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49 元師団長「三年ほどお供します」
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ムーガの父親としての哀愁を他所にラオルドは手際よくヴィエナの荷物を括り付けていく。
そしてヴィエナを自分に引き寄せた。
「ムーガ。この家は自由にしていいぞ。俺は王都から離れるから当分使い道はないからな。
いや、もう必要ない場所だ」
ラオルドは愛おしそうにヴィエナの髪を梳く。
ラオルドにとって王都から馬で三時間ほどのところにあるこの家は気持ちの避難所であったのだ。幼き頃から第一王子として過ごしてきたラオルドにはそういう場所が必要だったのだろう。
「ありがたく使わせていただきます。騎士団の保養所として便利そうな場所です。
ここなら緊急招集しても夜には合流できますからね」
「それいいですねっ! ねぇさんたちも喜びますよ」
ヴィエナがウキウキとはしゃいだ。
「では、俺たちはそろそろ出立しよう」
「はいっ!」
「あ、いえ。俺もお供しますよ。護衛がヴィエナだけでは不安ですから」
ムーガは自分の予定変更を伝えていなかったことに気が付き慌てて口にした。
「ヴィーは護衛ではない。俺がヴィーを守るんだ。でも、お前がいてくれるのは心強い。
とはいえ二週間後には王都へ戻るのだろう?」
「あれ? ムーガ様はエーティル様からの命があるって仰っていませんでしたっけ?」
「エーティル様の命こそがラオルド殿下の護衛と手助けなんだよ。だからヴィエナをここに置いて男爵領へ行く予定だったんだ。
しばらく男爵領で働くようにと言われている」
「しばらくってどれくらいなんです?」
「まあ、三年ほどかな」
今度はラオルドとヴィエナが口を開けた。
「第三師団はどうするのだ?」
「カティドに師団長の後任任命をいたしました。
俺は今、一騎士団員に過ぎません。仕事はラオルド殿下の護衛兼秘書です」
「ムーガほどの男を貸してくれるとはエーティル嬢は思い切るものだな。わっはっは!
ヴィエナの退職届けはリタがやっておくそうだから心配するな」
「はい。後でリタ姉に手紙を書きます」
「ああ。そうしてやってくれ」
「ヴィエナの支度もできているようですし出立しましょう。ラオルド殿下は予定を立てていらっしゃるようですし」
「コースを決めているだけで日程などはその都度臨機応変だ」
「では、街でこのボロ馬車を売ってヴィエナの馬を買いましょう」
「金ならあるぞ」
「こんなボロ馬車でも市民ならほしがるんですよ。ここで朽ち果てるよりいいでしょう」
「そうか。俺は市民の常識をまだ何も知らないからな。ムーガ。その点は遠慮なく頼むぞ」
「わかりました」
「それと、殿下呼びはなしだ。ラオルドも良くないな。ラオと呼んでくれ。敬語もなしだ」
「えっ!! それは流石に無理です! せめて『ラオ様』で勘弁してください」
拒否したムーガであったが、同行してみると何かと他の視線があり、結局外ではラオと呼ぶことになる。農民の格好をしているラオルドに様付けで敬語では注目されてしまうのも道理である。
ムーガもヴィエナも元工作員であるので使い分けはお手の物。その都度呼び方を変えていった。
昨日買った食べ物を麻袋に纏めて馬車に積む。ヴィエナの馬に持たせることになる。
ラオルドが颯爽と馬に跨った。
「ヴィー」
ラオルドがヴィエナに手を差出しそれを喜んで受けるヴィエナ。ヴィエナはラオルドの前に跨る。
『街までならヴィエナは馬車に乗ればいいだろうに……』
そう考えてしまうムーガはやはり男女のそれに疎い。
こうして三人は旅をしながら各地の特産品や男爵領で使えそうなものを研究していき、三ヶ月かけて男爵領へ入った。
そしてヴィエナを自分に引き寄せた。
「ムーガ。この家は自由にしていいぞ。俺は王都から離れるから当分使い道はないからな。
いや、もう必要ない場所だ」
ラオルドは愛おしそうにヴィエナの髪を梳く。
ラオルドにとって王都から馬で三時間ほどのところにあるこの家は気持ちの避難所であったのだ。幼き頃から第一王子として過ごしてきたラオルドにはそういう場所が必要だったのだろう。
「ありがたく使わせていただきます。騎士団の保養所として便利そうな場所です。
ここなら緊急招集しても夜には合流できますからね」
「それいいですねっ! ねぇさんたちも喜びますよ」
ヴィエナがウキウキとはしゃいだ。
「では、俺たちはそろそろ出立しよう」
「はいっ!」
「あ、いえ。俺もお供しますよ。護衛がヴィエナだけでは不安ですから」
ムーガは自分の予定変更を伝えていなかったことに気が付き慌てて口にした。
「ヴィーは護衛ではない。俺がヴィーを守るんだ。でも、お前がいてくれるのは心強い。
とはいえ二週間後には王都へ戻るのだろう?」
「あれ? ムーガ様はエーティル様からの命があるって仰っていませんでしたっけ?」
「エーティル様の命こそがラオルド殿下の護衛と手助けなんだよ。だからヴィエナをここに置いて男爵領へ行く予定だったんだ。
しばらく男爵領で働くようにと言われている」
「しばらくってどれくらいなんです?」
「まあ、三年ほどかな」
今度はラオルドとヴィエナが口を開けた。
「第三師団はどうするのだ?」
「カティドに師団長の後任任命をいたしました。
俺は今、一騎士団員に過ぎません。仕事はラオルド殿下の護衛兼秘書です」
「ムーガほどの男を貸してくれるとはエーティル嬢は思い切るものだな。わっはっは!
ヴィエナの退職届けはリタがやっておくそうだから心配するな」
「はい。後でリタ姉に手紙を書きます」
「ああ。そうしてやってくれ」
「ヴィエナの支度もできているようですし出立しましょう。ラオルド殿下は予定を立てていらっしゃるようですし」
「コースを決めているだけで日程などはその都度臨機応変だ」
「では、街でこのボロ馬車を売ってヴィエナの馬を買いましょう」
「金ならあるぞ」
「こんなボロ馬車でも市民ならほしがるんですよ。ここで朽ち果てるよりいいでしょう」
「そうか。俺は市民の常識をまだ何も知らないからな。ムーガ。その点は遠慮なく頼むぞ」
「わかりました」
「それと、殿下呼びはなしだ。ラオルドも良くないな。ラオと呼んでくれ。敬語もなしだ」
「えっ!! それは流石に無理です! せめて『ラオ様』で勘弁してください」
拒否したムーガであったが、同行してみると何かと他の視線があり、結局外ではラオと呼ぶことになる。農民の格好をしているラオルドに様付けで敬語では注目されてしまうのも道理である。
ムーガもヴィエナも元工作員であるので使い分けはお手の物。その都度呼び方を変えていった。
昨日買った食べ物を麻袋に纏めて馬車に積む。ヴィエナの馬に持たせることになる。
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『街までならヴィエナは馬車に乗ればいいだろうに……』
そう考えてしまうムーガはやはり男女のそれに疎い。
こうして三人は旅をしながら各地の特産品や男爵領で使えそうなものを研究していき、三ヶ月かけて男爵領へ入った。
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