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理由16 適材適所だから
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「ジゼーヌ様はすごいですね」
べレナもナナリーの言葉に頷く。先程からのジゼーヌの分析に、べレナとナナリーはとても感心している。
「観察は小説家の基本ですわ。うふふ」
「「なるほど」」
「ライジーノ様は今も王城暮らしですか?」
食堂での事件でモリト公爵はライジーノを王城の文官部屋住みにすると言っていた。
王城には文官用の寮も食堂もある。文官となる子爵や男爵の子息たちの多くは寮を利用している。だが、高位貴族子息で利用している者はいない。
「ええ。王城メイドもいらっしゃいますから、不便はないようですわね。ライジーノ様は黙々とできるお仕事をなさっていて楽しそうだと聞いておりますわ」
初めこそ監禁状態だったライジーノであるが、仕事中は書類しか目にしないことが本人に適していたようで、仕事を楽しみ始めた。本人にとっては仕事というより、大好きな計算や数式だけの生活を喜んでいるだけだ。元々人付き合いは得意ではないので、問題ないようだ。
本人がどう考えているのかはさておき、真面目にやっているその様子にモリト公爵がある程度のことを許した。今では王城内なら自由にしている。とはいえ、仕事が楽しいらしいので、職場と食堂と自室くらいしか使っていない。食事を部屋まで運んだり洗濯物を取りに行ったりするメイドが必要なくなったので経費も削減となっている。
ライジーノは本人の意に関わらず、本当に活躍していた。
「ナハト殿下もライジーノ様のお力に感心しておりましたわ。計算が速くて正確だそうですわね。さらに不正も数件見つけられたとか」
ライジーノは数字の矛盾を指摘しただけなのだが、結果的に大捕物に発展した。
「その事件は団長から聞きました。ライジーノ様が見つけたのですか! すごいですね。
きっと、ライジーノ様にとって領地経営より適したお仕事だったのでしょうね」
領地経営は計算だけでなく発想や観察や考察が必要である。
「ライジーノ様が逆恨みされないように、宰相であるモリト公爵様が『罪人を鉱山送りにしている』とお話されておりましたわ」
「そうですよね。不正を告発して逆恨みされたら、恐怖で告発できなくなりますよね」
「金額が金額なので鉱山から出ることはできないでしょうね」
この国バフベニール王国は、マテルジが輿入れした国のように大変裕福なわけではない。罪人は斬首や毒杯より、鉱山監禁や港町監禁で働かせることが多い。鉱山も漁も事故は起きるので生命が保証されているわけではない。
「ジゼーヌ様はライジーノ様について詳しいですのね」
べレナはナハトと交流があるし、ナナリーは騎士団に鍛錬へ赴いているので、王城についてある程度情報は入るが、ジゼーヌが詳しいことは不思議である。
「モリト公爵夫人が定期的にライジーノ様のご様子をご覧に行っていらっしゃいますのよ。ですからライジーノ様のことはよくお話に出ますの」
モリト公爵家はライジーノの実家。つまりはジゼーヌの元婚約者の家だ。
「ジゼーヌ様はモリト公爵家と仲がよろしいのですね」
「ええ。夫人には国立図書館の見学もご一緒に行っていただきましたの。ステキな館長様でしたのよ」
ジゼーヌはモリト公爵の紹介で国立図書館で司書として働くことになっている。
「ジゼーヌ様のこれからのお仕事場も素晴らしい所のようでよかったですわ」
「お二人も元婚約者様のご実家と仲がよろしいではありませんの。うふふ」
「そうですわね。ふふふ」
「そうですね。あはは」
「「「適材適所になったみたいですわね(ですね)」」」
声がぴったりだった三人は笑い合った。
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
次回最終話です。よろしくお願いします。
べレナもナナリーの言葉に頷く。先程からのジゼーヌの分析に、べレナとナナリーはとても感心している。
「観察は小説家の基本ですわ。うふふ」
「「なるほど」」
「ライジーノ様は今も王城暮らしですか?」
食堂での事件でモリト公爵はライジーノを王城の文官部屋住みにすると言っていた。
王城には文官用の寮も食堂もある。文官となる子爵や男爵の子息たちの多くは寮を利用している。だが、高位貴族子息で利用している者はいない。
「ええ。王城メイドもいらっしゃいますから、不便はないようですわね。ライジーノ様は黙々とできるお仕事をなさっていて楽しそうだと聞いておりますわ」
初めこそ監禁状態だったライジーノであるが、仕事中は書類しか目にしないことが本人に適していたようで、仕事を楽しみ始めた。本人にとっては仕事というより、大好きな計算や数式だけの生活を喜んでいるだけだ。元々人付き合いは得意ではないので、問題ないようだ。
本人がどう考えているのかはさておき、真面目にやっているその様子にモリト公爵がある程度のことを許した。今では王城内なら自由にしている。とはいえ、仕事が楽しいらしいので、職場と食堂と自室くらいしか使っていない。食事を部屋まで運んだり洗濯物を取りに行ったりするメイドが必要なくなったので経費も削減となっている。
ライジーノは本人の意に関わらず、本当に活躍していた。
「ナハト殿下もライジーノ様のお力に感心しておりましたわ。計算が速くて正確だそうですわね。さらに不正も数件見つけられたとか」
ライジーノは数字の矛盾を指摘しただけなのだが、結果的に大捕物に発展した。
「その事件は団長から聞きました。ライジーノ様が見つけたのですか! すごいですね。
きっと、ライジーノ様にとって領地経営より適したお仕事だったのでしょうね」
領地経営は計算だけでなく発想や観察や考察が必要である。
「ライジーノ様が逆恨みされないように、宰相であるモリト公爵様が『罪人を鉱山送りにしている』とお話されておりましたわ」
「そうですよね。不正を告発して逆恨みされたら、恐怖で告発できなくなりますよね」
「金額が金額なので鉱山から出ることはできないでしょうね」
この国バフベニール王国は、マテルジが輿入れした国のように大変裕福なわけではない。罪人は斬首や毒杯より、鉱山監禁や港町監禁で働かせることが多い。鉱山も漁も事故は起きるので生命が保証されているわけではない。
「ジゼーヌ様はライジーノ様について詳しいですのね」
べレナはナハトと交流があるし、ナナリーは騎士団に鍛錬へ赴いているので、王城についてある程度情報は入るが、ジゼーヌが詳しいことは不思議である。
「モリト公爵夫人が定期的にライジーノ様のご様子をご覧に行っていらっしゃいますのよ。ですからライジーノ様のことはよくお話に出ますの」
モリト公爵家はライジーノの実家。つまりはジゼーヌの元婚約者の家だ。
「ジゼーヌ様はモリト公爵家と仲がよろしいのですね」
「ええ。夫人には国立図書館の見学もご一緒に行っていただきましたの。ステキな館長様でしたのよ」
ジゼーヌはモリト公爵の紹介で国立図書館で司書として働くことになっている。
「ジゼーヌ様のこれからのお仕事場も素晴らしい所のようでよかったですわ」
「お二人も元婚約者様のご実家と仲がよろしいではありませんの。うふふ」
「そうですわね。ふふふ」
「そうですね。あはは」
「「「適材適所になったみたいですわね(ですね)」」」
声がぴったりだった三人は笑い合った。
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次回最終話です。よろしくお願いします。
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