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第二章 小麦姫と熊隊長の村作り
6 まだまだこれから
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秋になると、母豚2頭から、子豚が20匹も生まれた。春には解体やら調理やら加工やら出荷やらと大変な忙しさになりそうだ。そして、それに合わせて、再び、交配もさせる。
解体については、改めて会を設けなくとも、上の子供たちが自然に教えていくだろう。
〰️ 〰️ 〰️
秋が終わる頃になり、北のルケッティ子爵領の大工たちは戻って行ったが、デルフィーノとクレオリアは、ソベルに残った。
「母さん!ピオはどうするのさ?」
ピオニーオは、アルフレードの弟だ。北のルケッティ子爵領で、長男のレミージョ夫婦とその子供たちのとともに暮らしている。
「ピオは、来年から学園なの。心配はいらないわ」
クレオリアは平気そうだ。
「あれ?言わんかったか?ワシらもずっとここの住人だぞ」
「「「「えー!」」」」
存在が大きい二人なので、『いる』ことはわかっていたが、まさかの嬉しいニュースだった。
「お義母さん!嬉しいわ!」
「お義母さん!ずっと一緒にいられるのねっ!」
「あらあら?今更?私はずっとそのつもりだったわよ。ウフフフ」
ビアータとロマーナに抱きつかれたクレオリアはとても嬉しそうしていた。デルフィーノは自分に来てくれなかったことに少し残念がっていた。
「ピオは、卒業したら、ここへ来ることになっているんだ。アル、悪いが来年から、春休みには、迎えに行ってやってくれ。まずは、入学式が終わったら、連れてこい」
「まさか!夏休みまで、ここで生活させるの?」
アルフレードはピオニーオの気持ちを心配した。
「当たり前でしょう?だって、アルだって、そうしたのでしょう?」
「お義母さん、Cクラスにならないと4ヶ月のお休みにならないのですよ。」
「あら、きっと、あの子ならAクラスよ」
クレオリアの言葉にアルフレードも苦笑いしているので、ピオニーオは優秀な頭脳であるのだろう。
そして、その言葉通り、Aクラスとなったピオニーオは、逆に学期末だけ王都に送られるというサンドラのソベルデスバー版になってしまうことになりそうだった。しかし、学園で親友二人と出会ったアルフレードは、ピオニーオにも、1年間は学園生活を満喫させてあげるようにと、デルフィーノとクレオリアを説得した。
デルフィーノとクレオリアは、アルフレードにピオニーオへの手紙を書かせた。そこには、学園生活で、農業酪農経済など、あらゆることを学んでくるように、レポートをクレオリアに送るように、と書かれていた。
サンドラが、ピオニーオからの手紙を楽しみにするようになるのは、春からのお話。
〰️ 〰️ 〰️
1箱しか残っていなかったサトウキビは、サンドラと調理組の開発で、ジャムとしてかさ増ししたので、かなりの数を作ることができた。そして、これは、グラドゥルによると、あっという間に、というか、公爵夫人お二人がすべてお買い上げくださったそうだ。
公爵夫人たちのお茶会は今や呼ばれることがステータスになるほどだという。このお二人は、元々仲良しで、最近までは、子どもたちの結婚話がうまくいっていなかった(ランレーリオとロゼリンダ)ので、お茶会を控えていたが、去年その問題が解決し、今年になって、お茶会を開いたと、思ったら、そのジャムティーで、話題を掻っ攫っていた。
グラドゥルのところには、王宮からも連絡があったが、仕入れに半年以上かかると伝えたにもかかわらず、待ち状態だそうだ。
「少しずつ種類を増やしましょう!こりゃあ、儲かって儲かって!ハッハッハ!」
グラドゥルは笑いが止まらないようだ。確かにジャムだけでも、相当な種類を用意できるだろう。
グラドゥルは、この村に商店が必要になったら、自分が作るのだと、そして、そこがグラドゥルの本店になるのだと、すでに決めていた。
〰️ 〰️ 〰️
ジャムで儲かったお金で、外からも大工を呼び、次々と家を建てていくが、それでもまだまだ追いつかない!
