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48 証拠
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ニルネスは主役の座をモノクルの男に譲る。
「法の隙間を使って貴族の若者たちを陥れ私腹を肥やしている件についてお聞きしたいのですが」
「何を聞きたいのかはわからぬがここは王城政務の場だ。裁判所の者たちがしゃしゃり出るところではない」
「朕が呼んだのだ。今回はあれはあっちこれはこっちとなるのは面倒だ」
「はい。裁判調査員は国王陛下の指示にてここにおります」
「陛下に感謝申し上げます。法務大臣殿。貴公に騙され借金を負わされたり貴公の領地にありえないほどの便宜を強要されたとの訴えが十数件入っておりますので、調査にご協力願います」
「何!? そんな愚か者たちの弁を聞くのか」
「弁を通すかどうかは関係者からの聴取や関係資料を分析せねばわかりません」
「それはいかほどの時間がかかるのだ?」
「はい、陛下。少なく見積もりましても半年はかかるかと。法務大臣殿のご協力にもよりますが」
「そうか。では、その期間に限り法務大臣の任を解く裁決をいたせ」
国王の視線に法務副大臣が立ち上がった。
「陛下! いわれのない事由でそれはあんまりです」
「そなたを早く復帰させるための便宜だ。そなたに掛けられた嫌疑を一刻も早く晴らして戻ってくるがよい」
「くっ……わかりました……」
「では、法務大臣の期間限定罷免について裁決いたします」
か細い声の法務副大臣によって法務大臣の罷免が決定した。
「では、私は早速邸に戻りまして資料の提出の準備をいたします」
「その必要はございません。国王陛下のご指示で元法務大臣殿に宿泊していただく屋敷をご用意いたしました。何不自由なくお過ごしいただける準備が整っております」
下げた頭に降り注がれた言葉が理解できない元法務大臣はゆっくりと首を上げ、言葉の主であるニルネスの方を向いた。
「国王陛下は貴公にいらぬ嫌疑がかかることに大変に心お砕きになられ、貴公が邸にお戻りになれば証拠隠滅の恐れありと言われてしまうと嘆いておられました。国王陛下の憂いを取り除くべく貴公及び貴公のご家族に邸をご用意し、ご家族にはすでに移動していただいております。十分な侍従はつけましたし、貴公の邸の使用人たちも数名そちらに移動しておりますから生活のご心配にはおよびません」
元法務大臣の顔はすでに青から白に変化している。
「嫌疑が晴れ次第、お前の大臣選出裁決をしよう。それまでは法務大臣は空位とする。それ以外は副大臣の判断で選出せよ。選出にあたりその者に関する資料をここにいる者のたちに配布しておくように。
選出投票は一週間後だ」
「かしこまりました」
法務副大臣は胸に手を当てて丁寧に頭を下げる。
「戻るぞ」
執事が椅子を引き立ちがあった国王は裏の扉から出ていった。それを唖然と見送っていた元法務大臣はニルネスの部下たちによって丁重に屋敷へ連行……もとい送り届けられた。
その頃、五台の馬車が王妃宮から出ていった。二台目は豪華な馬車でのっぴきならないお方が搭乗していることは容易に考えられる。それらは王宮から南に丸一日以上かかる場所へと向かっていた。
数日後、王宮に届いた書面の内容は早急に王城と王宮の者たちが認知することになった。
~フローエラ公爵令嬢が次期国王であるアランディルス王子殿下を巻き込み学園で問題を起こした。フローエラ公爵令嬢はレイジーナ王妃殿下の侍女であり、その教育はレイジーナ王妃殿下が管理していた。レイジーナ王妃殿下はその責任を重くみて、王妃宮を離れ離宮にて住まわれる。王妃宮はアランディルス殿下が妃をお迎えするまでは閉鎖とする~
まるで以前から準備をしていたかの如く王妃宮の撤退は迅速で数日後には何の気配もなくなっていた。
さらに一ヶ月後、新たなニュースに国中が驚いた。
~国王陛下ご夫妻の離縁が確定した~
