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第一章 小麦姫と熊隊長の青春
16 理想のダーリン
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ビアータは、学園の1年生夏休み、ここに戻って来て、嬉しそうに『理想のダーリン』の話をした。それを聞いたみんなは、『ビアータが王都で一目惚れしたステキな王子様』を想像していたし、ビアータのいないところで、どんなにステキな人だろうと話していたのだ。
それなのに、3年生になる春休みに、ビアータが連れてきたのは『優しい熊さん』だったのだから、みんながザワザワとするわけだ。唯一、知っていたルーデジオは、みんなの態度に笑いが、止まらなかったのは内緒だ。
しかし、誰もビアータに、否定的なことを口走る者は、子供たちでさえ、いなかった。
そんな騒ぎを知らないアルフレードは、すぐに見た目のままの『優しい熊さん』を発揮し、みるみるうちに、みんなを虜にしていった。1週間もしないうちに誰もが、アルフレードが『理想のダーリン』であることを認めていた。そして、誰もが『いつか領主様に』と思い始めていた。
そんなアルフレードとビアータの婚約話は、みんなが喜んだ。今更と思わないわけではないが…………。
〰️
その夜、アルフレードとコルネリオとファブリノは、それぞれ報告をした。
「ビアータには、ファブリノに言われたのかって。ハハハ、バレバレだった。でも、婚約ってはっきりできたのはよかったよ。リノ、ありがとうなっ!」
アルフレードは、二人に肩を『バシバシ』と叩かれて、痛い祝福を受けた。
ファブリノとコルネリオは、昼間のリリアーナさん事件をアルフレードに報告した。アルフレードは、女の子たちのおませな行動に、大笑いしていた。
〰️
一方、ビアータの部屋には、サンドラとリリアーナがいた。リリアーナも二人に昼間の話を報告した。
「へぇ!リノって、人に言うだけのことあるのね」
アルフレードがファブリノの一言で今日のプロポーズになったことをよくわかっているビアータは、口だけじゃなかったファブリノに正直に感心した。
「それより、ビアータ、あなた、今までアルとどうなってたの?手紙では、うまくいってるって書いてあったじゃないの」
サンドラは、逆に夕食時の報告が不思議でならなかったのだ。
「うん。うまく行き過ぎて、何も言わなくもいいかなって関係になってたの」
ビアータは、アルフレードとまるで同じ意見だった。
「サンドラさん、それは本当です。ビアータさんとアルさんは、誰が見ても恋人でしたよ。なので、今日の発表は、恋人宣言ではなく、結婚宣言だとみんな思っていますよ」
「なるほどね。それより、リリアーナさん、年上なんですから、私に『さん』付けは、やめてくださいよ」
「無理ですわ。お嬢様のことをお名前呼びするのも心苦しいのに、お嬢様のお友達を呼び捨てなど、できませんわ」
「サンドラ、とりあえず、敬語をやめてもらうってことでどう?」
ビアータも何度も挑戦しているお願いだったので、サンドラという強い助力がいる今、どうにかリリアーナの敬語をやめさせたかった。
「いいわね、そうしましょう!ね、リリアーナさん」
「努力します、するわ。そ、そうだわ。今日、サンドラさんのことも話題になりま、ったの。ん?」
「リリアーナ、その調子よ。ふふふ」
ビアータは、まるで先生のようだ。
「はい!
