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40 師団長『二人の距離! おかしい!』
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「だからと言ってのんびり視察旅行なんて……」
何を言っても適度な答えが返ってくるラオルドにムーガは苦虫を噛み潰したような顔になっていく。
「護衛たちは荷物を館へ降ろしたら王都へ戻る手筈になっている。
管理人たちはそのまま雇っているからしばらくなら問題ない」
何もかも用意周到で本当に優秀なのだと実感させられる。政務に対してキリアが優秀すぎるのだ。
『これは何を言っても無駄だな。それなら俺が……』
ムーガが自分の予定変更を考えていると家から元気な声がした。
「ラオルド様! お待たせしました」
そこに現れたのは少年の格好をしたヴィエナだった。服はここで一人で暮らすには男の子と見られた方が安全だと思いムーガが用意したもの。手荷物は昨日ムーガが渡した小さなカバン一つ。
「本当にいらっしゃってくれたのですね!」
ニコニコと駆け寄ってくるヴィエナにムーガは唖然とする。しかし、さらに唖然とさせる事態が起きた。
ラオルドがヴィエナの腕を引いて抱き寄せたのだ。ヴィエナは一瞬怯むがすぐに満面の笑みとなってラオルドの胴に腕を回す。
「昨日は寝れたか?」
「はいっ! ラオルド様が用意してくれたお家、すごく素敵でした」
「ヴィー、ラオルド様じゃないだろう?」
ラオルドが覗き込むようにヴィエナの顔を見るとヴィエナが頬を染めて俯く。
「ラオ。迎えに来てくれて嬉しい」
ラオルドは可愛らしく喜ぶヴィエナの少年のような帽子をとって髪にキスをした。
「このカツラはお前の髪で作ったんだ。俺たちお揃いだな」
ラオルドはヴィエナの髪を手で漉いた。
ヴィエナはピンクのカツラをするために髪をかなり短く切ったのだ。
「うふふ。茶色の髪でもラオは素敵です」
「ヴィーも茶色の髪でもかわいいよ」
極極普通の顔をしているヴィエナだが、頬を染めて上目遣いでラオルドに甘えるような視線を送る姿は可愛らしい。
「なっ! なっ! なっ! いつの間にっ!」
ムーガは指差す腕をブンブンと振った。不敬とも言われかねない。
「え? ムーガ様。ご存知なかったのですか? ラオから聞いているとばかり」
ムーガが疎いことは暗黙の事実だったので誰かが教えてやるだろうと誰もが考えていたのだった。
「俺もヴィーや他の者から聞いていると思っていた」
ムーガはがっくりと項垂れた。その姿に二人は大笑いした。
「ムーガ。俺たちは予定通りのんびり旅をしながら男爵領へ行く。男爵領へ行けば何ヶ月も旅ができるほど暇などないだろうからな。
キリアとエーティル嬢には週に一度は手紙を書くことになっているから心配させることはない。
キリアの手前、ヴィーのことを書くわけにはいかないが、エーティル嬢はこのことを知っているから大丈夫だ」
「え!? エーティル様もご存知なのですかっ!?」
ムーガは驚愕する。
「エーティル嬢にも護衛のメイドサナとリタにもすぐに見破られたぞ。俺たちの関係が演技じゃないって」
「あー、ムーガ様ってそちら方面疎い系なんですよねぇ」
「それっ! 俺も感じたっ!」
互いにウンウンと賛同する二人を横目にムーガは物凄い渋い顔をした。それはムーガが最も気にしている、否、唯一気にしていることだった。武術も最強、演技力もあり工作員向き、統率力もある。未来の王妃であるエーティルから全幅の信頼を貰えるほど仕事ができる。
ただ、唯一、色恋の話に疎いのだ。
実処、キリアのエーティルに対する恋心も気が付かなかった。メイドたちが楽しそうにする噂話を耳にしてそのメイドたちに縋るような脅すような形で聞き出したのだ。
『あれが恋をする目……ねぇ。確かにキリア殿下はエーティル様に好意はありそうだが、敬意と何が違うのかわからん』
説明されてもわからなかったムーガは『キリアの視線が露骨』という情報を口にしたにすぎない。
「はぁ~~、信じられん。俺の知らないことがあるなんて……」
「第二部隊のみなさんはムーガ様が知らないことを知らないと思いますよ」
ムーガは自分以外全員が知っていたという事実に口をあんぐりと開ける。
「いや、それは知っていると思うぞ。ムーガの鈍感はかなり有名だ」
ラオルドはハハハハと笑い、ヴィエナはフフフと笑い、ムーガはムムムと眉を寄せた。
『ボイズ殿……。父親は剣技より難しいです……。すみません』