新棟とチェーザたちの家とその並びに数棟、大きな豚小屋も建てた。そして、ひときわ大きなお屋敷が建てられることになった。
〰️ 〰️ 〰️
新しい小川のおかげで畑も牧草地も広がった。動物小屋も小川の向こうに大きいものを建てた。牛と馬はそちらに全部移した。
酪農組は豚・鶏班と牛・馬班に分けるほど大きくなったし、畑組は野菜班と小麦・薬草班に分けるほど大きくなった。
ジャムが成功しそうなので、果樹園組も作った。サンドラは、こちらの品種改良も張り切っている。ファーゴ子爵邸を辞めた庭師夫婦が、果樹園組を指導してくれている。森の植樹のための苗木も育て始めた。
サンドラが、何よりコルネリオのビワを大切に育てているのは、サンドラだけの秘密だ。
木を切っていくことで、領地が広がり、また建物が必要となり、また木を切って…。木こり組も随分と人数が増え、森までの距離も伸び、最近はみんなで幌馬車で移動している。数年後には植樹も始める予定だ。
レンガ組は、窯も随分と増えた。木こり組との連携もよく、薪がなくなることは、まずない。木こり組が竹を刈ってくれば、炭焼きもしている。最近、山の麓に、良質の粘土を発見し、数年はこの粘土でよいレンガが作れそうだ。
王都の鍛冶屋が、ソベルデスバーに支店を出した。ソベルデスバーの物は無料で作ってくれるが、グラドゥルのギルドが他に売ってくるため、食うには困っていないようだ。子どもたちを弟子として受け入れてくれるという。
仕事があるのだ。もっともっと、子供たちを受け入れられる。
お屋敷の後は、新棟をまた建てる計画になっている。
ビアータとアルフレードは、Cクラスの友人で領地にいる者たちを訪れ、孤児院の紹介をしてもらっていた。孤児院で守りきれない子供たちは、どこにでもいるのだ。一度紹介してもらえば、次の年からは、施設長から連絡をもらってから迎えに行けばいい。
その際、ソベルデスバーの話を聞いた元クラスメイトの何人かが、引っ越して来たりもした。
アルフレードは、デルフィーノのすすめで、「アルフレード・ソベルデスバー」と名乗るようになった。この名前がスピラリニ王国で知られることになるのは、まだまだ先の話である。
〰️ 〰️ 〰️
「アル、お話があるんだけど…」
ビアータは、ある夜アルフレードに声をかけた。
「?どうしたの?あらたまって…」
アルフレードたちの家は結局政務棟になってしまった。しかし、それより倍以上大きな家をみんなが建ててくれたのだ。そして、べニート夫妻と一緒に暮らしている。デルフィーノとクレオリアもこの家に誘ったが、若い子供たちへ目を光らせるのだと、ステラ棟で相談役をやっている。夜にはよくカップルの子どもたちとお茶をしているらしいので、本当にみんなの父親母親になっているのだろう。
ビアータは、アルフレードをテーブルの椅子へ促す。
「明日、ロマ姉さんと中へ行ってくるわね」
「ああ、わかった。何が足りないの?」
「え?えっとぉ、そう、お医者様ね」
確かにソベルデスバーには医者がいない。
「!それは言えてるね!って、どうしたの?頭痛いの?お腹?」
アルフレードはビアータの頭やら腹やらを触って心配した。
「違うのよ。落ち着いて、アル!あ、あのね」
ビアータは、アルフレードの耳元に口を近づけた。まわりには誰もいないのに。
「女の子の日にならないの」
アルフレードは、思考を巡らせた。3巡して、やっと理解した。
アルフレードは、ベッドへ座り、ビアータを抱き寄せて、ビアータのお腹に耳を当てる。
「やぁだ、アルったら、まだそんなんじゃないわ。ふふ」
「大切に大切にして、ビアータ。この子だけじゃない、君自身も。お願いだよ」
ビアータは、そのままアルフレードの頭を抱き寄せた。
〰️ 〰️ 〰️
ベビーラッシュを予感させるソベルデスバー自治区に、助産婦さんが、お医者様の旦那様と夫婦で越してきてくれるのは、この2ヶ月後のことであった。
〰️ 〰️ 〰️
男爵令嬢の興味から始まったソベルデスバーは、子供たちの笑い声が絶えない、自然が豊かな町となっていった。そして、まだまだこれからも大きな町になり、そして、いつかは…
