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2 ピンクさん「殿下の自由にしてあげてください」
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「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
ピンク色の瞳いっぱいに涙を溜めて腕をお願いポーズにした少女はエーティル様と呼ばれた少女と目が合うと大きく肩をビクつかせて俯く。ピンク色の髪が揺れ大きな瞳から涙が零れた。
自分から声をかけておいて目が合ったら涙ぐむなど演技としか言いようがないがそれに気が付かずに絆される男どもは数名いる。
まさにその数名のうちの二人がここにいる。
その少女に侍っていた青年二人は慌ててその少女に駆け寄るが不安気な顔をチラチラとエーティルに向けるだけで口を開こうともしない。絆されながらも自分が矢面に立つことは嫌っている。
エーティルは目を閉じてサラサラな水色の髪を肩から後ろに手で流しゆっくり開いた輝く夕日の瞳を優しげに三日月にした。
「それはラオルド様のご意思ということでよろしいのかしら? そちらの皆様はラオルド様の側近の方々でいらっしゃったわ、よね?」
青年たちはお互いに不安気な目を合わせたあと小さくコクリと頷いた。凡庸な雰囲気の二人はここまで来て『違う』と言える勇気はなかった。
「そうですか。ラオルド様の側近の方々も了承なさっているのなら問題ありませんわね。
ところで『ラオルド様の自由にする』というのはどういう意味かしら?」
「結婚しないことに決まっています!」
青年の一人の手を握りながらエーティルを睨みつけるピンク少女。もうピンクさんでよかろう。
ピンクさんに侍るラオルドの側近の青年二人はびっくり眼でピンクさんを見ているのを鑑みるとここへ付き添いながらピンクさんの発言内容を理解していなかったのだろうか?
二人のそんな様子をエーティルはサラッと無視した。
「わかりましたわ。貴女方の要望通りわたくしはラオルド殿下と婚姻はいたしません」
先程から話題の中心である『ラオルド』なる者はこの国ビモーデ王国の第一王子である。本人はここにいないのに何やら大切なことが決定してしまった感が否めない。
大喜びで跳ね跳んでいるピンクさんの横でラオルド殿下の側近たちは唖然として動けない。
傍観者たちもまさかの決定に青くなったり赤くなったり不安そうだったり喜色めいたり訝しんだりほくそ笑んだりと悲喜こもごもであるが、傍観者たちに共通して言えることは『ここでエーティル様にお声掛けできる者はいない』ということだ。声はかけられないが重要事項が決定してしまったかもしれない事態に走り出した者もいる。
エーティルが後ろに控えていた四十前くらいに見える男に視線を送るとその男は頭を一度下げて足早に退室していった。ピンクさんは喜んだ様子のままチラリとその後ろ姿に視線を投げたが茫然自失の二人の側近たちはそんなことは気が付かなかった。
ここはビモーデ王国の王城の食堂だ。王城勤めの文官や近衛兵、門番勤務の騎士団員など王城で働く者たちは身分証を見せれば無料で食事ができる。
一般の貴族なら受付を通れば入城は可能で、王城に見学に来た者や家族に届け物をする者や王城図書館に来た者などが有料で食事をすることができる食堂だ。つまり、貴族なら誰でも利用できる食堂となっており日々お昼時は混み合っている。
そんな食堂のお昼を過ぎて随分と時間が経ち人が疎らになった時間帯にこの騒ぎが起きた。
ピンクさんたちはどうやらエーティルが食堂を通る時間を狙って来たようだ。
本来エーティルはここを使う身分ではない。立場が高すぎて使えない。
だが、木曜日のここのランチにはカスタードプリンがついておりエーティルはそれが大好きでそれを目的として食事に来るのだが、どうも恥ずかしくてそうだとは公言できず『王城内の巡察』という名目をつけて木曜日だけここでランチをしていることが多い。
なので、エーティルが木曜日のこの時間にここにいることは理由以外なら調べれば簡単にわかるのである。
「ではそろそろ。わたくしどもはランチをいただきたいので失礼しますわね」
無表情に近い微笑を送ると食堂の受付の方を向いて一歩進んだ。
「そうですね。これでもう貴女はここで食事なんてできなくなりますものね。ゆっくりとお食べになってください」
ピンクさんが満面の笑顔でエーティルに言い放った。
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
この話の最上部
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
について
『ラオルド様の』
とあえてしております。
『ラオルド様を』
でないことに違和感はあるかと思いますがご了承ください。
後々の種明かしネタバレをしますと、
(読みたく無い方は下にいかないでください)
「〇〇はラオルド殿下の自由にさせて」
と取れるようにピンクさんはわざと言っています。ピンクさんは匂わせや誤解を招く言い方をわざとしています。