で、サンドラさん、コルさんに口説かれているそうで、だってね」
サンドラが真っ赤になった。ビアータもリリアーナもこんなサンドラを見るのは初めてだった。
「やだ、サンドラ!かわいい!!何?何?コルったらやっぱりサンドラが、好きだったのねぇ!」
ビアータが改めて確認したのは、初めてのことだ。
「やっぱりってなに?」
サンドラは、眉を寄せてビアータを睨んだ。ビアータはそんなこと、気にしない。
「誰から見てもそう見えるってことよ。気が付かないのは、本人だけって、本当なのねぇ」
ビアータは、サンドラの後ろを歩くコルネリオの制服姿を思い出して、クスクス笑った。
「では、学園ではすでに」
「うん、そうよ。コルは不器用なりにアピールしていたわ」
ビアータから見たら、コルネリオは常にサンドラの近くにいようとしていたのは、明白であった。
「うそぉ!知らないわよ」
「そんなもんです」
リリアーナが知ったか顔で頷いた。
「サンドラとリリアーナ、どちらが先になるのかしらねぇ」
二人に視線を送るビアータは、お姉さんみたいだ。
「ビアータの余裕が、なんかイライラするわ」
サンドラは、なんとなく、そんな顔のビアータに少しイラッとする。それは自分にいろいろと心当たりがあるからだとは、気が付かない。
「ですね」
リリアーナは、単純に年が上なのに、恋愛では負けてると言われたようで、気に入らないだけだ。
「とにかく、サンドラは、コルのこと、嫌じゃないんでしょう?」
「近すぎて、気にしてなかったのだもの。今日も、なんか一緒に居づらくて」
「あ、それでルーさんに逃げたんで、のね。ひどいわ」
リリアーナの鋭い指摘に、サンドラの肩が揺れた。
「うん、私もそれは、ひどいと思うよ。真面目に告白してくれたなら、真面目に応えられるように相手を見なくちゃダメよ、サンドラ」
さすがにサンドラも言い訳が思いつかない。
「わ、わかったわ」
『コンコンコン』
ドアがノックされた。声の主はアルフレードだ。
「ビアータ、起きてるかい?」
「アル?ちょっと待って」
ビアータは、なんの躊躇もなく、アルフレードを部屋へと招き入れた。
「ああ、丁度よかった。二人に相談があったんだよ」
アルフレードは、二人がいることを見て、ホッとした顔をした。
「何?」
普通は逆だろうと思ったサンドラは、びっくりして、つっけんどんな聞き方になった。アルフレードはそんなことは、気にしない。
真面目な顔になって、サンドラとリリアーナを交互に視線を合わせながら話をした。
「コルとリノのことだけど、二人をゆっくりと見たうえで、無理なら断ってやってほしいんだ。二人には、ここにいる間は、サンドラとリリアーナさんを急かさないことを約束してもらった。2ヶ月後、コルとリノの気持ちが変わらなかったら、告白することになったんだ。それまでは、ここの仲間として付き合ってやってほしい。そして、男としてはどうかっていうのを心の中で判定してやってほしいんだ」
サンドラとリリアーナは、顔を合わせた。
「わかりましたわ。子供たちのことは、ジャンがうまく止めてくれましたから、大丈夫だと思うのです。私も今返事をと言われても困ってしまうので、時間をいただけるのでしたら、助かりますわ」
リリアーナにとっては、まだ1日目の話でこれ以上を望まれるのは、困る状態だった。
「わかった。ビアータにも叱られていたところよ。コルをちゃんと見るようにするわ」
サンドラは、実は何度か『コルネリオに好意を持たれている』と、本人も感じることがあったのは事実なので、いつまでも知らないふりはできないと、腹をくくった。
「よかった。ビアータに二人を説得してもらおうと思ったんだ。僕から話せてよかったよ。じゃあ、僕はお先に、おやすみ」
