【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
32 / 62

32 新公爵「お前が王太子になれ」

しおりを挟む
 ラオルドは穏やかにノンバルダを諭す。

「エーティル嬢はまだ十六だし、すべては国王陛下がお決めになることだからわからないよ。
まあ、なってもいいように研鑽はしているけどな」

「公爵家として全面的に支援するから何でも言ってくれよ」

 前のめりになり真剣な眼差しのノンバルダにラオルドは少しばかりたじろいだ。

「あはは。それは頼もしいな。だが、王太子の力量を見せねばならないから公爵家に手助けしてもらうわけにはいかないよ」

「なぜだ? 公爵家の後ろ盾を持ち、支援が強いことも王子の資質の一つだろう」

「いや。臣下は誰が国王になっても忠義心を持ってもらうため王子による派閥は作らないことになっているんだ」

「それが建前であることは皆が知っているぞ。誰もがどの王子に取り入るべきかと思案し行動しているじゃないか。側近の推薦人制度はその象徴だ」

「今は試験に合格した者を半数使役させているよ。
ノンバルダ。俺は公爵家にこそ誰が国王になっても支えてくれる筆頭になってほしいと思っているのだよ」

「私はラオルドが国王になることを望んでいる」

「そ、そうか。それは嬉しいが、実のところ王位継承についてどうすべきか悩んでいるのだ」

「はあ???」

 ノンバルダは不敬と取られかねないほど顔を歪めた。ラオルドは困ったように笑う。

「執務としての才はキリアの方が上だと思うのだ。俺は武術の方が得意だな。昔のように近隣地区と戦って統一を図る時代なら俺が国王に相応しいかもしれないが、今はまず現王国を安定させることが大切だ。だからキリアの……」
「ダメだっ! 国王にはラオルドがなるのだ!」

 ラオルドの言葉に被せ気味に発したノンバルダは頭を掻きむしる。

「ノンバルダ……?」

「あ、あ、すまない……」

 ノンバルダは髪を手で梳いて姿勢を正した。

「私はラオルドが国王になってほしい」

「なぜだ?」

「血の繋がりのある者を応援するのは当然だ」

「何を言うのだ。すでに王家と親類ではないか。だからこそこうして急な訪問をも受け入れているのだぞ」

「だが、私と国王陛下は血の繋がりはない」

「そんなことっ!」

 ラオルドが些末なことだと言おうとするとノンバルダはガバリと立ち上がる。

「私は父を越える。越えねばならない。そのためには国王と血縁であることは追風になる。
ラオルド。頼んだぞ。何なりと言ってくれ」

 ノンバルダはラオルドの返事を待たずに歩きだして部屋を出ていった。

 ラオルドはそれをあ然と見送ることしかできなかった。

 その一ヶ月後。ラオルドの誕生パーティーが主な貴族が招待されて催されたが王太子の発表はなかった。

 国王陛下は王太子をラオルドにと内々に打診をしたが、ラオルドがまだ決めかねていると答えたためである。国王陛下も国王の地位をすぐに譲るというものではないので慌てる必要はないと判断した。

 パーティーから一週間もせずにノンバルダから面談願いがありラオルドがそれを受け入れるとノンバルダはすぐにやってきた。

 ノンバルダの表情は固くそれを察したラオルドは挨拶もそこそこに再び周りの者たちを遠ざける。

 二人になって早々にノンバルダは誕生パーティーで王太子の発表がされなかったことへの不平不満を漏らした。

「俺から国王陛下にお願いしたのだ。俺はまだ自分が最大に国に貢献できる形を模索しているのだよ」

「そんなものは王太子になれば自由自在じゃないかっ!」

「逆だ。王太子になればその責任とそれに伴う仕事でそんなことを考える余裕はなくなる」

「王太子こそがラオルドの形だ。何を躊躇しているのだ? とにかく、早目にエーティル嬢はものにしておけよ」

「は?」

「エーティル嬢もキリア殿下ももうすぐ十七だ。二人がそういう関係になったら既成事実を作られるぞ。その前にこちらがそうしておかねばならない」

 ラオルドは考えもしていなかった話に呆然とする。
しおりを挟む
感想 102

あなたにおすすめの小説

今世ではあなたと結婚なんてお断りです!

水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。 正確には、夫とその愛人である私の親友に。 夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。 もう二度とあんな目に遭いたくない。 今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。 あなたの人生なんて知ったことではないけれど、 破滅するまで見守ってさしあげますわ!

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

「平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる」

ゆる
恋愛
平民との恋愛を選んだ王子、後悔するが遅すぎる 婚約者を平民との恋のために捨てた王子が見た、輝く未来。 それは、自分を裏切ったはずの侯爵令嬢の背中だった――。 グランシェル侯爵令嬢マイラは、次期国王の弟であるラウル王子の婚約者。 将来を約束された華やかな日々が待っている――はずだった。 しかしある日、ラウルは「愛する平民の女性」と結婚するため、婚約破棄を一方的に宣言する。 婚約破棄の衝撃、社交界での嘲笑、周囲からの冷たい視線……。 一時は心が折れそうになったマイラだが、父である侯爵や信頼できる仲間たちとともに、自らの人生を切り拓いていく決意をする。 一方、ラウルは平民女性リリアとの恋を選ぶものの、周囲からの反発や王家からの追放に直面。 「息苦しい」と捨てた婚約者が、王都で輝かしい成功を収めていく様子を知り、彼が抱えるのは後悔と挫折だった。

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

処理中です...