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食事の後、俺と父上、ハルベルト長兄とアキオード次兄でアキオード次兄の執務室のソファに集まった。
「早速だが、このタァサス屋敷の話をしよう」
父上はお茶を用意したメイドが下がるとすぐさま本題だというように言った。俺だけが少し首を傾げていた。
「ワシはここをフユルーシに譲渡し、アキオードにはフォーニック伯爵位を譲渡しようと思う」
「いいと思います」
「ありがとうございます」
ハルベルト長兄は当然のように同意し、アキオード次兄が当然のように謝辞を述べた。
「父上! 何をおっしゃっているのですか? ここはアキ兄さんの家ではないですかっ!」
「フユ、落ち着け」
ハルベルト長兄が俺を諭すが俺は不満気な顔を隠さない。
「我が領地は発展しており、これ以上ハルベルト一人で纏めるのは難しくなっていくだろう。アキオードをフォーニック伯爵とし、領地を譲渡することがお互いに無理なく領地の発展ができるというものだ」
この世界は領土の中に未開発な場所がそこここにある。それを切り開き農地にしたり街にしたりしていくことで領土は広がらずとも管理地は増えていくのだ。
これまではアキオード次兄を含めた多くの管理人が決められた場所を直接管理し、それを纏めて予算を組んだり需要と供給の場所を決めたりするのはハルベルト長兄がやってきた。アキオード次兄は他の管理人の三人分の管理地を任されていた。その中心地がここタァサス屋敷だったのだ。
父上は爵位をいくつか持っており、その一つがフォーニック伯爵位である。
「なら、タァサス地方をアキ兄さんに譲渡すればいいではないですか? それなら住み慣れたこの屋敷からできるでしょう?」
「ここは領都ガーシンから近すぎる。領都からなるべく離れた地方をアキオードに譲った方が互いに発展できる」
「そんな……急に……」
「フユ。急な話でないのだよ」
アキオード次兄が前のめりになって俺を優しく見つめた。
「フユか私、どちらかが領地経営か商会経営かをすることになっていた。それはフユが学園を卒業してフユの適正を見てから決める予定だったんだ。だが、フユはすでにやりたいことが見つかったのだろう?」
「で、でも、成功するかどうかはわからないし……」
「そうだな。だが、メッセスからは十年計画がフユルーシの中にあるようだから卒業から十年は見守ってほしいと言われているぞ」
父上の真剣な眼差しの奥には優しさが見える。五年から十年に変更されているのはメッセスの説得なのだと思う。
「フユか私、どちらがフォーニック伯爵になり領地の割譲をするのかを十年も決めなかったらハル兄が過労死してしまうよ」
アキオード次兄はクツクツと笑う。
「商会は大きくせずに現状維持なら俺の管轄でできるから、十年くらい待てる。だが、領地発展は直接領民の生活がかかっているから、それまで待つことはできない」
ハルベルト長兄も俺を説得しようとする。
「フユルーシ。お前のやりたいことが失敗してしまったときには、しっかりと商会の経営を学び商会を大きくしなさい」
「フユ。俺は今日初めてガルフをやらせてもらったが、楽しかったぞ」
「私も楽しかった。フユはもっとガルフでの事業を考えているのでしょう?」
「ワシも夢中になっているからなぁ」
「まさか父上が王都に戻っていらっしゃらないなどとは思いませんでしたよ。帰ったらたくさんのパーティーの招待状が待っていますからね」
「そろそろそちらもハルベルトに譲りたいものだ」
「過労死が現実的になりますよ」
ハルベルト長兄の冗談に二人は笑う。
「アキに領地を割譲したら少しずつやりますよ」
ハルベルト長兄はヤレヤレと鼻で息を吐いた。
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
今年最後の投稿となります。
今年もお付き合いいただきありがとうございました*ᴗ ᴗ)⁾⁾♪
これまでと毛色の違う作品に四苦八苦しておりますが完結まで頑張りたいと思っております。
来年は『私を王妃にしたいなら……』の書籍も控えておりますので楽しんでいきたいです!