アルフレードは、3人に笑顔で手を振って、すぐに出ていった。部屋を出ていくアルフレードをビアータが追いかけた。そして、すぐに戻ってきた。
「改めておやすみを言いに行くなんて、仲がいいのね」
呆れ顔のサンドラは少し冷たい。
「はい。ずっとこんな感じです、感じよ」
ここまで熱々なところはあまり見ていないリリアーナも少し冷たい。
「な、何?」
ビアータは、頬が熱くなってきた。
「私も寝るわぁ、おやすみなさい」
サンドラがドアへと歩き出した。
「私も、また明日ぁ」
リリアーナも続く。
一人になった部屋で、ビアータは昼間のことを思い出して、一人でニコニコしていた。
アルフレードもビアータも、その日のうちに両親へ手紙を書いた。
〰️ 〰️ 〰️
子供たちは、本当にジャンに言われたく、それ以来、4人をからかったりはしなかった。
それなのに、3年生になる春休みに、ビアータが連れてきたのは『優しい熊さん』だったのだから、みんながザワザワとするわけだ。唯一、知っていたルーデジオは、みんなの態度に笑いが、止まらなかったのは内緒だ。
しかし、誰もビアータに、否定的なことを口走る者は、子供たちでさえ、いなかった。
そんな騒ぎを知らないアルフレードは、すぐに見た目のままの『優しい熊さん』を発揮し、みるみるうちに、みんなを虜にしていった。1週間もしないうちに誰もが、アルフレードが『理想のダーリン』であることを認めていた。そして、誰もが『いつか領主様に』と思い始めていた。
そんなアルフレードとビアータの婚約話は、みんなが喜んだ。今更と思わないわけではないが…………。
〰️
その夜、アルフレードとコルネリオとファブリノは、それぞれ報告をした。
「ビアータには、ファブリノに言われたのかって。ハハハ、バレバレだった。でも、婚約ってはっきりできたのはよかったよ。リノ、ありがとうなっ!」
アルフレードは、二人に肩を『バシバシ』と叩かれて、痛い祝福を受けた。
ファブリノとコルネリオは、昼間のリリアーナさん事件をアルフレードに報告した。アルフレードは、女の子たちのおませな行動に、大笑いしていた。
〰️
一方、ビアータの部屋には、サンドラとリリアーナがいた。リリアーナも二人に昼間の話を報告した。
「へぇ!リノって、人に言うだけのことあるのね」
アルフレードがファブリノの一言で今日のプロポーズになったことをよくわかっているビアータは、口だけじゃなかったファブリノに正直に感心した。
「それより、ビアータ、あなた、今までアルとどうなってたの?手紙では、うまくいってるって書いてあったじゃないの」
サンドラは、逆に夕食時の報告が不思議でならなかったのだ。
「うん。うまく行き過ぎて、何も言わなくもいいかなって関係になってたの」
ビアータは、アルフレードとまるで同じ意見だった。
「サンドラさん、それは本当です。ビアータさんとアルさんは、誰が見ても恋人でしたよ。なので、今日の発表は、恋人宣言ではなく、結婚宣言だとみんな思っていますよ」
「なるほどね。それより、リリアーナさん、年上なんですから、私に『さん』付けは、やめてくださいよ」
「無理ですわ。お嬢様のことをお名前呼びするのも心苦しいのに、お嬢様のお友達を呼び捨てなど、できませんわ」
「サンドラ、とりあえず、敬語をやめてもらうってことでどう?」
ビアータも何度も挑戦しているお願いだったので、サンドラという強い助力がいる今、どうにかリリアーナの敬語をやめさせたかった。
「いいわね、そうしましょう!ね、リリアーナさん」
「努力します、するわ。そ、そうだわ。今日、サンドラさんのことも話題になりま、ったの。ん?」
「リリアーナ、その調子よ。ふふふ」
ビアータは、まるで先生のようだ。
「はい!
