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10 近衛騎士『ねぇさんたち、強すぎる…』
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先程第三師団第二部隊隊長カティドが説明したように側近の仕事は対象者を無事に逃がすことである。躱すことに必死で対象者へと走られてはたまらないのでこのハンデはなかなかに大きい。
「来なさい」
ケイルは下唇を噛んでヨハンは目をひくつかせて前に出た。
ケイルのパンチやキックやらの連続攻撃をいなしていくサナが右パンチを腕で受け止めた。ケイルはその隙をついて裁判官席の方に踏み込む。サナがケイルの足を引っ掛け転びそうになったケイルの襟首を掴みケイルは後ろ向きのまま投げ飛ばされ大きく後退して尻もちをついた。
ヨハンは蹴りを中心に攻撃していたがリタに躱されてばかりで前進もできない。そこでタックルを仕掛けたがリタに躱された挙げ句腕を取られて横に投げられた。
「リタっ!」
「やっばっ!」
サナのジト目でリタがヨハンが動き立ち上がる前にヨハンの前方に回った。
「倒すことじゃなくて裁判官席に行かせないことっていうルールなのを忘れたの?」
「ごめんって。だってあんなオッサンたち守る気持ちになる?」
オッサンたちと言われた十人の裁判官たちはムッとしたが腕力では敵わなそうなことは先程の動きで重々承知したので顔は飄々としてみせている。
「その後ろに控えるお方を見なさいよ」
リタはヨハンに警戒しながらも後ろを見た。
「はぅ。エーティルさまぁ」
エーティルはリタの視線を感じてにっこりと笑った。
「うわぁ! 気合がマックスになったぁ!」
リタはヨハンがパンチをしてきたところをその腕を掴んでヨハンと一緒にクルクルと三回転すると部屋の後方にヨハンを投げる。
足を引っ掛けることや投げることが攻撃でないとは言えないが、サナとリタがパンチも蹴りもしていないのは重々わかっているので文句を言うなどというカッコ悪いことはしない。
ズイズイズイッとケイルとヨハンに近づいていったので裁判官席とは随分と離れた。
「もうおしまい?」
「ラスト攻撃、来なっ」
「チッ!」
「クッ!」
二人は同時にリタへ向かって走った。サナが走り抜けようとするケイルを掴もうとした瞬間、ヨハンはリタを攻撃するでなく少しばかりケイルの方へ押した。予想外のことにリタはケイルを突き飛ばす形になりそのケイルがサナに向かってよろける。
「なかなかやるじゃない」
サナはケイルを躱すとケイルの肩に足を乗せ思いっきり踏み込んでジャンプした。着地点はヨハンの前だ。踏み台になったケイルはもちろん後ろに吹っ飛ぶ。
「はい! 三分終了」
サナはヨハンに最高の笑顔を送った。
「グフッ……」
サナのパンチが頭を防御したヨハンの腹に決まりヨハンは体をくの字にして蹲る。サナのパンチが速すぎて見えなかったので防御ができなかったヨハンであるがもし一か八かで腹を防御していていたら顔面にパンチをもらうか頭に回し蹴りをもらったと思われるので防御位置は完璧で最も軽い攻撃を受けたことにはなる。
「ギブアップ! ギブアップ!」
後方ではリタがケイルに腕ひしぎ十字固めを決めていてケイルの泣き叫ぶ声が聞こえた。
リタが立ち上がると他の隊員がケイルとヨハンの怪我の様子を見るために走ってくる。暗黙の了解でゲームセットということだ。
「さてと、次はあんたたちが相手をしてくれるのかしら?」
サナが意地悪く笑うとドリテンとソナハスはプルプルと震えながら何度も頭を横に振る。
「なっさけなっ!」
リタの口が悪いのは男爵令嬢として田舎生まれだからである。女性騎士はまだまだ人数が少ないので爵位が低くとも最側近の近衛騎士になれるのだ。
サナとリタには当然メイドとしての役割は期待していない。
「第一王子殿下の腕がたってよかったわね。第一王子殿下が剣の訓練をサボっていたら今頃あんたらの家族全員打首になってるわよ」
