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理由17【最終話】 友達だから
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それから三人は食事を楽しみながら取り留めもない話をして楽しい時間を過ごした。
帰り際、ベレナはふと呟いた。
「わたくしたちって、あの事件で醜聞になっているのかしら?」
「「え?」」
「だって、三人とも誰にもダンスに誘われませんでしたわよ」
ナハトと婚約予定であってもそれを内密にしているベレナも、お相手のいないナナリーとジゼーヌも顔を青くした。
しかし、パーティーは終わりの時間であった。
三人をダンスに誘いたかった男子生徒たちは、楽しそうにしていた三人に遠慮していたのと、やはり高貴すぎる三人に声もかけられなかっただけなのだ。
三人はそれを知る由もない。
〰️ 〰️
男たち三人はもちろん淑女たちへの態度の反省はしている。だが、それ以上にスザンヌからの精神攻撃によって多大なダメージを受けていた。
マテルジは出発した翌日、アドムから送られた早馬の近衛から聴取の様子を聞かされた。スザンヌの『早いだけ』という評価を聞いてしまってから、馬車の中でずっと蹲っていて、隣国の離宮に入った時には性不能になってしまっていた。離宮の者たちには定期的に町の娼館を貸し切りにするのだが、マテルジはその日だけは自室のベッドで震えて丸くなっている。離宮の仲間に散々からかわれ、性不能の回復は難しくなっている。
サバルは、アシャード侯爵夫人に泣きながら説明された。アシャード侯爵夫人は『家を捨てる』という意思について問いたかったのだが、サバルは『侯爵であり騎士団家でなければ意味がない』というスザンヌの評価に打ちのめされた。サバルは侯爵も継がなければ騎士団にも所属しない、出世しても門兵である。個人としての自信をズタズタにされたサバルは、今では女性ならメイドに声をかけられただけでビクついていた。今後も女性に触れるなど到底できないだろう。
ライジーノはモリト公爵から報告として冷静に話をされた。本人は『性格が暗くて結婚は無理』という評価に納得している。それからは、人嫌いに拍車がかかり余計に数字にしか興味がなくなり、同僚や上司と仕事の話をする以外は人と接触しない。王城なので周りに沢山の者がいるにもかかわらずいつも孤独となった。誰とも話をしなさすぎて鬱になることを防ぐため、モリト公爵の差配で定期的に医師と話をしている。つまりは病人だ……。
淑女たちはこれらを知らされていないので、自分たちの元婚約者が何事もなく暮らしていると思っている。
知る者たちは淑女たちにそれらを教えるつもりはない。心優しい淑女たちの心の平穏のために。
〰️ 〰️ 〰️
ベレナは予定通りナハトと婚約し、一年後に婚姻。その二年後には子供が生まれた。ナハトは政務に忙しく、領地はベレナに任せていた。ベレナは楽しそうに領地経営に勤しんだ。一年のうち半分ほどしか一緒にいない二人だが、愛し合ってはいるので大丈夫だろう。ベレナは二人目の子供をお腹に宿している。
スザンヌによるマテルジの評価を聞いてしまったナハトがどうしたのかは、夫婦だけの秘密である。
ナナリーは、女性近衛騎士としてアドムの妻である王太子妃付きとなった。
そして、スレンダー美人で実力もあるナナリーは数々の騎士たちに口説かれていた。三年後にやっと、騎士団で隊長を勤める子爵家の長男からのお誘いを受け入れた。
そして、子爵夫人となり二男三女をもうけ、子供たちに騎士道を教え込んでいる。もちろん自分の鍛錬も欠かさず、子供たちが落ち着いたら近衛に戻るつもりのようだ。
ジゼーヌは、なんと、モリト公爵閣下の弟君という国立図書館の館長のことを好きになり、猛烈アタックした。その結果、見事に落としきり、卒業から半年で婚姻した。
ジゼーヌを気に入っていたモリト公爵夫人の強力なバックアップがあったことも幸いであった。
十二歳も年上の三十歳だが、ジゼーヌにとってはそれが魅力的らしい。
婚姻が早かったのは弟君の年齢もある。独り身だったので爵位ももたなかった弟君だったが、ジゼーヌとの婚姻を機にモリト公爵閣下から伯爵位の譲渡を受けた。
二人は伯爵領を管理人に任せて、国立図書館での仕事を優先させる。その後、ジゼーヌの小説家としての才能が開花し恋愛小説作家になった。
「小説に書くためのお勉強よ」と言っては旦那様を誘惑し、一男一女をもうけた。
〰️