例
ケータイの機種は娘の自由にさせた
という感じでしょうか。
気になる方が多いようなので解説させてもらいました。
ピンク色の瞳いっぱいに涙を溜めて腕をお願いポーズにした少女はエーティル様と呼ばれた少女と目が合うと大きく肩をビクつかせて俯く。ピンク色の髪が揺れ大きな瞳から涙が零れた。
自分から声をかけておいて目が合ったら涙ぐむなど演技としか言いようがないがそれに気が付かずに絆される男どもは数名いる。
まさにその数名のうちの二人がここにいる。
その少女に侍っていた青年二人は慌ててその少女に駆け寄るが不安気な顔をチラチラとエーティルに向けるだけで口を開こうともしない。絆されながらも自分が矢面に立つことは嫌っている。
エーティルは目を閉じてサラサラな水色の髪を肩から後ろに手で流しゆっくり開いた輝く夕日の瞳を優しげに三日月にした。
「それはラオルド様のご意思ということでよろしいのかしら? そちらの皆様はラオルド様の側近の方々でいらっしゃったわ、よね?」
青年たちはお互いに不安気な目を合わせたあと小さくコクリと頷いた。凡庸な雰囲気の二人はここまで来て『違う』と言える勇気はなかった。
「そうですか。ラオルド様の側近の方々も了承なさっているのなら問題ありませんわね。
ところで『ラオルド様の自由にする』というのはどういう意味かしら?」
「結婚しないことに決まっています!」
青年の一人の手を握りながらエーティルを睨みつけるピンク少女。もうピンクさんでよかろう。
ピンクさんに侍るラオルドの側近の青年二人はびっくり眼でピンクさんを見ているのを鑑みるとここへ付き添いながらピンクさんの発言内容を理解していなかったのだろうか?
二人のそんな様子をエーティルはサラッと無視した。
「わかりましたわ。貴女方の要望通りわたくしはラオルド殿下と婚姻はいたしません」
先程から話題の中心である『ラオルド』なる者はこの国ビモーデ王国の第一王子である。本人はここにいないのに何やら大切なことが決定してしまった感が否めない。
大喜びで跳ね跳んでいるピンクさんの横でラオルド殿下の側近たちは唖然として動けない。
傍観者たちもまさかの決定に青くなったり赤くなったり不安そうだったり喜色めいたり訝しんだりほくそ笑んだりと悲喜こもごもであるが、傍観者たちに共通して言えることは『ここでエーティル様にお声掛けできる者はいない』ということだ。声はかけられないが重要事項が決定してしまったかもしれない事態に走り出した者もいる。
エーティルが後ろに控えていた四十前くらいに見える男に視線を送るとその男は頭を一度下げて足早に退室していった。ピンクさんは喜んだ様子のままチラリとその後ろ姿に視線を投げたが茫然自失の二人の側近たちはそんなことは気が付かなかった。
ここはビモーデ王国の王城の食堂だ。王城勤めの文官や近衛兵、門番勤務の騎士団員など王城で働く者たちは身分証を見せれば無料で食事ができる。
一般の貴族なら受付を通れば入城は可能で、王城に見学に来た者や家族に届け物をする者や王城図書館に来た者などが有料で食事をすることができる食堂だ。つまり、貴族なら誰でも利用できる食堂となっており日々お昼時は混み合っている。
そんな食堂のお昼を過ぎて随分と時間が経ち人が疎らになった時間帯にこの騒ぎが起きた。
ピンクさんたちはどうやらエーティルが食堂を通る時間を狙って来たようだ。
本来エーティルはここを使う身分ではない。立場が高すぎて使えない。
だが、木曜日のここのランチにはカスタードプリンがついておりエーティルはそれが大好きでそれを目的として食事に来るのだが、どうも恥ずかしくてそうだとは公言できず『王城内の巡察』という名目をつけて木曜日だけここでランチをしていることが多い。
なので、エーティルが木曜日のこの時間にここにいることは理由以外なら調べれば簡単にわかるのである。
「ではそろそろ。わたくしどもはランチをいただきたいので失礼しますわね」
無表情に近い微笑を送ると食堂の受付の方を向いて一歩進んだ。
「そうですね。これでもう貴女はここで食事なんてできなくなりますものね。ゆっくりとお食べになってください」
ピンクさんが満面の笑顔でエーティルに言い放った。
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
この話の最上部
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
について
『ラオルド様の』
とあえてしております。
『ラオルド様を』
でないことに違和感はあるかと思いますがご了承ください。
後々の種明かしネタバレをしますと、
(読みたく無い方は下にいかないでください)
「〇〇はラオルド殿下の自由にさせて」
と取れるようにピンクさんはわざと言っています。ピンクさんは匂わせや誤解を招く言い方をわざとしています。
例
ケータイの機種は娘の自由にさせた
という感じでしょうか。
気になる方が多いようなので解説させてもらいました。
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