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理由9 頼りにしているから
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アドムは高らかに声を上げた。
「スザンヌ・ローダン男爵令嬢! 君の家族に密輸密売の容疑がかかっている。もちろん、君にもね」
「は? そんなの知らないわよっ! 密輸って何よっ! 学生の私がそんなことできるわけないでしょう?!」
スザンヌは腕を振り縄を解こうとするが、近衛の仕事が小娘ごときで解けるわけがない。近衛はそれをふまえてスザンヌを放っておいた。スザンヌは自分の体の勢いで転んだ。
スカートが捲りあがる。ナハトが眉を顰めて近衛に目線を送り、近衛は表情を変えずにスザンヌのスカートを直した。
「マテルジの趣味が理解できない……」
アドムの小さな呟きはナハトだけに聞こえた。ナハトも肯定するように小さくため息をつく。
「女性であるお前はこの国でそれを流行らせることはできるだろう? その辺りはゆっくりと聞こう。このまま勾留する。
連れていけ」
アドムが顎を動かし、自分の首にポンと手を置いた。近衛二人はスザンヌの両脇を抱えて軽々と持ち上げる。アドムの言にスザンヌは驚いていた様子だが、一言も発しないうちに近衛兵に手刀を当てられ気を失う。
「「「ひっ!」」」
女子生徒から悲鳴が漏れる。気を失ったスザンヌは近衛の肩に担がれて出ていった。
「みんな、すまないね。罪もない女性にはこんなことはしないから安心してほしい」
アドムが近衛のフォローをした。首に手を置いたのは、『手刀許可』だったようだ。
ナハトはアドムに近づいて小声で話しかける。
「そんなフォローをするなら口に布をするでもよかったのでは?」
「イヤイヤ。あんなのしても煩いヤツはウーウーウーウーと煩いぞ。あの暴れ方を見ただろう?」
なるほどと納得したナハトはなんとも困った顔をした。
「それより、―スザンヌに―逃げられたらどうするつもりだったんです?」
「今回のことを聞きつければ、お前は駆けつけると思っていたからね。
お前のことだから、しばらく外で待機してネズミを待っていたんだろう?」
アドムはナハトにウィンクした。ナハトの後方から様子を見ていた女子生徒が数名倒れた。それをナハトがチラリと見やる。
「兄上……。義姉上以外には色気を振りまくなと、何度申し上げればいいのですか?」
アドムを一睨みしたナハトは、一昨年までのように生徒たちにキビキビと支持を出し、倒れた女子生徒を保健室へと連れていかせる。
「さすがだねぇ。現場はナハトに任せて安心安心。これで僕は政務に集中できるよ。頼りにしている」
「それはまだ気が早いです」
「ははは!」
アドムは本当に嬉しそうだった。
アドムはふと優しい笑顔になり、ナハトの背をそっと押した。ナハトは頷いて、ベレナの前に出た。
「ベレナ嬢、昨年は生徒会役員として、世話になったね。君が僕から生徒会長を引き継ぎ、立派にやってくれた卒業式はとても感動したよ」
「ナハト王子殿下。とんでもないことでございます。ですが、喜んでいただけたのでしたら大変嬉しいですわ」
ベレナは仕事を褒められて本当に嬉しかったようで、頬をほんのりと染めていた。
ベレナは、一年生の後半からは生徒会の役員の一人として、二年生の後半からは生徒会長として学園を取り仕切った。なので学園長ともよく知る仲である。
スザンヌへの苦情処理も生徒会長としての仕事の一環であり、学園長と協議の上の処置であった。
マテルジは王子であるのに生徒会役員に選ばれなかった。それほど成績も素行も悪い。王妃陛下の子であるという怠慢さがすべてに表れていた。
頬を染めたべレナを見て、ナハトも頬を染めた。周りの者たちはその様子を映画を見るようなワクワク感を持って見守った。
「あのぉ、それでだね。君の卒業後の希望は、君の考える領地経営を施していくことだったよね?」
第三王子マテルジは卒業後しばらくは国政に携わり、数ヶ月後の婚姻でタルント公爵家に婿入りしてベルナと一緒に領地を治めることになっていた。
マテルジ本人は卒業後は国政に携わることなくダラダラと勉強と言う名の堕落生活をするつもりでいたことが先程判明したが、それはもうどうでもいい。
べレナとしては、マテルジがもう少し真面目ならお飾りの婿でも受け入れるつもりだった。
「ええ。その通りですわ。
学園での勉強はすべてそのためのものです」
べレナは淑女としての科目より、領地経営者としての科目を多く選択していた。もとより、淑女としての教育は公爵家ですでに履修しているから問題はない。
