【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻

文字の大きさ
上 下
48 / 57

48 証拠

しおりを挟む
 ニルネスは主役の座をモノクルの男に譲る。

「法の隙間を使って貴族の若者たちをおとしい私腹しふくやしている件についてお聞きしたいのですが」

「何を聞きたいのかはわからぬがここは王城政務の場だ。裁判所の者たちがしゃしゃり出るところではない」

「朕が呼んだのだ。今回はあれはあっちこれはこっちとなるのは面倒だ」

「はい。裁判調査員は国王陛下の指示にてここにおります」

「陛下に感謝申し上げます。法務大臣殿。貴公に騙され借金を負わされたり貴公の領地にありえないほどの便宜を強要されたとの訴えが十数件入っておりますので、調査にご協力願います」

「何!? そんなおろか者たちの弁を聞くのか」

「弁を通すかどうかは関係者からの聴取や関係資料を分析せねばわかりません」

「それはいかほどの時間がかかるのだ?」

「はい、陛下。少なく見積もりましても半年はかかるかと。法務大臣殿のご協力にもよりますが」

「そうか。では、その期間に限り法務大臣の任を解く裁決をいたせ」

 国王の視線に法務副大臣が立ち上がった。

「陛下! いわれのない事由でそれはあんまりです」

「そなたを早く復帰させるための便宜だ。そなたに掛けられた嫌疑を一刻も早く晴らして戻ってくるがよい」

「くっ……わかりました……」

「では、法務大臣の期間限定罷免について裁決いたします」

 か細い声の法務副大臣によって法務大臣の罷免が決定した。

「では、私は早速邸に戻りまして資料の提出の準備をいたします」

「その必要はございません。国王陛下のご指示で元法務大臣殿に宿泊していただく屋敷をご用意いたしました。何不自由なくお過ごしいただける準備が整っております」

 下げた頭に降り注がれた言葉が理解できない元法務大臣はゆっくりと首を上げ、言葉の主であるニルネスの方を向いた。

「国王陛下は貴公にいらぬ嫌疑がかかることに大変に心お砕きになられ、貴公が邸にお戻りになれば証拠隠滅の恐れありと言われてしまうとなげいておられました。国王陛下の憂いを取り除くべく貴公及び貴公のご家族に邸をご用意し、ご家族にはすでに移動していただいております。十分な侍従はつけましたし、貴公の邸の使用人たちも数名そちらに移動しておりますから生活のご心配にはおよびません」

 元法務大臣の顔はすでに青から白に変化している。

「嫌疑が晴れ次第、お前の大臣選出裁決をしよう。それまでは法務大臣は空位とする。それ以外は副大臣の判断で選出せよ。選出にあたりその者に関する資料をここにいる者のたちに配布しておくように。
選出投票は一週間後だ」

「かしこまりました」

 法務副大臣は胸に手を当てて丁寧に頭を下げる。

「戻るぞ」

 執事が椅子を引き立ちあがった国王は裏の扉から出ていった。それを唖然と見送っていた元法務大臣はニルネスの部下たちによって丁重に屋敷へ連行……もとい送り届けられた。

 その頃、五台の馬車が王妃宮から出ていった。二台目は豪華な馬車でやんごとなきお方が搭乗していることは容易に考えられる。それらは王宮から南に丸一日以上かかる場所へと向かっていた。

 数日後、王宮に届いた書面の内容は早急に王城と王宮の者たちが認知することになった。

~フローエラ公爵令嬢が次期国王であるアランディルス王子殿下を巻き込み学園で問題を起こした。フローエラ公爵令嬢はレイジーナ王妃殿下の侍女であり、その教育はレイジーナ王妃殿下が管理していた。レイジーナ王妃殿下はその責任を重く見て、王妃宮を離れ離宮にて住まわれる。王妃宮はアランディルス殿下がをお迎えするまでは閉鎖とする~

 まるで以前から準備をしていたかの如く王妃宮の撤退は迅速で数日後には何の気配もなくなっていた。

 さらに一ヶ月後、新たなニュースに国中が驚いた。

 ~国王陛下ご夫妻の離縁が確定した~

 だが動揺は多少あったものの元々何もしていなかったレイジーナが消えても何かに支障をきたすことはない。ただ一つの場所を除けば……。

しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

王妃はもうここにいられません

なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」  長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。  だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。  私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。  だからずっと、支えてきたのだ。  貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……  もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。 「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。  胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。  周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。  自らの前世と、感覚を。 「うそでしょ…………」  取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。  ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。 「むしろ、廃妃にしてください!」  長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………    ◇◇◇  強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。  ぜひ読んでくださると嬉しいです!

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。

処理中です...