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46 第一王子「師団長は疎いですね」
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慌てるラオルドにエーティルの鈴の音のような静かな笑いが止まらない。
「ムーガから聞きましたの。ラオルド殿下はこの作戦が成功したら男爵位を受けるつもりでいると」
それはラオルドが何気なく口にしたことだ。まだ国王陛下にそれを直談判するわけにもいかないのでムーガとの小さなやり取りの一つだ。
「殿下のお立場でこの程度の粗相でしたら王位継承権放棄で充分でしょう。
殿下が望みさえすれば公爵でも可能だと思いますわ」
ラオルドは王太子であったわけではない。王子の一人として王位継承権を放棄しようとしているにすぎないのだ。辺境伯令嬢と懇意にしているメルキトと何ら違いはないのである。
「にも関わらず男爵位をご希望なさっておられる。ならばと、男爵位でないとならない理由を考えてみましたの」
「たったそれだけのヒントで……。さすがです」
「うふふ。わたくしの考察が正しいのかを知りたくて先日武道場へ伺いましたのよ」
武道場は御前試合などが行われる室内の闘技場で王城と王宮の間の中棟ある。普段は王族が鍛錬に使用するので床は薄めのカーペットが敷かれているので怪我も少ない。闘技場であるがゆえに二階席などもあり見学は可能になっているので鍛錬しているときは一々入室者を確認しない。
「い、いつ?」
ラオルドには武道場でエーティルと話した記憶のないので余計に悩む。
「昨日ですわ」
いたずらを成功させたようにエーティルが微笑んだ。
体が鈍っていると愚痴を零していたヴィエナを連れて武道場で剣を交えることがしばしばあるのだが昨日はそんな日であった。ヴィエナは誰かに見られても誤魔化せるようにピンクのカツラを外し騎士団の鍛錬服を着た。ドリテンとソナハスは実力不足で中棟への出入りはまだ許可されていないのでここには普段は来れない。
「それもムーガですね」
ラオルドは随分と離れた壁際に立つ男を睨む。
「わたくしが二人がどちらにいらっしゃるのかを聞いたのはムーガですが、ムーガはその理由を気がついてはいませんわ。
だって、ムーガですもの。うふふ」
ラオルドがぱぁと明るい顔でエーティルに振り向いてムーガに聞こえないようにとエーティルに顔を近寄らせる。
遠くなので聞こえるわけはないしテーブルを挟んでいるのでエーティルに本当に近寄れるわけではないが、気の持ちようである。
「あ! 俺もそう思います! まさかムーガに欠点があるなんて! わははは」
自分の話であると知らないムーガは澄ました顔で立っている。
「ラオルド殿下がそのように思える方でよろしかったですわね」
「まだ俺の気持ちは伝えていません。ドリテンとソナハスの事がある程度はっきりしてからと思いまして」
ラオルドは決意を込め頷いてから紅茶を手にした。
「そうですのね。ラオルド殿下のお気持ちが伝わるとよろしいですわね」
「はい。無理強いをするつもりはないのですが、そのぉ……相手にもそう思っていてほしいとは願っております」
ラオルドがデカい体で頬を染めるのでエーティルは思わず笑う。
「最近のエーティル嬢はよくお笑いになりますね。そちらの方がいいと思います」
優しげに目を細めるラオルドにエーティルは目を瞬かせた。
「そんなに笑っておりますか? 確かに本日はとても楽しくリラックスしておりますわね」
エーティルは顎に指を置き考える。
「俺がエーティル嬢にとってはっきりと判断するべき対象でなくなったからだと思うのです」
「そうなのかしら? 自分ではわからないものですわね。ふふふ」
「エーティル嬢。王家の慣わしに巻き込んで申し訳ない。俺はヴィエナへの気持ちを自覚した時貴女への罪悪感を覚えました」
公爵令嬢に対して頭を垂れるわけにいかない王子ラオルドは目を伏せてエーティルだけに見える謝辞を表した。
「どういうことですか?」
「俺は王家から離れることを決意してから愛しいと思える女性ができた。
だが貴女は……」
ラオルドは目を伏せた。
「ムーガから聞きましたの。ラオルド殿下はこの作戦が成功したら男爵位を受けるつもりでいると」
それはラオルドが何気なく口にしたことだ。まだ国王陛下にそれを直談判するわけにもいかないのでムーガとの小さなやり取りの一つだ。
「殿下のお立場でこの程度の粗相でしたら王位継承権放棄で充分でしょう。
殿下が望みさえすれば公爵でも可能だと思いますわ」
ラオルドは王太子であったわけではない。王子の一人として王位継承権を放棄しようとしているにすぎないのだ。辺境伯令嬢と懇意にしているメルキトと何ら違いはないのである。
「にも関わらず男爵位をご希望なさっておられる。ならばと、男爵位でないとならない理由を考えてみましたの」
「たったそれだけのヒントで……。さすがです」
「うふふ。わたくしの考察が正しいのかを知りたくて先日武道場へ伺いましたのよ」
武道場は御前試合などが行われる室内の闘技場で王城と王宮の間の中棟ある。普段は王族が鍛錬に使用するので床は薄めのカーペットが敷かれているので怪我も少ない。闘技場であるがゆえに二階席などもあり見学は可能になっているので鍛錬しているときは一々入室者を確認しない。
「い、いつ?」
ラオルドには武道場でエーティルと話した記憶のないので余計に悩む。
「昨日ですわ」
いたずらを成功させたようにエーティルが微笑んだ。
体が鈍っていると愚痴を零していたヴィエナを連れて武道場で剣を交えることがしばしばあるのだが昨日はそんな日であった。ヴィエナは誰かに見られても誤魔化せるようにピンクのカツラを外し騎士団の鍛錬服を着た。ドリテンとソナハスは実力不足で中棟への出入りはまだ許可されていないのでここには普段は来れない。
「それもムーガですね」
ラオルドは随分と離れた壁際に立つ男を睨む。
「わたくしが二人がどちらにいらっしゃるのかを聞いたのはムーガですが、ムーガはその理由を気がついてはいませんわ。
だって、ムーガですもの。うふふ」
ラオルドがぱぁと明るい顔でエーティルに振り向いてムーガに聞こえないようにとエーティルに顔を近寄らせる。
遠くなので聞こえるわけはないしテーブルを挟んでいるのでエーティルに本当に近寄れるわけではないが、気の持ちようである。
「あ! 俺もそう思います! まさかムーガに欠点があるなんて! わははは」
自分の話であると知らないムーガは澄ました顔で立っている。
「ラオルド殿下がそのように思える方でよろしかったですわね」
「まだ俺の気持ちは伝えていません。ドリテンとソナハスの事がある程度はっきりしてからと思いまして」
ラオルドは決意を込め頷いてから紅茶を手にした。
「そうですのね。ラオルド殿下のお気持ちが伝わるとよろしいですわね」
「はい。無理強いをするつもりはないのですが、そのぉ……相手にもそう思っていてほしいとは願っております」
ラオルドがデカい体で頬を染めるのでエーティルは思わず笑う。
「最近のエーティル嬢はよくお笑いになりますね。そちらの方がいいと思います」
優しげに目を細めるラオルドにエーティルは目を瞬かせた。
「そんなに笑っておりますか? 確かに本日はとても楽しくリラックスしておりますわね」
エーティルは顎に指を置き考える。
「俺がエーティル嬢にとってはっきりと判断するべき対象でなくなったからだと思うのです」
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「どういうことですか?」
「俺は王家から離れることを決意してから愛しいと思える女性ができた。
だが貴女は……」
ラオルドは目を伏せた。
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