~小麦姫と熊隊長の村作り fin~
解体については、改めて会を設けなくとも、上の子供たちが自然に教えていくだろう。
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秋が終わる頃になり、北のルケッティ子爵領の大工たちは戻って行ったが、デルフィーノとクレオリアは、ソベルに残った。
「母さん!ピオはどうするのさ?」
ピオニーオは、アルフレードの弟だ。北のルケッティ子爵領で、長男のレミージョ夫婦とその子供たちのとともに暮らしている。
「ピオは、来年から学園なの。心配はいらないわ」
クレオリアは平気そうだ。
「あれ?言わんかったか?ワシらもずっとここの住人だぞ」
「「「「えー!」」」」
存在が大きい二人なので、『いる』ことはわかっていたが、まさかの嬉しいニュースだった。
「お義母さん!嬉しいわ!」
「お義母さん!ずっと一緒にいられるのねっ!」
「あらあら?今更?私はずっとそのつもりだったわよ。ウフフフ」
ビアータとロマーナに抱きつかれたクレオリアはとても嬉しそうしていた。デルフィーノは自分に来てくれなかったことに少し残念がっていた。
「ピオは、卒業したら、ここへ来ることになっているんだ。アル、悪いが来年から、春休みには、迎えに行ってやってくれ。まずは、入学式が終わったら、連れてこい」
「まさか!夏休みまで、ここで生活させるの?」
アルフレードはピオニーオの気持ちを心配した。
「当たり前でしょう?だって、アルだって、そうしたのでしょう?」
「お義母さん、Cクラスにならないと4ヶ月のお休みにならないのですよ。」
「あら、きっと、あの子ならAクラスよ」
クレオリアの言葉にアルフレードも苦笑いしているので、ピオニーオは優秀な頭脳であるのだろう。
そして、その言葉通り、Aクラスとなったピオニーオは、逆に学期末だけ王都に送られるというサンドラのソベルデスバー版になってしまうことになりそうだった。しかし、学園で親友二人と出会ったアルフレードは、ピオニーオにも、1年間は学園生活を満喫させてあげるようにと、デルフィーノとクレオリアを説得した。
デルフィーノとクレオリアは、アルフレードにピオニーオへの手紙を書かせた。そこには、学園生活で、農業酪農経済など、あらゆることを学んでくるように、レポートをクレオリアに送るように、と書かれていた。
サンドラが、ピオニーオからの手紙を楽しみにするようになるのは、春からのお話。
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1箱しか残っていなかったサトウキビは、サンドラと調理組の開発で、ジャムとしてかさ増ししたので、かなりの数を作ることができた。そして、これは、グラドゥルによると、あっという間に、というか、公爵夫人お二人がすべてお買い上げくださったそうだ。
公爵夫人たちのお茶会は今や呼ばれることがステータスになるほどだという。このお二人は、元々仲良しで、最近までは、子どもたちの結婚話がうまくいっていなかった(ランレーリオとロゼリンダ)ので、お茶会を控えていたが、去年その問題が解決し、今年になって、お茶会を開いたと、思ったら、そのジャムティーで、話題を掻っ攫っていた。
グラドゥルのところには、王宮からも連絡があったが、仕入れに半年以上かかると伝えたにもかかわらず、待ち状態だそうだ。
「少しずつ種類を増やしましょう!こりゃあ、儲かって儲かって!ハッハッハ!」
グラドゥルは笑いが止まらないようだ。確かにジャムだけでも、相当な種類を用意できるだろう。
グラドゥルは、この村に商店が必要になったら、自分が作るのだと、そして、そこがグラドゥルの本店になるのだと、すでに決めていた。
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ジャムで儲かったお金で、外からも大工を呼び、次々と家を建てていくが、それでもまだまだ追いつかない!