来年もよろしくお願いいたします。
皆様、よいお年を♪
「早速だが、このタァサス屋敷の話をしよう」
父上はお茶を用意したメイドが下がるとすぐさま本題だというように言った。俺だけが少し首を傾げていた。
「ワシはここをフユルーシに譲渡し、アキオードにはフォーニック伯爵位を譲渡しようと思う」
「いいと思います」
「ありがとうございます」
ハルベルト長兄は当然のように同意し、アキオード次兄が当然のように謝辞を述べた。
「父上! 何をおっしゃっているのですか? ここはアキ兄さんの家ではないですかっ!」
「フユ、落ち着け」
ハルベルト長兄が俺を諭すが俺は不満気な顔を隠さない。
「我が領地は発展しており、これ以上ハルベルト一人で纏めるのは難しくなっていくだろう。アキオードをフォーニック伯爵とし、領地を譲渡することがお互いに無理なく領地の発展ができるというものだ」
この世界は領土の中に未開発な場所がそこここにある。それを切り開き農地にしたり街にしたりしていくことで領土は広がらずとも管理地は増えていくのだ。
これまではアキオード次兄を含めた多くの管理人が決められた場所を直接管理し、それを纏めて予算を組んだり需要と供給の場所を決めたりするのはハルベルト長兄がやってきた。アキオード次兄は他の管理人の三人分の管理地を任されていた。その中心地がここタァサス屋敷だったのだ。
父上は爵位をいくつか持っており、その一つがフォーニック伯爵位である。
「なら、タァサス地方をアキ兄さんに譲渡すればいいではないですか? それなら住み慣れたこの屋敷からできるでしょう?」
「ここは領都ガーシンから近すぎる。領都からなるべく離れた地方をアキオードに譲った方が互いに発展できる」
「そんな……急に……」
「フユ。急な話でないのだよ」
アキオード次兄が前のめりになって俺を優しく見つめた。
「フユか私、どちらかが領地経営か商会経営かをすることになっていた。それはフユが学園を卒業してフユの適正を見てから決める予定だったんだ。だが、フユはすでにやりたいことが見つかったのだろう?」
「で、でも、成功するかどうかはわからないし……」
「そうだな。だが、メッセスからは十年計画がフユルーシの中にあるようだから卒業から十年は見守ってほしいと言われているぞ」
父上の真剣な眼差しの奥には優しさが見える。五年から十年に変更されているのはメッセスの説得なのだと思う。
「フユか私、どちらがフォーニック伯爵になり領地の割譲をするのかを十年も決めなかったらハル兄が過労死してしまうよ」
アキオード次兄はクツクツと笑う。
「商会は大きくせずに現状維持なら俺の管轄でできるから、十年くらい待てる。だが、領地発展は直接領民の生活がかかっているから、それまで待つことはできない」
ハルベルト長兄も俺を説得しようとする。
「フユルーシ。お前のやりたいことが失敗してしまったときには、しっかりと商会の経営を学び商会を大きくしなさい」
「フユ。俺は今日初めてガルフをやらせてもらったが、楽しかったぞ」
「私も楽しかった。フユはもっとガルフでの事業を考えているのでしょう?」
「ワシも夢中になっているからなぁ」
「まさか父上が王都に戻っていらっしゃらないなどとは思いませんでしたよ。帰ったらたくさんのパーティーの招待状が待っていますからね」
「そろそろそちらもハルベルトに譲りたいものだ」
「過労死が現実的になりますよ」
ハルベルト長兄の冗談に二人は笑う。
「アキに領地を割譲したら少しずつやりますよ」
ハルベルト長兄はヤレヤレと鼻で息を吐いた。
〰️ 〰️ 〰️
〰️ 〰️ 〰️
今年最後の投稿となります。
今年もお付き合いいただきありがとうございました*ᴗ ᴗ)⁾⁾♪
これまでと毛色の違う作品に四苦八苦しておりますが完結まで頑張りたいと思っております。
来年は『私を王妃にしたいなら……』の書籍も控えておりますので楽しんでいきたいです!
来年もよろしくお願いいたします。
皆様、よいお年を♪
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