で、サンドラさん、コルさんに口説かれているそうで、だってね」
サンドラが真っ赤になった。ビアータもリリアーナもこんなサンドラを見るのは初めてだった。
「やだ、サンドラ!かわいい!!何?何?コルったらやっぱりサンドラが、好きだったのねぇ!」
ビアータが改めて確認したのは、初めてのことだ。
「やっぱりってなに?」
サンドラは、眉を寄せてビアータを睨んだ。ビアータはそんなこと、気にしない。
「誰から見てもそう見えるってことよ。気が付かないのは、本人だけって、本当なのねぇ」
ビアータは、サンドラの後ろを歩くコルネリオの制服姿を思い出して、クスクス笑った。
「では、学園ではすでに」
「うん、そうよ。コルは不器用なりにアピールしていたわ」
ビアータから見たら、コルネリオは常にサンドラの近くにいようとしていたのは、明白であった。
「うそぉ!知らないわよ」
「そんなもんです」
リリアーナが知ったか顔で頷いた。
「サンドラとリリアーナ、どちらが先になるのかしらねぇ」
二人に視線を送るビアータは、お姉さんみたいだ。
「ビアータの余裕が、なんかイライラするわ」
サンドラは、なんとなく、そんな顔のビアータに少しイラッとする。それは自分にいろいろと心当たりがあるからだとは、気が付かない。
「ですね」
リリアーナは、単純に年が上なのに、恋愛では負けてると言われたようで、気に入らないだけだ。
「とにかく、サンドラは、コルのこと、嫌じゃないんでしょう?」
「近すぎて、気にしてなかったのだもの。今日も、なんか一緒に居づらくて」
「あ、それでルーさんに逃げたんで、のね。ひどいわ」
リリアーナの鋭い指摘に、サンドラの肩が揺れた。
「うん、私もそれは、ひどいと思うよ。真面目に告白してくれたなら、真面目に応えられるように相手を見なくちゃダメよ、サンドラ」
さすがにサンドラも言い訳が思いつかない。
「わ、わかったわ」
『コンコンコン』
ドアがノックされた。声の主はアルフレードだ。
「ビアータ、起きてるかい?」
「アル?ちょっと待って」
ビアータは、なんの躊躇もなく、アルフレードを部屋へと招き入れた。
「ああ、丁度よかった。二人に相談があったんだよ」
アルフレードは、二人がいることを見て、ホッとした顔をした。
「何?」
普通は逆だろうと思ったサンドラは、びっくりして、つっけんどんな聞き方になった。アルフレードはそんなことは、気にしない。
真面目な顔になって、サンドラとリリアーナを交互に視線を合わせながら話をした。
「コルとリノのことだけど、二人をゆっくりと見たうえで、無理なら断ってやってほしいんだ。二人には、ここにいる間は、サンドラとリリアーナさんを急かさないことを約束してもらった。2ヶ月後、コルとリノの気持ちが変わらなかったら、告白することになったんだ。それまでは、ここの仲間として付き合ってやってほしい。そして、男としてはどうかっていうのを心の中で判定してやってほしいんだ」
サンドラとリリアーナは、顔を合わせた。
「わかりましたわ。子供たちのことは、ジャンがうまく止めてくれましたから、大丈夫だと思うのです。私も今返事をと言われても困ってしまうので、時間をいただけるのでしたら、助かりますわ」
リリアーナにとっては、まだ1日目の話でこれ以上を望まれるのは、困る状態だった。
「わかった。ビアータにも叱られていたところよ。コルをちゃんと見るようにするわ」
サンドラは、実は何度か『コルネリオに好意を持たれている』と、本人も感じることがあったのは事実なので、いつまでも知らないふりはできないと、腹をくくった。
「よかった。ビアータに二人を説得してもらおうと思ったんだ。僕から話せてよかったよ。じゃあ、僕はお先に、おやすみ」
アルフレードは、3人に笑顔で手を振って、すぐに出ていった。部屋を出ていくアルフレードをビアータが追いかけた。そして、すぐに戻ってきた。
「改めておやすみを言いに行くなんて、仲がいいのね」
呆れ顔のサンドラは少し冷たい。
「はい。ずっとこんな感じです、感じよ」
ここまで熱々なところはあまり見ていないリリアーナも少し冷たい。
「な、何?」
ビアータは、頬が熱くなってきた。
「私も寝るわぁ、おやすみなさい」
サンドラがドアへと歩き出した。
「私も、また明日ぁ」
リリアーナも続く。
一人になった部屋で、ビアータは昼間のことを思い出して、一人でニコニコしていた。
アルフレードもビアータも、その日のうちに両親へ手紙を書いた。
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