「そのようだね。素晴らしい成績だと聞いているよ」
「恐れ入ります」
未来の女公爵らしい笑顔を見せた。
「スザンヌ・ローダン男爵令嬢! 君の家族に密輸密売の容疑がかかっている。もちろん、君にもね」
「は? そんなの知らないわよっ! 密輸って何よっ! 学生の私がそんなことできるわけないでしょう?!」
スザンヌは腕を振り縄を解こうとするが、近衛の仕事が小娘ごときで解けるわけがない。近衛はそれをふまえてスザンヌを放っておいた。スザンヌは自分の体の勢いで転んだ。
スカートが捲りあがる。ナハトが眉を顰めて近衛に目線を送り、近衛は表情を変えずにスザンヌのスカートを直した。
「マテルジの趣味が理解できない……」
アドムの小さな呟きはナハトだけに聞こえた。ナハトも肯定するように小さくため息をつく。
「女性であるお前はこの国でそれを流行らせることはできるだろう? その辺りはゆっくりと聞こう。このまま勾留する。
連れていけ」
アドムが顎を動かし、自分の首にポンと手を置いた。近衛二人はスザンヌの両脇を抱えて軽々と持ち上げる。アドムの言にスザンヌは驚いていた様子だが、一言も発しないうちに近衛兵に手刀を当てられ気を失う。
「「「ひっ!」」」
女子生徒から悲鳴が漏れる。気を失ったスザンヌは近衛の肩に担がれて出ていった。
「みんな、すまないね。罪もない女性にはこんなことはしないから安心してほしい」
アドムが近衛のフォローをした。首に手を置いたのは、『手刀許可』だったようだ。
ナハトはアドムに近づいて小声で話しかける。
「そんなフォローをするなら口に布をするでもよかったのでは?」
「イヤイヤ。あんなのしても煩いヤツはウーウーウーウーと煩いぞ。あの暴れ方を見ただろう?」
なるほどと納得したナハトはなんとも困った顔をした。
「それより、―スザンヌに―逃げられたらどうするつもりだったんです?」
「今回のことを聞きつければ、お前は駆けつけると思っていたからね。
お前のことだから、しばらく外で待機してネズミを待っていたんだろう?」
アドムはナハトにウィンクした。ナハトの後方から様子を見ていた女子生徒が数名倒れた。それをナハトがチラリと見やる。
「兄上……。義姉上以外には色気を振りまくなと、何度申し上げればいいのですか?」
アドムを一睨みしたナハトは、一昨年までのように生徒たちにキビキビと支持を出し、倒れた女子生徒を保健室へと連れていかせる。
「さすがだねぇ。現場はナハトに任せて安心安心。これで僕は政務に集中できるよ。頼りにしている」
「それはまだ気が早いです」
「ははは!」
アドムは本当に嬉しそうだった。
アドムはふと優しい笑顔になり、ナハトの背をそっと押した。ナハトは頷いて、ベレナの前に出た。
「ベレナ嬢、昨年は生徒会役員として、世話になったね。君が僕から生徒会長を引き継ぎ、立派にやってくれた卒業式はとても感動したよ」
「ナハト王子殿下。とんでもないことでございます。ですが、喜んでいただけたのでしたら大変嬉しいですわ」
ベレナは仕事を褒められて本当に嬉しかったようで、頬をほんのりと染めていた。
ベレナは、一年生の後半からは生徒会の役員の一人として、二年生の後半からは生徒会長として学園を取り仕切った。なので学園長ともよく知る仲である。
スザンヌへの苦情処理も生徒会長としての仕事の一環であり、学園長と協議の上の処置であった。
マテルジは王子であるのに生徒会役員に選ばれなかった。それほど成績も素行も悪い。王妃陛下の子であるという怠慢さがすべてに表れていた。
頬を染めたべレナを見て、ナハトも頬を染めた。周りの者たちはその様子を映画を見るようなワクワク感を持って見守った。
「あのぉ、それでだね。君の卒業後の希望は、君の考える領地経営を施していくことだったよね?」
第三王子マテルジは卒業後しばらくは国政に携わり、数ヶ月後の婚姻でタルント公爵家に婿入りしてベルナと一緒に領地を治めることになっていた。
マテルジ本人は卒業後は国政に携わることなくダラダラと勉強と言う名の堕落生活をするつもりでいたことが先程判明したが、それはもうどうでもいい。
べレナとしては、マテルジがもう少し真面目ならお飾りの婿でも受け入れるつもりだった。
「ええ。その通りですわ。
学園での勉強はすべてそのためのものです」
べレナは淑女としての科目より、領地経営者としての科目を多く選択していた。もとより、淑女としての教育は公爵家ですでに履修しているから問題はない。
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