ラオルドたちは第一王子の馬車とは知らずに数名で襲ってくる野盗には何度か出くわしている。ラオルドは馬車内より馬上が好きなので馬車にはここで震える側近を乗せていた。少ない人数の野盗だったので側近たちが馬車から出てくる前に戦闘は終了していたので側近たちの実力をラオルドが知る機会がこれまでなかったのだった。
「来なさい」
ケイルは下唇を噛んでヨハンは目をひくつかせて前に出た。
ケイルのパンチやキックやらの連続攻撃をいなしていくサナが右パンチを腕で受け止めた。ケイルはその隙をついて裁判官席の方に踏み込む。サナがケイルの足を引っ掛け転びそうになったケイルの襟首を掴みケイルは後ろ向きのまま投げ飛ばされ大きく後退して尻もちをついた。
ヨハンは蹴りを中心に攻撃していたがリタに躱されてばかりで前進もできない。そこでタックルを仕掛けたがリタに躱された挙げ句腕を取られて横に投げられた。
「リタっ!」
「やっばっ!」
サナのジト目でリタがヨハンが動き立ち上がる前にヨハンの前方に回った。
「倒すことじゃなくて裁判官席に行かせないことっていうルールなのを忘れたの?」
「ごめんって。だってあんなオッサンたち守る気持ちになる?」
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「その後ろに控えるお方を見なさいよ」
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「はぅ。エーティルさまぁ」
エーティルはリタの視線を感じてにっこりと笑った。
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足を引っ掛けることや投げることが攻撃でないとは言えないが、サナとリタがパンチも蹴りもしていないのは重々わかっているので文句を言うなどというカッコ悪いことはしない。
ズイズイズイッとケイルとヨハンに近づいていったので裁判官席とは随分と離れた。
「もうおしまい?」
「ラスト攻撃、来なっ」
「チッ!」
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二人は同時にリタへ向かって走った。サナが走り抜けようとするケイルを掴もうとした瞬間、ヨハンはリタを攻撃するでなく少しばかりケイルの方へ押した。予想外のことにリタはケイルを突き飛ばす形になりそのケイルがサナに向かってよろける。
「なかなかやるじゃない」
サナはケイルを躱すとケイルの肩に足を乗せ思いっきり踏み込んでジャンプした。着地点はヨハンの前だ。踏み台になったケイルはもちろん後ろに吹っ飛ぶ。
「はい! 三分終了」
サナはヨハンに最高の笑顔を送った。
「グフッ……」
サナのパンチが頭を防御したヨハンの腹に決まりヨハンは体をくの字にして蹲る。サナのパンチが速すぎて見えなかったので防御ができなかったヨハンであるがもし一か八かで腹を防御していていたら顔面にパンチをもらうか頭に回し蹴りをもらったと思われるので防御位置は完璧で最も軽い攻撃を受けたことにはなる。
「ギブアップ! ギブアップ!」
後方ではリタがケイルに腕ひしぎ十字固めを決めていてケイルの泣き叫ぶ声が聞こえた。
リタが立ち上がると他の隊員がケイルとヨハンの怪我の様子を見るために走ってくる。暗黙の了解でゲームセットということだ。
「さてと、次はあんたたちが相手をしてくれるのかしら?」
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サナとリタには当然メイドとしての役割は期待していない。
「第一王子殿下の腕がたってよかったわね。第一王子殿下が剣の訓練をサボっていたら今頃あんたらの家族全員打首になってるわよ」
ラオルドたちは第一王子の馬車とは知らずに数名で襲ってくる野盗には何度か出くわしている。ラオルドは馬車内より馬上が好きなので馬車にはここで震える側近を乗せていた。少ない人数の野盗だったので側近たちが馬車から出てくる前に戦闘は終了していたので側近たちの実力をラオルドが知る機会がこれまでなかったのだった。
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