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43 父親「娘は商家に行かせたいなぁ」
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「クソ兄貴にな」
「隊長の兄貴って現侯爵様ですか? それとももうお一人の?」
ムーガは思い出して更に不機嫌になりワインをドバドバと注ぎテーブルに零すが気にもとめずにワインを空けて再びドバドバと注ぐ。
三杯飲んで息を吐いた。
「上の兄貴だよ。兄貴のところには息子しかいないから女っていう駒がほしいのだろうな。ヤツは欲が深いんだ」
『欲が深いやつに利用される方はたまったもんじゃない』
これから数年後の話にはなるがラオルドのための計画に積極的だったのはムーガのこういう背景もあるのだった。
カティドは話の意味が解らず首を傾げた。
「つまりヴィエナが俺の娘になったらきっつい令嬢教育をされて侯爵家のためにどこかのひひじじいに売られるってことだ」
「ひっでっ!!」
「高位貴族家ではよくある話だ」
「貧乏下位貴族でも聞く話っすけど、それは金に困ってってことですもんね。それよりひでぇ理由な感じしますね」
「だろ? ヴィエナをそんな家の家族にしたいって思うか?
俺は騎士爵を賜る予定だがそうなっても女というだけでヴィエナを侯爵家の者として利用するだろうな。
そういう家庭なんだ」
「なるほどね。でも、隊長のその気持ちは誰にも伝わってないっすよ」
「…………ムカついても血縁者だからな。こんな話をあちこちでするわけにもいかないだろう」
「そっすね。あーーー、板挟みかぁー!」
二人は同時にグラスを空け互いに注ぐ。ムーガはカティドが口が固いことを知っているうえで身の上話をしているのだった。
「ふん。どうせお前らのことだ。何か考えているんだろう?」
「俺たちっていうより女たちですけどね」
ヴィエナは特に女性騎士たちに可愛がられていて当然のように女性たちに相談しておりカティドは恋人が女性騎士の一人だったのでそれを耳にしていた。
ムーガがジト目でカティドに話を促す。
「騎士団に入るためには爵位が必要ですからね。リタがヴィエナを妹にすると張り切っているようです」
「…………またリタの家族に迷惑かけるのか」
「そうでもないですよ。リタが手紙を書いたらすぐに返事がきて養子縁組の書類が同封されていたそうです」
ムーガはあまりの話の速さに軽く口を開ける。
「二年に一回二人で顔を見せることが条件らしいです。馬を飛ばせば一週間で往復できるって言ってたようですよ。
リタは仕事が好きで実家へ帰らないから家族としても良い理由付けになったみたいです」
「そこまで話が進んでいるのか……」
「ヴィエナにはこの話はしていませんよ。期待させて空振りは可哀想ですからね。それに隊長がどうにかするって場合もあるし」
「俺は……ヴィーが成人したら商家に預けようと思っていたんだ」
「そりゃまたヴィエナの希望と真逆で」
カティドの呆れ笑いにムーガは苦虫を噛み潰したような顔をしてクラッカーを噛み砕く。
「娘を危険に晒したいわけないだろう!」
「そうですけど、それ言い出したら騎士なんていなくなりますよ」
「うちみたいな家もある」
ムーガは三男であることもあり騎士団入団は家族が喜び心配の声などなかった。ムーガが男であるということもあるが子供の生死より侯爵家の繁栄を考える家系である。
「隊長んとこはどうか知りませんが家庭の事情と本人の希望とが半々だと思いますけどね」
「お前は?」
「俺は家のために勉強するか武道するかの二択で武道を選びました。で、町の自警団っていう道もあったんすけどどうせ武道やるなら騎士団が給与も待遇も一番だなと。
下位貴族の次男以下なんてそんなもんですよ。親からもらえる爵位や領地なんてないんですから」
ムーガは子爵位を親からもらい領地経営をするという選択肢もあったことが特別なのだと改めて思い知らされた。
「それにヴィエナが騎士団を希望しているのって隊長の責任だと思うんで反対するのはどうかと思いますよ」
目を見開いてカティドを見て硬直していたムーガを見てニヤけた後ワインを飲む。
「うまっ!」
「隊長の兄貴って現侯爵様ですか? それとももうお一人の?」
ムーガは思い出して更に不機嫌になりワインをドバドバと注ぎテーブルに零すが気にもとめずにワインを空けて再びドバドバと注ぐ。
三杯飲んで息を吐いた。
「上の兄貴だよ。兄貴のところには息子しかいないから女っていう駒がほしいのだろうな。ヤツは欲が深いんだ」
『欲が深いやつに利用される方はたまったもんじゃない』
これから数年後の話にはなるがラオルドのための計画に積極的だったのはムーガのこういう背景もあるのだった。
カティドは話の意味が解らず首を傾げた。
「つまりヴィエナが俺の娘になったらきっつい令嬢教育をされて侯爵家のためにどこかのひひじじいに売られるってことだ」
「ひっでっ!!」
「高位貴族家ではよくある話だ」
「貧乏下位貴族でも聞く話っすけど、それは金に困ってってことですもんね。それよりひでぇ理由な感じしますね」
「だろ? ヴィエナをそんな家の家族にしたいって思うか?