ムーガは心の中で亡き先輩に謝罪したが父親である前に色恋に疎いのだからしかたがない。
何を言っても適度な答えが返ってくるラオルドにムーガは苦虫を噛み潰したような顔になっていく。
「護衛たちは荷物を館へ降ろしたら王都へ戻る手筈になっている。
管理人たちはそのまま雇っているからしばらくなら問題ない」
何もかも用意周到で本当に優秀なのだと実感させられる。政務に対してキリアが優秀すぎるのだ。
『これは何を言っても無駄だな。それなら俺が……』
ムーガが自分の予定変更を考えていると家から元気な声がした。
「ラオルド様! お待たせしました」
そこに現れたのは少年の格好をしたヴィエナだった。服はここで一人で暮らすには男の子と見られた方が安全だと思いムーガが用意したもの。手荷物は昨日ムーガが渡した小さなカバン一つ。
「本当にいらっしゃってくれたのですね!」
ニコニコと駆け寄ってくるヴィエナにムーガは唖然とする。しかし、さらに唖然とさせる事態が起きた。
ラオルドがヴィエナの腕を引いて抱き寄せたのだ。ヴィエナは一瞬怯むがすぐに満面の笑みとなってラオルドの胴に腕を回す。
「昨日は寝れたか?」
「はいっ! ラオルド様が用意してくれたお家、すごく素敵でした」
「ヴィー、ラオルド様じゃないだろう?」
ラオルドが覗き込むようにヴィエナの顔を見るとヴィエナが頬を染めて俯く。
「ラオ。迎えに来てくれて嬉しい」
ラオルドは可愛らしく喜ぶヴィエナの少年のような帽子をとって髪にキスをした。
「このカツラはお前の髪で作ったんだ。俺たちお揃いだな」
ラオルドはヴィエナの髪を手で漉いた。
ヴィエナはピンクのカツラをするために髪をかなり短く切ったのだ。
「うふふ。茶色の髪でもラオは素敵です」
「ヴィーも茶色の髪でもかわいいよ」
極極普通の顔をしているヴィエナだが、頬を染めて上目遣いでラオルドに甘えるような視線を送る姿は可愛らしい。
「なっ! なっ! なっ! いつの間にっ!」
ムーガは指差す腕をブンブンと振った。不敬とも言われかねない。
「え? ムーガ様。ご存知なかったのですか? ラオから聞いているとばかり」
ムーガが疎いことは暗黙の事実だったので誰かが教えてやるだろうと誰もが考えていたのだった。
「俺もヴィーや他の者から聞いていると思っていた」
ムーガはがっくりと項垂れた。その姿に二人は大笑いした。
「ムーガ。俺たちは予定通りのんびり旅をしながら男爵領へ行く。男爵領へ行けば何ヶ月も旅ができるほど暇などないだろうからな。
キリアとエーティル嬢には週に一度は手紙を書くことになっているから心配させることはない。
キリアの手前、ヴィーのことを書くわけにはいかないが、エーティル嬢はこのことを知っているから大丈夫だ」
「え!? エーティル様もご存知なのですかっ!?」
ムーガは驚愕する。
「エーティル嬢にも護衛のメイドサナとリタにもすぐに見破られたぞ。俺たちの関係が演技じゃないって」
「あー、ムーガ様ってそちら方面疎い系なんですよねぇ」
「それっ! 俺も感じたっ!」
互いにウンウンと賛同する二人を横目にムーガは物凄い渋い顔をした。それはムーガが最も気にしている、否、唯一気にしていることだった。武術も最強、演技力もあり工作員向き、統率力もある。未来の王妃であるエーティルから全幅の信頼を貰えるほど仕事ができる。
ただ、唯一、色恋の話に疎いのだ。
実処、キリアのエーティルに対する恋心も気が付かなかった。メイドたちが楽しそうにする噂話を耳にしてそのメイドたちに縋るような脅すような形で聞き出したのだ。
『あれが恋をする目……ねぇ。確かにキリア殿下はエーティル様に好意はありそうだが、敬意と何が違うのかわからん』
説明されてもわからなかったムーガは『キリアの視線が露骨』という情報を口にしたにすぎない。
「はぁ~~、信じられん。俺の知らないことがあるなんて……」
「第二部隊のみなさんはムーガ様が知らないことを知らないと思いますよ」
ムーガは自分以外全員が知っていたという事実に口をあんぐりと開ける。
「いや、それは知っていると思うぞ。ムーガの鈍感はかなり有名だ」
ラオルドはハハハハと笑い、ヴィエナはフフフと笑い、ムーガはムムムと眉を寄せた。
『ボイズ殿……。父親は剣技より難しいです……。すみません』
ムーガは心の中で亡き先輩に謝罪したが父親である前に色恋に疎いのだからしかたがない。
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