新棟とチェーザたちの家とその並びに数棟、大きな豚小屋も建てた。そして、ひときわ大きなお屋敷が建てられることになった。
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新しい小川のおかげで畑も牧草地も広がった。動物小屋も小川の向こうに大きいものを建てた。牛と馬はそちらに全部移した。
酪農組は豚・鶏班と牛・馬班に分けるほど大きくなったし、畑組は野菜班と小麦・薬草班に分けるほど大きくなった。
ジャムが成功しそうなので、果樹園組も作った。サンドラは、こちらの品種改良も張り切っている。ファーゴ子爵邸を辞めた庭師夫婦が、果樹園組を指導してくれている。森の植樹のための苗木も育て始めた。
サンドラが、何よりコルネリオのビワを大切に育てているのは、サンドラだけの秘密だ。
木を切っていくことで、領地が広がり、また建物が必要となり、また木を切って…。木こり組も随分と人数が増え、森までの距離も伸び、最近はみんなで幌馬車で移動している。数年後には植樹も始める予定だ。
レンガ組は、窯も随分と増えた。木こり組との連携もよく、薪がなくなることは、まずない。木こり組が竹を刈ってくれば、炭焼きもしている。最近、山の麓に、良質の粘土を発見し、数年はこの粘土でよいレンガが作れそうだ。
王都の鍛冶屋が、ソベルデスバーに支店を出した。ソベルデスバーの物は無料で作ってくれるが、グラドゥルのギルドが他に売ってくるため、食うには困っていないようだ。子どもたちを弟子として受け入れてくれるという。
仕事があるのだ。もっともっと、子供たちを受け入れられる。
お屋敷の後は、新棟をまた建てる計画になっている。
ビアータとアルフレードは、Cクラスの友人で領地にいる者たちを訪れ、孤児院の紹介をしてもらっていた。孤児院で守りきれない子供たちは、どこにでもいるのだ。一度紹介してもらえば、次の年からは、施設長から連絡をもらってから迎えに行けばいい。
その際、ソベルデスバーの話を聞いた元クラスメイトの何人かが、引っ越して来たりもした。
アルフレードは、デルフィーノのすすめで、「アルフレード・ソベルデスバー」と名乗るようになった。この名前がスピラリニ王国で知られることになるのは、まだまだ先の話である。
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「アル、お話があるんだけど…」
ビアータは、ある夜アルフレードに声をかけた。
「?どうしたの?あらたまって…」
アルフレードたちの家は結局政務棟になってしまった。しかし、それより倍以上大きな家をみんなが建ててくれたのだ。そして、べニート夫妻と一緒に暮らしている。デルフィーノとクレオリアもこの家に誘ったが、若い子供たちへ目を光らせるのだと、ステラ棟で相談役をやっている。夜にはよくカップルの子どもたちとお茶をしているらしいので、本当にみんなの父親母親になっているのだろう。
ビアータは、アルフレードをテーブルの椅子へ促す。
「明日、ロマ姉さんと中へ行ってくるわね」
「ああ、わかった。何が足りないの?」
「え?えっとぉ、そう、お医者様ね」
確かにソベルデスバーには医者がいない。
「!それは言えてるね!って、どうしたの?頭痛いの?お腹?」
アルフレードはビアータの頭やら腹やらを触って心配した。
「違うのよ。落ち着いて、アル!あ、あのね」
ビアータは、アルフレードの耳元に口を近づけた。まわりには誰もいないのに。
「女の子の日にならないの」
アルフレードは、思考を巡らせた。3巡して、やっと理解した。
アルフレードは、ベッドへ座り、ビアータを抱き寄せて、ビアータのお腹に耳を当てる。
「やぁだ、アルったら、まだそんなんじゃないわ。ふふ」
「大切に大切にして、ビアータ。この子だけじゃない、君自身も。お願いだよ」
ビアータは、そのままアルフレードの頭を抱き寄せた。
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ベビーラッシュを予感させるソベルデスバー自治区に、助産婦さんが、お医者様の旦那様と夫婦で越してきてくれるのは、この2ヶ月後のことであった。
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男爵令嬢の興味から始まったソベルデスバーは、子供たちの笑い声が絶えない、自然が豊かな町となっていった。そして、まだまだこれからも大きな町になり、そして、いつかは…
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