?」
ムーガの顔色は冴えない。この家に迎える人物にそれがそぐわぬ建物だと思っているのだ。
「これ以上にしたら何者かと勘ぐられるだろう。建前上、俺は伯爵家の長男で、武功を上げて男爵領を賜ったから次男に領地を任せてこちらへ来たことにしてあるんだから。
ムーガのおかげで武功は信じられているしな」
この八年で、ラオルドとムーガは柵の向こうの森に住む野盗たちを倒し、森を切り拓き男爵領を広げた。ラオルドはそこに樵村を作り人材集めと木材の売買とを行い益々領地が広がった。
その手腕を見た領民たちはラオルドが伯爵家の長男であることを信じている。
伯爵家の長男がわざわざ男爵になるなどおかしな話だが、貴族社会に詳しくない領民たちは何も疑問を持っていない。信じていなくともラオルドたちの働きに満足しているので詳細を知る必要性はないと感じている。
数日後、伯爵家並の馬車がラオルドの家に到着する。一人の女性が馭者にエスコートされて降りてきた。馭者のエスコートはあまりに完璧で知る者が見れば伯爵家並ではないのだが、領民にはそれはわからない。
降りてきた女性の美しさを見た野次馬に来た領民たちはため息を漏らした。女性が笑顔で手を振ると歓声があがる。
「こちらは領主様のご母堂様だ。街へ降りることもあるかもしれないので、皆、覚えておいてくれ」
ムーガが野次馬に声をかけると歓声はさらに大きくなった。
「あんなにキレイな人がうちに来るのかっ」
「バカっ! お前んちに行くわけじゃないよ。買い物に来られるかもしれんってことさ」
あちらこちらでワイワイと興奮した声がする。存在だけで周りを興奮させるオーラは流石である。
「領主様も男前だもの! 領主様のお母様! ステキだわぁ」
娘たちも興奮気味だ。
馭者からエスコートを代わったラオルドがその女性と並び手を振って歓声に応えてから邸内へと姿を消した。
ムーガの指示で野次馬たちは解散となった。
『伯爵夫人でこの騒ぎだ。本当は王太后陛下だと知ったらどうなるんだ』
ムーガは頭を振って悪い妄想を打ち消した。
その女性は王太后陛下ラフィネである。
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