三人は母親になった後も、時間を作ってはお茶会をした。そして、余生まで友達であることを約束したのだった。
~ fin ~
帰り際、ベレナはふと呟いた。
「わたくしたちって、あの事件で醜聞になっているのかしら?」
「「え?」」
「だって、三人とも誰にもダンスに誘われませんでしたわよ」
ナハトと婚約予定であってもそれを内密にしているベレナも、お相手のいないナナリーとジゼーヌも顔を青くした。
しかし、パーティーは終わりの時間であった。
三人をダンスに誘いたかった男子生徒たちは、楽しそうにしていた三人に遠慮していたのと、やはり高貴すぎる三人に声もかけられなかっただけなのだ。
三人はそれを知る由もない。
〰️ 〰️
男たち三人はもちろん淑女たちへの態度の反省はしている。だが、それ以上にスザンヌからの精神攻撃によって多大なダメージを受けていた。
マテルジは出発した翌日、アドムから送られた早馬の近衛から聴取の様子を聞かされた。スザンヌの『早いだけ』という評価を聞いてしまってから、馬車の中でずっと蹲っていて、隣国の離宮に入った時には性不能になってしまっていた。離宮の者たちには定期的に町の娼館を貸し切りにするのだが、マテルジはその日だけは自室のベッドで震えて丸くなっている。離宮の仲間に散々からかわれ、性不能の回復は難しくなっている。
サバルは、アシャード侯爵夫人に泣きながら説明された。アシャード侯爵夫人は『家を捨てる』という意思について問いたかったのだが、サバルは『侯爵であり騎士団家でなければ意味がない』というスザンヌの評価に打ちのめされた。サバルは侯爵も継がなければ騎士団にも所属しない、出世しても門兵である。個人としての自信をズタズタにされたサバルは、今では女性ならメイドに声をかけられただけでビクついていた。今後も女性に触れるなど到底できないだろう。
ライジーノはモリト公爵から報告として冷静に話をされた。本人は『性格が暗くて結婚は無理』という評価に納得している。それからは、人嫌いに拍車がかかり余計に数字にしか興味がなくなり、同僚や上司と仕事の話をする以外は人と接触しない。王城なので周りに沢山の者がいるにもかかわらずいつも孤独となった。誰とも話をしなさすぎて鬱になることを防ぐため、モリト公爵の差配で定期的に医師と話をしている。つまりは病人だ……。
淑女たちはこれらを知らされていないので、自分たちの元婚約者が何事もなく暮らしていると思っている。
知る者たちは淑女たちにそれらを教えるつもりはない。心優しい淑女たちの心の平穏のために。
〰️ 〰️ 〰️
ベレナは予定通りナハトと婚約し、一年後に婚姻。その二年後には子供が生まれた。ナハトは政務に忙しく、領地はベレナに任せていた。ベレナは楽しそうに領地経営に勤しんだ。一年のうち半分ほどしか一緒にいない二人だが、愛し合ってはいるので大丈夫だろう。ベレナは二人目の子供をお腹に宿している。
スザンヌによるマテルジの評価を聞いてしまったナハトがどうしたのかは、夫婦だけの秘密である。
ナナリーは、女性近衛騎士としてアドムの妻である王太子妃付きとなった。
そして、スレンダー美人で実力もあるナナリーは数々の騎士たちに口説かれていた。三年後にやっと、騎士団で隊長を勤める子爵家の長男からのお誘いを受け入れた。
そして、子爵夫人となり二男三女をもうけ、子供たちに騎士道を教え込んでいる。もちろん自分の鍛錬も欠かさず、子供たちが落ち着いたら近衛に戻るつもりのようだ。
ジゼーヌは、なんと、モリト公爵閣下の弟君という国立図書館の館長のことを好きになり、猛烈アタックした。その結果、見事に落としきり、卒業から半年で婚姻した。
ジゼーヌを気に入っていたモリト公爵夫人の強力なバックアップがあったことも幸いであった。
十二歳も年上の三十歳だが、ジゼーヌにとってはそれが魅力的らしい。
婚姻が早かったのは弟君の年齢もある。独り身だったので爵位ももたなかった弟君だったが、ジゼーヌとの婚姻を機にモリト公爵閣下から伯爵位の譲渡を受けた。
二人は伯爵領を管理人に任せて、国立図書館での仕事を優先させる。その後、ジゼーヌの小説家としての才能が開花し恋愛小説作家になった。
「小説に書くためのお勉強よ」と言っては旦那様を誘惑し、一男一女をもうけた。
〰️
三人は母親になった後も、時間を作ってはお茶会をした。そして、余生まで友達であることを約束したのだった。
~ fin ~
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