だが動揺は多少あったものの元々何もしていなかったレイジーナが消えても何かに支障がきたすことはない。ただ一つの場所を除けば……。
「法の隙間を使って貴族の若者たちを陥れ私腹を肥やしている件についてお聞きしたいのですが」
「何を聞きたいのかはわからぬがここは王城政務の場だ。裁判所の者たちがしゃしゃり出るところではない」
「朕が呼んだのだ。今回はあれはあっちこれはこっちとなるのは面倒だ」
「はい。裁判調査員は国王陛下の指示にてここにおります」
「陛下に感謝申し上げます。法務大臣殿。貴公に騙され借金を負わされたり貴公の領地にありえないほどの便宜を強要されたとの訴えが十数件入っておりますので、調査にご協力願います」
「何!? そんな愚か者たちの弁を聞くのか」
「弁を通すかどうかは関係者からの聴取や関係資料を分析せねばわかりません」
「それはいかほどの時間がかかるのだ?」
「はい、陛下。少なく見積もりましても半年はかかるかと。法務大臣殿のご協力にもよりますが」
「そうか。では、その期間に限り法務大臣の任を解く裁決をいたせ」
国王の視線に法務副大臣が立ち上がった。
「陛下! いわれのない事由でそれはあんまりです」
「そなたを早く復帰させるための便宜だ。そなたに掛けられた嫌疑を一刻も早く晴らして戻ってくるがよい」
「くっ……わかりました……」
「では、法務大臣の期間限定罷免について裁決いたします」
か細い声の法務副大臣によって法務大臣の罷免が決定した。
「では、私は早速邸に戻りまして資料の提出の準備をいたします」
「その必要はございません。国王陛下のご指示で元法務大臣殿に宿泊していただく屋敷をご用意いたしました。何不自由なくお過ごしいただける準備が整っております」
下げた頭に降り注がれた言葉が理解できない元法務大臣はゆっくりと首を上げ、言葉の主であるニルネスの方を向いた。
「国王陛下は貴公にいらぬ嫌疑がかかることに大変に心お砕きになられ、貴公が邸にお戻りになれば証拠隠滅の恐れありと言われてしまうと嘆いておられました。国王陛下の憂いを取り除くべく貴公及び貴公のご家族に邸をご用意し、ご家族にはすでに移動していただいております。十分な侍従はつけましたし、貴公の邸の使用人たちも数名そちらに移動しておりますから生活のご心配にはおよびません」
元法務大臣の顔はすでに青から白に変化している。
「嫌疑が晴れ次第、お前の大臣選出裁決をしよう。それまでは法務大臣は空位とする。それ以外は副大臣の判断で選出せよ。選出にあたりその者に関する資料をここにいる者のたちに配布しておくように。
選出投票は一週間後だ」
「かしこまりました」
法務副大臣は胸に手を当てて丁寧に頭を下げる。
「戻るぞ」
執事が椅子を引き立ちがあった国王は裏の扉から出ていった。それを唖然と見送っていた元法務大臣はニルネスの部下たちによって丁重に屋敷へ連行……もとい送り届けられた。
その頃、五台の馬車が王妃宮から出ていった。二台目は豪華な馬車でのっぴきならないお方が搭乗していることは容易に考えられる。それらは王宮から南に丸一日以上かかる場所へと向かっていた。
数日後、王宮に届いた書面の内容は早急に王城と王宮の者たちが認知することになった。
~フローエラ公爵令嬢が次期国王であるアランディルス王子殿下を巻き込み学園で問題を起こした。フローエラ公爵令嬢はレイジーナ王妃殿下の侍女であり、その教育はレイジーナ王妃殿下が管理していた。レイジーナ王妃殿下はその責任を重くみて、王妃宮を離れ離宮にて住まわれる。王妃宮はアランディルス殿下が妃をお迎えするまでは閉鎖とする~
まるで以前から準備をしていたかの如く王妃宮の撤退は迅速で数日後には何の気配もなくなっていた。
さらに一ヶ月後、新たなニュースに国中が驚いた。
~国王陛下ご夫妻の離縁が確定した~
だが動揺は多少あったものの元々何もしていなかったレイジーナが消えても何かに支障がきたすことはない。ただ一つの場所を除けば……。
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