俺は騎士爵を賜る予定だがそうなっても女というだけでヴィエナを侯爵家の者として利用するだろうな。
そういう家庭なんだ」
「なるほどね。でも、隊長のその気持ちは誰にも伝わってないっすよ」
「…………ムカついても血縁者だからな。こんな話をあちこちでするわけにもいかないだろう」
「そっすね。あーーー、板挟みかぁー!」
二人は同時にグラスを空け互いに注ぐ。ムーガはカティドが口が固いことを知っているうえで身の上話をしているのだった。
「ふん。どうせお前らのことだ。何か考えているんだろう?」
「俺たちっていうより女たちですけどね」
ヴィエナは特に女性騎士たちに可愛がられていて当然のように女性たちに相談しておりカティドは恋人が女性騎士の一人だったのでそれを耳にしていた。
ムーガがジト目でカティドに話を促す。
「騎士団に入るためには爵位が必要ですからね。リタがヴィエナを妹にすると張り切っているようです」
「…………またリタの家族に迷惑かけるのか」
「そうでもないですよ。リタが手紙を書いたらすぐに返事がきて養子縁組の書類が同封されていたそうです」
ムーガはあまりの話の速さに軽く口を開ける。
「二年に一回二人で顔を見せることが条件らしいです。馬を飛ばせば一週間で往復できるって言ってたようですよ。
リタは仕事が好きで実家へ帰らないから家族としても良い理由付けになったみたいです」
「そこまで話が進んでいるのか……」
「ヴィエナにはこの話はしていませんよ。期待させて空振りは可哀想ですからね。それに隊長がどうにかするって場合もあるし」
「俺は……ヴィーが成人したら商家に預けようと思っていたんだ」
「そりゃまたヴィエナの希望と真逆で」
カティドの呆れ笑いにムーガは苦虫を噛み潰したような顔をしてクラッカーを噛み砕く。
「娘を危険に晒したいわけないだろう!」
「そうですけど、それ言い出したら騎士なんていなくなりますよ」
「うちみたいな家もある」
ムーガは三男であることもあり騎士団入団は家族が喜び心配の声などなかった。ムーガが男であるということもあるが子供の生死より侯爵家の繁栄を考える家系である。
「隊長んとこはどうか知りませんが家庭の事情と本人の希望とが半々だと思いますけどね」
「お前は?」
「俺は家のために勉強するか武道するかの二択で武道を選びました。で、町の自警団っていう道もあったんすけどどうせ武道やるなら騎士団が給与も待遇も一番だなと。
下位貴族の次男以下なんてそんなもんですよ。親からもらえる爵位や領地なんてないんですから」
ムーガは子爵位を親からもらい領地経営をするという選択肢もあったことが特別なのだと改めて思い知らされた。
「それにヴィエナが騎士団を希望しているのって隊長の責任だと思うんで反対するのはどうかと思いますよ」
目を見開いてカティドを見て硬直していたムーガを見てニヤけた後ワインを飲む。
「うまっ!」
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